はじめに
老人性難聴は,加齢に伴う変性疾患で治療の方法はないというのが一般的理解であろう。治療として補聴器があるではないかという意見もある。一方で,老人性難聴に対する補聴器の適応は,あまり効果はないが他にやりようがないのでやってみようかくらいに考えている人が多いのも事実であろう。
本稿では,まず老人性難聴に対する補聴器の適応について考え,次いで聴覚リハビリテーションについて紹介する。
雑誌目次
耳鼻咽喉科・頭頸部外科70巻5号
1998年04月発行
雑誌目次
特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
1.高齢者の聴覚障害
①老人性難聴
著者: 岡本牧人
ページ範囲:P.7 - P.11
②高齢者の急性感音難聴
著者: 石田孝 , 喜多村健
ページ範囲:P.12 - P.17
はじめに
近年の高齢化社会に伴い,外来患者における高齢者の割合が増加しつつある。何歳以上を高齢者とするかは報告によって異なるが,今回は65歳以上を対象とした。与えられたテーマは「加齢以外の原因で生じる難聴」である。あまりに範囲が大きいので,今回は「急性発症する感音難聴」を中心として検討を行ってみたい。高齢者において急性感音難聴をきたす疾患は数多いが(表1),特に高齢者に特徴的なものはないように思える。したがって,同じ疾患の中で65歳未満の患者との差異が問題となる。今回は特に突発性難聴や当科外来で比較的経験する機会の多い疾患を中心にまとめてみたい。
③高齢者の慢性中耳炎
著者: 中野雄一
ページ範囲:P.18 - P.22
はじめに
高齢者は加齢による解剖学的・生理学的な変化に伴って炎症に対する反応も成人のそれとは異なった態度をとるためそれなりに注意が必要といわれるが,中耳では果たしてどうであろうか。内耳では確かに感音系の難聴,いわゆる老人性難聴が進むが,中耳では加齢とともに進行する伝音難聴の報告はない。あるとすればそれは加齢によるものではなく,鼓室硬化症など慢性中耳炎の後遺症や真珠腫性中耳炎などのゆるやかな病変進展が考えられる。
このような高齢者の慢性中耳炎について,症例の呈示とともに疾患の概説を試みた。
④高齢者の滲出性中耳炎
著者: 黒野祐一 , 鈴木正志 , 渡辺哲生 , 茂木五郎
ページ範囲:P.23 - P.26
はじめに
滲出性中耳炎は幼小児そして高齢者に好発する耳疾患であり,中耳貯留液のため長期間難聴を訴え,難治性に移行したり,いったん治癒しても再発を繰り返すことが少なくない。したがって,本疾患に対する有効な治療法を確立するために,これまで多くの基礎的,そして臨床的研究が行われ,その病態が少しずつ解明されてきた。今日では細菌感染や耳管機能障害が最も重要な成因と考えられ,実地臨床でもこうした研究成果に基づいた様々な治療がすでに行われている。しかし,その多くは小児滲出性中耳炎を対象としたものであり,高齢者あるいは成人の病態そして治療法に関する報告は少ない。
ここでは,高齢者を含めた成人滲出性中耳炎の特徴を幼小児の病態と比較することによって明らかにし,さらにその治療における留意点についてまとめてみたい。
⑤耳鳴
著者: 小川郁
ページ範囲:P.27 - P.31
はじめに
加齢により高音域から徐々に難聴(老人性難聴)が生じることは疑問のないところであるが,老人性難聴と耳鳴との関係については不明な点も少なくない。例えば,老人性耳鳴のほとんどに難聴を認めるが,老人性難聴には耳鳴を伴うものと伴わないものがあり,両側対称性の難聴でも耳鳴は一側のみの場合もある。したがって,加齢により生じる耳鳴の病態には多様性があるといえ,老人性難聴における蝸牛有毛細胞などの障害が即,耳鳴の原因になっているとはいえない。
一方,年齢的には高齢者ほど難聴の罹患率は高くなるが,耳鳴を訴えて医療機関を受診する耳鳴患者では必ずしも高齢者が多いとはいえない。このことが高齢者における耳鳴の罹患率が低いことを意味しているのか,または耳鳴の罹患率は高いが耳鳴による苦痛度が低いために医療機関を受診しないためなのかは明確ではない。しかし,高齢者の多くが耳鳴を加齢現象の1つと認識し,耳鳴にうまく適応していることも事実である。加齢により生じる様々な変化を根本的に治療する方法はないと考えられ,このことは加齢による難聴や耳鳴でも同様である。高齢者医療においては加齢変化による症状をいかにキュアするかではなく,いかにケアすべきかを考えるべきであり,老人性耳鳴の治療の原則も耳鳴に適応するように導くことであるといえる。本稿では初めに高齢者における耳鳴の実態,病態について簡単に述べ,次に本特集の主題である高齢者における耳鳴の治療とリハビリに関して,当科における耳鳴治療法を紹介する。なお,本稿では老人性難聴に伴う耳鳴など,加齢により生じたと考えられる耳鳴を老人性耳鳴(presbytinnitus)と総称する。
⑥高齢者の補聴器
著者: 細井裕司
ページ範囲:P.33 - P.37
はじめに
高齢化社会を迎え,いわゆる老人性難聴者の数はますます増加していくと考えられる。老人性難聴とは年齢以外に原因のない難聴をいうが,仮に年齢以外に原因があったとしても,手術による聴力改善や薬物治療が望めない場合は,すべて補聴器が考慮の対象になる。難聴の高齢者は,コミュニケーションの手段が制限されるため,社会から孤立しがちであるが,補聴器の適切な装用により,コミュニケーションの輪に参加できるよう,耳鼻科医の積極的な取り組みが望まれる。
2.高齢者の平衡障害
①老人性平衡障害
著者: 田口喜一郎
ページ範囲:P.39 - P.44
はじめに
老人を何歳からとするか議論の多いところであるが,一応65歳の高齢者を意味するとして,この年代にどのような平衡障害が起こり得るか考えてみたい。
一般に高齢者は運動機能が低下し,歩行時にわずか数センチの敷居や障害物に躓いたり転倒しやすくなり,転倒による大腿骨骨折のような傷害はその後のQOLに重篤な影響をもたらすことになる。21世紀には,日本人は4人に1人,若い移民により比較的若年者の多いカナダでも21%を65歳以上の高齢者が占めるようになると予測されているので,この年代の人々が健康で豊かな人生を営めるか否かは,世界的に医学の重大な関心事になりつつある。したがって老人性平衡障害に関心をもち,その予防,治療およびリハビリテーションについて研究を進める必要性を強く感じる。
②中枢性めまい
著者: 野村公寿
ページ範囲:P.45 - P.51
はじめに
老化とともに身体の平衡を保持する機能も低下してくる。安静時は特に感じなくても,起立や歩行など動作時の不安定感などが自覚されるし,また,この機能が比較的急に低下したときにめまいを感じることが多い。老化により起立時の脳循環調節機能に異常があれば,収縮期血圧のわずかな低下でも起立時にめまいや失神などを起こす。これらのことからも,老人はいわゆる中枢性めまいを起こしやすい状態にあるといえよう。
耳鼻咽喉科を受診するめまい患者のうち,明らかに中枢性とわかる器質的疾患は他科においてCT,MRIなどで診断され,非常に少ないのが現状である。しかし,それ以外のめまいに頭蓋内疾患が隠れていないかを見極めることも大切である。これらのことを踏まえて,中枢性めまいについて述べてみたい。
