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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科70巻5号

1998年04月発行

文献概要

特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき 1.高齢者の聴覚障害

⑤耳鳴

著者: 小川郁1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.27 - P.31

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 はじめに
 加齢により高音域から徐々に難聴(老人性難聴)が生じることは疑問のないところであるが,老人性難聴と耳鳴との関係については不明な点も少なくない。例えば,老人性耳鳴のほとんどに難聴を認めるが,老人性難聴には耳鳴を伴うものと伴わないものがあり,両側対称性の難聴でも耳鳴は一側のみの場合もある。したがって,加齢により生じる耳鳴の病態には多様性があるといえ,老人性難聴における蝸牛有毛細胞などの障害が即,耳鳴の原因になっているとはいえない。
 一方,年齢的には高齢者ほど難聴の罹患率は高くなるが,耳鳴を訴えて医療機関を受診する耳鳴患者では必ずしも高齢者が多いとはいえない。このことが高齢者における耳鳴の罹患率が低いことを意味しているのか,または耳鳴の罹患率は高いが耳鳴による苦痛度が低いために医療機関を受診しないためなのかは明確ではない。しかし,高齢者の多くが耳鳴を加齢現象の1つと認識し,耳鳴にうまく適応していることも事実である。加齢により生じる様々な変化を根本的に治療する方法はないと考えられ,このことは加齢による難聴や耳鳴でも同様である。高齢者医療においては加齢変化による症状をいかにキュアするかではなく,いかにケアすべきかを考えるべきであり,老人性耳鳴の治療の原則も耳鳴に適応するように導くことであるといえる。本稿では初めに高齢者における耳鳴の実態,病態について簡単に述べ,次に本特集の主題である高齢者における耳鳴の治療とリハビリに関して,当科における耳鳴治療法を紹介する。なお,本稿では老人性難聴に伴う耳鳴など,加齢により生じたと考えられる耳鳴を老人性耳鳴(presbytinnitus)と総称する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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