icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻8号

1997年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

顎下腺癌肉腫の1例

著者: 大脇成広 ,   花田誠 ,   北野博也 ,   田中優子 ,   北嶋和智

ページ範囲:P.508 - P.509

 皮成分と非上皮成分が同時に悪性化する癌肉腫が唾液腺に発生することは非常に稀である。われわれが経験した顎下腺癌肉腫例を報告する。
 症例:70歳男性,自営業。

Current Article

他覚的嗅覚検査

著者: 加藤寿彦 ,   江浦陽一 ,   原田博文 ,   白石君男

ページ範囲:P.511 - P.523

 はじめに
 われわれ人間の生活において,古くから嗅覚は非常に重要な役割を果たしている。匂いは本来,危険の察知や有害物質の識別など,主に個体維持や保存の目的をその役割としてきた。しかし,最近では匂いその物がもつ,感情を豊かに高揚させるような匂い物質が抽出され商品化されるようになってきており,現在われわれが文化的生活を送るうえで匂いは必要不可欠なものとなっている。またこの日本においては,遠く奈良時代から香りの文化が始まり,その後世界に誇り得る香道という薫りの文化が創造され,現在までいろいろな流儀に分かれながら発展している。このように匂いは生活に直結しているにもかかわらず,匂いの科学は味の科学とともに,その他の感覚に比べて研究が進んでいないのが実状である。これは嗅覚が化学受容器を介して刺激を受けるために,光や音といった物理的刺激による視覚や聴覚と異なり,刺激量を定量的に正確に測定することが困難なためである。したがって現在行われている嗅覚検査は,被検者の主観に頼った自覚的嗅覚検査が主流で,客観的に嗅覚を評価する他覚的嗅覚検査法は未だ日常臨床で確立されていない。しかし最近,増加が著しい交通災害や環境汚染などに伴う嗅覚障害の判定を行うためには,客観的に嗅覚障害を評価できる他覚的嗅覚検査法が必要となっている。これまで本邦においても,ニオイ刺激に対するいろいろな生体反応の変化を応用し,客観的な他覚的嗅覚検査としようという試みがなされてきている。ニオイ刺激に対する皮膚電気反応(1965,浅賀ら)1),呼吸曲線(1968,梅田ら)2),瞳孔反射(1971,西田ら)3),心拍数(1986,島田ら)4)など生体の変化を指標とする方法である。しかしいずれも客観性に乏しく臨床的に用いられるには至らなかった。1954年Ottoson5)はニオイ刺激に対しウサギの嗅上皮に発生する遅い電位を見いだしており,その後カエルの嗅上皮について詳しい研究がなされている6)。また高木らは,カエルの嗅上皮から同様の電位を記録している7,8)。このようなニオイ刺激による誘発電位を指標として嗅覚を他覚的に判定する目的で,ヒトの頭皮上で記録される嗅覚誘発反応(odorant evoked response:以下OERと略す)についての研究が行われるようになり,1966年Finkenzeller9),1967年Allisonら10)の報告がみられ,それ以後も研究が行われているが,本邦では外池ら(1979)11),大峡(1982)12),白石ら(1986)13),加藤(1991)14)などの報告がある。一方,原脳波を指標とした方法は市原ら(1963,1964)15,16)によって報告されているが,記録用紙に記録された原脳波を主観的に観察するだけであり,脳波の微細な変化を客観的にとらえることは困難であった。しかし.原田ら(1995)17)はニオイ刺激に対する脳波変動を他覚的嗅覚検査法として応用するために,高速フーリエ変換を用いて脳波の周波数分析を行い,周波数帯域別の等価電位の頭皮上における分布を二次元的に表示した二次元脳電図を用いて,ニオで刺激に対する脳波変動を空間的に表示した。さらにその周波数成分の位相関係をみるために,コヒーレンス分析を用いて脳波信号の周波数成分の頭皮上各電極部位間での相関性をみた。他覚的に嗅覚を判定するための方法として,これまでわれわれが行ってきたニオイ刺激による原脳波の周波数分析法,コヒーレンス分析法,嗅覚誘発反応について述べる。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑫昧覚障害

著者: 池田稔

ページ範囲:P.525 - P.529

 I.問診による原因診断
 味覚障害は単なる症状であり,その原因となる要因は表1に示したごとく様々である1)。最も頻度の高いものとしては薬剤性味覚障害があげられ,それに続いて亜鉛欠乏性味覚障害,全身疾患による味覚障害,および特発性味覚障害などがある。これらの種々の原因を想定しつつ問診をすすめることが重要であり,以下にそのいくつかのポイントをあげてみたい。
 ①発症時の状況:感冒や頭部外傷に引き続き発症していないか。他疾患に対する薬剤の服用を契機に発症していないかなど,原因に直接関係する情報を問診で得ることができる。

