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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻2号

1999年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

自己拡張型形状記憶合金ステントを用いた食道狭窄の治療

著者: 堂坂善弘 ,   田中克彦 ,   黒田徹 ,   愛宕義浩

ページ範囲:P.88 - P.89

 最近,食道悪性腫瘍の非根治例のQOL向上の目的で,狭窄食道腔を拡張する自己拡張型形状記憶合金ステントが開発され,その有効性が報告されている。今回われわれは,術後に生じた非腫瘍性食道狭窄に対してこのステントを応用した。
 対象は当科で喉頭癌,下咽頭癌手術を施行し,有茎皮弁や筋皮弁での再建後,食道狭窄を生じた以下の4症例である。症例1:68歳男性;喉頭癌,症例2:64歳男性;下咽頭癌,症例3:51歳男性;下咽頭癌,症例4:59歳男性;喉頭癌,舌癌。

Current Article

スギ花粉症の疫学

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.91 - P.95

 はじめに
 スギ花粉症の増加が指摘されて久しい。また,増加の原因について花粉飛散の増加や大気汚染の影響,寄生虫疾患の減少などが挙げられている。しかし,わが国におけるスギ花粉症の罹患率についての正確な報告はなされていない。これは花粉症の症状発現が当該する花粉飛散量に大きく依存しているためであり,年や地域によって大きく有症状者の数が変わることにある1〜2)
 医療機関受診者の臨床統計も多く存在する3〜5)。これらは医療機関の性格や専門性を強く反映したものであることや,花粉症が複数診療科で治療される可能性が大きいことを考慮すれば,花粉症のおおよその傾向をみることしかできない。特にOTC薬を用いている症例は結果的に対象とされていないことになる。一方,職域や地域住民を対象にした調査研究も,調査方法や花粉症の判定基準が異なること,経年的調査がなされていないことから相互の比較は困難である。
 このような現状を認識して,筆者らは1994年から京都府W町において,全学童と中学生を対象とした,自記式問診票と耳鼻咽喉科検診および血清アレルギー性検査(CAP-RAST法)を組み入れた経年的疫学調査を行っている。予定の10年の半ばを過ぎた1998年の時点におけるスギ花粉症の疫学調査について,文献的考察を行ったので報告する。

原著

遺伝性血管神経性浮腫(hereditary angioneurotic edema, HANE)の1症例

著者: 小田明子 ,   永井慶子 ,   岡村玲子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.97 - P.101

 はじめに
 遺伝性血管神経性浮腫(hereditary angioneuro-tic edema:以下,HANEと略)とは,補体第1成分阻止因子(以下,C1—INHと略)の減少により,種々の誘因で身体各部分に浮腫を生じる常染色体優性遺伝を示す疾患である。本邦では稀であり,現在までの報告例は28家系である。今回われわれは,口唇周囲と咽喉頭に浮腫を生じたHANEの症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

遺伝性血管神経性浮腫の1症例

著者: 片橋立秋 ,   宮崎三忠 ,   宗永元 ,   永田博史

ページ範囲:P.103 - P.106

 はじめに
 耳鼻咽喉科医が日常の臨床で遭遇する頭頸部浮腫疾患の多くはアレルギー性のクインケ浮腫であり,通常ステロイド,抗ヒスタミン剤などで治療可能である。今回われわれはステロイド,抗ヒスタミン剤に全く効果を示さず,3回の気管切開を必要とした喉頭浮腫症例を経験した。血清学的に補体第1成分阻止因子(C1—inactivator,C1—inhibitor:以下,C1—INHと略)の活性低下を示し,家族性は明らかでないものの遺伝性血管神経性浮腫(hereditary angioneurotic edema:以下,HANEと略)と診断されたため,若干の文献的考察を加えて報告する。

