icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科70巻1号

1998年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

多発性挿管性肉芽腫の1例

著者: 河合晃充 ,   折田洋造 ,   秋定健 ,   吉弘剛 ,   武浩太郎 ,   粟飯原輝人 ,   日高利美

ページ範囲:P.6 - P.7

 気管内挿管による合併症の1つである挿管性喉頭肉芽腫は比較的稀な疾患であるが,時に呼吸困難を引き起こすこともあるため,臨床上無視できない晩発性合併症である。発生部位としては欧米では両側性に,本邦では片側,特に右側が多いと報告されている。今回われわれは,喉頭内に3つの肉芽腫を認めた挿管性肉芽腫の症例を経験したので報告する。
 患者は58歳,女性。平成8年2月6日,くも膜下出血を発症し,近医脳外科にて手術を受けた。2か月後,リハビリ目的に他の総合病院に転院した頃より嗄声が出現した。徐々に増強し,軽度呼吸困難をきたすようになったため同院耳鼻咽喉科を受診し,喉頭内の腫瘤を指摘され精査・加療目的に当院に入院した。入院時,呼気・吸気ともに喘鳴を伴う嗄声を認めた。間接喉頭鏡検査にて声門上部に腫瘤を認めた(図1)。血液検査上,貧血・低アルブミン血症などは認められず,動脈血ガス分析においても正常値を示した。頸部X線(図2),CT (図3)などにより喉頭内に複数の腫瘤が存在するものと診断し,局所麻酔下に気管切開後,ラリンゴマイクロサージェリーにて腫瘤摘出術を施行した。声門上部の腫瘤は喉頭蓋喉頭面の喉頭蓋結節付近に茎を有しており,16×14×10mm大であり,茎の基部は易出血性であった。続いて右声帯結節に茎をもつ腫瘤を確認し,切除した。この腫瘤は6×6×4mm大であった。この後,左声帯結節に茎をもち,声門下に嵌頓している腫瘤を確認し,切除した。この腫瘤は6×5×3mm大であった(図4)。組織的には毛細血管と線維芽細胞の増生よりなる肉芽腫(図5)で,挿管性肉芽腫と診断した。術後再発は認めていない。

原著

両側突発難聴を主訴に来院した白血病の1例

著者: 橋本晋一郎 ,   藤野明人 ,   籾山安弘 ,   中村要 ,   小川浩司 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.10 - P.13

 はじめに
 白血病に伴う難聴は外耳,中耳,内耳,神経への細胞浸潤と出血,炎症またはこれらの混合によって引き起こされるといわれている1,2)。今回われわれは,両側難聴を主訴に来院し急激な転帰をとった1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

5-FU脳症の2例

著者: 谷垣裕二 ,   久保田彰 ,   古川まどか ,   佃守

ページ範囲:P.15 - P.18

 はじめに
 5-fluorouracil(5-FU)が1956年に開発されて以来,5-FUの長期投与に伴う副作用として白質脳症が多数報告されている1〜3)。しかし,急性脳症に関する報告4)は僅かで,その症状や病態は明らかではない。今回,5-FUの1,000mg/m25日間の持続静注治療を行った243症例中,5-FUが起因したと思われる急性脳症を2例経験し,その症状や検査所見の特徴,白質脳症との比較などを検討したので報告する。

巨大な耳下腺腫瘍を形成した神経線維腫症1型の1症例

著者: 浅田行紀 ,   鈴木秀明 ,   松浦一登 ,   志賀清人 ,   古川加奈子 ,   中林成一郎

ページ範囲:P.21 - P.24

 はじめに
 神経線維腫症は,1882年にRecklinghausenによって初めて報告された常染色体優性の遺伝性疾患であり1),皮膚および神経の多発性の神経線維腫,カフェ・オ・レ斑を主徴とし骨病変,眼病変などの多彩な症候を呈することが知られている。今回われわれは,耳下腺部に急速に増大する神経線維腫を形成した1例を経験したので報告する。

頸部悪性腫瘍による左頸動脈洞反射亢進症について

著者: 石丸幸太朗 ,   重野浩一郎 ,   小室哲 ,   高崎賢治 ,   神田幸彦 ,   田中藤信 ,   高野潤 ,   小林俊光

ページ範囲:P.25 - P.28

 はじめに
 頸部悪性腫瘍に伴う頸動脈洞反射亢進症は,徐脈,低血圧,失神を誘発することが知られている1)。今回われわれは,頸部悪性腫瘍に伴う左側頸動脈洞反射亢進症により,房室ブロックをきたした2症例を報告するとともに,頸部悪性腫瘍に伴う左および右頸動脈洞反射亢進症の病態生理,治療法について文献的考察を行った。