③加齢と揺らぎ
著者: 中野博孝 , 高橋正紘
ページ範囲:P.53 - P.57
はじめに
人は加齢とともに,日常的機能の低下を免れない。耳鼻咽喉科領域でも患者の高齢化に伴い,ふらついたり転びやすくなったという訴えが外来診療でしばしば聞かれる。高齢者では,揺らぎの増大により転倒して骨折を起こすと寝たきり状態になり,痴呆が進行したり,しばしば社会生活に復帰ができなくなってしまう。これまで様々な手法で加齢による揺らぎの変化が調べられ,その対策が報告されてきた1〜3)。しかし起立姿勢を変えて重心を調べ,その動揺の性質から加齢に伴う揺らぎを報告したものは少ない4〜5)。
ここでは起立条件を変えて揺らぎの大きさを測定し,加齢による揺らぎの性質を明らかにした。さらに高齢者の転倒予防の対策を考えた。
④めまい,平衡障害のリハビリテーション
著者: 渡辺行雄 , 浅井正嗣 , 清水勝利
ページ範囲:P.59 - P.64
はじめに
めまいの多くは一過性に経過し,症状消失後は後遺症を残さないことが多い。しかし,前庭神経炎,めまいを伴った突発性難聴,メニエール病などに対する迷路破壊手術後など種々の原因で一側の前庭機能が高度に障害されると,めまい発作とともに高度の体平衡障害が発現し,これらが軽減しても不動感,ふらつきが長期間持続する症例が少なくない。また,めまい症状は訴えないが,暗いところを歩きにくい,高所で不安定感を感ずる,片足立ちで靴下をはきにくい,などの生活上の問題点を訴える症例がときに見受けられる。
このような,一側前庭障害のめまい,平衡障害に対するリハビリテーション(以下,リハビリ)については,1946年のCawthorne1),Coocksey2)以来,具体的方法や基礎的理論に関して種々の報告がある。本稿では一側前庭障害を中心に,めまい,平衡障害に対するリハビリについての私達の経験について述べる。
なお,本誌は高齢者の特集であるが,めまい,平衡障害に対するリハビリの基本的な考え方と方法は高齢者で大きく変わるものではないので,一般的な事項について述べた後に,高齢者のリハビリの注意事項について項目を設けて説明する。
3.高齢者の鼻・副鼻腔疾患
①高齢者の鼻腔疾患
著者: 石塚洋一
ページ範囲:P.66 - P.71
はじめに
高齢者に特有な鼻腔疾患を考えてみると,まず第1に感覚器における生理的老化として嗅覚障害があげられる。嗅覚障害については別章で述べられるので,ここでは省略する。このほかには,鼻腔疾患の中に成人病と称される高齢者にみられる特徴的な疾患は見当たらない。しかし高齢者では,加齢による粘膜の変化,感染に対する抵抗力の減退,基礎的疾患の増加などから,いわゆる老化現象として考えていかなければならない鼻腔疾患もあるので,ここではそのような疾患に対する対応や治療について述べる。
②高齢者の副鼻腔疾患
著者: 藤谷哲 , 洲崎春海
ページ範囲:P.73 - P.77
はじめに
男女とも平均寿命が世界一となり,日本の人口構成は高齢者の比率が増加している。国連の扱いに準ずると65歳以上を高齢者としているようだが,高齢者といえどもまだまだ若く感じられる人が多いように見受けられる。これは各人が趣味や仕事をもち,日常生活を充実して過ごしているからではなかろうか。また高齢者の健康への意識は高く,1997年の総務庁の高齢者の健康意識調査によると,72%の人が“健康維持のために心がけていることがある”と答えている。
このように高齢者数の増加とともにquality of life (QOL)の向上,健康への関心が強くなってきていることより,高齢者が医師を受診する機会は増加することが考えられる。とくに感覚器の異常は高齢になると起こりやすいが,耳鼻咽喉科領域では,五感のうち聴覚,嗅覚,味覚を扱っていることから耳鼻咽喉科を受診することが多くなると考える。しかし治療(特に手術)においては年齢的なことを考慮して行わなくてはならない。副鼻腔疾患には慢性副鼻腔炎,副鼻腔嚢胞,副鼻腔癌など多数あるが,悪性腫瘍については他項にあるので,本稿では副鼻腔の良性疾患の代表である慢性副鼻腔炎と副鼻腔嚢胞の高齢者における治療について述べる。
4.高齢者の音声・言語障害
①高齢者音声障害の病態
著者: 福田宏之
ページ範囲:P.79 - P.84
はじめに
喉頭の発声機能は,ホルモンによる調整を受けていることは論をまたない。したがって,音声の生理的経年変化は当然ある。しかし,高齢者における経年変化の原因はホルモンによることもあると思うが,粘膜の物理学的性質の変化や気道の分泌液の量的,質的変化によることが多いと思われる1,2)。このことからまず考えられる高齢者特有の音声障害の病態は,発声機構の中における声帯粘膜の生理的能力,喉頭の潤滑作用の能力の経時的変化が通常より早くて高齢者を悩ませている場合と,通常の経時的変化にもかかわらず患者が病的と認識してしまう場合とがある。これらが高齢者だけにみられる特有の音声障害の病態である。このことと,高齢者に高頻度でみられて治療に格別の配慮が要求されるものもある。
②高齢者の失語症とリハビリテーション
著者: 藤田郁代
ページ範囲:P.85 - P.89
はじめに
現在わが国では人口の高齢化が急速に進んでおり,1995年の人口統計資料(厚生省)によると65歳以上の人口が総人口の14.5%を占めるまでになっている。これに伴い,障害をもつ高齢者の数も増加してきており,これらの人々に対するリハビリテーションおよびケアの充実は,現代社会の重要課題となっている。高齢者の障害のうち,コミュニケーション障害は周囲の者との意思疎通を困難にするため,患者および家族のQOL (生活の質)を著しく損うといえる。
脳の病変による成人の主なコミュニケーション障害には,下記の種類がある。
1)失語症
2)全般的精神機能低下および痴呆に伴うコミュニケーション障害
3)運動障害性構音障害(dysarthria)
4)聴覚障害
本稿では,このうち失語症を取り上げ,高齢者の障害の特徴とリハビリテーションについて述べることにする。
5.高齢者の嗅覚障害・味覚障害
①高齢者の嗅覚障害
著者: 三輪高喜 , 古川仭
ページ範囲:P.90 - P.94
はじめに
高齢化社会の到来とともに様々な問題が起こりつつある。耳鼻咽喉科医にとって対応すべき問題に,加齢に伴って増加する疾患,すなわち悪性腫瘍と感覚障害が挙げられる。
嗅覚障害は他の視覚障害や聴覚障害と比べて,その重要度および患者自身の生活の質の低下という点では大きな問題とはならないため,なおざりにされてきた感は否めない。しかし,高齢者のみの世帯の場合,ニオイがわからないとガス漏れや火災発生に気づかない,食品の腐敗に気づかないなど致命的な結果をもたらす可能性がある。また,近年,潤いのある質の高い生活への欲求は年々高まっており,その点からもこれまで軽視されがちであった嗅覚への関心は高まりつつある。そこで,ここでは高齢者の嗅覚障害について論じる。
②高齢者の味覚障害
著者: 池田稔 , 生井明浩
ページ範囲:P.97 - P.101
はじめに
味覚は化学物質によりレセプターが刺激される化学感覚の1つであるが,視覚や聴覚の場合と同様に加齢による影響を受け,高齢者では生理的な機能低下が生じる。また,味覚障害は高齢者に多く生じるが,高齢者における味覚障害には幾つかの特徴が指摘されている。それらの点について,以下に述べる。
