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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科70巻8号

1998年07月発行

雑誌目次

トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その1) 1.舌癌T2N0M0症例

①国立がんセンターの場合

著者: 斉川雅久 ,   海老原敏

ページ範囲:P.471 - P.476

 はじめに
 早期舌癌に対する標準的治療法といえば,かつてはRa針による組織内照射であった。今回のテーマである舌癌T2N0M0症例を考えた場合でも,1962年の当院開院以来長い間治療の主役は組織内照射であった1)。それが最近になって急激に様変わりし,今や大多数の症例が手術を受けるようになっている。
 このような変化はなぜ起きたのか,治療成績はどのように変わったのか,現在の治療方針において注意すべき点はどこかなどを検討したい。

②千葉県がんセンターの場合

著者: 嶋田文之

ページ範囲:P.477 - P.481

 はじめに
 千葉県がんセンターでは開院(1972年11月)以来T1-2の舌癌には,腫瘍の発育形式が外向性であれ内向性であれ,主として組織内照射で治療してきた。一方頸部リンパ節については,予防的頸部郭清は施行しないことを原則としている。
 今回は,臨床的にT2N0と診断した症例についての治療成績などを検討したので報告する。

③九州大学病院の場合

著者: 益田宗幸 ,   國武直信 ,   中島寅彦 ,   山下弘之 ,   熊本芳彦 ,   神宮賢一 ,   小宮山荘太郎

ページ範囲:P.483 - P.486

 はじめに
現時点でのN0早期舌癌の問題点は以下の3点に要約できる。
 (1)舌の形態機能の温存と原発巣制御率の問題 手術か組織内照射か。
 (2)頸部の取り扱い 予防的頸部郭清かリンパ節出現時のsalvage neck dissectionか。
 (3)後発あるいは潜在リンパ節転移 治療前に予測することは可能か。

2.頸部転移を有する上顎洞癌

①上顎洞原発扁平上皮癌に対する集学療法と長期予後の分析

著者: 今野昭義 ,   寺田修久 ,   沼田勉 ,   永田博史 ,   花沢豊行 ,   武藤博之

ページ範囲:P.487 - P.494

 はじめに
過去30年間,上顎洞癌症例を対象として,多くの施設において癌の根治と同時に治療後の患者のQOLの向上を目指して努力が続けられてきた1〜6)。われわれも秋田大学I期(1971年12月〜1982年1月),秋田大学II期(1982年2月〜1987年8月),千葉大学II期(1988年9月〜1995年5月)を通して,診断,治療法の進歩とともに少しずつ修正を加えながらも,一定期間はあらかじめ定めた治療方針に従って全症例を治療し,上顎洞癌症例に対する治療上の問題点を検討してきた7〜11)
 本稿では最も症例の多い上顎洞原発扁平上皮癌に限って,それぞれの時代における自験例の治療成績と,治療上の問題点を整理すると同時に,特にリンパ節転移を伴う症例に対する治療について考察する。

②自治医科大学病院の場合

著者: 西野宏 ,   宮田守

ページ範囲:P.495 - P.498

 はじめに
 本邦における上顎洞癌に対する治療方法は主に2つに大別される。それは上顎(拡大)全摘術・即時再建術1,2)と三者併用療法3〜5)である。われわれの上顎洞癌に対する治療方針は三者併用療法である6)。当科での三者併用療法における手術,放射線療法,局所化学療法の治療配量は1979年を境に変遷した7)。治療配量を変遷した理由,その治療方法・治療成績は,他の文献8〜10)に詳細を記しているので参照していただきたい。
 今回は頸部リンパ節転移を有する上顎洞癌の治療に関し論じる。原発部位に対する治療方法は既報告の通りであるが,当科における三者併用療法の治療体系における頸部リンパ節転移に対する治療とその結果を述べる。

目でみる耳鼻咽喉科

KTPレーザーによる下咽頭血管腫の治療例

著者: 玉置かおり ,   山中昇

ページ範囲:P.468 - P.469

 下咽頭血管腫は比較的稀な疾患であるが,根本的治療は外科的切除しかなく,術中出血をいかに抑えるかが難題であったが,近年耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域において頻用されているKTP(potassium titanyl phosphate)レーザーを用いることで,ほとんど出血なく安全に治療することができるようになった。これはKTPレーザーの波長がヘモグロビンに極めてよく吸収されるためで,止血・切開能,深部操作性とともに優れた特長となっている。当院ではLaser Scope社のKTPレーザー手術装置を用い,血管腫の切除には出力5W,光凝固には出力1.5Wの連続照射モードの設定で,0.6mm径の導光ファイバーおよびラリンゴマイクロ手術用の長いハンドピースを使用し手術している。顕微鏡にはあらかじめレーザーカットフィルターを装着して視野の視認性を保っている。
 以下に,下咽頭の巨大血管腫をKTPレーザーを用いて治療し,良好な成績を得た1症例を呈示する。なお,本症例はわれわれが調べ得た範囲では欧米例・本邦例を含め最高齢である。

原著

中耳カルチノイド腫瘍の1症例

著者: 蓑輪仁 ,   新川敦 ,   高橋秀明 ,   石田克紀 ,   坂井真 ,   鬼島宏 ,   島村和男

ページ範囲:P.501 - P.504

 はじめに
 カルチノイド腫瘍は,主に消化管,気管,気管支に発生し,セロトニンなどのホルモンを産生する神経内分泌細胞腫瘍である。中耳原発のカルチノイド腫瘍は稀であり,われわれが調査した限りにおいては現在まで国内外で34例の報告のみである。今回,われわれは中耳原発のカルチノイド腫瘍の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

