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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻8号

1999年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

金属アレルギーによる口腔病変

著者: 毛利学 ,   森田章介 ,   北條博一

ページ範囲:P.490 - P.491

 1972年に中山ら1)が歯科金属アレルギーと考えられる2例の扁平苔癬を報告して以来,皮膚科ならびに歯科領域において,原因不明で難治性の皮膚粘膜疾患と歯科用合金との関連性が注目され,金属アレルギーに対する関心が高まっている。
 金属アレルギーの診断はパッチテストによってアレルゲン金属を特定し,口腔内の補綴修復物のどの部位にアレルゲン金属が含まれているかを正確に特定するためにX線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて分析する。パッチテスト用の金属試薬は20種類あり,試薬の一滴を検査用絆創膏に滴下して被験者の背中に貼りつける(図1)。2日後に絆創膏を除去して,2日目,3日目,7日目の3回判定する。判定は紅斑,浮腫,水疱が出現した場合を陽性とする。

原著

耳下腺内の顔面神経鞘腫の2例

著者: 田中一仁 ,   増田正純 ,   菅家稔 ,   小形章 ,   鈴木理文

ページ範囲:P.494 - P.499

 はじめに
 耳下腺内の顔面神経鞘腫は比較的稀な疾患1〜3)で,特異的な症状や検査所見が乏しいため術前診断は一般に困難である。また,術中に初めて顔面神経鞘腫と判明した際に,顔面神経を温存し可及的な切除にするか,神経も切除し神経移植を行うか判断に迷うことがある。
 最近われわれは,耳下腺内の顔面神経鞘腫の2例を経験したのでこれを報告するとともに,1)術前診断が可能かどうか,2)術中の腫瘍と神経の処理をいかにすべきかについて,若干の文献的考察を加え報告する。

外傷性唾液瘻の3症例

著者: 渡邊一夫 ,   川端五十鈴 ,   原田輝一 ,   村岡道徳

ページ範囲:P.501 - P.504

 はじめに
 顔面外傷時に耳下腺,特に耳下腺ステノン管が損傷され,いわゆる唾液瘻,あるいは唾液嚢腫を生じることは少なく,日常臨床で耳下腺唾液瘻を経験することは少ないといわれている1,2〜6)。しかし,唾液瘻が一度発生すると,治療に抗して治癒しにくい場合がり,このようなステノン管の損傷に対しては,今までに多くの治療法が提唱されてきた1,3〜8)。これらの報告では,積極的治療としては,ステノン管形成術か耳下腺副交感神経切断術(Leriche氏手術)が中心のようである1〜8)
 われわれは最近,外傷によるステノン管の唾液瘻の3症例を経験した。そのうち2症例は保存的に治癒したが,残りの1例は保存的には治癒しなかったため,前腕の静脈の移植によりステノン管を形成し治癒せし得た。
 今回,われわれの経験した唾液痩の3例の概要とともに,文献的考察を加えて報告する。

浸潤性の進展形式を示した頭蓋咽頭腫の1例

著者: 五島史行 ,   加納滋 ,   佐藤俊彦 ,   清水和彦

ページ範囲:P.506 - P.510

 はじめに
 頭蓋咽頭腫は胎生期の頭蓋咽頭管の遺残物から発生すると考えられている上皮性腫瘍で,通常良性腫瘍に分類されている1)。組織学的に悪性を示すことは極めて稀である2,3)。今回われわれは浸潤性の進展形式を示し,剖検により初めて頭蓋咽頭腫と診断された症例を経験したので報告する。

Sinus histiocytosis with massive lymphadenopathy(Rosai-Dorfman syndrome)の1症例

著者: 村上大造 ,   木下澄仁 ,   定永恭明 ,   宮山東彦 ,   津田弘之

ページ範囲:P.511 - P.514

 はじめに
 Sinus histiocytosis with massive lymphadenopathy(SHMLと略:Rosai-Dorfman syndrome)1)は,リンパ節腫大を特徴とするリンパ洞を中心とした組織球症であり,その多くは頸部リンパ節に認められる2)。数少ない疾患であり,その多くは白人,黒人にみられ,日本人での症例報告も少数である3〜5)。今回われわれは,両側頸部リンパ節腫大を呈した1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

側頸部より副咽頭間隙に進展した脂肪腫の1症例

著者: 清水啓成 ,   曽爾信行 ,   原睦子 ,   馬場道忠 ,   徳永英吉

ページ範囲:P.517 - P.520

 はじめに
 脂肪腫は軟部組織から発生する腫瘍の中ではその発生頻度は少なくなく,全身の各種臓器に発生する。しかし,耳鼻咽喉科領域における脂肪腫の発生頻度は低い1,2)。また,脂肪腫は発育が緩慢であり自覚症状に乏しいために,ときに大きく進展した症例に遭遇する。今回われわれは,右側頸部より副咽頭間隙に発生した巨大な脂肪腫の1例を経験したので,その概要を報告する。

