icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻9号

1997年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

下咽頭および喉頭血管腫に対するKTPレーザー光凝固

著者: 小坂道也 ,   中田道広 ,   赤木博文 ,   西岡信二 ,   鶴迫裕一 ,   小川晃弘 ,   西崎和則 ,   増田游

ページ範囲:P.590 - P.591

 頭頸部は血管腫の好発部位であり,その中でも鼻腔,口腔,咽頭に多く,喉頭では比較的稀である1)
 下咽頭および喉頭血管腫に対する治療には従来,経過観察,放射線療法,ステロイド療法,硬化療法,外科的切除などが行われてきたが1),近年では侵襲がより少なく,効果が確実で出血も少ないレーザー療法が主流となってきている。以前よりCO2レーザー,Nd-YAGレーザーが血管腫の治療に使用されてきたが,止血効果が不十分との報告もあった2)。最近ではKTP/532レーザーが注目され,その波長が水に吸収されにくく,極めてよくヘモグロビンに吸収され出血が少ないことから,現在のところ血管腫の治療に最適とされている1)。また,KTP/532レーザーは,レーザー光を石英ファイバーで導光することができ,接触,非接触どちらでも使用でき,喉頭などの治療では操作性においても優れている3)

原著

巨大甲状腺腫の診断と上縦隔処理

著者: 河田了 ,   四ノ宮隆 ,   丁剛 ,   村上泰

ページ範囲:P.593 - P.597

 はじめに
 甲状腺癌の大部分は分化癌であり,その発育速度は概して緩慢なため拡大手術,すなわち周囲臓器合併切除を余儀なくされることは稀である。しかし時として気管,喉頭への浸潤,下方では上縦隔へ進展する例がみられる。すなわち,甲状腺腫のほとんどは鎖骨より上にとどまっているが,進行例や再発例の一部では鎖骨や胸骨より下方に進展して上縦隔の処理が必要となる1〜3)。上縦隔には大きな動静脈,神経,気管,食道,肺尖などが比較的狭い部位に存在し,その手術操作に対しては高度の臨床解剖の知識と技術が要求される。したがって,術前の画像診断などで上縦隔進展が疑われた場合,手術のアプローチ,とりわけ胸骨,鎖骨の処理をいかにすべきか迷うことが少なくない。甲状腺癌取扱い規約4)のJT分類によれば,腫瘤が50mmより大きいものをJT3としているので,今回,腫瘤の最大径が50mmより大きいものを大きな甲状腺腫と定義した。そのなかで特に上縦隔に進展した例を中心に縦隔処理について検討した。

甲状腺結核の1症例

著者: 寺山善博 ,   寺山真理子 ,   太田豊 ,   長舩宏隆 ,   小田恂

ページ範囲:P.599 - P.602

 はじめに
 結核症は,主に肺を冒すのが一般的であるが全身のほとんどの臓器にもみられる疾患である。頭頸部領域においても頸部1),喉頭2),咽頭3),中耳4)などに発症した症例報告がみられる。われわれは頭頸部領域の中でも発症が非常に稀である甲状腺結核の症例を経験し,術前にその診断を確定することができたので,文献的考察を含めて報告する。

眼窩尖端に浸潤した後部副鼻腔アスペルギルス症の3例

著者: 兵頭政光 ,   湯本英二 ,   有友宏 ,   稲木匠子 ,   河野兼久

ページ範囲:P.603 - P.607

 はじめに
 鼻副鼻腔における真菌症は日常臨床において時に遭遇するが,その予後は一般に良好である。しかし,稀に骨破壊を伴って周囲組織に浸潤し,治療に抵抗して致死的となる例がある1)。われわれはこれまでに,後部副鼻腔より眼窩尖端や頭蓋底に浸潤したアスペルギルス症を3例経験した。そのうち,早期に眼窩内容の摘出を含む病変の徹底した郭清を行った2例は救命し得たが,1例は中大脳動脈領域の広範な梗塞をきたして死亡した。今回,これらの症例の治療経過を報告するとともに,本症の診断と治療について考察を加えた。

