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原著
異所性甲状腺に発生した濾胞癌の1例
著者: 安部治彦1 井上都子1 軽部時子1 河原秀明2
所属機関: 1東京都立広尾病院耳鼻咽喉科 2西台耳鼻咽喉科医院
ページ範囲:P.563 - P.566
文献購入ページに移動甲状腺は胎生第3週に無対舌結節とコプラとの間に発生し,咽頭腸の前を下降して第7週には気管前壁に到達する。この下降に際し,下降不全が生じたり,下降の途中で甲状腺組織の一部を残したりする。この残存組織が異所性甲状腺となる。思春期の代償性腫大や腫瘍が発生すれば症状も発現するが,多くは一生無症状に経過する。
今回われわれは,固有位置に甲状腺をもち,甲状舌管を伴わない異所性甲状腺より発生した濾胞癌の1例を経験したので報告する。また,甲状舌管を伴わない異所性甲状腺より発生した癌の報告は少なく,今まで約30例を数えるのみである。これらのうち組織型が判明した症例を集計し,考察を加えて報告する。
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