V.喉頭の乳頭腫—その臨床的問題点とHPV
著者:
福島邦博
,
西岡信二
,
江谷勉
,
渡辺周一
,
小倉肇
ページ範囲:P.851 - P.854
はじめに
喉頭乳頭腫は,臨床的には孤立性と多発性に分類される上皮性良性腫瘍の1つで,異型性の乏しい扁平上皮ないしは線毛上皮の乳頭状過形成を特徴とする。時にこうした上皮中にはkoilocytosisと呼ばれる所見が散見されることがあるが,これはウイルス感染細胞の病理組織学的特徴と言われており,電子顕微鏡的にはこれらの細胞の核内に大量のパポバウイルス科ウイルス粒子が存在することが証明されている1,2)。このウイルスのDNA解析の結果から,喉頭乳頭腫に存在するヒトパピローマウイルス(HPV)は6型ないし11型であることが報告されており1〜3),自験例1)でも多発性喉頭乳頭腫からは全例でいずれかの型のウイルスゲノムDNAが検出されている(表)。こうした事実から近年では,HPV6ないし11型は多発性喉頭乳頭腫の主たる病因的因子とする考えが一般に受け入れられている。
ところで,喉頭乳頭腫には各種治療に抵抗して頻回の入院・治療が必要とされることがあり,その頻度は最悪の場合2週間ごとの入院が必要となるケースもあると報告されている3)。このような易再発性は喉頭乳頭腫を取り扱う際,臨床的に最も難渋する問題点であるが,近年様々な検討から,こうした高い再発性がHPVの感染様式と密接に関連していることが明らかになりつつある。本稿では,喉頭におけるHPV感染と喉頭乳頭腫との関わりを自験例を通して紹介しHPVに起因すると考えられるその他の臨床的問題点についても考察を加える。