血管造影にて血管腫が疑われた副咽頭神経鞘腫

著者: 上田結花里 ,   将積日出夫 ,   伏木宏影 ,   渡辺行雄 ,   石井陽子

ページ範囲:P.31 - P.34

 はじめに
 副咽頭間隙は,上方は頭蓋底,後方は椎前筋膜,前方は内側翼突筋,側方は耳下腺深葉,下方は舌骨,内側は上咽頭収縮筋に囲まれている。解剖学的にいくつもの神経,血管が複雑にその内部を走行し,腫瘍がある程度大きくならないと発見されにくい場所である。今回われわれは,病理組織学的に海綿状血管腫様変化をきたしたため,術前の塞栓術が必要であった巨大な副咽頭神経鞘腫の1例を経験したので報告する。

上顎洞血瘤腫の術前画像診断

著者: 奥窪明子 ,   石田春彦 ,   天津睦郎 ,   高雄真人

ページ範囲:P.35 - P.38

 はじめに
 上顎洞血瘤腫は比較的稀な疾患で,田所1)が1917年に報告して以来,鼻腔,副鼻腔に凝血塊を主とした腫瘤を形成した状態に対して使用されている臨床的な名称である。本疾患患者の多くが反復性の鼻出血をきたすことや,単純X線写真でも骨破壊を示す症例がある点2〜7)で臨床的には悪性腫瘍との鑑別が困難な場合が多い。
 当科で最近10年間に経験した上顎洞血瘤腫症例は5例であった。全例で上顎洞試験開洞を行い,病理組織学的に腫瘍性病変を認めず,出血巣や壊死組織のみであることを確認して診断を行った。5例のうち術前にCTを4例に,MRIを3例に施行した。これまで血瘤腫のCT,MRI所見についての詳細な報告はみられていない。そこで,これらの画像所見について血瘤腫と悪性腫瘍の比較検討を行い,画像による血瘤腫の術前診断が可能かどうかを検討したので,文献的考察とともに報告する。

耳下腺腫瘍のMRI診断における高速脂肪信号抑制法について

著者: 沖田渉 ,   石尾健一郎 ,   阿部和也 ,   水野正浩

ページ範囲:P.46 - P.49

 はじめに
 MRIの優れた組織濃度分解能は,頭頸部領域においてもその有用性は明らかであるが,その質的診断には限界があり,これまでにも種々の欠点が指摘されている。その中でも特に脂肪組織の高信号による隣接臓器の低信号化や病巣範囲の信号の不明瞭化が起こることが指摘されていた。近年この問題を解決するために脂肪信号を抑制させる特殊な影像法が開発され,いくつかがすでに臨床応用されている。しかし,これらのいずれも撮像時間が数十分と長く,適応となる多数の症例に対してルーチンに行えないという問題があった。
 最近われわれは,撮像時間をさらに数分以内に短縮した高速脂肪信号抑制法[turbo-STIR(short TI inversion recovery)]をいくつかの耳下腺腫瘍症例で行う機会を得たので,その経験を述べる。

前庭性眼振検出における照度の影響について—赤外線CCDカメラとFrenzel眼鏡との比較

著者: 矢部多加夫 ,   南和延 ,   平石光俊 ,   吉本裕

ページ範囲:P.51 - P.54

 はじめに
 眼振の観察と記録には従来,裸眼下,Frenzel眼鏡下での観察,ENG記録,サーチコイル記録などが行われてきた。末梢前庭性眼振は注視によって抑制されるので,裸眼よりも凸レンズによって注視を妨げ,豆ランプの照明下に眼振を観察するFrenzel眼鏡下のほうが眼振が認められやすい。ENG記録は閉眼,暗所開眼状態の記録が可能で,Frenzel眼鏡よりも感度はよいが,角膜・網膜電位の変化とアーチファクトの混入,回旋要素の記録ができないなどの欠点をもつ。サーチコイル記録は一般的ではないが,臨床応用の際にはコンタクトレンズを使うため眼球運動時のすべりによるズレが問題になる。
 近年CCDカメラの小型軽量化に伴い赤外線CCDカメラが眼振観察に多用されつつある。赤外線CCDカメラは暗所開眼下の観察が可能で,実際の眼の動きをみているためFrenzel眼鏡よりも眼振検出の感度がよい。赤外線CCDカメラとFrenzel眼鏡の眼振検出における照度の影響について,温度刺激検査ENG記録下に検討したので報告する。

