icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻13号

1999年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

カテコラミン産生鼓室型グロームス腫瘍の1例

著者: 天野肇 ,   木村大輔 ,   竹下有 ,   星野知之

ページ範囲:P.894 - P.895

 グロームス腫瘍はアドレナリン,ノルアドレナリンの分泌作用をもつと考えられており,鼓室型はその約半数を占めているが,本邦ではその内分泌活性が証明された報告はない。今回われわれは鼓室型グロームス腫瘍の診断で手術を施行し,カテコラミン産生腫瘍と思われた1例を経験したので報告する。
 症例は58歳男性で,左拍動性耳鳴で当科を受診した。鼓室前半部に赤色腫瘤が透見され,CTで同部に軟部組織陰影を認めたが骨破壊は認めなかった(図1)。純音聴力閾値,ティンパノグラムは正常であった。平成9年10月9日,全身麻酔下に摘出術を施行し,約7×6mmの腫瘍を摘出した。病理組織所見では,類円形の核と胞体をもつ腫瘍細胞が胞巣状に増殖し,腫瘍細胞間には著明な毛細血管の増生を認め(図2),免疫染色ではグリメリウス,クロモグラニンA,S-100,ビメンチンで陽性,ケラチン,デスミン,アクチン,ファクターⅧで陰性であった(図3)。電顕像では,明るい胞体をもつ腫瘍細胞内に限界膜に包まれた電子密度の高い芯を有する神経分泌顆粒を多数認めた(図4)。以上の所見よりグロームス腫瘍と診断した。

原著

中耳癌放射線治療後20年で発症した側頭骨放射線壊死の1症例

著者: 石田克紀 ,   坂井真 ,   新川敦

ページ範囲:P.897 - P.900

 はじめに
 放射線による側頭骨壊死(radionecrosis)は晩発性の放射線障害として知られているが,いったん発症するとその治療に難渋することが多く,近年においても致命的な頭蓋内合併症を引き起こした症例が報告されている1,2)。頭頸部悪性腫瘍の治療において放射線治療はしばしば用いられ,腫瘍の抑制に有効な役割を果たしているが,それに続発して起こり得る障害についても十分留置していくことが必要である。今回われわれは,中耳癌に対する側頭骨亜全摘の術前,術後の放射線治療後,20年目に発症した側頭骨壊死の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

めまい外来1万例の統計的検討

著者: 嘉村恵理子 ,   相原康孝 ,   山口潤 ,   八木聰明

ページ範囲:P.901 - P.906

 はじめに
 めまいは,耳鼻咽喉科においては日常的な症候の1つであるが,その原因は多領域に及んでおり診断に苦慮することも多い。丁寧な問診を行ったうえで,的確に検査を選択していくことが必要となる。めまいの診断にあたり行われる検査の中でも,平衡機能を評価するための神経耳科学的検査の果たす役割は大きいと考えられる。
 当科では1967年より『めまい外来』を開設し,めまい患者の診察を行ってきた。現在までに既に約1万例を超すめまいの新患がこの外来を受診し,そのめまいの病因は耳鼻咽喉科領域にとどまらず,脳神経外科,内科,神経科など広い範囲にわたっている。当科では以前にもこのめまい外来の統計を行いその結果を報告している1,2)。また,過去にめまいについての統計や検討は他の施設からも数多くなされている3〜6)。しかし,1万例に及ぶ多くの症例についての検討は未だなされておらず,また以前当科で報告を行ってからも,めまいの診断技術の向上や社会環境の変化などから,めまい疾患の傾向は変化してきているものと思われる。そこで今回われわれは,めまい患者1万例の統計的検討を行い,その神経耳科学的検査の結果も加えて報告する。

腫瘍による顔面神経麻痺

著者: 浜田昌史 ,   齋藤春雄 ,   中谷宏章 ,   竹田泰三 ,   岸本誠司

ページ範囲:P.907 - P.910

 はじめに
 末梢性顔面神経麻痺のおよそ70%は完全に治癒するとされ,治癒しない麻痺の一因として腫瘍が挙げられる。一般に腫瘍による顔面神経麻痺は潜在性に発症し徐々に進行するとされるが,Bell麻痺のように突発的に発症するものや緩解と増悪を繰り返すものもあり,その経過は様々である。
 本稿では,当科で経験した腫瘍性顔面神経麻痺症例を検討し,その臨床的特徴について報告する。

鼻・副鼻腔内向型乳頭腫に対する内視鏡下鼻内手術

著者: 中野宏 ,   柴田敏章 ,   中井茂 ,   栢野香里 ,   福島龍之 ,   河田了

ページ範囲:P.913 - P.916

 はじめに
 鼻・副鼻腔内向型乳頭腫(inverted papilloma)は良性腫瘍であるが,再発しやすく,組織破壊性があり,癌の合併や癌化の可能性もあることから,臨床的には悪性腫瘍に準じた治療が施行されることが多い。一方,近年内視鏡下鼻内手術(以下,ESSと略)の普及と進歩に伴い,内向型乳頭腫に対するESSの適応について検討されるようになってきた1〜6)
 今回われわれは,内向型乳頭腫3例に対しESSを施行し,本疾患に対するESSの適応と限界および手術に際しての注意点などについて検討したので,若干の文献的考察を加え報告する。

顎下腺腫瘍34例の臨床的検討

著者: 篠原尚吾 ,   山本悦生 ,   田辺牧人 ,   宗田由紀 ,   前谷俊樹 ,   坂本達則 ,   金泰秀 ,   寺下健洋

ページ範囲:P.917 - P.920

 はじめに
 顎下腺腫瘍の発生頻度は耳下腺腫瘍に比べて低いものの,その中で悪性腫瘍の占める割合は高いといわれている1,2)。今回われわれは,過去約12年間に当科で経験した顎下腺腫瘍症例34例の,特に術前の良性,悪性の判断の可否について検討し知見を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する。

当教室における舌癌症例の検討

著者: 糸数哲郎 ,   古謝静男 ,   新濱明彦 ,   松村純 ,   真栄田裕行 ,   玉城三七夫 ,   我那覇章 ,   宇良政治 ,   野田寛

ページ範囲:P.921 - P.924

 はじめに
 舌癌は,頭頸部領域では比較的発生頻度が高く治療する機会も多い腫瘍であるが,早期の腫瘍でも治療後局所再発や頸部リンパ節転移をきたし治療に難渋することも少なくない。今回われわれは,1986〜1996年までに当教室で手術を中心に治療した舌癌症例について治療成績をまとめ,今後の治療成績の改善のため検討を行ったので報告する。

咽頭痛が主訴で来院した急性心筋梗塞の1例

著者: 三澤清 ,   浅井美洋 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.927 - P.929

 はじめに
 耳鼻咽喉科において,咽頭痛は日常よく遭遇する症状の1つである。その原因としては炎症性疾患が一番多いが,悪性腫瘍も注意を要する疾患の1つである。今回われわれは,咽頭痛を主訴に当院を受診し,対応に急を要した急性心筋梗塞の症例を経験したので報告する。

Waldeyer輪悪性リンパ腫52症例の治療成績

著者: 古謝静男 ,   糸数哲郎 ,   松村純 ,   新濱明彦 ,   真栄田裕行 ,   戸板孝文 ,   小川和彦 ,   野田寛

ページ範囲:P.931 - P.934

 はじめに
 頭頸部領域は節外性悪性リンパ腫の好発部位の1つである。特に,リンパ組織が集中しているWaldeyer輪は悪性リンパ腫が好発する。悪性リンパ腫はその起源細胞によりB細胞性,T細胞性あるいはNK (ナチュラルキラー)細胞性がある。Waldeyer輪には前者のB細胞性の悪性リンパ腫が多いが,T細胞性のリンパ腫も発症する1〜3)。また,T細胞性の場合でもHTLV−1(成人T細胞性白血病ウイルス)の関与しないものと,同ウイルスの関与する,いわゆるATLL(adult T-cellleukemia/lymphoma)があるが,その両者がWaldeyer輪には発生する4,5)。今回われわれは,ATLLを除くWaldeyer輪の悪性リンパ腫について臨床的,統計学的に観察を行った。その結果に若干の考察を加えて報告する。

