icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻6号

1997年05月発行

特集 外傷と耳鼻咽喉科

1.耳 2.外耳道

2.異物による損傷

著者: 宇佐美真一1

所属機関: 1弘前大学医学部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.24 - P.27

文献概要

 1.統計
 外耳道異物は,耳鼻咽喉科領域の代表的な異物症例として頻度が高く,わが国の統計によると異物症例中,外耳道異物の占める割合は17〜23%1),31%2),国公立病院や実地医家の報告では45%前後3〜7)とされている。また異物症例は救急外来を受診することが多く,外耳道異物症例も約70%の症例で夜間救急外来を受診している1)。外耳道異物は比較的よく遭遇する疾患であるにもかかわらず,まとまった統計の報告が少ない。これは,摘出が煩雑になり大学病院などの大病院に集中する食道異物,気管支異物に比較すると,救急外来や実地医家に受診する例が多い傾向にあるためと思われる。
 外耳道異物症例は10歳以下の小児に多く1),異物の種類は大きく有生異物と無生異物に分けられる。無生異物にはプラスチック玉,ビーズ玉,磁石,消しゴム,紙,耳かきの一部(マッチ棒,綿花),豆類,ボタン型水銀電池,鉛筆の芯などがあげられる。小児では遊びながら興味本位で挿入する例が多く,成人では耳かきに伴う異物が多い1,2,8)。最近では補聴器のイヤーモールドの型取りをする印象剤が外耳道異物となる例がしばしば報告されている9〜12)。印象剤は注入前に充填する綿栓が不十分であったり,硬化する前に印象剤を取り出すことによって,その一部が外耳道内に取り残されることにより異物となる。特に中耳根本術などの耳の手術施行後や,鼓膜穿孔のある例では外耳道から中耳腔に容易に異物が侵入しやすくなり,このような場合には外耳道異物と中耳異物の合併となることがある11)。イヤーモールド異物症例のなかには補聴器販売店で作製した後に発生した症例が報告されており,補聴器販売店にイヤーモールド作製を一任もしくは無資格で認可していることを問題視しており,耳鼻咽喉科医による指導,助言,監督の必要性を指摘している9〜12)。近年,補聴器が小型化し,性能が進歩するなかでカナル型補聴器もかなり普及してきている。イヤーモールド異物の他にも,カナル型補聴器用のボタン型水銀(アルカリ)電池による外耳道異物症例がいくつか報告されており,高率に高度の組織障害を引き起こすことが知られている9,13,14)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら