目でみる耳鼻咽喉科
多発性挿管性肉芽腫の1例
著者:
河合晃充
,
折田洋造
,
秋定健
,
吉弘剛
,
武浩太郎
,
粟飯原輝人
,
日高利美
ページ範囲:P.6 - P.7
気管内挿管による合併症の1つである挿管性喉頭肉芽腫は比較的稀な疾患であるが,時に呼吸困難を引き起こすこともあるため,臨床上無視できない晩発性合併症である。発生部位としては欧米では両側性に,本邦では片側,特に右側が多いと報告されている。今回われわれは,喉頭内に3つの肉芽腫を認めた挿管性肉芽腫の症例を経験したので報告する。
患者は58歳,女性。平成8年2月6日,くも膜下出血を発症し,近医脳外科にて手術を受けた。2か月後,リハビリ目的に他の総合病院に転院した頃より嗄声が出現した。徐々に増強し,軽度呼吸困難をきたすようになったため同院耳鼻咽喉科を受診し,喉頭内の腫瘤を指摘され精査・加療目的に当院に入院した。入院時,呼気・吸気ともに喘鳴を伴う嗄声を認めた。間接喉頭鏡検査にて声門上部に腫瘤を認めた(図1)。血液検査上,貧血・低アルブミン血症などは認められず,動脈血ガス分析においても正常値を示した。頸部X線(図2),CT (図3)などにより喉頭内に複数の腫瘤が存在するものと診断し,局所麻酔下に気管切開後,ラリンゴマイクロサージェリーにて腫瘤摘出術を施行した。声門上部の腫瘤は喉頭蓋喉頭面の喉頭蓋結節付近に茎を有しており,16×14×10mm大であり,茎の基部は易出血性であった。続いて右声帯結節に茎をもつ腫瘤を確認し,切除した。この腫瘤は6×6×4mm大であった。この後,左声帯結節に茎をもち,声門下に嵌頓している腫瘤を確認し,切除した。この腫瘤は6×5×3mm大であった(図4)。組織的には毛細血管と線維芽細胞の増生よりなる肉芽腫(図5)で,挿管性肉芽腫と診断した。術後再発は認めていない。