発声練習が有効であった心因性失声症の1例

著者: 木村至信 ,   石山哲也 ,   小林潔子

ページ範囲:P.941 - P.944

 はじめに
 心因性発声障害は耳鼻咽喉科領域での報告が少なくないが,その治療を精神科医に委ねることが多く,耳鼻咽喉科医にも精神医学的知識の必要性が痛感される1)。その治療法に関しても様々な試みがなされているが2,3),今回われわれは,心因性失声症の患者にプッシング法による発声練習を試み,入院から7日目に有響音声を獲得できた症例を経験したので,若干の考察を加え耳鼻咽喉科における音声治療としての発声練習の重要性について報告する。

鏡下咡語

人工内耳ことはじめ—宮崎医科大学で

著者: 森満保

ページ範囲:P.938 - P.939

 日本での人工内耳移植術は3M社の単極のもので始まった。22chのコクレア社のものは,東京医大の舩坂教授によって実施されたのが最初であろう。国立大学では琉球大学の野田教授が始められた。戦後沖縄で流行した風疹聾への対策が目的と聞いている。宮崎医大では,その信頼性や優秀性は調査済であったが,実施はずるずると遅れた。予算もマンパワーも全くなかったからである。
 幸いに,F助手がドイツで知り合ったアイオア大学,タイラー教授の所に留学し,患者選択と術後リハビリの実際を勉強して来ることになった。早速助手在任のままで留学してもらった。国立大学の助手が留学する際には,研究留学という助手在籍のまま留学する立場と,研究休職をして留学する2つの立場がある。前者では給料が100%支給される。後者では60%支給となるが,代任助手を採用できる点が大きく違う。研究休職者が帰国したら助手籍を返すことが条件であるが,別の助手を任用できるので教室業務に支障はない。留学する側も安心して勉強できるよい制度である。

連載 小児の耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

④心因性難聴の取り扱い

著者: 神田敬 ,   工藤典代 ,   浅野尚 ,   市川銀一郎 ,   井上靖二 ,   大迫茂人 ,   沖津卓二 ,   川上頴 ,   古賀慶次郎

ページ範囲:P.947 - P.953

 はじめに
 心因性難聴については,特に1980年以後数多くの報告がみられる。その名称は心因性難聴以外に機能性難聴,非器質性難聴,精神的難聴,ヒステリー難聴など様々で,その概念や定義も多様で種々の見解がある。近年,複雑,多様化する社会構造の不確実性とそれに伴う,特に子どもの精神状況に著しい変化があり,家庭生活,学校生活でのストレスが増加してきていることが誘因の1つと考えられる。また,学校健診の普及で選別聴力検査の実施率が向上し,聴力の異常者がスクリーニングされやすくなってきている現況から,心因性難聴が検出される機会が多くなってきている。しかし,その病態が多種多様であるため,取り扱いが難しく,議論の余地がある。このような実状を踏まえて,(財)日本学校保健会のセンター事業として「心因性難聴小委員会」(古賀慶次郎委員長)が設置され,平成9年度より3年間の予定で調査研究を実施しており,平成11年度中に学校医向けと学校関係者への冊子を作成することにしている。
 本稿では,現在までに検討されてきた内容と問題点を従来の文献を参考にして紹介する。

手術・手技

オスラー病に対する超音波凝固切開装置の使用経験

著者: 大久保公裕 ,   八木聰明

ページ範囲:P.955 - P.958

 はじめに
 オスラー病(Oslar-Weber-Rendu病)は1901年に初めて報告された疾患であり,遺伝性出血性血管拡張症とも呼ばれている1)。その病名のごとく遺伝性(常染色体優性遺伝)があり,症状としては鼻出血や消化管粘膜の毛細血管拡張がみられる。耳鼻咽喉科的には口腔粘膜点状出血も認められ,診断の一助となる。その特徴である粘膜病変でも特に鼻粘膜病変は必発で,頻回の鼻出血で耳鼻咽喉科を受診することが多い。この鼻出血は血管の異常に起因するものであり,反復性で止血が困難である。現在,止血には粘膜電気凝固術2,3),レーザー焼灼術4〜8),鼻腔植皮術9,10)などが行われ,ホルモン治療としてのエストロゲン投与11)も有効とされている。しかし,確実な止血法がないのも事実である。今回われわれは,腹腔鏡下手術で広く使用されている凝固能の高い超音波凝固装置ハーモニックス カルペルTMを用いて,止血困難であったオスラー病の鼻粘膜凝固術を行ったので報告する。

--------------------

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第71巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?