6.高齢者の嚥下障害
①高齢者嚥下障害の病態
著者: 進武幹 , 津田邦良
ページ範囲:P.102 - P.106
はじめに
嚥下運動を演出する神経・筋機構は極めて複雑であり,特に咽頭期嚥下(咽頭から食道への送り込み運動)は脳幹(延髄)の嚥下中枢を中心とした中枢神経系を含めた反射系が主役をなす。このような観点から考察すると,高齢者では加齢による中枢および末梢神経系の機能低下が想像され,加えて老年期に多発する脳血管障害や変性疾患による中枢および末梢神経障害が,嚥下障害の原因となり得る。
高齢者の年齢の下限を何歳にするか定かではないが,加齢により生理機能が低下することは事実である。嚥下障害の病態を青壮年者のそれと明確に区別することはできないが,老年期になると嚥下困難を訴える患者に精密検査をすると,自覚症状はないが軽症の脳血管障害や変性疾患の初期などの器質的疾患がみつかり,これに起因する嚥下障害が診断されることが多い。
本稿では高齢者に発症する主として咽頭期嚥下の障害の病態を中心に解説する。
②老人の嚥下障害の治療とリハビリテーション
著者: 伊藤裕之 , 根本明宜 , 加藤孝邦
ページ範囲:P.107 - P.110
はじめに
老化とは,疾患あるいは病的過程によらない生理学的な不可逆的変化である。老化は,人間の機能の全てに認められる現象であり,嚥下機能も例外ではない。老人の嚥下障害には個人差が大きく,臨床的には生理的変化と病的変化とを厳密に区別することは困難であるが,日常生活に支障をきたすような嚥下障害はリハビリテーションの対象となり得る。本稿では老人の嚥下機能について概説し,神奈川リハビリテーション病院で経験した65歳以上の老人の嚥下障害の症例を呈示して,老人の嚥下障害のリハビリテーション(以下,リハと略)について考えてみたい。
7.高齢者の睡眠時呼吸障害
①高齢者睡眠時呼吸障害の病態
著者: 戸川清 , 宮崎総一郎
ページ範囲:P.113 - P.117
はじめに
睡眠時呼吸障害とは睡眠中に換気障害が生じ,その持続により生体の多くの機能に悪影響をもたらす病態である1)。本症は生涯の全期間に発症し得るが,その原因,頻度,障害部位,程度,障害の影響などは年齢によって差がある。乳幼児は気道断面積絶対値が小さいうえに,身体諸機能も発達途上にあるので,諸原因による上気道狭窄はしばしば,かつ強い換気障害を惹し,その影響は重大である。他方,高齢者は加齢に伴う臓器,組織の働き,特に予備能,回復能の低下のため,本症罹患の頻度,その影響が強まる。本稿では高齢者の睡眠時呼吸障害の病態を慨説する。
②高齢者睡眠時呼吸障害の治療
著者: 西村忠郎 , 森島夏樹
ページ範囲:P.119 - P.122
はじめに
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)は中年の男性に多いとされているが,高齢者にも多いという文献もある1〜3)。本邦では高齢化が加速し,今後さらに高齢者人口が増加する点からも,高齢者のOSAS患者の疫学,病態,診断および治療についての関心がもたれる。
ここでは高齢者OSAS患者の治療を中心に私どもの教室のデータを基にして述べる。
8.高齢者の頭頸部悪性腫瘍
①加齢と頭頸部癌
著者: 齊川雅久 , 海老原敏 , 吉積隆
ページ範囲:P.123 - P.128
はじめに
わが国の平均寿命は世界でもトップを争う水準にあるが,近年ますます増加傾向を示し,平成8年には男性77.01歳,女性83.59歳に達した。悪性腫瘍の期待発生率は高齢になるほど増加するため,当然のことながら高齢者の悪性腫瘍を診療する機会は増えてきている。特に頭頸部癌の場合には自覚症状が出やすく,また条件さえ整えば高齢者で 治療が可能であるため,高齢者での治療を実際に検討する機会が増加している。
高齢者の定義を何歳以上とするかについては諸説があるが,頭頸部癌の場合70歳代の患者を診療することは珍しいことではなくなっているように思われる。そこで本稿では高齢者を80歳以上の患者と定義し,80歳以上の頭頸部癌患者に対する治療方針の立て方や実際の治療における注意点について考察していきたい。
②高齢者の喉頭・下咽頭癌
著者: 天津睦郎 , 木西實 , 寺岡優
ページ範囲:P.129 - P.134
はじめに
近年喉頭癌では声門癌がその多くを占めるようになり,声門癌では早期に症状が出現することから早期癌が半数以上となってきた(表1)。早期癌では放射線治療や顕微鏡下喉頭微細手術による腫瘍摘出術が根治治療として確立されている。一方,喉頭癌でも進行癌や放射線治療後の再発癌に対しては,喉頭摘出術を余儀なくされる場合もある。このように喉頭摘出術を行わねばならない場合には頸部下方に気管孔を作成するとともに音声機能を喪失させることになる。このため,術後のリハビリテーションとして何らかの代用音声を獲得させる試みが行われてきた。
下咽頭癌は症状の発現が遅く進行癌が多数を占める(表2)。頸部リンパ節転移や遠隔転移の頻度が高く,頭頸部癌の中でも予後不良なものの1つであり,喉頭摘出術に加えて食物通路の再建をも行わねばならない場合もある。近年微小血管吻合による遊離組織移植が行われるようになり,食物通路の再建に種々の再建材料が用いられるようになった。また,下咽頭癌症例に対しても喉頭摘出後の音声再獲得が試みられてきた。
③高齢者の頸部悪性腫瘍
著者: 千々和圭一 , 中島格
ページ範囲:P.135 - P.140
はじめに
近年,わが国では高齢者社会が進行し,1995年の平均寿命は男性76.4歳,女性82.9歳になっている。死因別にみると悪性新生物による死亡が第1位であり,それに比例して高齢者の癌患者も増加している。当然,頭頸部悪性腫瘍患者の中で高齢者が占める割合も増加しており,そのため診断,治療,アフターケアの面で様々な問題が起こっている。
高齢者は一般に全身主要臓器の生理的機能が低下し,術前に種々の合併疾患を有する場合も少なくない。また,手術侵襲によって術後に種々の合併症を惹起しやすく,年齢に応じたQOLを考慮した治療法を選択する必要がある。さらに,入院後の術前スクリーニング検査で合併症や重複癌を発見されることもあり,そのために目的とする頭頸部癌の治療の開始が遅れ,最悪の場合は治療が不可能なこともあり得る。
また,頭頸部癌でもその発生部位によっては病理組織学的にも様々であり,臨床症状だけではなく治療成績,合併症,そして予後も異なってくるので,年齢のみではなく腫瘍の発生部位に応じた対応も必要となってくる。そこで,喉頭,下咽頭癌については他稿にゆずり,本稿ではその他の頸部悪性腫瘍についてわれわれの施設での症例を中心にその問題点,対処法などについて述べる。なお,高齢者頭頸部癌治療にあたっては,今回70歳以上をもって高齢者と定義した。
④高齢者の頭頸部癌症例における多重癌
著者: 堀内正敏
ページ範囲:P.141 - P.145
はじめに
