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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻2号

1997年02月発行

鏡下咡語

ドイツ・スウェーデンの新しい医学生物学研究所視察旅行—大江健三郎作『死者の奢り』の“死者のプール”の話から研究所組織の大改革までの動き

著者: 加我君孝1

所属機関: 1東京大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.144 - P.146

文献概要

 一昨年の2月のことである。当時の医学部長の黒川高秀教授(整形外科学)から,将来の東大医学部のキャンパス構想をたてるため,解剖学の養老孟司教授と,文部省,大学本部の代表と一緒に海外視察に行くようにとの要請があった。1995年3月上旬の10日間,ドイツとスウェーデンの代表的な医学生物学研究所を訪問するということであった。手術その他のスケジュールを調整して一行より2日遅れて出発した。北ヨーロッパの冬なので,かつてシベリアで購入したロシアの帽子を持参することにした。養老先生とはそれまで直接お話ししたことはなかったが,NHKの科学番組に出演されたり,解剖学や文明批評の著作で,その頃最もよく知られた東大医学部教授であった。私はこの機会に後に述べる「死者のプール」についても伺ってみたかった。
 最初の訪問先であるドイツのハイデルベルク大学の視察を終え,ウルツブルグの街へ到着したばかりの一行とホテルで合流した。ウルツブルグ大学はX線写真を発明したレントゲンの他に,19世紀に額帯鏡を発明したTroltschや,鼓室形成術のWullsteinが耳鼻科領域ではよく知られている。現在はHelms教授が主任であり耳の手術のモニターはすべて3Dで観察させるユニークな教育を行っている。ウルツブルグ大学は,ドイツの医学生物学研究の中心で,Biomedical Zentrumという総合研究所を最近完成させたばかりであった。その理由は,最近の医学生物学研究は,分子生物学が飛躍的に発展し,世界的に米国の研究に対抗するためには効率が求められるようになったからであるという。高額な機器で共通に利用出来るものは共通にし,学生の教育や教官のためのスペースも,研究者のための実験室も,中央動物室も,新しいコンセプトに合わせて,新しくデザインし,機器はすっかり新しくしたという。建物自体も開放的でユニークなデザインであった。同行したメンバーには建築やエネルギーの専門家もいたので,空調設備や電力設備という,地下から屋上までの普段見ることのないところまで見学することになった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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