サーファーにみられた外耳道完全骨性閉鎖の1例

著者: 山本一博 ,   小川克二 ,   井口芳明 ,   伊藤昭彦 ,   越野樹典 ,   加藤幸子

ページ範囲:P.109 - P.112

 はじめに
 外耳道に慢性的な冷水刺激を受ける潜水夫,海女,サーファーなどに外耳道の骨性閉鎖を生じることがある。その本態は外耳道外骨腫(以下,外骨腫と略)として論じられ,いわゆる外耳道骨腫(以下,骨腫と略)とは臨床的にも病理組織学的にも明確に鑑別し得るとした報告が多い1〜3)。今回われわれは,頻回のサーフィン歴があり,骨腫とも外骨腫とも明確に診断することが困難であった外耳道骨性完全閉鎖症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

頬部に発生した石灰化上皮腫の1例

著者: 清水啓成 ,   曽爾信行 ,   原睦子 ,   馬場道忠 ,   徳永英吉 ,   山本雅博

ページ範囲:P.115 - P.118

 はじめに
 石灰化上皮腫は若年者の顔面,上肢などに好発する毛嚢系腫瘍である。組織学的には主として好塩基細胞とそれより移行する陰影細胞よりなる。従来,皮膚科領域の疾患として取り扱われ,耳鼻咽喉科領域での報告は少ないが,頭頸部領域が好発部位である。今回われわれは,左頬部に発生した石灰化上皮腫の1例を経験したので報告する。

動眼神経麻痺をきたした蝶形骨洞炎の1例

著者: 高橋利弥 ,   石川健 ,   小野寺毅 ,   日高徹雄 ,   村井和夫

ページ範囲:P.119 - P.121

 はじめに
 蝶形骨洞のムコツェーレ,またはピオツェーレにより,周囲の骨が破壊され頭蓋内や眼窩内の組織が圧迫され,眼球突出や視力低下,眼球運動障害などを呈した報告は数多く見受けられる。しかし,骨破壊を伴わず骨壁や静脈路を介し炎症が副鼻腔外に波及した報告は比較的稀である1)。今回われわれは,視力障害を伴わず動眼神経麻痺で発症した蝶形骨洞炎の1症例を経験したので,その概要を報告するとともに動眼神経麻痺の成因について考察を行った。

上咽頭癌に対する手術法maxillary swing approachの経験

著者: 横島一彦 ,   中溝宗永 ,   後藤穣 ,   陣内賢 ,   矢嶋裕徳

ページ範囲:P.123 - P.126

 はじめに
 上咽頭癌の治療は,放射線治療と化学療法が主体である1,2)。しかし,一次治療後の残存や再発症例に対しては,積極的に原発巣に対する外科的治療を行うようになってきている3〜5)。近年の頭蓋底外科の進歩や画像診断の発達は,効果的な外科的治療を可能にしており,上咽頭癌の治療成績の向上につながると思われる。
 上咽頭へのアプローチの方法により根治切除が可能な範囲,術後合併症には差があり,癌の進展範囲と術後のQOLを考慮して術式が選択されているが3),術式の選択基準の詳細については不明な点も多い。適切な術式を選択するために,各術式での手術侵襲や術後合併症の程度と根治切除の限界について,より詳細に認識する必要があると思われる。
 この報告では,上咽頭へのアプローチの1つとしてWeiら6)が提唱したmaxillary swingapproach (MSA)で外科的治療を行った上咽頭癌の1症例を呈示し,MSAの適応と限界について考察した。

呼吸困難を呈した咽後膿瘍の1例

著者: 越野樹典 ,   小川克二 ,   井口芳明 ,   山本一博

ページ範囲:P.131 - P.133

 はじめに
 咽後膿瘍は3歳以下の乳幼児に発症することが多く,加齢とともに発症頻度は減少し成人には少ないとされてきたが,近年では成人に発症する割合が増加している1〜4)
 今回われわれは,上気道感染に伴い発症し,急激に病状が悪化して呼吸困難をきたし,気管切開術を行った咽後膿瘍の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