耳鼻咽喉科臨床における頭頸部癌症例の占める率は,癌専門でない総合病院(大学病院,公立病院)では極めて低い。年間の初診患者数の1%程度である。しかもその中で多重癌を発症し治療を受ける症例は,そのまた15%程度(全年間症例の0.15%)である。70歳以上を高齢者とすると,1年間に総合病院1施設で診察を受ける高齢者の頭頸部癌症例は15〜25人であり,その中の多重癌症例は年間3〜6人であると推定される。臨床統計の結果のみをみるならば,高齢者の頭頸部癌症例における多重癌は極めて稀な課題であるようにみえる。しかし最近の癌治療の現況の報告は,治癒可能な癌症例が増加しているとともに,治癒可能な癌症例における多重癌の発症が急激に増加していることを示している。多重癌は癌治療の新たな課題として対策が必要となってきた。
この論文の目的は,頭頸部癌症例の多重癌治療を行う場合の年齢に関連した臨床的な問題点を明らかにすることである。はじめに頭頸部癌症例における多重癌の特徴を述べ,次いで具体的な高齢者の多重癌症例の呈示を行い,それぞれにおける問題点を検討することとする。
9.高齢者の薬物療法の一般的注意
①高齢者の薬物療法の問題点
著者: 小澤利男
ページ範囲:P.147 - P.150
I.高齢者の特徴
高齢者の薬物療法を考える場合には,まず高齢者の特徴をわきまえることが大切である(表1)1)。老化とは生体機能の低下であり,65歳以上で急速に進行する。老化は生理的事象であって疾病ではないが,個人差も大きく,診療の際に配慮が必要である。
また,高齢者では様々な慢性疾患が多発する。高血圧,糖尿病,パーキンソン病,痴呆,骨粗鬆症,腎不全,脳血管障害など,ほとんどすべての臓器に加齢に伴う何らかの疾患がみられる。これは老化のような生理的事象ではないが,老年との関係が深いため病的老化とも呼称される。
③循環器用薬(降圧薬,抗狭心症薬,抗不整脈薬)
著者: 西永正典 , 小澤利男
ページ範囲:P.155 - P.159
I.降圧薬(表1)1)
近年,高齢者高血圧に対する降圧薬の効果について,欧米の大規模試験の結果が相次いで報告され,その有用性が認められた。すなわち,拡張期高血圧では,脳卒中をはじめとして心・脳血管障害の発生が抑制され,さらに高齢者に多い収縮期高血圧に対しても,降圧薬投与によって心・脳血管障害の発生が抑えられた。このことから,高齢高血圧患者に対しても,若中年患者と同様に降圧薬の使用の意義がある。
高齢者で第1選択として用いられる降圧薬は,降圧利尿薬,カルシウム拮抗薬,ACE阻害薬,β遮断薬である。どの降圧薬を用いるかは,患者の年齢や合併症の有無などにより決められる。ただし,高齢者では利尿薬やカルシウム拮抗薬は,ACE阻害薬,β遮断薬と比べて降圧効果が若干大きいともいわれる2)。
④脳循環代謝改善薬
著者: 大友英一
ページ範囲:P.160 - P.163
はじめに
脳循環代謝改善薬とは,脳の血流を増加させ,脳代謝を盛んにする薬剤の総称で,脳の血流改善をもたらす脳循環改善薬(かつては脳血管拡張剤と呼ばれた)と脳代謝を亢進させる脳代謝改善薬(かつては脳代謝賦活剤と呼ばれた)に大別されるが,両者のいずれとも明確に分類できず,両者の作用をもつものもある。
⑤鎮痛消炎薬
著者: 入交昭一郎
ページ範囲:P.164 - P.167
はじめに
耳鼻咽喉科・頭頸部領域での疾患は,構造上,機能上から感染性,炎症性疾患が主であり,高齢者ではこれに悪性腫瘍が加わる。前者では発熱,疼痛,腫脹などの症状に加えて分泌物や出血,細菌による化膿巣などが急性,慢性に認められる。したがって,抗菌薬に加えて副腎皮質ステロイド薬,非ステロイド抗炎症薬,消炎酵素薬などの各種の鎮痛消炎薬が経口,注射,外用薬として用いられている。一方後者では,疼痛を伴うような場合を除いて鎮痛消炎薬は通常用いない。いずれの場合でも,この領域におけるこれらの薬剤は対症療法薬であり原疾患の治療薬にはならない。
⑥高齢者の抗菌薬の使用について
著者: 伊藤博隆 , 馬場駿吉
ページ範囲:P.169 - P.172
はじめに
現在,外来患者や入院患者に高齢者の占める割合が多くなりつつある。今後その傾向は著しくなり,来る21世紀は高齢者の時代と言われている。高齢者では加齢によって生理機能,免疫機能の低下がみられ感染症に罹患しやすくなっている。つまり,上気道では線毛機能が低下したり,また免疫機能の低下による抗体産生能,免疫応答も低下してくる。また,感染が起こっても各種の状況(半身不随,老人性痴呆など)によって,感染が見落とされることもある。また,高齢者には後述するような種々の感染症の特異性がある。したがって,感染に対する対応が遅れることも注意しなければならない。耳鼻科領域でも高齢者の治療に直面することも多くなったにもかかわらず,投薬量について小児ほど高齢者に対して関心がもたれていなかった。近年,高齢者と薬剤の関係について注目され,最近発売された薬剤には高齢者についての薬用量について記載がされるようになってきた。しかし,過去に発売されたものには研究論文はあるものの,データーとしてまとまったものはないのが現状である。われわれ耳鼻科医にも今後高齢者の実態を把握して感染症の治療に対応していくことが求められている。
⑦代謝性医薬品(ホルモン剤,糖尿病薬など)
著者: 田中廣壽
ページ範囲:P.173 - P.177
はじめに
高齢者の薬物療法に際し,副作用の発生頻度を増加させる因子1)を表1に掲げた。本稿では副腎皮質ホルモン,糖尿病薬などの代謝性医薬品の使用に際しての一般的注意を,これらの因子を考慮して可能な限り具体的にまとめてみたい。
⑧高齢者における抗癌剤治療
著者: 関根郁夫 , 西條長宏
ページ範囲:P.179 - P.183
はじめに
人口の高齢化によって癌患者のうちに占める高齢者の割合は増加しており,これらの患者に対する治療戦略を確立することは,現在の臨床腫瘍学における最も大切な主題の1つである。一般に高齢者では抗癌剤による毒性が強く現れ,治療効果も少ないと考えられている1)。しかし,実際に高齢者で行われた臨床研究で証明されたものは少なく,加齢による生理学的変化と一般成人におけるデータを結びつけて,高齢者の場合を推論していることが多い。また抗癌剤の毒性は,使う抗癌剤の種類と組み合わせ,そして毒性を評価する標的臓器によってそれぞれ異なるものであるために,一般論としては成立せず,1つ1つの項目を慎重に検討しなければならない。
10.高齢者の麻酔管理
①高齢者の手術と麻酔の問題点
著者: 宮崎東洋 , 岡崎敦
ページ範囲:P.184 - P.188
はじめに
通常,患者がいかに高齢であろうと,その年齢自体が手術,麻酔の制限をする理由にはならない。
ただし,生活年齢と肉体年齢の隔たりは若年者では小さく,個人差も小さいが,老齢になるにつれて大きくなるのが常であるし,個人差が大きい。したがって,高齢者の麻酔を行う場合,年齢が幾つであるかを考えるよりは,患者個人個人の肉体年齢を考慮に入れることのほうが大切である。
必然的に,耳鼻咽喉科領域疾患における高齢者の麻酔では,その領域の手術の特殊性に高齢者のもつ特殊性を合わせて考える必要がある。
11.高齢者の耳鼻咽喉科疾患と精神疾患
①耳鼻咽喉科疾患とうつ病
著者: 大須賀伸佳
ページ範囲:P.189 - P.192
はじめに
現代は「うつの時代」ともいわれ,身体各科を受診する患者の中にも抑うつ症状を呈する患者が増加してきているという。
