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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科70巻7号

1998年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

最近経験したヘルペス咽頭炎症例

著者: 望月高行 ,   石井豊太 ,   鈴木徹

ページ範囲:P.386 - P.387

 近年,性器ヘルペスの増加とともに口腔・咽頭の性感染症(STD)としてherpes simplex virus(HSV)感染症が報告されてきた。われわれ耳鼻咽喉科医は,常に咽頭を感染源とするSTDを考慮し日常診療にあたる必要がある。確定診断はウイルス分離やペア血清抗体価上昇の確認ではあるが,臨床所見から判断し早期に適切な治療を開始することが重要である。
 表1に当科で経験したヘルペス咽喉頭炎7例を呈示した。全例とも高熱,全身倦怠感,経口摂取困難脱水症状で入院加療を要した。また,他院で抗生剤の内服治療を1週間ほど受けたが,改善しないため来院した。

Current Article

頭頸部癌集学治療と抗癌剤感受性試験—歴史と展望

著者: 中島格

ページ範囲:P.389 - P.399

 はじめに
 頭頸部悪性腫瘍の治療では,本来の目的である生存率向上に加えて,治療後に日常生活に復帰するためには構音や嚥下機能などの回復が必要であり,他臓器の治療にはない特殊な問題点を抱えている。このため手術,放射線,化学療法を組み合わせることによる適切な治療の選択が必要であり,事実,多くの頭頸部癌専門医が長年この問題に取り組んできた。
 CT, MRIをはじめとする画像診断の進歩による早期発見や腫瘍の進展範囲の正確な把握は,治療計画立案に寄与した。また再建外科の技術の進歩は,従来手術不能としてきた進行癌の根治的手術を可能にし,音声や特に嚥下機能の獲得に多大な進歩をもたらしている。頭頸部癌治療の基本が手術,放射線,化学療法による3者併用療法であることは広く認められてきたが,このうち化学療法については,前2者に比べてその評価や方法は未だに確立されておらず,試行錯誤を繰り返しているのが実情である。すなわち,従来より頭頸部癌の治療は放射線療法,手術療法が主体であり,抗癌剤を用いた化学療法は補助療法として用いられるか,末期癌や手術不能例あるいは再発例に対する姑息的治療として用いられる傾向にあった。こうした概念から,化学療法を少しでも積極的な治療法として発展させるべく,これまでも新たな抗癌剤の開発や,抗癌剤投与方法の工夫および副作用軽減の努力がいろいろ考案されてきた。しかし,現時点ではやはり画一的なregimenではその効果に限度があるのが実情である。

原著

小児にみられた両側plunging ranulaの1症例

著者: 牧野弘治 ,   田村嘉之 ,   甲田晶子 ,   渡辺修一 ,   高橋秀明 ,   坂井真

ページ範囲:P.401 - P.405

 はじめに
 ガマ腫(ranula)は舌下腺から発生する粘液嚢胞であり,その嚢胞が顎舌骨筋を超えて顎下部,頭下部,頸部に進展し,同部の腫脹をきたした場合にplunging ranulaと呼ばれる1)。このplunging ranulaは通常顎下型ガマ腫と訳され,顎下部または顎下部・舌下部の腫脹をきたす疾患である。
 今回われわれは,左側plunging ranula摘出後1年半経過し,右側にもplunging ranulaを認めた1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

高齢者の上咽頭に生じた胎児型横紋筋肉腫の1例

著者: 石川敏夫 ,   戸島均 ,   宗田靖 ,   柴崎修 ,   高橋敦

ページ範囲:P.407 - P.410

 はじめに
 横紋筋肉腫は小児や若年者に多い腫瘍で,胎児型横紋筋肉腫はすべての横紋筋肉腫の3/4を占め,多くは小児期に発症し,40歳を超えて発症することは稀である。鼻腔,咽頭などに発生する症例は比較的多く,558例を集計したEnzingerら1)の報告では73例(13.1%)であった。小児の横紋筋肉腫は手術,化学療法および放射線療法が行われるようになり治療成績が向上してきたが,成人例では依然として予後は不良である。今回化学療法,放射線照射によって寛解した73歳女性の鼻腔から副鼻腔,上咽頭に及ぶ胎児型横紋筋肉腫を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

