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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻5号

1999年04月発行

雑誌目次

I.再建材料とその採取法 1.皮膚

植皮

著者: 寺尾保信

ページ範囲:P.7 - P.14

 はじめに
 近年では,薄層皮弁の開発,組織拡張器の応用,レーザー外科の発達などにより,頭頸部に遊離植皮術を行う機会は少なくなった。本稿では遊離植皮術の利点を見直し,いまだ遊離植皮術が第1選択となる症例を挙げながら手術の実際を紹介する。

2.皮弁

(1)有茎—DP皮弁の特徴と安全な採取法

著者: 永原國彦

ページ範囲:P.15 - P.19

 はじめに
 これまでに開発された多数の有茎皮弁のうちで,現在もその利用価値が広く認められているものはDP皮弁と前頭皮弁であろう。これらはいずれもaxial patternの血行を主体とした生きのよい皮弁であり,遊離皮弁が普及した近年においても,皮弁の採取に少しの工夫を加えることにより,その広い適応ならびに有用性は保証されていると考える者は多い。
 本稿では,浅側頭動静脈に栄養され,頭蓋底の再建や顔面,鼻などの再建に用いられる前頭皮弁には触れず,頭頸部外科術後の再建において,頸部皮膚欠損の被覆のみならず,喉頭・気管あるいは中咽頭から頸部食道に至る再建において,広い適応をもつDP皮弁の解剖的特徴とその安全な採取法についてのみ述べる。その他の皮弁においても,その栄養血管分布がaxial patternを主体としている場合には,その取り扱いの原則は共通だからである。

(2)血管付き—前腕皮弁の採取法

著者: 中溝宗永

ページ範囲:P.22 - P.27

 はじめに
 前腕皮弁は1978年,中国で開発され,既に約20年の歴史をもつ1)。周知のように,今や頭頸部癌切除後の再建材料として欠かすことのできない遊離皮弁である。したがって,この皮弁の採取は頭頸部外科を志す者にとって必須の手術手技といっても過言ではない。この皮弁がわが国で頭頸部再建術に用いられるようになってからでも10数年が経過している。その採取法に関する記載2〜6)は数多くあるが,筆者らの経験も初学者の参考となれば幸いと考え採取手技について述べる。

(2)血管付き—前外側大腿皮弁

著者: 光嶋勲 ,   稲川喜一 ,   森口隆彦

ページ範囲:P.28 - P.34

 はじめに
 1984年に発表された前外側(または前内側)大腿皮弁1)は,これまでの遊離皮弁と比べ多くの利点をもつことがわかり,頭頸部再建の有力な候補となりつつある。われわれも1985年以来,これまでに200例以上の遊離前外側(または前内側)大腿皮弁を用いた再建を行ったが,いくつかの新しい頭頸部の再建術(キメラ型合併組織移植,モザイク型連合皮弁移植,thin flap,血管付き外側大腿神経移植など)が考案され続けている2〜15)。これらの経験を通じて本皮弁の大まかな特長として,以下の事項を挙げたい。
 (1)複雑な欠損に対応でき成功率が極めて高い。
 (2)腫瘍切除と皮弁挙上が同時に進行でき,広範囲欠損例に要する従来の手術時間を大幅に短縮した。
 (3)再発を繰り返す頭頸部癌の複数回切除再建を可能とした。
 以上より,われわれにとって本皮弁は頭頸部再建の切り札となっている。さらに近年,本皮弁の血行の解剖学的特徴は穿通動脈皮弁の概念を生み,腹直筋穿通皮弁などの新しい穿通皮弁が次々と開発されつつある。本稿では,この前外側(または前内側)大腿皮弁の解剖とその採取法を主に述べる。

3.筋皮弁

大胸筋皮弁

著者: 斎藤等

ページ範囲:P.35 - P.39

 はじめに—生着率100%を目指して—
 1979年にAriyan1)によって発表された大胸筋皮弁は頭頸部再建外科に飛躍的貢献をした。しかし,必ずしも全例が生着するとは限らないことが報告されてきた2〜4)。そこで,どうすれば生着率を向上できるかを検討してきた結果を紹介し,参考に供したい。

広背筋皮弁の採取法と実際

著者: 酒井成身

ページ範囲:P.41 - P.46

 はじめに
 広背筋皮弁は,各種皮弁の概念において,同時に移動する筋が血行の通路として厚い組織を移動するための筋皮弁として先駆的役割を果たした中心的な存在である。広背筋は腰背部から起こり上腕骨近位部に停止し,その部を要とするような扇形をした体の中で最も大きい筋である1)。広背筋へ腋窩部から入り込む栄養血管の胸背動静脈も太く長く,腋窩部をピボット・ポイントとして胸部や側頭部2),頸部3),頬部や肩4),上腕5)の大きな皮膚皮下組織の欠損を覆うことができる非常に有用な筋皮弁である。さらにマイクロ・サージャリーにより血管吻合を行い遊離皮弁とすれば4,6),遠く離れた部位にある組織欠損へも移植できる。また,特にこの筋皮弁は乳房再建に最もよく用いられる重要な筋皮弁で7,8),筆者はこの筋皮弁を多用している。

腹直筋皮弁

著者: 勝又純俊 ,   原科孝雄

ページ範囲:P.47 - P.52

 はじめに
 腹直筋(rectus abdominis muscle)は,上方からは内胸動静脈(internal thoracic artery and vein)の続きである上腹壁動静脈(superior epigas-tric artery and vein)で栄養され,下方からは外腸骨動静脈(external iliac artery and vein)の枝である下腹壁動静脈(inferior epigastric artery and vein)で栄養されている。
 一般に腹直筋皮弁(rectus abdominis musculo-cutaneous flap)をデザインする場合,この上腹壁動静脈ないし下腹壁動静脈のいずれかを栄養血管とする筋皮弁としてデザインされる。上腹壁動静脈を茎としたいわゆる上腹直筋皮弁は,普通,腹直筋起始部をpivot point (皮弁のrotationの支点)とする有茎皮弁(pedicled flap)としてデザインされるが,これは頭頸部再建の筋皮弁としては血管茎の長さが不足し,筋皮弁が頭頸部の組織欠損部には届かない。また上腹壁動静脈は,後述する下腹壁動静脈に比べて径が細く,十分な長さの血管茎も得にくいため,遊離筋皮弁(free flap)とするには適当でない。そのため,上腹直筋皮弁が頭頸部再建に利用されることはほとんどない。

4.骨付き筋皮弁

(1)肋骨付き皮弁—肋骨広背筋皮弁

著者: 丸山優 ,   大西清

ページ範囲:P.53 - P.58

 はじめに
 各種機能の複合体となる頭頸部領域の障害は,単に日常生活での制限を強いられるばかりでなく,全身的影響に加え整容的,精神的にも極めて重要な意味をもつ。その修復再建にあたっては,種々の損傷に対し温存された機能と形態を正確に把握し,個々のもつ諸条件を加味したうえでより確実な再建法を選択することが肝要となる。その主軸をなすのが皮弁移植術であり,その発達,とりわけ骨付き皮弁の導入は,頭頸部再建に多くの恩恵をもたらしたといえる。本稿では肋骨広背筋皮弁についてその概要を述べる。

(1)肋骨付き皮弁—肋骨付き大胸筋皮弁の採取法と下顎再建における利用法

著者: 沼田勉 ,   今野昭義 ,   花沢豊行 ,   永田博史 ,   寺田修久

ページ範囲:P.60 - P.66

 はじめに
 下顎骨に浸潤または近接する舌,口腔底癌,下歯肉癌では下顎骨合併切除が必要となる。下顎再建には硬度,強度に優れ,十分に幅の広い移植骨を採取できることから,一般的には骨付き肩甲皮弁が第1選択となる。しかし高齢,その他の理由から,できるだけ短時間で再建術を完了しなければならない症例では,肋骨付き大胸筋皮弁を用いることが少なくない。また腫瘍の進展範囲によっては下顎骨を離断することなく,下顎骨下縁を細くframe状に残すことができる症例もある。そのような症例では,残存下顎骨の上にonley bone graftの形で肋骨付き大胸筋皮弁として移動した肋骨を固定して,下顎骨を補強することが多い。
 本稿では肋骨付き大胸筋皮弁の作成法と下顎再建への利用法について述べる。