ところで,従来躁うつ病と呼ばれていたものは,最近では気分障害と呼ばれるカテゴリーの中に含められ,一般的に用いられる「うつ病」の意味する範囲もそれに伴って変化してきている。
②耳鼻咽喉科疾患とせん妄・意識障害
著者: 酒井明夫
ページ範囲:P.193 - P.196
I.せん妄と他の意識障害
意識障害には,意識の曇りの程度に関して様々な分類があるが,精神医学的に重要と考えられるのは,せん妄,もうろう状態,夢幻状態,アメンチアなど,軽度の意識混濁もしくは意識変容を土台として行動異常や精神症状を呈する複雑な病態である。こうした病態は,いわゆる症状精神病の中核であり,精神科医へのコンサルトにつながることが多い。まずせん妄(delirium)は,意識混濁に加えて錯覚,幻覚,妄想などの知覚・思考障害に精神運動興奮が併存するもので,患者の身体的治療の継続を困難にして予後に影響を与えるだけでなく,病棟内では他患に対する影響をも考慮しなければならない深刻な病態である。もうろう状態(twilight state)は,簡単にいえば意識野の狭窄であり,ヒステリーやてんかんでみられるが,夢遊症もしくは夢中遊行(somnambulism)と呼ばれるものもこれに含まれる。夢幻状態(oneiroid state)というのは,現実と空想の区別が困難になってそれらが混淆した状態であり,伝統的には非定型精神病の錯乱状態に関連づけられてきたものである。最後のアメンチア(amentia)は,軽い意識混濁を背景として思考のまとまりが悪くなっていて,当人自身が困惑している状態である。
③耳鼻咽喉科疾患と痴呆
著者: 高内茂
ページ範囲:P.197 - P.200
はじめに
高齢人口の増加とともに,痴呆は急速に重要性を増しつつある社会問題の1つとして認識されるようになった。痴呆を伴う老人はもはや例外的な存在ではなく,精神科,神経内科,老年科など痴呆症を専門に扱う診療科のみならず,医療のあらゆる場面で出会うようになっており,痴呆に関する様々な問題に直面する可能性は医療関係者全体に及んできている。
本稿では耳鼻科領域と痴呆との関連について述べるにあたって,最初に痴呆症状およびその主な背景疾患の概略を解説し,聴覚障害と認知障害に関する最近の研究の動向ならびにアルツハイマー病(AD)の病因に関する鼻粘膜障害仮説を紹介したい。
12.高齢者の免疫・アレルギー性疾患
①老化と免疫
著者: 山中昇
ページ範囲:P.202 - P.206
はじめに
多くの生物には固有の寿命があり,生物の発生・成長過程と同様に,寿命は個々の生物固有の長さにプログラムされているものと考えられている。このプログラムされた寿命は細胞レベルでも存在しており,多細胞生物の生命を維持するうえで極めて重要なシステムであることが明らかになってきた。すなわち,細胞が過剰になったり,何らかの異常が生じると個々の細胞が自己破壊(自殺)することにより,生体の恒常性が維持されている。この細胞の自殺はアポトーシスあるいはプログラム死と呼ばれている。いい換えれば,生命は死によって支えられているともいえる。
一般に生体は老化すると,免疫系,神経系,内分泌系などの機能が低下すると考えられている。このような老化のメカニズムはまだ解明されていないが,活性酸素を老化源として老化が進行するとしたHarman D (1956)の説,“Free Radical Theory of Aging”が有力視されている。すなわち,体内で形成されてスカベンジャーで処理しきれなかったわずかなフリーラジカルが長時間にわたって細胞や分子を障害し,老化が進行するとする説である。生物は進化の過程において酸素を活用するとともに酸素のもつ毒性(活性酸素)に対する防御システムを発展させてきたが,このような毒性物質による細胞・組織障害の発現機構と老化の発現機構との間には密接な関係があると考えられている。すなわち,一般的に寿命の短い生物は毒性物質に対する感受性が高いことが知られている。一方,生体防御においてはこの活性酸素が殺菌や異物処理に重要な役割を果たしており,活性酸素は生体内で両刃の剣の役割を果たしていると考えられる。
生体防御機構は大きく外界からの異物侵入に対する防御システムと,内部環境の恒常性の維持システムにより構成されている。現在までに生体防御能の加齢変化として報告されているものとしては,1)貧食機能の主役を担う好中球においては,加齢に伴って活性酸素生成機構の障害がみられるばかりでなく,生成された活性酸素を処理する活性酸素消去機構にも障害があることが報告されている。
②高齢者アレルギー性鼻炎の治療
著者: 吉田博一 , 馬場廣太郎
ページ範囲:P.207 - P.211
はじめに
アレルギー性鼻炎は,小児および若年成人に多いことから,この年齢層を対象として様々な調査,研究がなされるのが普通である。しかし,高齢者では有病率は低率ではあるが,高齢者人口の増加に伴う患者数の増加や,高齢になってからの発症者もあることが確認されるようになり,高齢者のアレルギー性鼻炎についても,着目する必要があると思われる。
そこで本稿では,治療,特にその注意点について述べるとともに疫学的検討も含めて概説する。
③高齢者の腫瘍免疫
著者: 佃守
ページ範囲:P.212 - P.217
はじめに
頭頸部悪性腫瘍は癌種が多く,中でも扁平上皮癌が90%近くを占め,Stage Ⅲ,Ⅳの進行癌が半数以上である。年齢別にみると男女ともに60歳代に最も発生頻度が高く(図1),さらに70歳代以上の高齢者が30%近くを占める。Smithら1)は1990年の米国での死亡症例を対象に死因を統計学的に検討している。すなわち,50〜100歳以上の年齢を5歳でとに分けて検索し,加齢が進むにつれて50〜69歳までは癌死の頻度がほぼ40%,80歳は20%,100歳以上になると4%以下になることを報告している(図2)。この結果から超高齢者では発癌を抑制するような遺伝子的背景を推察している。
癌の発生には大きく分けると遺伝的素因と環境素因に大別される。遺伝的素因もいわゆる家族性の遺伝子欠損などの明らかな遺伝子素因を除けば環境因子,特に長期の喫煙,アルコール摂取,食習慣などによって遺伝子異常が誘導される。マウスの免疫能は系の遺伝子素因によって強く規定される。しかしヒトの場合は,もともとの遺伝子素因による免疫能が環境因子によって加齢とともに影響を受ける。一方,個人差はあるものの一般的には加齢によって免疫能が低下することが知られている(immune senesence)。最近の考え方では免疫系は神経系,内分泌系と相互に関連性をもちながら生体の恒常性の維持に重要な役割をもつことが判明している(表1)2)。生体の恒常性を保つ免疫能の低下は高齢者の発癌,易感染性に深く関わる。しかし,老年者の末梢血リンパ球数,皮内反応,PHA幼若比率と死亡率を検討した報告があるが3),死亡率また一部感染症との相関性はあるものの悪性腫瘍との明らかな関連性は見出されていない。これは,末梢血リンパ球数などの簡単な免疫能のみの評価では,十分に高齢者の免疫能を把握できないことによる。免疫担当細胞による自己腫瘍細胞に対する直接の抗腫瘍性,抗腫瘍性に働く細胞の分化,増殖誘導能さらに抗腫瘍性を高めるサイトカインの産生能などを中心に総合的に評価しないと(図3,表2),生体の免疫能は的確に把握できない。現状では生体の真の抗腫瘍性免疫能の評価は不十分で,より簡便で確実な免疫能評価法の開発が待望されている。進行癌患者の免疫能低下の事実としては,末梢血リンパ球数とCD4陽性細胞数の減少,CD4/8比の低下,また抗腫瘍性細胞の免疫能賦活に作用するInterleukin-2(IL-2),Interferon-γ(IFN-γ)などのサイトカイン産生能の低下,さらに免疫担当細胞の細胞障害性の低下が認められている。今回高齢者の免疫能について,特に抗腫瘍免疫を担うT細胞を中心に概説する。
