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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻6号

1999年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

小児巨大中咽頭線維腫の1例

著者: 辻中良一 ,   井上俊哉 ,   井野千代徳 ,   山下敏夫

ページ範囲:P.324 - P.325

 本邦において,小児の扁桃肥大は日常よく遭遇するが,今回われわれは巨大振子様扁桃を疑い,手術で線維腫と診断された非常に稀な中咽頭に発生した巨大な腫瘍を経験したので報告する。
 症例:5歳,女児。

Current Article

難聴の遺伝子解析—update

著者: 宇佐美真一

ページ範囲:P.327 - P.338

 はじめに
 ここ数年の分子遺伝学のめざましい発展により,既にいくつかの遺伝性難聴の原因遺伝子,あるいは原因遺伝子の存在する染色体上のおおよその位置(遺伝子座)が特定され始めている。疫学統計によれば小児の難聴の約半数は遺伝性のものと考えられている1)。また,一般的に遺伝性難聴というとごく限られた先天性の難聴家系を思い浮かべがちであるが,後天性の難聴でも加齢,騒音,感染,耳毒性薬物などに対する受傷性には一般的に個人差が多いことから,これら環境因子に遺伝性の因子が加わった難聴というものを含めると,まさにほとんどの難聴には遺伝子が関与していることになる。従来ほとんど原因不明だった遺伝性難聴の原因遺伝子(座)が明らかになり,急に日常臨床にも身近なものになってきた感がある。今後はこれらの分子遺伝学的知見が増すにつれ難聴の正確な診断がなされるようになり,治療やカウンセリングに結びついていくと思われる。
 本稿では,現在までに明らかになっている難聴の原因遺伝子をまとめるとともに,われわれの研究室で実際に手がけているいくつかの原因遺伝子のうち耳鼻咽喉科の日常臨床に関係が深いと思われる3つの遺伝子変異に関して紹介する。

原著

Reye症候群の1症例の側頭骨病理所見

著者: 中本吉紀 ,   大平泰行 ,   加我君孝 ,   野崎秀次 ,   小川恵弘

ページ範囲:P.341 - P.345

 はじめに
 Reye症候群は,1963年にオーストラリアのReyeら1)によって報告された小児の急性脳症と肝障害を生じる原因不明の疾患である。しかも症状の経過も急激であり,高率に死に至る重症な疾患である2)。病理学的変化は脳浮腫や肝臓の脂肪変性が特徴とされ,出血傾向を伴うことも多い3,4)
 しかし側頭骨病理に関する報告は,これまでRaulら5)の1例しかなく,Reye症候群の側頭骨病理変化の詳細は不明な点が多い。今回われわれは,Reye症候群症例の側頭骨病理を観察する機会を得たので,Raulら5)の症例との比較も含め報告する。

鼻腔非ホジキンリンパ腫の治療成績と予後因子—特に治療開始時期

著者: 青木由紀 ,   松林隆 ,   西口郁 ,   北野雅史 ,   馬越智浩 ,   八尾和雄 ,   髙橋廣臣

ページ範囲:P.347 - P.351

 はじめに
 近年における抗腫瘍化学療法の進歩は,非ホジキンリンパ腫(以下,NHLと略)の治療成績をめざましく向上させたといわれているが,鼻腔NHLの予後は依然として悪く,いまだ満足のいく治療成績は得られていない1〜5)。今日,NHLでは,各種の画像診断,臨床検査,病理組織診断の結果が出揃うのを待って治療が開始されるのが一般的である。しかし,検査の出揃うのを待って治療を開始したのでは遅きに失するおそれがある。進展の早いNHLといえども,発病初期には原発部位に限局した局所病の時期があるはずで,NHLでも,できるだけ早期に治療を始めるべきである6)。早期診断,早期治療を目標に,われわれが診療を行ってきた頭頸部領域NHLの全190症例の5年生存率は64%であったのに対して,鼻腔NHL症例33例は47%であった。そこで鼻腔NHLの治療成績が不良であることの原因を究明するために,従来NHLの重要な予後決定因子とされている病理組織型と臨床病期に加えて,放射線治療の照射野設定法,放射線治療あるいは化学療法の治療開始時期の違いが,鼻腔NHLの治療成績に及ぼす影響を検討したので報告する。

前頭洞血瘤腫の1症例

著者: 川上理郎 ,   猪飼重雅 ,   橋本和明 ,   竹中洋

ページ範囲:P.352 - P.354

 はじめに
 CTなどの画像検査で,副鼻腔に骨欠損のある症例に対し試験開放を行った結果,悪性所見はなく凝血塊や血液貯留を認めたとの報告は,上顎洞においては,いわゆる血瘤腫として散見される1〜4)。今回,外傷を契機とすると考えられた前頭洞の血瘤腫症例を経験したので報告する。

