icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻12号

1997年11月発行

鏡下咡語

聴覚電気生理学ことはじめ

著者: 森満保1

所属機関: 1宮崎医科大学

ページ範囲:P.868 - P.869

文献概要

 ここでの鏡は手術用双眼顕微鏡で,鏡下にあるのは主としてモルモットの耳である。そこで行われるのは蝸牛への電極挿入手術であり,聴覚電気生理学的電位の記録である。囁語は時に実験の意義や失敗への嘆きの言葉であり,時に成功の歓喜の声である。
 昭和32年春,私は九州大学耳鼻科に大学院生として入局した。その秋,久留米大学から河田教授が着任された。入局当初は岩本助教授のもとで頭頸部悪性腫瘍を学ぶつもりであったのが,急遽聴覚電気生理学を研究することに変わった。直接指導は河田教授が連れてこられた松尾和巳先生である。先生は実に電気工学に堪能で,倉庫に放置されていた径10cm程のブラウン管がついた筋電計を探し出し修理,猫の正円窓からボール電極による蝸牛マイクロホン電位(CM)の記録実験を供覧された。口笛に反応して振幅をかえる黄色い交流波形が今でも鮮やかに目に浮かぶ。刺激音は純音発信器のみで持続音しか出せない。どんな実験をするか相談し,蝸牛窓と前庭窓から個別に,また同時に音刺激してCMの相互干渉を観察,鼓室形成術の原理を検討し研究班のCM関係の1号論文にした。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら