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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻1号

1999年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

頭蓋底に進展した耳下腺上皮性筋上皮癌症例

著者: 宮下久夫 ,   中村弦 ,   鈴木政彦 ,   山田麻里

ページ範囲:P.6 - P.7

 耳下腺腫瘍の多様性はよく知られている。
 細胞診あるいは組織診ですら,病理診断が難かしい場合があることを念頭におき,臨床と病理双方でその所見について検討を重ねる必要がある。

原著

Branchio-oto(BO)症候群の2症例—本邦における報告例の検討

著者: 新井峻 ,   岩田敏 ,   国広美紀 ,   中川暁子 ,   阿瀬雄治 ,   岡田慎一 ,   照沼久美子 ,   小泉美保

ページ範囲:P.9 - P.15

 はじめに
 鰓原性奇形(側頸瘻,耳瘻孔,外耳奇形),難聴(内耳,中耳奇形),腎形成不全のある症候群を,1975年にMelnickら1)はbranchio-oto-renaldysplasiaと称し,常染色体性優性遺伝性疾患であると報告した。しかし,Cremersら2),Fraserら3)の報告以後は,腎奇形を伴わないbranchio-oto syndromeも同じ範疇に入る症候群とされるようになった。
 今回われわれは,両側頸瘻,耳瘻孔,両側混合性難聴があり,母親に同様の症候群のある2症例を経験したので報告し,併せて本邦において過去に報告された本症候群36例について考察する。

下咽頭梨状窩瘻の2例

著者: 武田靖志 ,   西崎和則 ,   赤木博文 ,   小川晃弘 ,   増田游 ,   吉野正 ,   上川康明

ページ範囲:P.17 - P.20

 はじめに
 急性化膿性甲状腺炎の原因の1つとして先天奇形の下咽頭梨状窩瘻が考えられている。下咽頭梨状窩瘻の発生は第3,4,5咽頭嚢の遺残物とする説1,2)がある。また最近,甲状腺C細胞過形成が認められることから第5咽頭嚢由来説が唱えられてきた3)。今回われわれは2例(成人1例と小児1例)の自験例で,摘出した梨状窩瘻に免疫組織学的手法を用いて,甲状腺C細胞との関連に関して検討を行ったので報告する。

ノルアドレナリンを産生していたと思われる嗅神経芽細胞腫の1例

著者: 大川親久 ,   石永一 ,   加藤昭彦 ,   山田弘之

ページ範囲:P.21 - P.25

 はじめに
 嗅神経芽細胞腫は,鼻腔の嗅上皮に由来すると考えられる悪性腫瘍である。本腫瘍は1924年Bergerら1)の報告が最初であるが,その後診断技術の向上もあって,報告は最近増加傾向にある。本邦における治療成績は欧米に比べて不良とされているが,近年同腫瘍にドーパミンを産生するものがあるとの報告がある2)。今回われわれはノルアドレナリンを産生していたと思われる同腫瘍を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

当科における進行喉頭癌(stage III, IV)症例の検討

著者: 糸数哲郎 ,   古謝静男 ,   真栄城徳秀 ,   松村純 ,   新濱明彦 ,   稲嶺智広 ,   嘉数光雄 ,   宇良政治 ,   野田寛

ページ範囲:P.27 - P.30

 はじめに
 喉頭癌は頭頸部悪性腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍であるが,その予後は比較的良好である。一般に早期喉頭癌には放射線治療が多く行われ,その根治性も高い。それに対して進行喉頭癌には手術を主体にした治療が行われ,その治療成績も向上しているが,まだ満足できるものではない。今回われわれは,琉球大学医学部附属病院耳鼻咽喉科で,一次治療を行った進行喉頭癌(stage III, IV)症例について検討し,治療成績改善のための若干の考察を行ったので報告する。

