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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻4号

1999年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

嗅神経芽細胞腫の1例

著者: 石田良 ,   窪田哲昭 ,   松井和夫 ,   大橋一正 ,   門倉義幸

ページ範囲:P.240 - P.241

 嗅神経芽細胞腫は,嗅裂部を中心に発生するといわれている比較的稀な悪性腫瘍である。症状としては鼻出血が最も多く,出血性鼻茸との鑑別が必要となる。術前の組織診では諸家の報告をみても悪性リンパ腫,低分化型扁平上皮癌,小細胞癌,横紋筋肉腫など様々であり必ずしも容易ではない。鼻腔天蓋より頭蓋底へ進展しやすく,治療としては,鼻・副鼻腔領域を超えたものには手術と放射線を併用したほうが治療成績はよいとの報告もあるが,放射線感受性はあり,また節骨篩板における腫瘍の残存を明確にできない場合もあり,放射線を併用したほうが無難と思われる。本症例は,鼻・副鼻腔内に限局していたが,手術と放射線を併用し良好な経過の1例を経験したのでここに報告する。
 症例は74歳,男性。主訴は左鼻閉感・鼻出血で,平成9年3月に入浴後鼻出血があり,その後,鼻腔内の鈍痛が持続し,5月になり再度出血があったため近医を受診し,出血性鼻茸の疑いで当科を紹介され受診した。初診時の鼻内所見は左鼻腔内に上方より下垂したポリープ様で,表面平滑で淡赤色,弾性やや軟,易出血性の腫瘤を認めた(図1)。穿刺吸引細胞診では悪性の可能性ありとのことであった。CT所見は左鼻腔内に腫瘤性病変を認め篩骨洞内へ侵入していたが,上顎洞内へは侵入していなかった(図2)。Gaシンチでは集積を認めなかった。

原著

頸部亜急性壊死性リンパ節炎の2例

著者: 武田広誠 ,   前嶋啓孝 ,   板野正敬

ページ範囲:P.243 - P.246

 はじめに
 亜急性壊死性リンパ節炎は,リンパ節に特異な壊死病変をきたし,しばしば悪性リンパ腫などとの鑑別を要する疾患である。今回われわれは,半年間に臨床的には非定型的な経過を示した2例の頸部亜急性壊死性リンパ節炎を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

最近経験した亜急性壊死性リンパ節炎

著者: 木村隆保 ,   平田行宏 ,   四ノ宮隆 ,   村上泰

ページ範囲:P.247 - P.251

 はじめに
 頸部リンパ節腫脹は様々な原疾患により生じ,悪性疾患や重篤な疾患の1症状である場合もあるので,迅速かつ的確な診断が要求される。その中でも,亜急性壊死性リンパ節炎は比較的経過が長く,診断や鑑別に苦慮することが多い。そこで,最近われわれの経験した亜急性壊死性リンパ節炎症例について,その病態や症状,検査所見などを比較検討し考察したので報告する。

基礎疾患のない健康成人に発症した頸部リンパ節結核の3症例

著者: 中原はるか ,   武藤奈緒子 ,   武田英彦 ,   滋賀秀壮 ,   熊川孝三

ページ範囲:P.253 - P.257

 はじめに
 国際的な努力にもかかわらず,結核は今なお重要な感染症の1つで,細胞性免疫を低下させる後天性免疫不全症候群(AIDS)の出現に伴い再度世界的に増加する傾向にある1)。日本では1996年に全国で42,472人の結核患者が新規登録されたが2),1997年では38年ぶりに結核感染が増加し,42,715人が新規登録されたという報告が先頃なされた3)
 東京中心部にある虎の門病院で,続けて健康成人3症例の頸部リンパ節結核を経験したので,今後再び増加する可能性を考え,耳鼻咽喉科における結核の診断,治療,問題点を考察した。

副耳下腺腫瘍の1症例

著者: 森貴稔 ,   藤村和伸 ,   杉本卓也 ,   黒田嘉紀 ,   工藤香児 ,   牧嶋和見

ページ範囲:P.259 - P.262

 はじめに
 副耳下腺は,耳下腺本体とは明らかに解剖学的に分離した異所性唾液腺の1つであり1),副耳下腺それ自体の存在は稀ではない2,3)。しかし,副耳下腺に発現する腫瘍の頻度は少ないと言われている4〜6)。われわれは,副耳下腺に発生した多形腺腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