喉頭saccular cystの1例

著者: 岡田亜紀 ,   湯本英二 ,   西原信成 ,   上甲英生 ,   小林丈二

ページ範囲:P.135 - P.138

 はじめに
 喉頭嚢胞は嚢胞の内容が空気である喉頭気腫と,内容が粘液であるいわゆる狭義の喉頭嚢胞に分類される。後者のうち,喉頭小嚢開口部が何らかの原因により閉塞し生じるものを喉頭sac-cular cystと呼ぶ。海外では幼児期に呼吸困難をきたす疾患として多数報告されているが1〜3),本邦ではその報告は少なく稀な疾患と考えられている。今回われわれは,MRI検査により偶然発見された成人喉頭saccular cystの1例を経験したので報告する。

扁桃周囲膿瘍で発症したSweet病の1症例

著者: 村川哲也 ,   小坂道也 ,   森聡人 ,   溝渕光一

ページ範囲:P.141 - P.145

 はじめに
 Sweet病は独立した疾患として認められ,悪性腫瘍,特に白血病との合併の多いことが知られている。また近年,骨髄増殖性疾患1),骨髄異形成症候群2)などに合併した本症の報告が増えている。
 この疾患は,しばしば前駆症状として咽頭痛を伴うことが知られており,扁桃病巣感染症との関連が疑われている。
 今回,われわれは扁桃周囲膿瘍で香川労災病院耳鼻咽喉科を受診し,その特徴的な皮疹の病理組織所見からSweet病と確認した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

甲状腺手術前に指摘し得たnon-recurrent laryngeal nerveの1例

著者: 加藤昭彦 ,   山田弘之 ,   石永一

ページ範囲:P.146 - P.149

 はじめに
 反回神経の走行異常であるnon-recurrent la-ryngeal nerve (以下,NRLNと略)は1823年にStedman1)により初めて報告されて以来,本邦でも報告2〜8)が散見されるようになっている。NRLNの発生頻度は報告により幅があり,佐野ら2)は0.4%,吉田ら3)は1.1%,大下ら4)は2.1%としている。しかし,それだけの頻度で遭遇する可能性があるにもかかわらず,報告例の大部分は術中にNRLNが確認されたものであり,術前よりNRLNの存在を疑ったうえで手術により確認した報告は少ない。
 今回われわれは,甲状腺乳頭状腺癌に対して術前に行った頸部CTにおいて右鎖骨下動脈起始異常の存在が疑われたため,右NRLNを疑ったうえで甲状腺全摘術を行い,NRLNを確認し得た症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

医療ビッグバンがやってくる

著者: 松永喬

ページ範囲:P.128 - P.129

 医療ビッグバンが間近に近づいている
 現在のわが国の医療は未曾有の厳しい状況に直面しているといえる。それは1997年9月の健保改正によって,社保本人の2割負担,薬剤負担など患者さんの自己負担の大幅なアップが行われ,その結果として日常医療の現場では厳しい受診抑制が起こっていることからも窺える。新聞紙上によると,厚生省の最近の発表で医療費の動向は1997年9月以降,対前年度比で大幅な減少がみられ,1998年度の国民医療費の見込み額は対前年度1.1%減の28兆8,000億円と推計され,国民皆保険発足以来史上初の医療費のマイナスの伸びに転じるとされている。また,1996年度の厚生省の事業概況では,厚生年金基金の資産総額が全体では将来の給付に備えて確保しなければならない責任準備金の額を下回り,基金全体として初の赤字といわれている。
 これらの事態は昨今の金融ビッグバンと連動して,医療福祉の分野でもビッグバンが否応なしに迫り,少しずつ現実のものとして動き出さねばならないことを意味していると思う。

手術・手技

副咽頭間隙に進展した耳下腺腫瘍の2例—その手術法について

著者: 横山晴樹 ,   深澤收

ページ範囲:P.151 - P.155

 はじめに
 副咽頭間隙を占拠する腫瘍は,これまで比較的稀とされてきたが,CTやMRIによる画像診断が発達した今日では,以前ほど稀ではなくなってきている1,2)。しかし,副咽頭間隙は解剖学的に複雑な部位のため,その部位を占拠する腫瘍の摘出には困難が伴い,これまで様々な工夫がなされてきている。今回われわれは,副咽頭間隙に進展した耳下腺腫瘍の2例を経験し,その手術を単純弧状切開で外耳道を横断する方法で行ったので,その手術法について若干の文献的考察を行った。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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