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特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
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特集 特殊疾患への対応
83巻3号(2011年3月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―疼痛への対応
83巻2号(2011年2月発行)
特集 診療所における工夫―私はこうしている
83巻1号(2011年1月発行)
特集 めまい―最新のトピックス
82巻13号(2010年12月発行)
特集 耳鼻咽喉科における心因性疾患とその対応
82巻12号(2010年11月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―書類作成と留意点
82巻11号(2010年10月発行)
特集 表在癌の新しい対応
82巻10号(2010年9月発行)
特集 好酸球関連の病変
82巻9号(2010年8月発行)
82巻8号(2010年7月発行)
82巻7号(2010年6月発行)
特集 耳鼻咽喉科領域と感染症
82巻6号(2010年5月発行)
特集 耳鼻咽喉科領域の術後機能評価
82巻5号(2010年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の検査マニュアル―方法・結果とその解釈
82巻4号(2010年4月発行)
82巻3号(2010年3月発行)
特集 診療ガイドライン・診療の手引き概要
82巻2号(2010年2月発行)
82巻1号(2010年1月発行)
特集 急性感音難聴の取り扱い
81巻13号(2009年12月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―知っておきたい臨床解剖
81巻12号(2009年11月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―外来手技とインシデント・アクシデント
81巻11号(2009年10月発行)
特集 聴覚障害を生じる薬物
81巻10号(2009年9月発行)
特集 放射線治療における有害事象
81巻9号(2009年8月発行)
81巻8号(2009年7月発行)
81巻7号(2009年6月発行)
特集 最近の頭頸部癌治療
81巻6号(2009年5月発行)
特集 リスクマネジメント
81巻5号(2009年4月発行)
特集 頭頸部再建外科―日常臨床から理論まで
81巻4号(2009年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科とチーム医療の実践(3)
81巻3号(2009年3月発行)
特集 診療所で必要な救急処置
81巻2号(2009年2月発行)
81巻1号(2009年1月発行)
特集 耳鼻咽喉科とチーム医療の実践(2)糖尿病合併者のステロイド療法
80巻13号(2008年12月発行)
特集 聴神経腫瘍の治療:症例呈示と治療原則
80巻12号(2008年11月発行)
特集 耳鼻咽喉科とチーム医療の実践(1)小児難聴児への対応
80巻11号(2008年10月発行)
80巻10号(2008年9月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―疾患とその処方例
80巻9号(2008年8月発行)
80巻8号(2008年7月発行)
特集 嚥下障害手術のコツ
80巻7号(2008年6月発行)
80巻6号(2008年5月発行)
80巻5号(2008年4月発行)
特集 オフィスサージャリー・ショートステイサージャリー
80巻4号(2008年4月発行)
特集 女性と耳鼻咽喉科疾患
80巻3号(2008年3月発行)
80巻2号(2008年2月発行)
80巻1号(2008年1月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―症例報告発表・論文執筆のコツ,注意点
79巻13号(2007年12月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―外来処置,手術のコツ,注意点
79巻12号(2007年11月発行)
79巻11号(2007年10月発行)
特集 地域医療との共生―術後処置の依頼と紹介
79巻10号(2007年9月発行)
79巻9号(2007年8月発行)
特集 耳鼻咽喉科関連の資格等の取得について
79巻8号(2007年7月発行)
79巻7号(2007年6月発行)
特集 新生児聴覚検診の役割
79巻6号(2007年5月発行)
79巻5号(2007年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に
79巻4号(2007年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科領域の真菌感染の治療
79巻3号(2007年3月発行)
79巻2号(2007年2月発行)
特集 抗菌薬のファースト・チョイス
79巻1号(2007年1月発行)
特集 頭頸部領域の温度外傷・化学的腐食の取り扱い
78巻13号(2006年12月発行)
特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―手術手技とコツ
78巻12号(2006年11月発行)
78巻11号(2006年10月発行)
特集 スポーツと耳鼻咽喉科疾患
78巻10号(2006年9月発行)
78巻9号(2006年8月発行)
特集 耳鼻咽喉科疾患と高齢者(65歳以上)への対応
78巻8号(2006年7月発行)
78巻7号(2006年6月発行)
特集 知っておきたい耳鼻咽喉科疾患の病理
78巻6号(2006年5月発行)
78巻5号(2006年4月発行)
78巻4号(2006年4月発行)
特集 甲状腺疾患の診断と治療
78巻3号(2006年3月発行)
特集 突発性難聴の今
78巻2号(2006年2月発行)
特集 耳鼻咽喉科領域の疼痛
78巻1号(2006年1月発行)
特集 耳鼻咽喉科とウイルス
77巻13号(2005年12月発行)
77巻12号(2005年11月発行)
特集 耳管機能検査
77巻11号(2005年10月発行)
特集 副鼻腔炎
77巻10号(2005年9月発行)
特集 嗄声の診断と治療
77巻9号(2005年8月発行)
