文献詳細
鏡下咡語
文献概要
ここでの鏡は手術用双眼顕微鏡であり,その下には患者さんの中耳がある。囁語は昭和30年代の術者の嘆きの声であるが,今では術後患者の歓声である。
昭和39年頃,九大耳鼻科の医局長であった私は耳鼻科を辞めたいという後輩の説得に躍起となっていた。彼は言う。「耳鼻科の医者は大嘘つきだ。ちっとも治らないのに治るといって手術している。なんとか治るのは扁桃と鼻中隔の手術ぐらいで,副鼻腔炎も中耳炎も全く治らない。患者さんが可哀想だ。こんなインチキな科は辞めたい」と。私は「確かに今は手術しても耳漏は止まらないし,聴力も良くならない。だからこそ研究のしがいがあるのじゃないか。お互いに頑張って確実に治せる手術法を開発しようじゃないか」と説得した。
昭和39年頃,九大耳鼻科の医局長であった私は耳鼻科を辞めたいという後輩の説得に躍起となっていた。彼は言う。「耳鼻科の医者は大嘘つきだ。ちっとも治らないのに治るといって手術している。なんとか治るのは扁桃と鼻中隔の手術ぐらいで,副鼻腔炎も中耳炎も全く治らない。患者さんが可哀想だ。こんなインチキな科は辞めたい」と。私は「確かに今は手術しても耳漏は止まらないし,聴力も良くならない。だからこそ研究のしがいがあるのじゃないか。お互いに頑張って確実に治せる手術法を開発しようじゃないか」と説得した。
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