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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻7号

1997年06月発行

文献概要

鏡下咡語

匂いとの出会いの学会

著者: 大山勝1

所属機関: 1鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.478 - P.479

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 昨年(1996年)師走の6日に,関西空港を発ちフランクルトに向かった。第1回国際鼻内レーザー外科学会でメインゲストスピーカーの一人として招かれ講演するためであった。本会の創立者の張本人であり会長でもあるH.Lenz教授とは,30年前に繊毛上皮や嗅細胞の走査電顕的研究で知り合い,1979年,京都で開催した国際SEM医学・生物学シンポジウムに招聘した経緯がある。したがって,Lenz教授といえば,Essen大学解剖学のBreipol教授と共に嗅細胞のSEM研究者としての印象しかなかった。ところが,1978年頃からすでに,世界に先馳けて,アルゴンレーザーによる肥厚性鼻炎に対する下鼻甲介レーザー切除術と取り組み,鼻科臨床へ華麗な転身をみせていたのだ。したがって,昨年初夏,Lenz教授に本学会の創立協力と招待講演を依頼された折には,基礎,臨床の両分野で共通の興味を抱いている者同志として一も二もなく承諾した。しかも,第1回の開催地がKöln市とあっては,なおさらである。このケルン市の名は,紀元4世紀頃,ローマ帝国の植民地であったことから,Coroniaの名に発しているといわれる。しかし,今日では,eau de cologne発祥のRhine cologneとしての名の方が有名になっている。とくに,ケルン市には,世界的に有名なブランド名“4711”というオーデコロンがあり,その名前もそうであるが由来を聞いて驚いた。このオーデコロンの発祥の由来は,1792年,Carthusianの僧が,若いカップルの結婚祝いに,気分を一新し精気をよみがえらせる“神秘的水”“aqua mirabilis産物”として贈ったのが始まりとされている。ところが,1796年にフランス軍にケルン市が占領された折,市内の街並に番地を付けることが義務づけられて,創始者Wil-helm Mulhen家は4711番地となったいわれがある。そこで,1875年オリジナルオーデコロン“神秘的水”に“4711”の名を付して今日のトレードマークとなったという。この“4711”は,植物の芳醸な香りがして万人に受け入れられる匂いである。しかし,この高貴な成分は,現在に至ってもなお神秘の扉に閉ざされている。爽快感,清新感を覚えることから,シトラス系の匂いのようである。ヨーロッパはいうに及ばず世界各地から“4711”を求めて当地を訪れる人が多い。家内もケルン大学耳鼻咽喉科のO.Michael助教授の奥様,美智子さんの案内で同店舗を訪れた。ここの一角には,ミュージアムもあり,200年以上を経た“4711”オリジナルオーデコロンが収蔵され,休息のあい間には“4711”泉水でリフレッシュできるとの話であった。
 さて,本来の目的である学術講演会の方は,米国のLevine博士を始め,フランス,ロシア,オーストリア,クロアチア,英国,イタリア,スイスなどヨーロッパの鼻科レーザー外科のエキスパートが一堂に会して行われた。全体の参加者は,100名足らずと少なかったが,内容的には最先端の課題が討議され,実りあるものであった。日本からは,関西医大関連病院の福武博士が招かれて,鼻アレルギーに対する炭酸ガスレーザーによる下鼻甲介粘膜蒸散術の講演を行った。小生は,口演の方では「鼻アレルギーに対するバルンレーザーミア」を,また,ビデオでは「レーザー鼻茸摘除術と嗅覚機能」と題して,それぞれ特別講演を行った。われわれが開発した接触型Nd:YAGレーザー鼻茸摘除術の手技と臨床成績,および日帰り手術の一環としての炭酸ガスレーザー鼻茸分割蒸散術の効用をビデオで供覧した。また,これらレーザー手術による嗅覚機能への影響を各種の嗅覚検査で追求した成績を披露した。これらの中で,日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会が中心になって新たに開発した嗅素噴射型T&T基準嗅覚検査法の特徴と有用性のくだりは,聴衆の関心と興味を惹いたようであった。講演会終了後に,Lenz教授,クロアチアの友人を始めロシア,オーストリアの講演者からいろいろと質問を受けると同時に“匂い”の医学・生物学などを中心に,しばし楽しい話題に花が咲いた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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