口腔咽頭に発症した尋常性天疱瘡症例

著者: 瀬藤光利 ,   水野文恵 ,   石尾健一郎 ,   阿部和也 ,   加瀬康弘 ,   水野正浩

ページ範囲:P.55 - P.58

 はじめに
 尋常性天疱瘡は弛緩性水疱が全身に多発するのを特徴とし,ステロイド治療が導入される以前は難治でしばしば死に至る疾患であった。50歳前後の男女に多発する1)。約半数の症例で口腔内に発症し,約5か月で全身に広がるため,病初期における診断と治療が重要で予後を左右する2)。今回われわれは口腔,咽頭に限局して発症し,早期の診断によりステロイドの少量投与で寛解に至った1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鼻・副鼻腔非扁平上皮癌症例の検討—扁平上皮癌症例との比較検討

著者: 萩原晃 ,   藤田博之 ,   山口太郎 ,   荒木進 ,   斉藤啓光 ,   吉田知之 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.59 - P.62

 はじめに
 鼻・副鼻腔に発生する上皮性悪性腫瘍は,扁平上皮癌が80〜90%を占めるとされ,その臨床像に関しては,これまで多くの報告がなされている1〜3)。一方,腺様嚢胞癌,腺癌などの非扁平上皮癌はその頻度は少ないが,病理組織学的に多彩な像を呈し,そのため診断,治療においても苦慮することが多いとされている。今回われわれは,当科において過去21年間に経験した鼻・副鼻腔原発の非扁平上皮癌症例を同期間の扁平上皮癌症例と比較,検討したので文献的考察を加え報告する。

鏡下咡語

医療改革の側面を考える—このままでは官僚支配は地方で支えられる

著者: 小池吉郎

ページ範囲:P.42 - P.43

 「鏡下囁語」への原稿を依頼された。これで5回目になる。3回は現役時代,退職後は2度目となる。何故,また依頼されたのか不明だが,編集委員の先生の中で小生の毒舌を書かせようと考えた人がおるらしい事,また本年4月に開校した山形県立保健医療短期大学で,学生の教科書の多くが医学書院発行のものが多い事から,編集部の人達も敢えて反対しなかったのだろうと考えたが,間違いであればお詫び申し上げる。
 大学を退官してもう3年半となり69歳の老齢となったが,退官後,山形県庁に入り,山形県の医療問題に少し関与していたが,医療短大発足と共に,知事より学長に転出して下さいと言われ,今日に至っておる。この年になると気力・体力も減退し,早く辞退したいと常に思っておる。ちなみに,山形県地方公務員では私が最年長で,知事は67歳と私より2歳若い。老害と言われるのが最も厭で自分の行動に常に注意を払っておる。もちろん非常勤の人で最年長の76歳の人が県庁内に時々出勤されておられるが,常勤職では私の年齢が最も高い。もっとも,県会議員では70歳を過ぎた人が数人おられるが,これは非常勤みたいなものだろう。

連載 耳鼻咽喉科“コツ”シリーズ 1.外来診療のコツ

①問診のコツ

著者: 持松いづみ ,   佃守

ページ範囲:P.64 - P.69

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域には多くの感覚・運動器官が含まれるため疾患も多岐にわたる。したがって訴え様々であるが,問診により診断が絞られることが少なくない。反面,重要なことを聞きそびれたために診断に手間がかかることもある。さらに外来診療においては限られた時間で要領よく問診することも重要である。外来でよく経験することであるが,こちらが「どうしましたか」ときりだすと,自分の状況を延々と話し出す患者がいる。あまり要領を得ない訴えのときは「今日は何が一番困っていらしたのですか」と言葉を変えて,主訴をはっきりさせることが大切である。この時診療録(カルテ)にはなるべく患者の言葉そのままで主訴を記載しておく。
 その後現病歴として主訴と関連のある事項を誘導し過ぎない程度に順番よく聞く。どんな主訴であれ発症の時期,発症の状況と経過(突然か,徐々か,持続性か,間歇的か),誘因などは必ず聴取する。患者から聞いた事項は整理して診療録に記載する。症状がないことでも,ない旨を記載する。記録がなければそれは「質問していない」ことに等しい。
 一方,アレルギー歴や既往歴,家族歴を聞くことも重要である。これらを聞き逃さないために,さらに時間の短縮のためにも問診表を活用するとよい(図1)。この項では,問診の要領を部位別に紹介する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?