icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科70巻13号

1998年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

咽頭扁桃炎におけるヘルペス群ウイルスの検出とその臨床所見

著者: 余田敬子 ,   荒牧元 ,   佐多徹太郎 ,   倉田毅

ページ範囲:P.872 - P.873

 われわれは,難治性咽頭扁桃炎とヘルペス群ウイルス感染症との関連に注目し,実際の症例の病変部から単純ヘルペスウイルス(HSV),EBウイルス(EBV)の検出を試み,その結果と臨床所見を比較検討した。
 当外来を受診した難治性咽頭扁桃炎症例より採取した扁桃または咽頭粘膜の擦過細胞および生検組織を材料とし,ウイルス抗原およびウイルス核酸の検索を行った。

Current Article

アブミ骨可動性測定装置の開発とその評価

著者: 暁清文

ページ範囲:P.875 - P.883

 はじめに
 鼓室形成術は,炎症や外傷などで破壊された伝音機構を中耳伝音理論に基づいて修復し聴力の改善をはかる術式である。1950年代にWullsteinらにより提唱されたこの画期的な術式は,その後の手術顕微鏡の進歩,手術器具の発達,人工耳小骨やフィブリン糊の開発などで,現在では中耳炎をはじめとする中耳疾患の基本的手術法として広く普及し定着している。しかし,鼓室形成術の手術成績は,中耳病変の種類や程度,耳管機能障害の有無,術者の技量,伝音連鎖の再建術式,耳小骨の可動性など様々な要因によって左右され,必ずしも手術によって聴力が改善するとは限らない。このうち耳小骨の可動性,とりわけアブミ骨の可動性は術後の聴力成績に影響する最も重要な因子の1つと考えられる。実際,術後に気導・骨導聴力差が改善しない原因としてアブミ骨可動性の低下が疑われる症例は多い。アブミ骨が固着していたり可動性が低下していれば,単に耳小骨連鎖を再建しても聴力の改善は期待できず,聴力向上のためにはアブミ骨手術や人工中耳埋め込み術などを要する場合もある。このように,アブミ骨可動性の問題は手術法を選択するうえで重要と考えられるが,現在のところ,これを術中に評価する方法は確立されておらず,術者が極小ピックなどでアブミ骨に触れ主観的に判断する以外にないのが実状である。このような方法では,アブミ骨の上部構造が消失しているときは評価が極めて難しい。アブミ骨可動性を客観的に評価する技術の開発が求められる所以である。
 このような観点から,筆者らは圧電セラミック素子を利用した内耳インピーダンス測定装置を試作し,主にイヌを用いた実験を行い安全性などの基礎的研究を行ってきた1,2)。最近では,さらに患者のインフォームド・コンセントを得たうえで,本装置を中耳手術中に用いてアブミ骨可動性の評価を行っている3)
 本稿では本装置の構造と動物実験成績,および臨床例における術中検査の概要を述べる。現在の装置は試作品であり改善の余地が残されているが,この分野の研究に若干でも貢献できれば幸甚である。

原著

高度の語音明瞭度低下を示した症例の側頭骨病理

著者: 竹越佐智子 ,   飯野ゆき子 ,   横山智子 ,   小山悟 ,   村上嘉彦

ページ範囲:P.885 - P.890

 はじめに
 生前の聴覚機能と内耳病態の比較病理組織学的研究は,難治な内耳疾患の解明とその臨床的対応に結びつくためにかねてからかなりの報告がある1)。老人性難聴に関しては,蝸牛の加齢による病理学的変化が単一ではなく,症例によって蝸牛における種々の部位に特徴的な病的変化を生じるところから,1) sensory presbycusis,2) neural presbycusis,3) strial presbycusis,4) coch-lear conductive presbycusisの4つの代表的な病型に分類され1),聴覚所見との関係が論じられている。
 しかし,聴覚機能検査から死後の側頭骨採取まで,かなりの時間が経過している場合が多く,得られた側頭骨病理組織像がはたして生前の聴覚機能と一致しているか疑問を抱かざるを得ない場合もある。今回われわれは死亡9日前に純音および語音明瞭度検査を施行し,老人性難聴と診断した症例の側頭骨を病理組織学的に検討する機会が得られたので,生前の聴覚機能と病態との関連性について若干の考察を加え報告する。