(1)肋骨付き皮弁—肋骨付き腹直筋皮弁;内胸動脈複合皮弁と下腹壁動脈茎肋骨付き腹直筋皮弁

著者: 竹市夢二 ,   亀井壯太郎 ,   小山新一郎 ,   花井信広 ,   多田宏行 ,   村上信五

ページ範囲:P.67 - P.75

 はじめに
 筆者らは1991年以来,内胸動静脈を血管茎とし胸部皮弁,肋軟骨・肋骨弁,腹直筋皮弁の3要素からなる内胸動脈複合皮弁を開発し,主として頭蓋,頭蓋底,上顎の再建に用いてきた1〜3)。一方,近年下腹壁動静脈茎の腹直筋皮弁に肋軟骨の一部を付ける試みも報告されている4,5)
 この2種類の皮弁は肋軟骨(あるいは肋骨)と腹直筋皮弁を含む点では似通っているが,内胸動脈複合皮弁が内胸動脈を主血管系として肋軟骨・肋骨弁,胸部皮弁,腹直筋皮弁を直接血行支配しているのに対し,下腹壁動脈茎肋骨付き腹直筋皮弁の肋軟骨・肋骨弁は下腹壁動脈と吻合する上腹壁動脈を介しての二次血行支配である点が大きく異なる。
 内胸動脈複合皮弁は剣状突起周辺を中心にコンパクトにもデザインでき,また前腋窩線まで後方,腹直筋全長にわたる巨大な皮弁としても挙上できるため,単純上顎全摘から頭蓋上顎を含む複雑な巨大欠損まで対応可能である。また,内胸動脈皮膚穿通枝を利用し胸部皮弁を挙上できる。下腹壁動脈茎肋骨付き腹直筋皮弁は腹直筋がbulkyであるため,必要とされる硬性支持が単純な大欠損に適する。

(2)肩胛骨付き皮弁の採取法

著者: 西川邦男

ページ範囲:P.77 - P.84

 はじめに
 肩胛骨付き皮弁の最大の特徴は,肩胛下動静脈系の一対の血管柄で皮弁と骨弁を同時に挙上できるところにある。皮弁と骨弁の自由度は大きく,複雑な形態が要求される頭頸部再建に適している1〜3)。本稿では肩胛骨付き皮弁の採取法について,筆者が施行している実際の手術手技と皮弁挙上の際の注意点を詳述する。

5.骨弁

腓骨皮弁

著者: 田原真也 ,   中原実

ページ範囲:P.86 - P.88

 I.特徴
 頭頸部悪性腫瘍摘出に際して,軟部組織のみならず,硬組織までが合併切除されることは少なくない。このような場合の再建材料は,骨と軟部組織からなる血管柄付き自家複合組織移植が第1選択である。その代表である腓骨皮弁について述べる。その特徴は以下のごとくである。
 1)一対の腓骨動静脈を血管柄として腓骨(fibula)および下腿皮弁(peroneal flap)1)を同時に移植することができる2)(図1)。

6.その他の再建材料

遊離空腸,遊離結腸,人工材料

著者: 朝戸裕貴 ,   波利井清紀

ページ範囲:P.89 - P.93

 I.遊離空腸
 現在,下咽頭・頸部食道癌切除後の頸部食道再建に対しては,マイクロサージャリーを用いた遊離腸管(特に空腸)移植が広く行われており,その手術手技もより洗練されたものとなってきている1,2)
 下咽頭・頸部食道癌切除後の頸部食道欠損を自家腸管の遊離移植によって再建する方法は,1959年,Seidenbergら3)によって報告されている。その後中山ら4)の報告がなされているが,外径2〜3mmの血管を肉眼的に吻合することが困難で不確実であったためか,1980年代になるまで一般化するには至らなかった。しかし,近年のマイクロサージャリーの発展により微小血管吻合が安全に行われるようになったため,遊離空腸移植を用いた頸部食道欠損の再建は安定した好成績を収めるようになった。