原著

局所への非根治的放射線照射後に退縮をみた—高齢者非ホジキン・リンパ腫の1例

著者: 瀬嶋尊之 ,   玉川雄也 ,   井上耕 ,   宮田守 ,   喜多村健 ,   仲澤聖則

ページ範囲:P.531 - P.536

 はじめに
 悪性リンパ腫は,一般に放射線感受性が高い腫瘍として知られている。また,この腫瘍では稀に自然退縮1)や放射線照射を受けた部位以外の腫瘍組織が反応(退縮)するというabscopal effect2)が報告されている。今回われわれは,咽頭・頸部・縦隔に発生した非ホジキン型悪性リンパ腫が,咽頭局所への少量放射線照射後に他部位の病変も含めて退縮した症例を経験したので,ここに報告する。

喉頭結核の3症例

著者: 盛川宏 ,   中之坊学 ,   田部哲也 ,   田村悦代 ,   海江田純彦 ,   北原哲 ,   井上鐵三

ページ範囲:P.537 - P.540

 はじめに
 結核症は化学療法の進歩や健康診断などの予防対策の普及により急速に減少している1)。それに伴い喉頭結核も減少傾向にあり,比較的稀な喉頭疾患の1つになってきている。しかし,全くなくなったわけではなく,報告例も散見される2〜9)。最近ではその病態も変化してきていると言われており3〜8),日常診療の場で喉頭癌との鑑別に苦慮することも少なくない。今回,われわれは喉頭結核の3症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺上皮性腫瘍の臨床症状と診断的意義

著者: 鈴木政美 ,   竹生田勝次 ,   西嶌渡 ,   鈴木政彦

ページ範囲:P.541 - P.544

 はじめに
 耳下腺に発生した腫瘍を評価する場合,大きく2つの方法に分けられる。1つはいわゆる臨床症状から評価する方法である。これは腫瘍の存在から引き起こされる症状の有無から腫瘍の性質を評価するもので,顔面神経麻痺,疼痛,急速増大傾向などが挙げられる。もう1つは検査所見から評価する方法である。これは腫瘍そのものをターゲットにして得られた所見から,腫瘍の性質を評価するものでMRI,CT,超音波,穿刺吸引細胞診などが挙げられる。後者に関しては,その有用性や意義について昨今多くの報告がされている。しかし前者に関しては,系統だててその意義について考察している報告は少ない。そこで,われわれは耳下腺上皮性腫瘍の臨床症状に着目し,検討を行ったので報告する。

髄膜炎を反復した両側Mondini型内耳奇形の1手術例

著者: 佐川鉄太郎 ,   松崎充男 ,   安岡義人 ,   亀井民雄

ページ範囲:P.545 - P.548

 緒言
 Mondini型内耳奇形については,1791年にMondiniが拡大した前庭と1回転半の蝸牛として初めて報告した1)。その後Ormerod2)は基底回転のみの蝸牛または扁平蝸牛と,前庭半規管の低形成とし,またSchuknecht1)は骨迷路および膜迷路の不完全な発育としており,現在もその定義は統一されていない。
 Mondini型内耳奇形では,耳性髄液漏を合併して反復性髄膜炎を起こす危険性があるとされ3),髄液漏のルートとして内耳道から前庭を通るものが多い1,4,5)。すなわち,前庭と内耳道間の骨隔壁(Lamina cribrosa)およびアブミ骨底板の骨欠損を伴うことが多く3,5〜7),くも膜下腔からの髄液圧が直接前庭窓に加わることになる。そして何らかの原因で外リンパ圧が上昇したときに,アブミ骨底板の先天性骨欠損部に穿孔をつくり,耳性髄液漏が生じると考えられる6)

特発性頸部縦隔気腫の2例

著者: 小林丈二 ,   佐伯忠彦 ,   上甲英生 ,   加藤専治

ページ範囲:P.550 - P.554

 はじめに
 頸部縦隔気腫は外科的侵襲,外傷,喘息発作などを誘因として発症することが多いとされているが,われわれ耳鼻咽喉科医が日常臨床で遭遇することは稀である。今回われわれは,水中での加圧と過度の発声にて生じた頸部縦隔気腫の2例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

鼻中隔原発奇形癌肉腫の1例

著者: 上甲英生 ,   栗原憲二 ,   佐伯忠彦 ,   竹田一彦 ,   脇坂浩之 ,   小林丈二

ページ範囲:P.560 - P.564

 はじめに
 奇形癌肉腫(teratocarcinosarcoma)は,1984年にHeffnerら1)によって確立された疾患概念で,特徴的な奇形腫様の組織像を示す悪性腫瘍である。成人の鼻副鼻腔に発生した本腫瘍の報告例は極めて少なく,われわれの調べ得た限りでは,これまでに海外で26例1〜5),本邦では1例6)の報告を認めるのみである。今回,われわれは鼻中隔に原発した奇形癌肉腫の1例を経験したので,その病理組織学的特徴と類似疾患との鑑別を中心に,若干の文献的考察を加えて報告する。