顔面神経麻痺を伴った側頭骨縦骨折症例の側頭骨病理

著者: 張純 ,   飯野ゆき子 ,   横山智子 ,   小山悟 ,   村上嘉彦 ,   鳥山稔

ページ範囲:P.891 - P.895

 はじめに
 側頭骨骨折は,しばしば頭部外傷に合併する疾患である。側頭骨骨折症例では,耳出血を初めとし難聴,眩暈,耳鳴りなどの内耳障害,さらには顔面神経麻痺を伴うことが知られている。また,側頭骨骨折はその骨折部位によって横骨折,縦骨折,さらにその混合型に分類されている。しかし,それらにおける詳細な病態に関する報告は少なく,Schuknecht1)による著書に9例の側頭骨骨折症例の側頭骨病理が呈示されているにすぎない。
 今回われわれは,受傷から1週間後に死亡した側頭骨縦骨折症例で,かつ顔面神経麻痺を伴った症例の側頭骨病理を検討したので報告する。

急性感音性難聴を伴ったKlipple-Trenaunay-Weber症候群の1例

著者: 武田靖志 ,   西崎和則 ,   赤木博文 ,   小川晃弘 ,   増田游 ,   緒方正敏 ,   上川康明

ページ範囲:P.896 - P.899

 はじめに
 Klipple-Trenaunay-Weber症候群(以下,KTW症候群と略)は,四肢半側の血管性母斑,軟部組織の肥大,静脈瘤を特徴とする症候群であり,ときにSturge-Weber症候群との合併がみられる1)。本症候群に脳血管病変が併発したとの報告例が散見され,多彩な神経症状の1つとして難聴を生じた報告例2)はあるが,詳細な観察は行われていない。われわれは,難聴を主症状とし,画像診断で血管性病変の関与が疑われたKTW症候群の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

頸部リンパ節に対する穿刺吸引細胞診の正診率

著者: 河田了 ,   中井茂 ,   丁剛 ,   島田剛敏 ,   四ノ宮隆 ,   馬場均 ,   鈴木敏弘 ,   樋口香里 ,   村上泰

ページ範囲:P.901 - P.905

 はじめに
 穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration biop-sy:FNA)は,安全かつ容易に検体の採取が可能な手技として有用であり,頸部腫瘤の早期診断に大いに貢献している。さらに近年は超音波断層装置の進歩とともに,超音波ガイド下のFNAも行われるようになり,FNAはさらに有用なものになった1,2)。京都府立医科大学耳鼻咽喉科では,平成2年以降,耳鼻咽喉科医自らが超音波検査を施行し,必要症例には超音波ガイド下にFNAを行っている。
 今回,超音波ガイド下,非ガイド下も含めて,頸部リンパ節に対するFNAの正診率を悪性リンパ腫,扁平上皮癌の頸部リンパ節転移,甲状腺癌の頸部リンパ節転移に分けて検討した。

下顎骨歯原性粘液線維腫の1例

著者: 中川暁子 ,   鈴木弥生 ,   戸島均 ,   高橋敦 ,   宇佐美泰徳

ページ範囲:P.907 - P.910

 はじめに
 Odontogenic myxofibroma (歯原性粘液線維腫)は主として下顎骨臼歯部に発生し,歯原性腫瘍の4〜7%を占める比較的稀な腫瘍である1,2)。その由来には諸説があるが,線維腫が分化した病変あるいは粘液変性を起こした病変と考える説が有力である。
 今回われわれは左下顎骨臼歯部に発生した歯原性粘液線維腫に対し下顎骨区域切除術を施行し,腹直筋皮弁によって再建した1例を経験したので報告する。

両側性鼻前庭嚢胞の1症例

著者: 浅田貴彦 ,   川端五十鈴 ,   長谷川寿雄 ,   墨一郎

ページ範囲:P.911 - P.914

 はじめに
 鼻前庭嚢胞は,1891年にBartualが下鼻道前端部に貯留液を含んだ球状に腫脹した嚢胞として記載したのが最初であり,本邦では1920年,久保1)が上顎粘液腺嚢胞として6例の症例を報告したのが初めである。以後,本症の発症原因が研究され,顔面に発症する先天性の嚢胞性疾患の成因からの分類が行われ,その中で本症の分類で位置の検討が行われてきた2,3)。また,臨床統計的研究の報告によると,本症は大部分は一側性であるが,稀に両側性発症の症例もみられる1,4〜9)
 われわれは最近,54歳の女性で両側性に発症した鼻前庭嚢胞の疾患を経験し,手術的に治療し得た。ここに症例の概略とともに,文献を引用しながら若干の考察を行ったので報告する。

