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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻4号

1997年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

嗅神経芽細胞腫の1例

著者: 牧野弘治 ,   石田克紀 ,   飯田政弘 ,   堀内正敏 ,   坂井真

ページ範囲:P.278 - P.279

 嗅神経芽細胞腫(olfactory neuroblastoma,以下ONB)は比較的まれな疾患であり,欧米では200例,本邦では70例余りの報告をみる。本邦においてONBは予後不良な疾患であり,他の小円形細胞腫瘍との鑑別が困難なため,正確な病理診断が必要である。特に電子顕微鏡所見が確定診断に有用であるため,ONBを疑った場合には電顕川の組織を採取する必要がある。術前検査ではCTと比較しMRIが有用であるとされ,特に腫瘍の進展範囲,頭蓋内浸潤の有無を把握するのに有用である。
 症例:31歳,女性

原著

摘出アブミ骨の組織学的検討

著者: 星野知之 ,   天野肇 ,   松浦由美子 ,   宮下弘 ,   大川康弘

ページ範囲:P.281 - P.285

 はじめに
 耳硬化症の診断がつくとアブミ骨手術が行われるが,摘出したアブミ骨の病変を組織学的にまとまって検討した報告は多くない1〜6)。近年ではアブミ骨を全部摘出するスタペデクトミー(stape-dectomy)は減って,底板を除去せずに手術するスタペドトミー(stapedotomy)を行う傾向にあるので,検討の機会はますます減っている。
 日本人の耳硬化症の発生頻度は,これまでもいくつかの報告があったが,1993年鈴木7)の273例545耳の側頭骨標本の検討の結果から出された数字(例数で3.7%,耳数で2.2%)が,検討例数が多いことから現在のところ最も信頼できる側頭骨での発生率と思われる。発生率は黒人よりも多く,白人よりも少ない。
 これまでわが国で報告されている側頭骨での病変は,欧米での報告に比べて程度の軽いものが多く,手術時の所見からも日本人の固着は白人のそれに比べて軽いことが推察される。摘出したアブミ骨でも白人と違う特徴が認められるのかどうか,アブミ骨の組織学的検討はこの点でも重要と思われる。
 この報告では耳硬化症の診断で手術を行い,摘出した19個のアブミ骨のついて組織学的の検討した結果を述べる。

中耳カルチノイド腫瘍症例

著者: 得居直公 ,   牧嶋和見 ,   吉田雅文 ,   杉本卓矢 ,   橋本洋

ページ範囲:P.286 - P.289

 はじめに
 カルチノイド腫瘍は,主に消化管または気管や気管支に発生する腫瘍で,中耳に発生することは稀である。われわれは,中耳に原発し外耳道入口部まで進展のみられた,稀なカルチノイド腫瘍の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

鼻副鼻腔癌肉腫の1症例

著者: 江浦陽一 ,   末田尚之 ,   池田宏之 ,   今村明秀 ,   加藤寿彦 ,   曽田豊二 ,   河村康司

ページ範囲:P.291 - P.295

 はじめに
 上皮性悪性腫瘍である癌腫と,非上皮性悪性腫瘍である肉腫が同一器官に共存する病態を示す真性癌肉腫は比較的稀であり,子宮内膜や食道に好発するとされる1)が,鼻副鼻腔領域での発生は極めて稀な疾患である。
 真性癌肉腫の診断においては,癌腫が肉腫様変化をきたしたり,また紡錘細胞への移行形が認められるような“いわゆる癌肉腫”と呼ばれる病態との鑑別が必要となってくる。そのような病態に対しては,今までの病理組織検査において,一般染色では真性癌肉腫と“いわゆる癌肉腫”の染色性や形態が類似しており鑑別は困難とされてきた。しかし,最近では電子顕微鏡的検索や免疫組織化学的手法の発達により,以前に比べ比較的容易に真性癌肉腫の診断が得られるようになり,また肉腫部分の組織診断も行えるようになってきている。
 今回われわれは,鼻副鼻腔領域に発生し,免疫組織化学染色により扁平上皮癌と平滑筋肉腫が共存する真性癌肉腫と診断された1症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

副鼻腔より発生した腺扁平上皮癌の2症例

著者: 藤田博之 ,   平出文久 ,   吉浦宏治 ,   萩原晃 ,   大橋伸也 ,   吉田知之

ページ範囲:P.296 - P.300

 はじめに
 鼻・副鼻腔悪性腫瘍の組織型は大部分が扁平上皮癌で,腺癌は稀であり,そのうちでも両者が併存した腺扁平上皮癌は極めて稀である。今回われわれは,副鼻腔より発生した腺扁平上皮癌の2症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

各種のマスクによるスギ花粉吸入阻止効果の検討

著者: 野村公寿 ,   打越進

ページ範囲:P.302 - P.307

 はじめに
 スギ花粉症は1976年に初めて多数の患者発生をみて以来,それに対する治療手段も増えているが,予防も重要と考えられる。しかし,その一手段である花粉用マスクについては,ほとんど報告がなされていない。われわれは1988年から1991年までの4年間1),その後は花粉飛散が異常に多かった1995年に,各種のマスクについて花粉の通過がどの程度抑制されるかの検討を行った。1988年は測定装置(柴田科学器械工業KK製,カスケードインパクター®,以下CI)が1台しかなく,コントロールを同時に測定できなかったこと,1989年は花粉飛散数が著しく少なくて比較検討ができなかったことから除外し,1990年,1991年,1995年の結果をまとめて報告する。

