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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻6号

1997年05月発行

特集 外傷と耳鼻咽喉科

IV.喉頭・気管・食道

2.気道熱傷

著者: 木西實1 岩江信法1 天津睦郎1 田原真也2

所属機関: 1神戸大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2神戸大学医学部形成外科学教室

ページ範囲:P.110 - P.113

文献概要

 ■はじめに
 O.Copeは1942年9月28日491名の犠牲者を出したナイトクラブの地下室火災での気道熱傷患者を初めて報告している。以後,皮膚熱傷の合併症が抗生剤と早期処置によりめざましく減少してきたのに対し,気道熱傷が熱傷患者の死因の第1位を占めるようになって久しい。気道熱傷は火炎にあおられたり,火災現場に閉じこめられたり,水蒸気が噴出したりする場合にしばしば火炎や水蒸気,あるいは煙に含まれる刺激性有毒ガスを吸入して起こるが,呼吸管理が進歩した今日においてもその処置を誤ると致命的になる。特に顔面や頸部にII度以上の深い熱傷のあるときには気道熱傷の合併を疑う必要がある。気道熱傷の原因は(1)高温の空気,水蒸気による上気道への直接の熱傷(thermal injury),(2)吸入された燃焼産物による化学熱傷(chemical injury)に分類される。
 気道熱傷患者をわれわれ耳鼻咽喉科医が取り扱うのは救命処置,特に気道管理がなされた後,呼吸困難,嗄声,嚥下障害や誤嚥といった症状が発現した受傷後1か月以上経過したいわゆる陳旧例になる。しかしながら,これらではその受傷の原因・程度により病態は様々であり,一定の治療法はなくおのおのの症例に応じた工夫が必要となる。
 以下にthermal injury,chemical injuryの概略を述べ,次に気道熱傷の診断・治療,さらに著者らが経験した濃硫酸によるchemical injury後の後遺症に対する治療に難渋した症例を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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