成人呼吸促迫症候群(ARDS)と播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した副咽頭間隙膿瘍の1症例

著者: 上村尚樹 ,   末永智 ,   黒野祐一 ,   重見英男 ,   坂本菜穂子 ,   茂木五郎 ,   山形英司 ,   永井寛之 ,   橋本敦郎 ,   那須勝

ページ範囲:P.565 - P.569

 はじめに
 副咽頭間隙膿瘍は近年の画像診断の進歩によって迅速な診断が可能となり,優れた抗生物質により重篤化する症例は減少している。しかし,依然として周囲への炎症波及や全身的合併症により,致命的経過をたどる症例も報告されており1,2),楽観できない疾患の1つであることに変わりはない。今回われわれは,敗血症から播種性血管内凝固症候群(DIC),さらには成人呼吸促迫症候群(ARDS)を併発した副咽頭間隙膿瘍の1症例を経験したので,その臨床経過と若干の文献的考察を加え報告する。

IgA腎症における扁桃誘発試験と扁摘効果

著者: 赤木博文 ,   小坂道也 ,   福島邦博 ,   土井彰 ,   馬場京子 ,   笹木收 ,   西崎和則 ,   清水順子 ,   杉山信義

ページ範囲:P.571 - P.575

 はじめに
 IgA腎症は,1968年Berger1)が報告したのが最初で,扁桃病巣感染症の代表的疾患の1つとされており,本邦では1983年の杉山ら2),相馬ら3),山辺ら4)の報告以来,口蓋扁桃摘出術(以下,扁摘)の有効性が報告されてきた。
 扁桃病巣感染症の補助診断法の1つとして,扁桃誘発試験(以下,誘発試験)が日常臨床において広く用いられている。しかし刺激方法,刺激時間,パラメータの選択,陽性判定基準,陽性判定時間,誘発試験成績と扁摘効果が一致しないなど,様々な問題点が指摘されてきた5,6)。これらの点に対して「扁桃病巣感染症診断基準の標準化に関する委員会」は,標準化作業のための基準を呈示した7)。また,超短波誘発試験法のうち直接導子を扁桃に当てて照射する直接誘発法(以下,直接法)と,導子を下顎角部などに当て皮膚・筋肉・骨などを通して扁桃に照射する間接誘発法(以下,間接法)を比較した場合,信頼性が高いのは直接法であると報告されてきた8,9)
 今回われわれは,「扁桃病巣感染症診断基準の標準化に関する委員会」のプロトコールに従って誘発試験(直接法または間接法)を行った後,扁摘を施行し6か月以上経過観察のできたIgA腎症例を対象に,各々の誘発試験陽性率および診断的中率を出し,プロトコールに示された方法による直接法と間接法のIgA腎症に対する補助診断法としての有用性について,比較検討を行ったので報告する。

鏡下咡語

医師における修業とインフオームド・コンセントに対する私見

著者: 山田弘之

ページ範囲:P.556 - P.558

 1年以上前に「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」からこの依頼原稿の話があった時には,名誉なことと考えて二つ返事で引き受けながら,さて小生のような若輩者に何が書けるのかと悩んでしまいました。そのうち日常の臨床にかまけて,つい延ばし延ばしにしてしまいました。
 小生は卒後15年目の未だ修業を重ねている身であり,おまけに世間知らずですので,読者の皆様にとってはつまらぬことしか書けません。ならば,この機会を利用して,日頃の小生のウサ晴らしに付合って頂ければと,徒然に書き始めております。

手術・手技

頭頸部再建における広頸筋皮弁の応用

著者: 鈴木秀明 ,   佐々木高綱 ,   古川加奈子 ,   菅原充 ,   橋本省

ページ範囲:P.577 - P.581

 はじめに
 口腔腫瘍や中咽頭腫瘍に対する切除後の再建法として,欠損部が大きい場合には大胸筋皮弁や広背筋皮弁,さらに近年では前腕皮弁,腹直筋皮弁などの遊離皮弁が用いられる。これに対して中規模の欠損部の再建法としては確立した方法がなく術式の選択に迷うところである。広頸筋皮弁は口腔内の再建術式として1978年Futrellら1)によって提唱され,以後,口腔咽頭における中規模の欠損部の再建法として有用であることが報告されている。今回われわれは舌癌,中咽頭癌,歯肉癌の3症例に対し本法を施行し良好な結果を得たので報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?