77巻8号(2005年7月発行)
特集 頸部リンパ節腫脹
77巻7号(2005年6月発行)
特集 補聴器に関する最近の変化
77巻6号(2005年5月発行)
特集 囊胞性疾患
77巻5号(2005年4月発行)
特集 聴力改善手術
77巻4号(2005年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科領域の異物とその摘出法
77巻3号(2005年3月発行)
特集 味覚・嗅覚障害
77巻2号(2005年2月発行)
77巻1号(2005年1月発行)
特集 顔面神経麻痺
76巻13号(2004年12月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の癌化学療法レジメン
76巻12号(2004年11月発行)
76巻11号(2004年10月発行)
76巻10号(2004年9月発行)
特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている―
76巻9号(2004年8月発行)
特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている―
76巻8号(2004年7月発行)
特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている―
76巻7号(2004年6月発行)
特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている―
76巻6号(2004年5月発行)
特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている―
76巻5号(2004年4月発行)
特集 上気道アレルギーを診る
76巻4号(2004年4月発行)
特集 画像・動画の保存とプレゼンテーション
76巻3号(2004年3月発行)
特集 好酸球性中耳炎
76巻2号(2004年2月発行)
特集 人工聴覚手術の現況
76巻1号(2004年1月発行)
75巻13号(2003年12月発行)
特集 電子カルテの現在と将来
75巻12号(2003年11月発行)
75巻11号(2003年10月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科におけるナビゲーション手術
75巻10号(2003年9月発行)
75巻9号(2003年8月発行)
特集 いびきの治療
75巻8号(2003年7月発行)
特集 耳鼻咽喉科領域の皮膚・粘膜疾患
75巻7号(2003年6月発行)
75巻6号(2003年5月発行)
75巻5号(2003年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の機能検査―何がどこまでわかるか―
75巻4号(2003年4月発行)
75巻3号(2003年3月発行)
75巻2号(2003年2月発行)
特集 薬物による聴覚障害
75巻1号(2003年1月発行)
74巻13号(2002年12月発行)
特集 身体障害者福祉法と耳鼻咽喉科
74巻12号(2002年11月発行)
特集 急性感音難聴
74巻11号(2002年10月発行)
特集 小児の人工内耳
74巻10号(2002年9月発行)
74巻9号(2002年8月発行)
特集 難治性副鼻腔炎の治療
74巻8号(2002年7月発行)
74巻7号(2002年6月発行)
74巻6号(2002年5月発行)
特集 私のクリニック
74巻5号(2002年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科における手術の危険度
74巻4号(2002年4月発行)
74巻3号(2002年3月発行)
74巻2号(2002年2月発行)
トピックス めまいの治療
74巻1号(2002年1月発行)
トピックス 院内感染の現況とその取り扱い
73巻13号(2001年12月発行)
73巻12号(2001年11月発行)
トピックス 心身医学と耳鼻咽喉科
73巻11号(2001年10月発行)
73巻10号(2001年9月発行)
トピックス 嚥下障害
73巻9号(2001年8月発行)
73巻8号(2001年7月発行)
73巻7号(2001年6月発行)
73巻6号(2001年5月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科・頭頸部外科と遺伝子解析
73巻5号(2001年4月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の新しい器械,器具
73巻4号(2001年4月発行)
トピックス クリニカルパスとその周辺
73巻3号(2001年3月発行)
73巻2号(2001年2月発行)
トピックス 今話題の花粉症
73巻1号(2001年1月発行)
72巻13号(2000年12月発行)
72巻12号(2000年11月発行)
トピックス 補聴器とその適合
72巻11号(2000年10月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域のレーザー治療—その適応と成績
72巻10号(2000年9月発行)
72巻9号(2000年8月発行)
72巻8号(2000年7月発行)
72巻7号(2000年6月発行)
72巻6号(2000年5月発行)
72巻5号(2000年4月発行)
特集 全身疾患と耳鼻咽喉科
72巻4号(2000年4月発行)
72巻3号(2000年3月発行)
トピックス 結核と耳鼻咽喉科
72巻2号(2000年2月発行)
72巻1号(2000年1月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科と奇形
71巻13号(1999年12月発行)
71巻12号(1999年11月発行)
トピックス ことばの障害と耳鼻咽喉科
71巻11号(1999年10月発行)
71巻10号(1999年9月発行)
トピックス めまい—私の考え方
71巻9号(1999年8月発行)
71巻8号(1999年7月発行)
71巻7号(1999年6月発行)
71巻6号(1999年5月発行)
71巻5号(1999年4月発行)
特集 再建外科
71巻4号(1999年4月発行)
71巻3号(1999年3月発行)
71巻2号(1999年2月発行)
71巻1号(1999年1月発行)
70巻13号(1998年12月発行)
70巻12号(1998年11月発行)
トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その3)
70巻11号(1998年10月発行)
70巻10号(1998年9月発行)
トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その2)
70巻9号(1998年8月発行)
70巻8号(1998年7月発行)
トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その1)
70巻7号(1998年6月発行)
70巻6号(1998年5月発行)