耳下腺癌再発例の拡大全摘手術の経験

著者: 陣内賢 ,   中溝宗永 ,   富山俊一 ,   嘉村恵理子 ,   後藤穣 ,   渡邊健一 ,   池園哲郎 ,   百束比古 ,   大河原大次

ページ範囲:P.265 - P.269

 はじめに
 進行耳下腺癌は外耳道,下顎骨,側頭骨,顎関節などの耳下腺をとりまく解剖学的な問題があるため,大きく病変部位を切除するのは困難なことが多い。今回われわれが経験した2例はいずれも再発例で,外耳道前下壁から翼突筋,乳様突起に至る部分に癌の浸潤を認めた。頭蓋底,内頸動脈には浸潤がなかったため,乳突蜂巣を削開して骨部外耳道,下顎関節包,頬骨,翼突筋とともに腫瘍を一塊に切除できた。この2症例の手術経験について報告する。

当科における甲状腺癌の治療成績—リンパ節転移(N)が予後因子か?

著者: 大渡隆一郎 ,   飯塚桂司 ,   高木大 ,   及川敬太 ,   愛宕義浩

ページ範囲:P.271 - P.275

 はじめに
 甲状腺癌の予後を左右する危険因子を初診時の患者の状態でスコア化する試みがなされており,EORTC score1)およびAGES score2)がその代表的なものである。いずれも初診時年齢を重要視しているが,EORTC scoreは分化癌以外の甲状腺癌についても含めて検討している。
 甲状腺分化癌のように多数の因子が予後に関与する場合,これらを同時に考慮して関連度を推定し,偏りを是正する方法として,近年はCoxの重回帰型モデルによる予後因子の解析が行われている。呉ら3)は対象を乳頭癌に限局し,1964〜1987年までの227例に対し検討を行い,診断時年齢が最も重要な予後因子であったとしている。年齢の因子に次いで,原発腫瘍の大きさ(T)と頸部リンパ節転移(N)の因子も予後に影響したという報告4)や,遠隔転移の有無が予後に寄与していたという報告5)もある。このように年齢を最重視する傾向があるが,リンパ節転移の程度も甲状腺癌の治療において無視できない問題であると思われる。
 当科における甲状腺悪性腫瘍の治療成績を報告すると同時に,分化癌における予後を左右する因子について検討を加えたので報告する。

外耳道ダニ寄生による耳鳴の1症例

著者: 富澤秀雄 ,   飯田順 ,   岩武博也 ,   加藤功 ,   高井憲治 ,   高岡正敏

ページ範囲:P.276 - P.278

 はじめに
 昆虫などの有生異物による外耳道異物は,日常臨床において,ときに遭遇する疾患の1つであり,過去に報告された外耳道内に侵入した有生異物として,ガ,コガネムシ,ハエなどは多くあるが,ダニ類の報告は少ない1〜4)
 われわれは耳鳴を主訴として来院し,その原因が外耳道のダニ寄生と思われた稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

耳鳴を主訴とした未破裂脳動脈瘤の1例

著者: 畑中幸子 ,   寺西重和 ,   石丸正 ,   土定建夫 ,   古川仞

ページ範囲:P.283 - P.285

 はじめに
 耳鳴は,難聴などとともに聴覚異常の1つであり,日常外来でよく遭遇する症状である。原因不明の内耳性難聴が背景にあることが多いが,ときに重篤な疾患の1症状であり,耳鳴が疾患発見のきっかけになることも少なくはない。
 今回,われわれは耳鳴・難聴のみの初発症状で発見され,クリッピング,塞栓術で動脈瘤の破裂を未然に防ぐことができた中大脳動脈瘤の1例を経験したので報告する。

内耳道狭窄の1症例

著者: 和田由起 ,   春田厚 ,   小宗静男

ページ範囲:P.287 - P.291

 はじめに
 一側性先天性感音難聴は乳幼児期に気づかれることは少なく,就学時検診で発見されることが多い。ムンプス,麻疹など因果関係のはっきりしているものもあるが,先天性感音難聴児のうち46%が原因不明とされる1)。近年画像技術の向上は,内耳道,蝸牛,前庭など様々の微細な側頭骨形態の異常所見を提供し,日常診療において感音難聴の原因を推定することが可能となった。その結果,側頭骨形態異常に伴う感音難聴に関する報告も散見されるようになった2)。その中でも内耳道に限局した形態異常は稀である3)
 今回われわれは,内耳道狭窄単独の異常が原因と考えられる前庭機能,顔面神経機能の正常な一側性感音難聴症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

