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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻11号

1999年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

舌根部骨腫の1例

著者: 角卓郎 ,   橋本和也 ,   杉本太郎 ,   合津和央 ,   根岸達郎 ,   小松崎篤

ページ範囲:P.732 - P.733

 軟部組織に骨腫が発生することは比較的少なく,特に口腔内に生じるものは自験例を含めて70例に満たないが,そのほとんどは舌に生じている。今回舌根部に発生した骨腫の1症例を経験したので報告する。
 症例:28歳,女性。

Current Article

声帯振動からみた発声調節機構

著者: 湯本英二 ,   小林丈二 ,   兵頭政光

ページ範囲:P.735 - P.744

 はじめに
 発声時の声帯振動は高速度カメラやストロボスコピーによって研究され,声帯下面から上面に向かう粘膜の波状運動(粘膜波動)がその本質であることが明らかにされてきた。これらの研究は口腔側から声帯上面を観察したもので,粘膜波動が声帯下面のどこでどのように起こるのかは明らかでなかった。筆者らは,声帯振動を気管側から高速度映画に記録する方法を工夫し,発声時の気流量,声帯伸展,内筋収縮が粘膜波動にどのように影響するかを検討してきた。
 本稿ではイヌにおけるこれらの研究結果をまとめ,ヒト声帯振動と比較した。さらに,異なる音色の発声調節に関する仮説を記して,発声調節機構に関する研究の展望としたい。

原著

中耳,上咽頭併発結核の2症例

著者: 牧野伸子 ,   坂本邦彦 ,   梶川泰 ,   雑賀孝昇 ,   石田稔 ,   伏見博彰

ページ範囲:P.747 - P.749

 はじめに
 1998年の国民衛生の動向1)によると,活動性肺結核の5万6,195人に対して肺外結核は3,565人と約6%に過ぎない。耳鼻咽喉科領域の結核はさらにその一部で,発生部位の特殊性から診断に苦慮する場合が多い。
 上咽頭結核について,本邦では1941年に浅井2)が鼻咽頭結核の臨床所見として22例を報告している。それ以後は,1976年の黒住ら3)の報告から,1996年の石塚ら4)の報告までを合わせて45例の報告があるが,結核性中耳炎を合併していた症例は川原ら5)の報告を含めても極めて少ない。
 今回,結核性中耳炎を合併した上咽頭結核症例を2症例経験したので報告する。

頭位性めまいを主訴に来院した小脳動静脈奇形の1例

著者: 大木雅文 ,   水谷淳子 ,   伊藤健 ,   室伏利久

ページ範囲:P.751 - P.754

 はじめに
 頭位性めまいを訴えて来院する患者は多いが,その大多数は内耳障害による良性発作性頭位眩暈症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)である。しかし,中枢前庭障害に起因する頭位性めまい,いわゆる悪性発作性頭位眩暈症(malignant paroxysmal positional vertigo:MPPV)の症例もこの中に混在し,類似の症状を主訴に来院することがあり,鑑別が重要である。今回われわれは,頭位性めまいを主訴に来院し,神経耳科学的検査が診断に有用であった小脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)症例を経験したので報告する。

当科における顎動脈結紮術の適応とその臨床評価

著者: 中川俊一 ,   飯塚桂司 ,   中村成弘 ,   高木大 ,   大渡隆一郎 ,   武市紀人

ページ範囲:P.755 - P.758

 はじめに
 鼻出血は,その大部分がキーゼルバッハ部位からの出血であり,止血は比較的容易である。しかし,鼻腔後方からの出血は鼻出血全体の約5%を占め1),出血部位の同定や止血処置は難しく,バルーンカテーテルタンポン(以下,バルーンと略)やベロックタンポン(以下,ベロックと略)を用いた保存的な治療で止血できない場合は,顎動脈結紮術や顎動脈塞栓術,内視鏡的蝶口蓋動脈結紮術といった出血の原因になっている血管への直接の処置が必要になる。
 経上顎洞的に翼口蓋窩に到達する顎動脈結紮術は1928年にSeiffert2)によって紹介されて以来,その止血効果については数多くの報告がある3〜8)。さらに顎動脈塞栓術と比較した場合でも,再出血率,合併症の重篤度などから本法のほうが優れていると報告されている9)。しかし,臨床的に本法の適応について考察した報告は少ない。
 今回われわれは当科に入院した鼻出血症例を検討し,顎動脈結紮術の適応とその臨床評価について考察したので報告する。