篩骨洞に発生した真珠腫の1例

著者: 目須田康 ,   寺山吉彦 ,   間口四郎 ,   小笠原誠

ページ範囲:P.31 - P.34

 はじめに
 真珠腫(cholesteatoma)は,先天性あるいは炎症性などに起因する中耳角化性病変として耳鼻咽喉科医に広く認識されている。したがって,副鼻腔に発生する真珠腫は臨床的に経験する機会は少なく,これまで本邦では8例しか報告されておらず,しかも篩骨洞の真珠腫例は海外の2例以外はない。今回われわれは,眼球突出により発見された極めて稀な篩骨洞原発の真珠腫の1例を経験したので,成因などについて若干の文献的考察を加えて報告する。

気管偏位で発見された甲状腺乳頭癌を合併した頸部胸腺腫の1症例

著者: 神崎晶 ,   行木英生 ,   佐藤靖夫 ,   田代昌継 ,   山下大介

ページ範囲:P.35 - P.38

 はじめに
 甲状腺癌を合併した胸腺腫の報告は必ずしも稀ではないが,胸腺腫が頸部に存在する例については報告例は少ない。今回われわれは気管偏位を伴った頸部胸腺腫と甲状腺乳頭癌の合併例を治療する機会を得た。診断は,初め甲状腺腫瘍の上縦隔進展と考えたが,CTおよび99mTcと201Tlによるシンチグラムを検討した結果,2つの腫瘍から構成されている可能性が考えられ,頸部からの摘出術により一塊として摘出できた症例を経験したので報告する。

側頭骨に発生した線維性骨異形成症の1例

著者: 坂東伸幸 ,   執行寛 ,   田中研 ,   北南和彦 ,   吉田真子 ,   伊藤智雄

ページ範囲:P.39 - P.43

 はじめに
 線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)は原因不明の慢性骨疾患で,主に脛骨,大腿骨などの下肢の長管骨に発生する。耳鼻咽喉科,頭頸部外科領域では上顎骨,下顎骨に発生することが多いとされ1),側頭骨に発生した症例は稀である。今回われわれは側頭骨に発生し,一部後頭骨に病変が及んでいた線維性骨異形成症の1例を経験し,過去の本邦報告例を検討したので報告する。

脳血管異常を伴ったオスラー病の1例

著者: 横内載子 ,   新井寧子 ,   荒牧元

ページ範囲:P.44 - P.47

 はじめに
 オスラー病は,皮膚,粘膜,内臓の多発性末梢血管拡張と同部位からの反復性出血および家族性発生を主徴とする疾患である。遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangi-ectasia)と命名されたが,一般的にはオスラー病と呼ばれている1)。耳鼻咽喉科を受診する動機の多くは,反復する頑固な鼻出血である。今回われわれは,めまい発作を主訴とするオスラー病の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

木村病の2症例

著者: 中屋宗雄 ,   中之坊学 ,   盛川宏 ,   田部哲也 ,   北原哲

ページ範囲:P.55 - P.58

 はじめに
 木村病は1948年に木村ら1)によって報告され,飯塚2)が木村病として提唱した疾患で,軟部好酸球性肉芽腫ともいわれるように,皮下軟部組織のリンパ濾胞の増殖を伴う好酸球性肉芽腫である。経過が緩慢で頭頸部領域,特に唾液腺やその周囲リンパ節に無痛性の腫瘤をきたす良性疾患であるが,再発することが多く,有効な治療法が確立されていないのが現状である3,4)
 われわれは最近2例の木村病を経験し,いずれも術後にオキサトミドを投与して,良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する。