口腔内に発生した悪性線維性組織球腫の2例

著者: 福島一登 ,   後藤達也 ,   宮崎信 ,   安田繁伸 ,   安田範夫

ページ範囲:P.609 - P.612

 はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous his-tiocytoma,以下MFH)は,成人の悪性軟部組織腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍であり,中高年の四肢の軟部組織に好発する。今回われわれは,頭頸部領域では比較的稀である口腔内に発生したMFHを2例経験したので報告する。

鼻腔内に発生した血管線維腫の1例

著者: 山岡秀之 ,   佃守 ,   持松いづみ ,   長原太郎 ,   加賀田博子 ,   菊地さおり ,   河野尚美

ページ範囲:P.613 - P.617

 はじめに
 頭頸部領域の血管線維腫は,主に思春期男性の上咽頭に生じる良性腫瘍である。しかし,少数ではあるが,鼻腔内に生じたとの報告もされている。今回われわれは,下鼻甲介に発生した血管線維腫を経験したので,鼻腔に発生した血管線維腫の本邦での報告例をまとめるとともに,若干の文献的考察を加えて報告する。

喉頭全摘を施行した眼・咽頭筋ジストロフィーの1症例

著者: 馬場優 ,   佃守 ,   榎本浩幸 ,   河野英治 ,   河合敏 ,   池間陽子 ,   水野浩美

ページ範囲:P.618 - P.622

 はじめに
 嚥下の動的障害をきたす疾患としては,筋萎縮性側索硬化症,重症筋無力症,多発性筋炎などがある。これら疾患の多くは顔面,体幹,四肢の筋が早期に侵されるため,嚥下障害は一部分症状としてみられることが多い。一方,嚥下障害を主症状とする筋原性疾患の1つとして眼・咽頭筋ジストロフィーoculopharyngeal muscular dystro-phy (以下,OPMD)が挙げられる。今回われわれはOPMDによる嚥下障害に対して,喉頭全摘術を施行し嚥下困難の改善をみた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

エンドトキシンショックを併発した深頸部感染症の1症例

著者: 鈴村恵理 ,   雨皿亮 ,   浦仁志

ページ範囲:P.623 - P.627

 はじめに
 抗生物質の発達した現在でも,深頸部感染症は適切な治療を怠ると重篤な合併症を引き起こす可能性のある疾患である。また,抗生物質による症状の遮蔽化や耐性菌,嫌気性菌の関与により病態はむしろ複雑になってきている1)。しかし,検出菌に関しての報告はグラム陽性球菌と嫌気性菌の報告が主で2),グラム陰性桿菌によるエンドトキシンショックについての報告は,われわれが検索したかぎりでは認められなかった。今回われわれは,深頸部膿瘍により縦隔膿瘍へと進行し,経過中にエンドトキシンショックを併発したが,頻回の膿瘍ドレナージ術と全身管理により救命し得た症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

頸部皮下気腫および縦隔気腫をきたした2症例

著者: 水野文恵 ,   阿部和也 ,   加瀬康弘

ページ範囲:P.633 - P.636

 はじめに
 日常診療において,頸部皮下気腫および縦隔気腫に耳鼻咽候科医が遭遇する頻度は比較的少ない。基礎疾患をもった症例や胸部症状を主訴にする場合は小児科や内科を受診することが多く,外傷が原因の場合は外科を受診することが多いことがその理由として挙げられる1)。
 今回われわれは,頸部皮下気腫および縦隔気腫をきたし,保存的治療にて軽快した症例を2例経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

