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原著
産褥期婦人にみられた耳下腺炎による内頸静脈血栓症の1例
著者: 大渡隆一郎1 柏村正明1 犬山征夫2
所属機関: 1聖母会天使病院 2北海道大学医学部耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.152 - P.155
文献購入ページに移動現在のように抗生物質が発達する以前は,咽頭炎や頸部膿瘍に続発する内頸静脈血栓症はまれなものではなく,しばしば致死的でさえあった。現在では内頸静脈血栓症はまれな疾患となっているものの,しかし,放置すれば肺梗塞などの重大な合併症を引き起こす可能性があり,疾患としての重要性に変わりはない1)。
妊婦の血液は凝固亢進状態,低線溶状態にあり,このような特殊な状況下では婦人科手術を契機とし血栓を形成しやすい傾向にある2)。産褥期婦人の静脈血栓症はその大半が下腿,骨盤内に発症することが知られており,その他の部位に発症することは比較的まれである。今回われわれは,頭痛,耳下部の疼痛を主訴とし,産褥期であったことがその誘因と思われた内頸静脈血栓症の1例を経験したので報告する。
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