頭頸部癌に対する少量CDDP・放射線同時併用療法の検討

著者: 小澤博史 ,   北野博也 ,   駒田一朗 ,   山名高世 ,   北嶋和智

ページ範囲:P.411 - P.415

 はじめに
 頭頸部癌の放射線治療効果を増強させる目的で,従来よりシスプラチン,5-FU,ブレオマイシンなどの同時併用が行われてきたが,最近では少量シスプラチンと放射線同時併用療法が注目されて,その安全性と有効性が報告されている1〜7)。今回,われわれが行った少量シスプラチンと放射線同時併用療法の治療効果と副作用の発現状況について検討した。

192Ir thin wireによる頭頸部癌の小線源放射線治療

著者: 安倍明 ,   真里谷靖 ,   青木昌彦 ,   松倉弘明 ,   場崎潔 ,   阿保満 ,   渡辺定雄 ,   阿部由直

ページ範囲:P.417 - P.421

 はじめに
 頭頸部癌の治療には,腫瘍の局所制御と同時に機能・形態の温存が重視され,放射線治療は大きな役割を占めている。中でも226Raによる舌癌の小線源放射線治療(brachytherapy)は,根治的治療法として確立された方法である1,2)
 近年,密封小線源は226Raから137Csや192Irへと切り替わりつつあるが3,4)192Ir thin wireは226Raや137Csの針や管の形状による線源では困難な部位への刺入も可能であり,本邦においてもその利用が報告されてきている5,6)
 今回われわれは,192Ir thin wireによる頭頸部癌の小線源放射線治療を行い,良好な治療効果が得られたので報告する。

浸潤性発育傾向を示した胸鎖乳突筋内血管腫

著者: 中原はるか ,   滋賀秀壮 ,   熊川孝三 ,   武藤奈緒子 ,   武田英彦

ページ範囲:P.424 - P.428

 はじめに
 筋肉内血管腫は,若年者の骨格筋内に発生する良性の血管腫で,全血管腫の1%以下の少ない疾患である1)。頭頸部領域の筋肉内血管腫の占める割合は,全筋肉内血管腫の15%以下で,この中では咬筋や僧帽筋が多いといわれる2)。咬筋内血管腫に関しては,手術方法も含め報告が多いが3,4),胸鎖乳突筋内血管腫に関しての報告はほとんどみられない。今回われわれは,胸鎖乳突筋内に発生し,皮下脂肪織まで浸潤性に発育した巨大血管腫を経験したので報告する。

日本医科大学附属千葉北総病院におけるめまい外来の統計的検討

著者: 渡邊健一 ,   鈴木香代 ,   小坂和己 ,   岩崎智治 ,   野中玲子 ,   野中学 ,   青木秀治 ,   八木聰明

ページ範囲:P.435 - P.438

 はじめに
 日本医科大学附属北総病院は平成6年1月に開院し,当初,1日平均外来患者数は200人程度であったが,平成8年12月現在では約1,100人に増加している。それに伴い,めまいを訴える患者も多く受診するようになり,また,めまいの自覚がなくても神経耳科学的検査の必要な患者が増えてきている。めまいの原因は末梢性疾患だけでなく,脳血管障害,脳腫瘍,変性疾患など多岐にわたっている。担当する科も耳鼻科,内科,脳神経外科など様々であり,施設によっては神経内科または脳神経外科が主に担当している場合もある。われわれの施設ではめまい外来を設け,神経耳科学的検査を施行している。開院当初からの北総病院のめまい外来患者動態の変化を附属病院と比較することで検討し,まためまいの診断における神経耳科学的検査の意義についても,合わせて考察したので報告する。