小児顎下部に発生した腹壁外デスモイド腫瘍(aggressive fibromatosis)の1症例

著者: 冨永進 ,   西岡信二 ,   小坂道也 ,   福島邦博 ,   門田伸也 ,   西崎和則 ,   増田游

ページ範囲:P.639 - P.642

 はじめに
 腹壁外デスモイド腫瘍(extraabdominal des-moid tumor)は,腹壁以外の筋肉や筋腱膜より発生する頭頸部では比較的稀な線維性軟部腫瘍である。ケロイドに似た組織像を呈し病理学的には良性であるにもかかわらず,強い局所浸潤性と易再発性を示し,臨床的には悪性腫瘍に似た経過をとることで知られている1)。本来成人に多いとされ,小児には稀な頭頸部腫瘍であると言われている2)
 今回われわれは,増大を繰り返し治療に難渋した6歳女児の顎下部に発生した腹壁外デスモイド腫瘍(aggressive fibromatosis)の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

耳手術における蝸電図モニタリングの有用性

著者: 十二町真樹子 ,   麻生伸 ,   武田精一 ,   木村寛 ,   日野美奈子 ,   渡辺行雄

ページ範囲:P.644 - P.647

 はじめに
 近年,全麻手術の増加に伴って各種の術中モニタリングの必要性が生じてきた。これらは主に不可避的に生じる事故の警告サインとしての使用であり,麻酔医の行う全身管理を目的とするモニタリングに加え,脳外科領域の手術においてはABR (聴性脳幹反応)や顔面神経機能,SEP (体性感覚誘発反応)などの測定も広く行われている。一方,耳手術の領域では内リンパ嚢開放術において蝸電図を行う報告がみられる1,2)が,それ以外の使用例の報告は数少ない。当科では最近外リンパ瘻の瘻孔部位の術中診断や中耳手術の効果をみる目的で蝸電図モニタリングを使用し良好な成績を得ている3)。今回は,その手技と実際の波形を呈示して,その有用性について報告する。

鏡下咡語

メスと包丁

著者: 夜久有滋

ページ範囲:P.630 - P.632

 「先生,ふぐの免許を取ってみたら?今年はウチのMも受験するから,一緒に試験を受けなさいよ」馴染の割烹の主人のこの言葉から事は始まった。
 7年前に栃木県がんセンターを辞し,千葉県野田市で開業した。40歳であった。頭頸部外科を専門としていた身が,外来診療のみとなり寂しさを感じ始めた頃,生来の魚好きである私に妻がメスを包丁に持ち替えての魚料理を勧めてくれた。以来,この割烹の主人に手ほどきを受けながら大小種々の魚をこなしてきた。この割烹は開業して3月ほどして見つけた店で,ふぐ割烹を標榜しており,ふぐ以外にも美味しい料理が多く,医師会の先生方も多数利用されていた。主人は自分の店を飛び込みで見つけて定着した私を気に入り,開院祝いをしなかった私が,開院一周年記念の会を貸し切りでお願いしたところ,以後は支払いが翌月一括払いとなった。M君はここで5年前から修業している青年である。

手術・手技

Holmium:YAGレーザーによる内視鏡下鼻内副鼻腔手術

著者: 天野肇 ,   竹下有

ページ範囲:P.651 - P.655

 はじめに
 慢性副鼻腔炎や術後性上顎嚢胞などの鼻副鼻腔疾患に対する外科的治療法として内視鏡下鼻内手術が確立し,さらに様々なレーザーを応用した内視鏡下手術が報告されている1,2)。CO2,Nd:YAG,KTP/532レーザーなど従来のレーザーによる鼻副鼻腔手術では,骨蒸散能に乏しく深達度が一定でないなど様々な欠点もあった。Holmium:Yttrium Alminium Garnet (Ho:YAG)レーザーは,その特性から組織侵襲が出血の有無にかかわらず一定で,骨との反応性に富んでおり骨蒸散能に優れている。今回,Ho:YAGレーザーを内視鏡下鼻内副鼻腔手術に応用し有用であったので報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?