初診時左反回神経麻痺を呈した弓部解離性大動脈瘤の2症例

著者: 真栄田裕行 ,   山里将司 ,   又吉重光 ,   宇良政治

ページ範囲:P.59 - P.62

 はじめに
 反回神経麻痺の原因疾患は多岐にわたり,これまでも多くの症例,臨床統計が諸家により報告されている。中でも胸腔内疾患,特に胸部大動脈瘤を原因とする反回神経麻痺は,一般的にはよく知られているのに反し,その発症頻度は低く,またその多くは他科で既に診断が下されていることが多い。
 今回われわれは,嗄声のみを主訴とし,最初に耳鼻咽喉科を訪れた解離性大動脈瘤の2症例を経験したので,症例を報告するとともに,動脈瘤の反回神経麻痺に占める頻度や回復症例について考察した。

感音性難聴を伴った急性中耳炎症例の検討

著者: 宇野芳史 ,   信平真里 ,   小河原利彰 ,   頼実哲 ,   山下安彦

ページ範囲:P.63 - P.67

 はじめに
 急性中耳炎は,日常耳鼻咽喉科診療において比較的頻度の高い疾患であり,特に市中の診療所においては最も頻繁に遭遇する疾患の1つである。急性中耳炎により引き起こされる難聴は,伝音性難聴であることがほとんどであるが,本邦では1953年の切替ら1)の報告以来,急性中耳炎に内耳障害を合併した症例の報告が散見されるようになってきた2〜10)。今回当診療所で経験した感音性難聴を伴った急性中耳炎症例について,代表的な1症例を呈示するとともに全8症例の臨床経過をまとめ,内耳障害の原因について文献的に検討したので報告する。

鏡下咡語

研修医制度

著者: 折田洋造

ページ範囲:P.50 - P.51

 医学部卒業試験・医師国家試験に合格して医師免許を取得すれば,臨床医ないし専門医を目指す場合は,研修医指定病院で臨床研修に励むことになるが,耳鼻咽喉科専門医を目指しての研修医制度に関して述べてみたい。
 その具体的例として,昨年3月末まで勤務していた川崎医科大学附属病院に関して述べると,本院は昭和48年12月17日の開院日からレジデント制度が施行されており,最初の2年間がジュニアレジデント(以下,JRと略)の1・2年であり,次の3年間がシニアレジデント(以下,SRと略)の1〜3年であったが,平成元年度からSR 4年が加わって現在に至っている。このレジデント制度には採用人数に一定の枠がありJRは各学年2名以内,SRは各学年1名との規定があったが,数年前からJRに限って枠が外されている。このJRの枠が外された時は,何となくJRの倍増が予想されたが,SRは各学年1名との枠が存続していることが関係してか,JRの採用人数は予想されたほどには増加していない。

手術・手技

シェーバーシステムにより外来で行った鼻茸切除術

著者: 樋口彰宏 ,   新井基洋 ,   斉藤大

ページ範囲:P.69 - P.72

 はじめに
 シェーバーシステム(最近はマイクロデブリッダーシステムと呼ぶことも多い)は持続吸引を備えたパワーインストルメントである(図1,2)。
 シェーバーによる鼻茸切除術は,他の手術器具による場合と比べ手術時間,出血量,術野の状態などの点で優れているという報告が多いため1〜6),外来での同手術をより容易に安全に行うことができるものと期待できる。

海外トピックス

森林の消失と花粉症増加—日本と英国そして中国において

著者: 三好彰

ページ範囲:P.75 - P.80

 はじめに
 こんなに花粉症が増えたのはなぜか,という議論があります。その答として現在までいくつかの仮説が提唱されていますが,1つだけすごく確かなことがあります。それは,スギ花粉などアレルゲンとなる花粉の絶対量が増加したという事実です。
 考えてみると確かに,この世の中では総て原因が増えれば結果が増え,原因がなくなれば結果もなくなります。花粉症もこの世の絶対的法則に例外であるはずはなく,花粉が増えれば花粉症は増加し,花粉が飛ばなくなれば花粉症発作も起きなくなります。
 ここではそんな花粉症増加の原因となっている花粉の激増が,こともあろうに人為的な森林の消失を契機として生じた経緯について,日本と英国そして中国を例として書き記してみたいと思うのです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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