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原著
抗リン脂質抗体症候群に急性感音難聴を合併した1症例
著者: 山下安彦1 頼實哲1 小河原利彰1 福島邦博2
所属機関: 1国立岡山病院耳鼻咽喉科 2岡山大学医学部耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.916 - P.919
文献購入ページに移動抗リン脂質抗体症候群は1985年にHarrisら1)が提唱した概念で,後天性血栓形成傾向のため習慣性流産,下腿血栓症,血小板減少症などをきたす自己免疫疾患の1つと考えられている。抗リン脂質抗体症候群には現在のところ確立された診断基準はないが,一般的にはSLEなどの自己免疫疾患があり,血栓症などの臨床症状が認められ,また細胞膜を構成するリン脂質を抗原としたlupus anticoagulant (LAC),抗カルジオリピン抗体などの抗リン脂質抗体を証明することにより診断される。血栓形成傾向は抗リン脂質抗体により引き起こされると考えられているが,耳鼻咽喉科領域においては血栓形成傾向が急性感音難聴の原因となり得ることが推測される。今回われわれは,当院内科にて入院治療されていた抗リン脂質抗体症候群の患者で右急性感音難聴をきたし,血栓溶解剤(ウロナーゼTM)投与にて,聴力の改善を示した症例を経験したので報告する。
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