耳下腺に発生した上皮筋上皮癌の2例

著者: 谷口昌史 ,   羽藤直人 ,   門田吉見 ,   兵頭政光 ,   村上信五

ページ範囲:P.439 - P.443

 はじめに
 耳下腺腫瘍は病理組織学的に多彩な像を呈することが,その特徴の1つとされている。上皮筋上皮癌は病理組織学的に核の異型性は軽度であるが,臨床的に周囲組織への浸潤,再発,頸部リンパ節転移や遠隔転移を示す低悪性癌であり,1990年に改訂された唾液腺腫瘍のWHO組織分類に新たに加えられた1)。しかしその報告は少なく,本邦における耳下腺原発の上皮筋上皮癌は7例を数えるにすぎない2〜8)。筆者らは,最近耳下腺に発生し顔面神経麻痺をきたした本腫瘍の2例を経験したので,症例の臨床経過に文献的考察を加えて報告する。

進行性線維腫症を呈したスキルス型胃癌の頸部転移例

著者: 脇坂浩之 ,   湯本英二 ,   森敏裕 ,   兵頭政光 ,   西原信成 ,   丸山純 ,   高田清式

ページ範囲:P.445 - P.449

 はじめに
 頸部腫瘤をきたす悪性腫瘍は,頭頸部領域原発腫瘍や悪性リンパ腫が多く,一部の肺癌や食道癌を除けば胸腹部領域からの遠隔転移は少数である。また,頸部全体に結合織の増殖を伴ってび漫性に転移をきたし,進行性線維腫症ともいえる病態を呈することは稀である。今回われわれは,頸部および鼠径部を中心に発生した高度の進行性線維腫症の原因が,胃低分化型腺癌の遠隔転移であったと剖検で初めて診断された症例を経験した。頸部進行性線維腫症の原因の1つとして悪性腫瘍を念頭におく必要があることを痛感し,また血中サイトカインの分析から,線維腫症の成因として胃癌細胞の産生する塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:以下,bFGFと略)などの関与が強く示唆されたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

固有鼻腔内にみられた逆生歯牙の1症例

著者: 伊藤勇 ,   末野康平 ,   鈴木伸 ,   久我むつみ ,   山田洋一郎

ページ範囲:P.450 - P.452

 はじめに
 逆生歯牙は,固有鼻腔または上顎洞内に歯牙が部位を誤って萌出する疾患である。今回われわれは,固有鼻腔内逆生歯牙の1症例を経験したので,臨床経過に若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

中耳真珠腫の手術ことはじめ

著者: 森満保

ページ範囲:P.430 - P.432

 手術顕微鏡下に見る再発真珠腫はまさに上質のパールである。しかし,術者は真珠腫再発にわが手技の未熟さを嘆き,患者は術後障害に声をひそめて嘆いている。
 中耳真珠腫はその自然発症が人間にしか見られないという,珍しい性格の,しかし結構頻度の高い病気である。病理学的には単なる角化上皮落屑の蓄積嚢胞であって,真の腫瘍ではない。しかし臨床的には大敵である。落屑は長年月の間に中耳腔一杯に蓄積する。嚢胞とはいえ,後天性真珠腫は偽嚢胞で鼓膜の弛緩部や後上象限に外耳道に開いた口がある。したがって当然感染する。角質物質は腐敗発酵し,周囲組織と反応,側頭骨の吸収破壊が起こり頭蓋内にまで拡大侵入する。これにもし病原菌が感染すると,髄膜炎や脳膿瘍を併発して患者は死亡する。

連載 耳鼻咽喉科“コツ”シリーズ 1.外来診療のコツ

⑥頸部診察のコツ

著者: 村上泰

ページ範囲:P.455 - P.459

 はじめに
 外来で初診患者を診る場合に,耳鼻咽喉に続いて頸部の診察をきちんと行っておくことが必須である。以下に常々私が行っている頸部診察の要領を記載して参考に供する。手順としては問診に始まって視診,触診で大体の見当をつけ,必要と思われる検査を選択することになるが,診断を進めながらそのつど念頭に置くべき疾患にアンダーラインをつけておく。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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