文献詳細
原著
鎖骨上窩に発生した冬眠腺腫の1例
著者: 岩井大1 柳田昌宏2 南豊彦1 柿本晋吾1 李進隆1 渡邊尚代1 山下敏夫1
所属機関: 1関西医科大学耳鼻咽喉科学教室 2大阪府済生会野江病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.595 - P.598
文献概要
冬眠腺腫(hibernoma)は越冬腺腫や褐色脂肪腫とも呼ばれ,褐色脂肪組織から発生する稀な良性腫瘍である1)。この脂肪組織は哺乳類にみられ,ヒトでは主に新生児の肩甲間領域や頸部,上縦隔,腋窩,腹膜後腔,腎周囲などに存在するが,加齢とともに急速に減少し,成人では少量が残存するのみとなる2,3)。一般の脂肪組織(白色脂肪組織)に比べ豊富な毛細血管と交感神経を受け,組織学的に細胞が血管を囲む配列を示して内分泌腺に類似することから冬眠腺と呼ばれてきた4)。冬眠する動物ではよく発達しており,冬眠終了時,神経が興奮してノルアドレナリンを放出し,急速な脂肪分解を起こして大量の熱を供給し,0℃近くまで下がっていた動物の体温を急上昇させて動物を冬眠から醒めさせるとされる5)。
今回われわれは,過去に2回手術を受けたが摘出できなかった鎖骨上窩の冬眠腺腫症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
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