トピックス ベル麻痺の診断と治療—最近の知見
70巻5号(1998年4月発行)
特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
70巻4号(1998年4月発行)
70巻3号(1998年3月発行)
70巻2号(1998年2月発行)
70巻1号(1998年1月発行)
69巻13号(1997年12月発行)
69巻12号(1997年11月発行)
トピックス 頭頸部領域の乳頭腫—その基礎と臨床
69巻11号(1997年10月発行)
69巻10号(1997年9月発行)
トピックス 鼻アレルギーの診断と治療—最近の知見
69巻9号(1997年8月発行)
69巻8号(1997年7月発行)
69巻7号(1997年6月発行)
69巻6号(1997年5月発行)
特集 外傷と耳鼻咽喉科
69巻5号(1997年5月発行)
69巻4号(1997年4月発行)
69巻3号(1997年3月発行)
69巻2号(1997年2月発行)
トピックス 口腔疾患の診断と治療
69巻1号(1997年1月発行)
68巻13号(1996年12月発行)
68巻12号(1996年11月発行)
68巻11号(1996年10月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術マニュアル—私の方法
68巻10号(1996年10月発行)
68巻9号(1996年9月発行)
68巻8号(1996年8月発行)
トピックス 聴神経腫瘍
68巻7号(1996年7月発行)
68巻6号(1996年6月発行)
68巻5号(1996年5月発行)
68巻4号(1996年4月発行)
68巻3号(1996年3月発行)
68巻2号(1996年2月発行)
68巻1号(1996年1月発行)
67巻13号(1995年12月発行)
67巻11号(1995年11月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の画像診断
67巻12号(1995年11月発行)
67巻10号(1995年10月発行)
トピックス ウェゲナー肉芽腫症の診断と治療
67巻9号(1995年9月発行)
67巻8号(1995年8月発行)
67巻7号(1995年7月発行)
トピックス 下咽頭・頸部食道癌の治療とその成績
67巻6号(1995年6月発行)
67巻5号(1995年5月発行)
67巻4号(1995年4月発行)
67巻3号(1995年3月発行)
トピックス 日帰り手術
67巻2号(1995年2月発行)
67巻1号(1995年1月発行)
トピックス 耳鼻咽喉・頭頸部領域のスポーツ外傷
66巻13号(1994年12月発行)
66巻12号(1994年11月発行)
トピックス メディカルフォトテクニック
66巻11号(1994年10月発行)
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域 腫脹の診断
66巻10号(1994年10月発行)
66巻9号(1994年9月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科領域の真菌症—診断と治療
66巻8号(1994年8月発行)
66巻7号(1994年7月発行)
66巻6号(1994年6月発行)
トピックス 耳管機能とその評価
66巻5号(1994年5月発行)
66巻4号(1994年4月発行)
66巻3号(1994年3月発行)
トピックス 頭頸部領域の悪性リンパ腫
66巻2号(1994年2月発行)
66巻1号(1994年1月発行)
65巻13号(1993年12月発行)
65巻12号(1993年11月発行)
65巻11号(1993年10月発行)
特集 耳鼻咽喉科の機能検査マニュアル
65巻10号(1993年10月発行)
65巻9号(1993年9月発行)
65巻8号(1993年8月発行)
65巻7号(1993年7月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科とリハビリテーション
65巻6号(1993年6月発行)
65巻5号(1993年5月発行)
65巻4号(1993年4月発行)
65巻3号(1993年3月発行)
トピックス 耳鼻咽喉頭頸部領域の自己免疫疾患—最近の知見
65巻2号(1993年2月発行)
65巻1号(1993年1月発行)
トピックス 環境と耳鼻咽喉科
64巻13号(1992年12月発行)
トピックス メニエール病の診断と治療
64巻12号(1992年11月発行)
64巻10号(1992年10月発行)
トピックス 内視鏡による診療・最近の進歩
64巻11号(1992年10月発行)
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 症候群事典
64巻9号(1992年9月発行)
64巻8号(1992年8月発行)
トピックス 耳小骨連鎖再建術
64巻7号(1992年7月発行)
64巻6号(1992年6月発行)
64巻5号(1992年5月発行)
トピックス 補聴器の処方
64巻4号(1992年4月発行)
トピックス 頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診
64巻3号(1992年3月発行)
64巻2号(1992年2月発行)
64巻1号(1992年1月発行)
トピックス 副鼻腔のエアロゾル療法
63巻13号(1991年12月発行)
63巻12号(1991年11月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科領域の異物とその除去法
63巻11号(1991年11月発行)
特集 外来診療マニュアル—私はこうしている
63巻10号(1991年10月発行)
63巻9号(1991年9月発行)
63巻8号(1991年8月発行)
トピックス 舌癌の治療
63巻7号(1991年7月発行)
63巻6号(1991年6月発行)
トピックス 耳鼻咽喉科医のための甲状腺疾患
63巻5号(1991年5月発行)
63巻4号(1991年4月発行)
63巻3号(1991年3月発行)
トピックス 高齢者と耳鼻咽喉科・愁訴と対応
63巻2号(1991年2月発行)
63巻1号(1991年1月発行)
62巻13号(1990年12月発行)
トピックス 鼻茸
62巻12号(1990年11月発行)
トピックス 聴力改善手術
62巻11号(1990年10月発行)
トピックス 心因性難聴
62巻10号(1990年10月発行)
症例特集 頭頸部腫瘍
62巻9号(1990年9月発行)
トピックス 嗅覚障害
62巻8号(1990年8月発行)
トピックス 小児副鼻腔炎
62巻7号(1990年7月発行)
トピックス 顔面神経麻痺
62巻6号(1990年6月発行)
トピックス 人工中耳・人工内耳
62巻5号(1990年5月発行)
トピックス 嚥下障害
62巻4号(1990年4月発行)
トピックス ダニとアレルギー
62巻3号(1990年3月発行)
トピックス 頭頸部癌に対する制癌剤の選択
62巻2号(1990年2月発行)
トピックス 音声外科
62巻1号(1990年1月発行)
トピックス 耳音響放射