歯科材料による上顎洞異物の1症例

著者: 墨一郎 ,   川端五十鈴 ,   田部浩生

ページ範囲:P.357 - P.360

 はじめに
 上顎洞は小さい自然孔で外界に通じる腔であり,この自然孔からの異物の進入は少ない。したがって,上顎洞にみられる異物は外傷などの外力によって上顎洞骨壁を破壊して上顎洞に達したもの(外傷性)と医療行為が原因で上顎洞内に進入あるいは残存したもの(医原性)の2つに大別される。そして近年,外傷性よりも医原性異物が増加する傾向にある1)
 上顎洞底に隣接した歯槽突起には歯牙が存在するので,医原性上顎洞異物には歯根や歯牙などの歯科に関係するものが多くみられる。さらに,歯牙の治療に用いられる歯科器材や歯根充填材などの治療用具の迷入が報告されている1〜5)。われわれは最近,歯根管充填材の1つであるガッターパーチャポイントが上顎洞内に迷入し,しかも7年間の長期にたわって滞留していたという興味ある症例を経験したので,その臨床像を記載するとともに若干の考察を加えて報告する。

頭頸部領域に発生した血管平滑筋腫の2症例

著者: 清水啓成 ,   曽爾信行 ,   原睦子 ,   馬場道忠 ,   徳永英吉

ページ範囲:P.367 - P.370

 はじめに
 血管平滑筋腫は平滑筋由来の良性腫瘍と考えられているが,主に四肢の皮膚または皮下組織に認められ,頭頸部領域に発生することは少ない1,2)。今回われわれは,耳介および鼻腔に発生した血管平滑筋腫の2症例を経験したので報告する。

甲状腺悪性リンパ腫の1症例

著者: 増田正次 ,   吉田昭男 ,   川浦光弘 ,   吉原重光

ページ範囲:P.371 - P.374

 はじめに
 甲状腺悪性リンパ腫は甲状腺悪性腫瘍の1%を占める疾患で,1960〜1976年には200例の報告しかなかったが,病理組織や免疫組織による診断法の進歩とともにその後の16年間で574例の報告がされており,臨床の場で遭遇する機会が増えている疾患である1)。今回われわれは呼吸困難をきたして来院した甲状腺悪性リンパ腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

耳下腺海綿状血管腫の1症例

著者: 橋本和也 ,   杉本太郎 ,   鵜沢正道 ,   根岸達郎 ,   小松崎篤 ,   海老原秀和

ページ範囲:P.377 - P.381

 はじめに
 耳下腺に発生する良性腫瘍は多形腺腫が最も多く,血管腫の頻度は少ない1〜3)。また,その大部分は小児において認められる。われわれは55歳の耳下腺海綿状血管腫の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

呼吸困難をきたした再発性正中頸嚢胞の1例

著者: 本間利生 ,   青木大輔 ,   椿恵樹 ,   原田勇彦 ,   川端五十鈴

ページ範囲:P.384 - P.386

 はじめに
 正中頸嚢胞は甲状舌管の遺残組織より発生する先天性頸嚢胞の1つである。多くは舌骨を中心とした正中部に発生し,無痛性の頸部腫脹を呈するのが通例である。今回われわれは,呼吸困難を呈して来院した患者に喉頭蓋の膿瘍を伴った急性炎症を認め,これが再発性の正中頸嚢胞の感染が波及して生じたと考えられた症例を経験した。これは通常みられる正中頸嚢胞の症状とは極めて異なるので,症例を呈示するとともに,正中頸嚢胞の合併症について考察を加える。

慢性活動性EBウイルス感染により発症したと考えられる小児悪性リンパ腫症例

著者: 中崎浩一 ,   峯田周幸 ,   荻野哲史 ,   藤森俊也

ページ範囲:P.387 - P.390

 はじめに
 EBウイルスが鼻腔T細胞性悪性リンパ腫の発症に関与していることは知られているが1〜6),扁桃原発の悪性リンパ腫に関与したとする報告は少ない。われわれは,活動性EBウイルス感染のあった5年後に悪性リンパ腫を口蓋扁桃に発症した7歳,女児の症例を経験した。EBウイルス感染により血球貧食群に陥っていた。扁桃炎と腫瘍の関係は不明だが,EBウイルスが悪性リンパ腫の発症に密接に関係していると考えられた。

血中副甲状腺ホルモン関連ペプチド高値を認め高カルシウム血症をきたした舌癌の1例

著者: 山田健史 ,   中山智祥 ,   大久保公恵 ,   渡辺吉康 ,   小沢友紀雄 ,   上松瀬勝男 ,   渡辺佳治 ,   辻賢三 ,   安田皓 ,   芳賀貴之 ,   山田勉

ページ範囲:P.393 - P.396

 はじめに
 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は,腫瘍の産生するhumoral factorの作用により高カルシウム血症を呈する病態で1),高度な脱水を伴っていることが多く,ときに緊急性を要することがある2)。頭頸部などの扁平上皮癌に多いとされるが,舌癌に高カルシウム血症を呈した症例の報告は少ない。

鏡下咡語

三仁会の思い出

著者: 海野徳二

ページ範囲:P.364 - P.365

 平成10年3月に停年退官し,毎日定時刻に出かけて仕事をする生活ではなくなった。種々の理由はあったが,元同僚の名誉教授が校長をしている保健福祉専門学校で嘱託勤務の副校長をやることになり,リハビリテーション関連のことを多少勉強している。
 停年は65歳の所が多いから,平成10年退職組は昭和32年に大学を卒業している計算になる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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