II.再建部位による再建材料の選択と再建方法

1.頭蓋底の再建

著者: 行木英生 ,   福積聡 ,   安心院康彦 ,   田中一郎

ページ範囲:P.97 - P.104

 はじめに
 頭蓋底再建は硬膜,頭蓋底骨,外頭蓋底の三層構造の欠損を同時に再建して,致命的な頭蓋内合併症の発生を予防し,なおかつ3次元的な頭蓋顔面形態の修復をも図らねばならないところに,他の再建部位とは異なる再建のコンセプトが必要である。本稿ではチームサージャリーとして頭蓋底手術を始めた1991〜1998年までの8年間に行われた60例(良性,悪性を含む),65回の手術経験をもとに,再建のコンセプトとわれわれが行ってきた頭蓋底再建について述べることにする。

2.上顎の再建

著者: 竹市夢二 ,   亀井壯太郎 ,   小山新一郎 ,   花井信広 ,   多田宏行 ,   村上信五

ページ範囲:P.106 - P.116

 はじめに
 上顎の再建は,単純上顎全摘から眼球や顔面皮膚欠損,頭蓋・頭蓋底欠損に至るものまで様々なヴァリエーションに富んだ再建が求められる。そのための再建材料も軟部組織と硬性組織を有しているのは当然としても,それぞれが複雑な顔面の形態を再現できるだけの可塑性をもち合わせていなければならない。また,顔面の再建では色調と質感が重要であるし,眼瞼や外鼻の形態を再現しなければならないこともある。
 再建材料を選択するにあたって,われわれは単純上顎全摘以下の欠損と拡大上顎全摘以上の再建では分けて考えており,顔面の再建材料はなるべく顔面に恵皮部を求めるようにしている。

3.口腔・舌の再建

著者: 浅井昌大

ページ範囲:P.117 - P.124

 はじめに
 舌がんを初めとして口腔がんの切除では,再建術の存在により初めて形態・機能の維持が可能となった症例が多数認められ,他がんに増して再建術の有用性が認められる部位である。
 しかし,口腔・舌の再建はもともとの音声言語,咀嚼・嚥下機能や切除範囲により,再建の必要性,再建材料や方法の選択がされる必要があり,症例ごとに検討を要する。したがって,年齢,職業,残存する歯牙の状態,食事内容などを術前に十分把握したうえで,腫瘍の進展範囲から必要な切除範囲,必要な切開線を割り出し,要求される水準に最も近づけられる再建後の状態を想定し,それに見合う再建材料,再建方法を決定する。一方,全身状態からその手術が可能かを見極めておく必要がある。つまり,再建手術の最も重要な点は術前の十分な検討である。国立がんセンターにおいては,頭頸部外科医が予想される切除範囲と予後を明らかにしたうえで形成外科医が十分な診察を行い,術前の全身状態,口腔内の所見,採取し得る皮弁の状況などの判断を行い,頭頸部外科医,形成外科医の十分なディスカッションを重ねて再建方法や材料を決定する。また,術後義歯やプロテーゼを装着する必要がある場合は歯科と,放射線治療を行う場合は放射線科やmedical on-cologistとも協議をして,術後の回復期間や,照射に伴う炎症や乾燥による嚥下障害も考慮していく必要がある。

4.中咽頭の再建

著者: 苦瓜知彦

ページ範囲:P.125 - P.131

 はじめに
 中咽頭癌に対する手術(拡大切除・一期再建)は,近年の再建外科の発達に伴い飛躍的に進歩した1)。しかし,三次元的で複雑な解剖学的特徴をもつ中咽頭の再建は,経験の少ない頭頸部外科医にとってイメージのわきにくい手術の1つかもしれない。ある程度経験を積んでも切除範囲のわずかな違いや,用いる皮弁の厚さや硬さで思うような再建ができないこともある。うまく再建したつもりでも意外に機能が悪いこともあるし,時間が経つにつれて皮弁が瘢痕化して機能低下をきたすことも経験する。また,内頸動脈がすぐ外側に位置するため,縫合不全から膿瘍を形成すると大出血の原因となり致命的な結果をまねく。
 安全確実で,かつ術後機能を良好に保つ再建手術を行うためにはどうしたらよいか。この難問に対して,完壁な解答を示すことは難しい。
 本稿では中咽頭の再建についての基本的な考え方を整理し,われわれの施設における過去の経験から,良かったこと,悪かったことなどをなるべく具体的に述べたいと思う。術中にどのような点に注意すればよいか,少しでも若い読者の参考になれば幸甚である。なお,中咽頭癌の中でも舌根・喉頭蓋谷の癌は,喉頭や舌の保存の可否などで少し異なった観点の問題を含んでおり,チャンスがあれば別の機会に論じたい。中咽頭後壁癌についても同様である。

