耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻4号

1997年04月発行

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑩鼻閉

著者： 森山寛¹

所属機関： ¹東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲：P.337 - P.342

文献概要

　鼻の通りぐあいは，正常者でも1日のうちで良く通る時と，つまり気味の時間がある。また鼻の通りぐあいの左右差のあることも多い。すなわちnasal cycle （日内変動）と呼ばれているリズムである。鼻がつまって鼻呼吸が困難な状態を一般的には鼻閉と呼称するが，鼻呼吸の量が不十分な時や鼻内の気流の乱れで鼻閉感を訴える患者も少なくない。逆に鼻腔が広すぎて通気度が良すぎるために鼻閉塞感を訴える人もいる。また鼻閉感は心身症の1つの症状として発現することもある。問診にしても検査にしても，これらのことを念頭に置きながら進める。
　鼻閉をきたす疾患のうち頻度の高いものは感冒，鼻アレルギー，肥厚性鼻炎，鼻中隔彎曲，慢性副鼻腔炎（鼻茸）である。また鼻閉をきたすのは鼻副鼻腔疾患のみでなく，上咽頭疾患によっても引き起こされるので，注意が必要である。問診や種々の検査を組み合わせて診断する（図1）が，なかでも的確な問診と正確な鼻内所見の把握が特に重要となる^1）。