小児スギ花粉症の疫学的調査研究

著者: 中川肇 ,   渡辺行雄 ,   大橋直樹 ,   島岳彦 ,   大屋美香 ,   十二町真樹子

ページ範囲:P.308 - P.312

 はじめに
 スギ花粉の飛散は,例外的飛散を除き2〜3か月に限られている。一般に花粉症は我妻1)によると3〜5歳からみられ,素因の強いものでは3シーズン程度の曝露で発症すると考えられている。しかしながら,小児スギ花粉症の大規模な疫学的調査は森2)による栃木県壬生町における研究などが散見されるのみである。また,臨床症状について成人と比較検討したものは少ない。われわれは,1996年まででは最も花粉の飛散量が多い年であった1991年に大規模な疫学的調査を施行し,この中で,236例の15歳以下の小児症例をみいだすことができた3)。一方,現在の成人症例は,ほとんどが1970年代,すなわち,成人以降に発症した症例であることも判明し,小児の症例と疫学的に異なった母集団であることが考えられる。今回,小児スギ花粉症例の疫学的特徴について発症状況,症状,合併症に焦点をあて,成人発症症例と比較検討したので報告する。

口腔・中咽頭癌に対するルゴール染色法

著者: 阿部達之 ,   砂川好光 ,   中川昌之 ,   兼平千裕 ,   加藤孝邦 ,   島田士郎

ページ範囲:P.314 - P.316

 はじめに
 口腔・中咽頭癌の治療を施行する際,病巣の進展範囲は視診,触診により診断され切除範囲あるいは放射線の照射野が決定される。しかし,表在性病変の治療ではしばしば腫瘍の辺縁が不明瞭な場合があり進展範囲の決定に苦慮することがある。その際,外側にある程度の安全域を設けるか,20Gy/2週程度の外部照射で認められる腫瘍に限局した反応(いわゆる“tumoritis”)を参考にするなどの対処がなされている1,2)
 食道癌の進展範囲や食道造影では,診断不可能な表在性食道癌の検出において色素内視鏡検査(ルゴール染色法)が広く用いられ,その有用性は周知の事実である3)。今回われわれは口腔・中咽頭癌の放射線治療を施行する際,治療範囲の決定にルゴール染色法を用いた。

甲状舌管遺残組織より発生した乳頭癌の1例

著者: 今井容子 ,   高崎かおり ,   吉原俊雄 ,   石井哲夫

ページ範囲:P.318 - P.321

 はじめに
 甲状舌管嚢胞は胎生期の甲状舌管遺残組織から発生するが悪性病変を合併することは稀で,1927年にOwenら1)が報告して以来,百数十例の報告があるのみである。今回われわれは甲状舌管遺残組織から発生したと考えられる乳頭癌の1例を経験した。自験例を加えた本邦報告例35例についての文献的考察を行い報告する。

腎細胞癌の耳下腺転移の1例

著者: 樋口栄作 ,   飯塚桂司 ,   庄田英明 ,   武市紀人 ,   榊原尚行 ,   吉田豊

ページ範囲:P.322 - P.325

 はじめに
 腎細胞癌は全身のあらゆる臓器に転移することが特徴であり,頭頸部領域への転移も決して稀ではない。しかし,腎癌の耳下腺転移症例は国内でも数例の報告があるにすぎず極めて稀である。今回,われわれは腎癌の耳下腺転移症例を1例経験したので文献的考察を加えて報告する。

典型的な臨床所見を呈した基底細胞母斑症候群の1例

著者: 篠原雄二 ,   広松辰巳 ,   内田朱美 ,   永田芳子 ,   森本泰宏 ,   柴田豊

ページ範囲:P.328 - P.332

 はじめに
 基底細胞母斑症候群(basal cell nevus syn-drome)は多発性顎嚢胞,多発性基底細胞母斑,骨格系の異常を主症状とする常染色体優性遺伝性疾患とされている。本症候群は白人に多く有色人種には比較的少ない疾患と考えられている1)。今回われわれは,本症候群の典型例と思われる症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

文献の整理

著者: 市川銀一郎

ページ範囲:P.334 - P.335

 久しぶりに研究室の書棚やファイルボックスの整理を行った。20年近く前の黄色味を帯びた文献のコピーがたくさん出てきた。物を整理するとき,ついその一つ一つの確認のために手をとめてしまう。
 実験が思うように進まなかった時に読み大切なヒントを得た懐かしい文献,また素晴らしい実験結果が得られ,仲間と喜んだ後に,既に同じ様な結果が報告されており落胆した「しゃくにさわる文献」のコピーなど,ついついページをめくり,なかなか整理が進まない。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑩鼻閉

著者: 森山寛

ページ範囲:P.337 - P.342

 鼻の通りぐあいは,正常者でも1日のうちで良く通る時と,つまり気味の時間がある。また鼻の通りぐあいの左右差のあることも多い。すなわちnasal cycle (日内変動)と呼ばれているリズムである。鼻がつまって鼻呼吸が困難な状態を一般的には鼻閉と呼称するが,鼻呼吸の量が不十分な時や鼻内の気流の乱れで鼻閉感を訴える患者も少なくない。逆に鼻腔が広すぎて通気度が良すぎるために鼻閉塞感を訴える人もいる。また鼻閉感は心身症の1つの症状として発現することもある。問診にしても検査にしても,これらのことを念頭に置きながら進める。
 鼻閉をきたす疾患のうち頻度の高いものは感冒,鼻アレルギー,肥厚性鼻炎,鼻中隔彎曲,慢性副鼻腔炎(鼻茸)である。また鼻閉をきたすのは鼻副鼻腔疾患のみでなく,上咽頭疾患によっても引き起こされるので,注意が必要である。問診や種々の検査を組み合わせて診断する(図1)が,なかでも的確な問診と正確な鼻内所見の把握が特に重要となる1)

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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