興味ある発生過程を呈した上顎エナメル上皮腫例

著者: 佐伯忠彦 ,   上甲英生 ,   脇坂浩之 ,   栗原憲二

ページ範囲:P.919 - P.923

 はじめに
 エナメル上皮腫は歯原性腫瘍の中では比較的発生頻度が高いが,その多くは下顎に発生し上顎に発生することは少ない1)。今回われわれは,左上顎洞の濾胞性歯嚢胞として手術を行い,その7年後に同じ部位に発生したエナメル上皮腫の1例を経験したので報告する。

術後に肺血栓塞栓症を合併した甲状腺癌症例

著者: 花田武浩 ,   西元謙吾 ,   廣田常治

ページ範囲:P.925 - P.928

 はじめに
 甲状腺癌手術後に肺血栓塞栓症を合併し,その治療に難渋したが救命し得た症例を経験した。肺血栓塞栓症は,臨床経過や血行動態安定期の肺高血圧の有無により急性肺血栓塞栓症と慢性肺血栓塞栓症の2つに大別される。体深部静脈の血栓症に由来することが多く,病理解剖学的には1846年のVirchowの記載にまでさかのぼることができる1)
 本症は人種差が著明で,アメリカでは年間63万人が発症する2)。一方,本邦ではその1/50程度の発症と推測されていたが3),食事の欧米化などに伴い増加が懸念されている4)。症例の概要を述べるとともに,診断の困難な本疾患に対しての注意を広く喚起するものである。

甲状腺手術後に発生したと考えられた上皮小体機能亢進症の2例

著者: 山田弘之 ,   加藤昭彦 ,   石永一

ページ範囲:P.929 - P.933

 はじめに
 甲状腺手術,特に癌の手術の際に気管傍リンパ郭清を行う場合,術後の上皮小体機能のために術中の操作において上皮小体を可及的に温存することが求められる。手術操作が一側葉に限局した場合は,非操作側の上皮小体が無傷で温存されるため,術直後はともかく長期にわたって機能に注意を払う機会はそれほど多くない。
 上皮小体機能亢進症は高カルシウム血症による臨床症状があって初めて発見されることが多く,臨床症状が明らかでなく,腎不全などの基礎疾患や家族歴のない高カルシウム血症が発見される機会はそれほど多くはない。
 今回,甲状腺手術後に注意深く血清カルシウム値を追跡した結果,術後長期経過後に上皮小体機能亢進症が発見された2例を経験したので報告する。

鏡下咡語

三題噺—私にとってのアレルギー科

著者: 調賢哉

ページ範囲:P.916 - P.918

 1996年6月にアレルギー科の標榜が法令化され,私もアレルギー科を標榜することにした。耳鼻咽喉科専門医がアレルギー科を標榜するには各人ともいきさつや自信があってのことと思うが,私も同様であり主として上顎洞洗浄と気管支喘息の結びつきにあった。
 以下,三題噺として,そのいきさつを述べたい。

連載 耳鼻咽喉科“コツ”シリーズ 2.検査のコツ

⑥嗅覚検査のコツ

著者: 古田茂

ページ範囲:P.937 - P.941

 はじめに
 外来で嗅覚検査を行う場合,嗅覚・味覚は化学受容器を介する感覚であるため,聴覚のように物理的受容器を介さないので,聴覚や平衡覚に比べて,嗅覚機能検査の発達が乏しいことを認識する必要がある。臨床的には,嗅覚障害者は聴覚障害者に比べて,その障害の認識が低いと考えられる。また,嗅覚障害に付随する副鼻腔炎などの疾患への関心のほうが高く,嗅覚障害の治療は省りみられないという現実がある。しかし,炎症性疾患の軽症化により,残存する障害に対する関心の高まりや,生活の質の向上に伴って嗅覚の必要性が見直されていることなどにより,最近では,嗅覚障害を主訴として耳鼻咽喉科を受診する患者の増加が認められている。さらに,若年者では交通事故など頭部外傷の機会が増え,それに伴う嗅覚障害も増加している。したがって,これらの患者に対して,嗅覚機能を的確に把握することが耳鼻咽喉科医のinformed consentを果たすことができることはいうまでもない。表1にわれわれが行っている嗅覚外来の検査内容を示したが,以下それについて記載する。

--------------------

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第70巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?