鼻腔非ホジキンリンパ腫の治療成績と予後因子—特に治療開始時期
著者:
青木由紀
,
松林隆
,
西口郁
,
北野雅史
,
馬越智浩
,
八尾和雄
,
髙橋廣臣
ページ範囲:P.347 - P.351
はじめに
近年における抗腫瘍化学療法の進歩は,非ホジキンリンパ腫(以下,NHLと略)の治療成績をめざましく向上させたといわれているが,鼻腔NHLの予後は依然として悪く,いまだ満足のいく治療成績は得られていない1〜5)。今日,NHLでは,各種の画像診断,臨床検査,病理組織診断の結果が出揃うのを待って治療が開始されるのが一般的である。しかし,検査の出揃うのを待って治療を開始したのでは遅きに失するおそれがある。進展の早いNHLといえども,発病初期には原発部位に限局した局所病の時期があるはずで,NHLでも,できるだけ早期に治療を始めるべきである6)。早期診断,早期治療を目標に,われわれが診療を行ってきた頭頸部領域NHLの全190症例の5年生存率は64%であったのに対して,鼻腔NHL症例33例は47%であった。そこで鼻腔NHLの治療成績が不良であることの原因を究明するために,従来NHLの重要な予後決定因子とされている病理組織型と臨床病期に加えて,放射線治療の照射野設定法,放射線治療あるいは化学療法の治療開始時期の違いが,鼻腔NHLの治療成績に及ぼす影響を検討したので報告する。