原著
他院での根治治療を希望して転院した頭頸部悪性腫瘍患者の検討
著者:
横島一彦
,
中溝宗永
,
矢嶋裕徳
,
渡辺秀行
,
富山俊一
,
八木聰明
ページ範囲:P.421 - P.423
はじめに
悪性腫瘍の治療に対する様々な考え方がマスコミでもとり上げられる機会が増え,情報開示の問題も加わり,悪性腫瘍の治療をとりまく環境は年々変化している1)。特に,腫瘍の根治を目指すためにQOLを低下させることが多い頭頸部悪性腫瘍の治療2,3)では,患者や家族が治療について後悔のない選択ができる環境を作ることも,われわれ医師に期待されていることの1つと思われる。
当科では近年,悪性疾患の告知,治療方法の十分な提示をすることに積極的に取り組んでいることに加え,転院して他院で根治治療を受けることも可能であることを説明するようにしている。このような原則で診療すれば,われわれ医師側が治療内容の選択の幅を狭めることが少なくなり,患者側の自己決定権の尊重1)につながると考えている。
本報告では,当科を受診したにもかかわらず,種々の理由により他院での根治治療を希望し,転院した頭頸部悪性腫瘍症例を対象に,現在まで行ってきた診療を検討したうえで,今後のインフォームドコンセント4,5)の実践について考察した。