蜂巣状CT像を呈した口腔底類皮嚢胞の1例

著者: 鈴木政美 ,   岡本誠 ,   土田吉史

ページ範囲:P.759 - P.762

 はじめに
 類皮嚢胞は口腔底に腫脹をきたす代表的な疾患の1つである。今回われわれは,蜂巣状CT像を呈した口腔底類皮嚢胞を経験したが,このような報告はあまり見受けられない1,2)。また,一般的に口腔底類皮嚢胞は周囲との癒着もなく摘出は比較的容易であるが,本例では嚢胞が周囲組織に浸潤しているかのように発育しており,一塊摘出は困難で追加切除を必要とした。本稿では病理組織像をもとに,CT像の成り立ちおよび一塊摘出が困難であった理由を述べるとともに,類皮嚢胞の画像診断について若干の文献的考察を加えて報告する。

自然排出のみられた耳下腺唾石症の1例

著者: 栢野香里 ,   鈴木治子 ,   柴田敏章 ,   中野宏 ,   林戸功 ,   中井茂 ,   福島龍之 ,   河田了

ページ範囲:P.765 - P.769

 はじめに
 唾石症は日常臨床においてしばしば遭遇する疾患であり,顎下腺に好発し,次いで耳下腺,舌下腺,小唾液腺の順に報告されている1)。全唾石症のうち耳下腺唾石症の占める割合については,本邦では0.6〜10.5%,欧米では0.7〜20.6%と報告されている2〜5)。今回われわれは,初診時には診断がつかなかったが,経過中に自然排出をきたして診断できた耳下腺唾石症を経験した。その概要を報告し,診断にあたっての反省点を考察する。

頬部粘膜下脂肪腫の1症例

著者: 長谷川武 ,   川端五十鈴 ,   田部浩生

ページ範囲:P.775 - P.778

 はじめに
 脂肪腫は成熟した脂肪組織の増殖から発生する非上皮性の良性腫瘍であり,脂肪組織が存在するすべての体内の部位から発症する。遠城寺ら1)によると,頭頸部領域は全脂肪腫の中で約10%を占めるとされているが,口腔内領域の発生は少ないとされている2〜4)。われわれは最近,頬部粘膜下に発生した脂肪腫の症例に遭遇し摘出術を施行したので,症例の概要を記載し臨床所見,病理所見,治療法などについて考察を加え報告する。

先天性頸嚢胞41症例の臨床的検討

著者: 山村幸江 ,   吉原俊雄 ,   石井哲夫

ページ範囲:P.781 - P.784

 はじめに
 頸部の先天性嚢胞のうち,甲状舌管嚢胞は最も高頻度にみられる疾患である。また,側頸部の鰓嚢胞は悪性腫瘍との鑑別が臨床的に重要である。
 本稿では,先天性頸部嚢胞症例の臨床症状,検査所見および手術所見を文献的考察を加えて検討を行ったので報告する。

都立広尾病院・耳鼻咽喉科の救急外来における最近2年間の集計—14年前との比較

著者: 安部治彦 ,   井上都子

ページ範囲:P.787 - P.791

 はじめに
 休日や夜間の救急外来は,国民の健康を守るうえでも重要であることはいうまでもない。近年,社会構造の変化により夜間,休日の受診者数は増加の一途をたどっている1〜3)。当院には12系列の救急体制があり,1次から3次救急までを取り扱っている。当科は眼科,泌尿器科,皮膚科,形成外科,放射線科の6科で混合系をつくり,耳鼻咽喉科の患者のみの診療にあたっているが,1次救急のものがほとんどである。
 今回,最近2年間における当院耳鼻咽喉科の救急外来の集計を行ったので,一般市中病院の実態を報告するとともに,14年前に行った集計と比較し4),疾病や社会の変化について検討したので報告する。また将来,耳鼻咽喉科が救急患者に対してどのように対処したらよいかについても言及した。

鏡下咡語

日常臨床で患者さんに教えられること

著者: 足川力雄

ページ範囲:P.772 - P.773

 1.耳鼻咽喉科学は大切にするべきだ
 健康保険の抜本的改正(?)で1〜2年後に耳鼻咽喉科の処置が,健保の点数表より消されるかも知れないということがいわれ始めている。
 元来,日本では内科を本道と称した。外科は本道よりはずれた科の意味か。……となると,耳鼻科・眼科の存在はどのような位置におかれるのであろうか。医師はきちんとした検査を行い,的確な診断・処置を行うべきものである。その処置を耳鼻科より取り上げるということは,医療を社会主義的健保医療にただ組み込むためのものである。

連載 小児の耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

②異物の取り扱い

著者: 市村恵一

ページ範囲:P.795 - P.801

 I.外耳道異物
 1.頻度,異物の種類
 施設により異なるものの,第一線医療機関においては小児例の割合は40〜60%である1,2)。プラスチックのビービー弾とビーズが最も多く,6歳以上になると外耳道が広くなるためか,成人で多い昆虫(ゴキブリ,カナブンなど)の迷入が増加する1)。そのほかにガラス玉,豆類,小石,粘土など丸い物体を自分で外耳道に押し込む場合が多い。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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