頸部迷走神経傍神経節腫の1例

著者: 田口享秀 ,   佃守 ,   古川政樹 ,   榎本浩幸 ,   矢後忠之 ,   稲葉鋭 ,   河合敏 ,   木村聖子

ページ範囲:P.505 - P.510

 はじめに
 頭頸部領域の傍神経節腫は頸動脈小体,迷走神経傍神経節および頸静脈球などの傍神経節組織から発生し,ときにみられる疾患である。本邦における迷走神経傍神経節腫は,頭頸部領域の傍神経節腫の約5%の頻度と報告されている1)。本疾患は血管や神経と密接に関係する腫瘍であり,術後の神経症状が臨床上問題となる。今回,巨大な迷走神経傍神経節腫の症例を経験したので報告するとともに,本邦における迷走神経傍神経節腫の報告を検討した。

顔面基底細胞癌の1例

著者: 王娜亜 ,   小口直彦 ,   石戸谷淳一 ,   中井淳仁 ,   鳥山稔

ページ範囲:P.511 - P.514

 はじめに
 基底細胞癌(basal cell carcinoma:以下,BCCと略)は,顔面を中心とする頭頸部に好発する悪性腫瘍である。BCCの大きさに関しては,2cm以下のものが約90%であると報告されている1)。今回われわれは顔面に発生し15年間放置された後,急激に増大し眼窩にまで浸潤したBCCの1例を経験したので,組織学的検討を含め報告する。

甲状腺悪性リンパ腫の1症例

著者: 猪飼重雅 ,   川上理郎 ,   橋本和明 ,   竹中洋

ページ範囲:P.520 - P.523

 はじめに
 甲状腺悪性リンパ腫は比較的少ない疾患である。慢性甲状腺炎と密接な関係があり,また臨床像が未分化癌と類似するときもあり診断が困難なことがある。今回われわれは,急速に増大する甲状腺腫により呼吸困難や嚥下困難をきたした1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

放射線外照射後に生じた下顎骨壊死の1症例

著者: 渡辺剛士 ,   鈴木光也

ページ範囲:P.525 - P.528

 はじめに
 口腔内腫瘍に対する放射線治療には外照射,組織内照射および両者併用療法があるが,照射治療後の骨壊死の発生率は5〜15%と報告されている1)。しかし外照射単独治療に限定すると,その発生率は約1%と少ない1,2)
 今回われわれは,放射線外照射により生じた下顎骨壊死に対し,下顎骨区域切除,腹直筋による再建を必要とした症例を経験したので報告する。

インターフェロンによるマウスABRの変化

著者: 外山勝浩 ,   東野哲也 ,   牛迫泰明 ,   森満保 ,   小宗静男

ページ範囲:P.529 - P.532

 はじめに
 インターフェロン(IFN)は抗ウイルス作用,抗腫瘍作用,免疫調節作用などを有するサイトカインで,臨床的にウイルス性慢性肝炎患者や白血病,その他の悪性腫瘍患者に使用されている。副作用に関しては,ほぼ全症例にみられるインフルエンザ様症状,白血球や血小板の減少,脱毛などから,稀ながら死亡にまで至る間質性肺炎まで様々な報告がされており,聴覚にも影響を及ぼすという報告1〜5,6)がある。われわれも,IFN治療を行った慢性肝炎患者の約40%に高音域に比較的軽度で可逆性の感音難聴が生じたことを報告した3,6)。また,聴覚障害例では中性脂肪が著しく増加する症例が多く,聴覚障害を起こすメカニズムとして,内耳微小循環障害が関与している可能性が示唆されている3,6)。高音域の聴力閾値は正常者においても変動しやすく,INFによる聴力変動は一般的に認知されていないのが現状である。今回は,IFNによる聴覚障害が生ずることを確認するため,マウスの聴力を聴性脳幹反応(ABR)にて評価し,IFNの聴器に及ぼす影響について検討した。

鏡下咡語

気圧と耳鼻咽喉科

著者: 柳田則之

ページ範囲:P.516 - P.518

 私自身,気圧に関係した研究臨床を行ったのは1972年,突発性難聴に高気圧酸素治療を導入したのが最初である。その際,一時的に中耳の気圧外傷を起こす症例があることを認め,気圧外傷に関する基礎的な研究も併せて開始した。
 名古屋大学には,臨床用として大型の高気圧治療室(高気圧治療部)および低気圧シミュレーション装置(環境医学研究所)が装備されており,また実験用にも高気圧および低気圧両者のタンクがあり,これらのチャンバーを利用して気圧に関連する研究臨床を続けてきた。この研究は私共の教室の大きな柱として教室員も多く参加してきた。

連載 耳鼻咽喉科“コツ”シリーズ 2.検査のコツ

①聴力検査のコツ

著者: 小田恂

ページ範囲:P.533 - P.536

 はじめに
 本稿は聴力検査のコツという表題であるが,コツという用語も大変広い意味に用いられており,例えば手術のコツなどの場合にはメスの用い方など刃のあて方,切開線の長さなど少し工夫を加えるだけで手術操作が容易になったり,病変部位の摘出がしやすくなったりと通常よりもよい結果に結びつく場合に用いられている。
 検査のコツという場合には,検査手技にムダがなく,容易に結果が得られるような場合にコツという用語が用いられる場合が少なくない。
 聴力検査に関しては,操作自体は成書に書かれたとおり行えば容易な事柄であり,それほど難しい手技ではない。検査結果もそれなりに求められ,オージオグラムを作成することも容易である。しかし,聴力検査の背後にはいくつかの難しい問題が存在しており,求められた結果が患者の聴力を正しく評価しているかという点になると,なかなか難しい問題である。この項では,いかに誤りを少なく聴力検査を行うにはどうすればよいかということをコツという言葉に置き換えて述べたいと考える。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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