5.下咽頭・頸部食道の再建

著者: 長谷川泰久 ,   中山敏 ,   松本昇 ,   篠田雅幸 ,   藤本保志 ,   松浦秀博

ページ範囲:P.133 - P.139

 はじめに
 頭頸部外科の近年の進歩は再建外科の進歩といっても過言ではない。これまで切除後の再建が困難なために,切除不能とされた腫瘍の摘出が可能となり手術の適応は拡大された。
 癌の進展に応じた適切な切除法の開発,再建法の確立,全身管理の向上により根治性のある治療が行えるようになり,その結果として生存率は向上した。
 下咽頭・頸部食道は食物摂取に関係する領域であり,この機能の回復は極めて重要である。また,喉頭に隣接し下咽頭頸部食道切除を必要とする症例の多くは喉頭の切除を必要とする。したがって,発声機能に対する機能回復手術も同様に必要とされる。
 本稿では下咽頭頸部食道癌症例を対象にした再建について,われわれの経験を述べる。今後の参考にしていただきたい。

6.下顎の再建

著者: 中山敏 ,   長谷川泰久 ,   藤本保志 ,   松浦秀博

ページ範囲:P.141 - P.147

 はじめに
 口腔癌切除後の下顎再建には,肩甲骨1),腓骨2,3),腸骨4),橈骨5)などの血管柄付き骨移植から下顎骨再建用チタンプレート,ハイドロキシアパタイトなどの人工材料の方法がある。血管柄付き骨移植の利点は移植に成功すれば露出の危険性が極めて少なく,骨結合型インプラントの植立により歯牙を再建でき,咀嚼機能を向上させる可能性がある6)。しかし,利用できる自家骨には限りがあり,悪性腫瘍の再建術ゆえに,移植するタイミングが重要である。人工物は自家骨を犠牲にしない点が優れているが,感染,露出,破断の可能性がある点が欠点である。
 われわれは,切除術と同一体位で採取可能で,下顎骨再建には十分な長さを有する腓骨と下顎骨再建用チタンプレートを症例,時期によって使い分けている。本稿では,腓骨による再建法を紹介するとともに,これらの再建材料の選択方法について臨床経験から考察する。

7.気管食道瘻形成術による喉摘後の音声再建

著者: 天津睦郎 ,   木西實

ページ範囲:P.149 - P.155

 はじめに
 喉頭癌は嗄声などの症状により比較的早期に癌が発見され,放射線治療,部分切除術,レーザー治療などにより高治癒率が期待できるようになった今日でも,喉頭摘出術(以下,喉摘と略)が進行例や根治照射後再発例の最終的でかつ確実な治療手段として用いられている。しかし,喉摘により喉摘者は喉頭が本来もっ機能を喪失することになる。喉頭は三大機能,すなわち①呼吸,②嚥下時の下気道の保護,③音声機能を有する。したがって,喉摘後の喉頭再建ではこれらを再建することが理想といえる。しかし,喉摘後に経鼻呼吸を可能にしたうえで,嚥下時に括約機能を保持させて下気道を保護することは容易ではない。このため,頸部に気管孔を設けることにより経気管呼吸を行わせ,気道を食物路から分離することにより下気道を保護することになる。このように,喉頭の機能再建は音声機能の再建に限定されているのが現状である。

8.気管の再建

著者: 村上泰

ページ範囲:P.157 - P.166

 はじめに
 耳鼻咽喉科・頭頸部外科で気管の再建が必要になるのは,甲状腺乳頭癌の気管浸潤に対して喉頭を温存して気管切除を行った場合がほとんどを占める。そこで本稿では,そのような症例に対してわれわれが行っている再建手術について述べる。ときに,頸部気管癌や下咽頭・頸部食道癌で喉頭気管合併切除を要し,縦隔内まで気管を切除してその再建が必要になるなどの症例を経験するが,これについては皮弁再建が必要で,方法が基本的に異なるのでここでは触れないこととする。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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