音響耳管機能検査で興味ある所見を示した耳管開放症例

著者: 吉田耕 ,   日野剛 ,   今野昭義

ページ範囲:P.293 - P.296

 はじめに
 耳管開放症は耳閉感や自声強聴を主訴とする疾患で,急激な体重低下,妊娠,ピルの投与,神経筋疾患などにより誘発されることが報告されている1)。耳管開放症は鼻深呼吸やToynbee法による鼓膜の内外への動きを特徴とし,音響耳管機能検査などの耳管機能検査で診断できる2)。今回われわれは,音響耳管機能検査で特徴的な波形を示した耳管開放症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

扁摘・アデノイド切除後に診断された血友病A患児の1症例

著者: 石永一 ,   加藤昭彦 ,   山田弘之

ページ範囲:P.299 - P.302

 はじめに
 血友病は比較的少ない疾患で,一般の耳鼻咽候科医が遭遇する機会は稀と思われる。血友病の臨床像としては,関節内出血,皮下深部出血,創傷出血遅延などを呈するといわれているが,軽症例では典型的な症状が認められず,術前に血友病の診断がなされていない可能性もあり得る。今回の症例は,術後アデノイドから出血を繰り返し確定診断に至った。いったん術後出血をきたすと止血には難渋し,咽頭への血液の流入のため,患者は嘔吐をきたしたり,最悪の場合気道閉塞をも引き起こしかねない。術後出血を防ぐためにも術前検査,特にAPTTを含めた凝固系スクリーニングの重要性を再認識したので報告する。

頭頸部領域に発生したfibrous dysplasiaの2症例

著者: 宇野芳史

ページ範囲:P.305 - P.309

 はじめに
 Fibrous dysplasiaは,1938年にLichtenstein1)が命名した組織学的に線維性結合の増殖と未熟な骨梁の新生を特徴とする原因不明の骨疾患である。本疾患は全身の骨に単発性,多発性に生じるが,大多数は大腿骨,脛骨のような長管骨に生じ,頭頸部領域の骨に生じることは稀であるとされている。今回,上顎骨,側頭骨に生じたfibrousdysplasiaの各1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

喉頭蓋に発生した皮様嚢胞の1例

著者: 真栄田裕行 ,   古謝静男 ,   糸数哲郎 ,   野田寛

ページ範囲:P.311 - P.314

 はじめに
 一般に頭頸部に発生する真性嚢胞性疾患には,貯留嚢胞,鰓原性嚢胞,皮膚嚢胞などがあり,いずれもわれわれ耳鼻咽喉科医が比較的遭遇する疾患である。今回経験した皮様嚢胞は皮膚嚢胞に属し,比較的若年者に性差なく発生して緩徐に発育し,汗腺,皮脂腺の活動が活発になる思春期以降に急速に増大するとされている1)。また,全身のあらゆる部分に発生するが,一般的には卵巣や,肛門を含む直腸に好発する。頭頸部領域では主に眼窩,口腔での発生例が多く報告されている。喉頭蓋舌面から舌根部にかけての中咽頭領域においては,類似疾患である類表皮嚢胞の報告は散見されるものの,皮様嚢胞の報告例はみあたらない。今回われわれは,喉頭蓋に発生した皮様嚢胞の1例を経験したので報告する。

鏡下咡語

ちょっと変った木,アカメガシワ

著者: 中野雄一

ページ範囲:P.280 - P.281

 人にも変り者がいるように,樹木にも変った木がある。そんな木も人と同じようにちょっと見ただけではとりわけどうということはないのだが,ひょんなことから少し変っているなあと思うと,やがてかなり変っていることに気づき驚くことがある。そんな木の1つにアカメガシワ(赤芽柏)がある。
 この木のどこが変っているかというと,春の若芽で目にもあざやかな真紅の葉で芽を吹く(図1)。これが名前の由来でもあるが,半月もすると葉の成長とともに色もあせ,ピンクから白っぽくなり,やがて黄色味を帯びて最後には普通の緑色になる(図2)。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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