咽頭アミロイドーシスの1例

著者: 上甲英生 ,   佐伯忠彦 ,   小林丈二 ,   栗原憲二 ,   竹田一彦

ページ範囲:P.521 - P.525

 はじめに
 アミロイドーシスはアミロイドと称する線維性蛋白が全身の臓器や組織の細胞外に沈着し,様々な機能障害を引き起こす原因不明の代謝性疾患である。これまでに耳鼻咽喉科領域では喉頭に発生したアミロイドーシスの報告は散見されるが1〜4)咽頭に発生したアミロイドーシスの報告は少ない5〜8)。今回われれわれは,咽頭に多発性の腫瘤を形成したアミロイドーシスの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

悪性リンパ腫に合併した巨大真珠腫の1例

著者: 丸山晋 ,   山道至 ,   安野元興 ,   立本圭吾 ,   鶴岡隆

ページ範囲:P.529 - P.532

 はじめに
 最近われわれは,悪性リンパ腫の経過中に悪性リンパ腫の頭蓋内進展と思われていた病変が,頭蓋へ進展した真珠腫と判明した症例を経験した。また,この症例は乳突部型先天性真珠腫であった可能性もある。症例を報告して問題点を検討する。

園児の副鼻腔炎の治療—1回の上顎洞穿刺洗浄と鼻汁細菌検査を組み合わせて

著者: 松原茂規

ページ範囲:P.539 - P.542

 はじめに
 小児副鼻腔炎の治療の中心は,鼻処置,ネブライザー,薬物の内服である。慢性化した小児副鼻腔炎の治療にマクロライド系抗生物質が有効であるという報告がある1)。上顎洞穿刺洗浄が処置として行われる施設は少ない2)
 小児副鼻腔炎の治療を考えるためには,その病態を把握する必要がある。筆者は,小児副鼻腔炎は主にHaemophilus influenzae (H.influenzae)とStreptococcus pneumoniae (S.pneumoniae)を起炎菌とする急性の病態であり,外科的ドレナージである上顎洞穿刺洗浄(1回)と起炎菌に応じた抗生物質の内服が大切であると報告してきた3,4)
 今回,小児副鼻腔炎の中でも最も罹患率の高い園児(就学前の幼稚園および保育園児)の副鼻腔炎を取り上げ,その治療成績を述べる。また起炎菌別予後,合併症,随伴症状についても言及する。

小児副鼻腔炎に対する上顎洞副口開大術

著者: 生井明浩 ,   池田稔 ,   石山浩一 ,   山内由紀 ,   木田亮紀

ページ範囲:P.543 - P.546

 はじめに
 小児副鼻腔炎は保存的治療が第1選択と考えられ,最近ではマクロライド系抗生物質の少量長期投与の有用性が示唆されている1,2)。しかし,保存的治療法に抵抗し難治性のもの,特に鼻茸の合併するものに対しては手術療法の適応となる例もみられる。今回われわれは,保存的治療で改善の認められない小児副鼻腔炎および鼻茸症例を対象とし,鼻茸切除および上顎洞の副口の開大を行い,その経過を検討した。手術的処置には,内視鏡下にハマー・マイクロデブリッダーシステム(HMDS)を使用し,その有用性を検討した。

当科における後天性外耳道狭窄,閉塞症例—その手術手技について

著者: 下郡博明 ,   菅原一真 ,   増満洋一 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.549 - P.552

 はじめに
 後天性外耳道狭窄,閉塞症は古くから知られている疾患であり,その原因として外傷,炎症,腫瘍,医原性が挙げられている1〜4)。統計資料による裏づけはないが,近年これらの疾患,中でも慢性外耳道炎で肉芽の増生,肥厚により外耳道が狭窄,閉塞する例が増加しているように思われる。当科では,最近3年間に後天性外耳道狭窄,閉塞症(外耳道真珠腫で狭窄,閉塞をきたしたものを除く)7例に対して手術を行った。今回われわれは,この7例について詳細を報告し,術式選択について述べる。

鏡下咡語

「うだつ」の話

著者: 調賢哉

ページ範囲:P.534 - P.536

 平成10年11月26日,岐阜市で開催された第57回日本平衡神経科学会でWallenberg症候群のMRIに関する展示発表を終えて,その帰途,かねてからの念願であった明治村を訪れたのであるが,閉門午後3時ということで閉め出され,旧八高正門(この門は私の母校七高の門よりかなり立派なものであった)であったという明治村の正門の前で記念撮影をしただけで,美濃紙の本場であり江戸時代の旧家の町並みで知られる美濃市に立ち寄った。ここで「うだつ」の上がる江戸の豪商である旧今井家に案内された。この今井家は,「うだつ」の上がる黒い瓦葺き屋根に格子戸の木造家屋が連なる町並みの中に建っていた。しかし,この町並みは「うだつ」さえなければ私の郷里,小京都といわれ天領であった九州の日田の商家とほとんどその雰囲気は同じてあった。日田も筑後の木臘を商って財をなした商家,また天領という地の利を利用し巨大な富を築き上げたいわゆる掛屋などが集まって古い町並みが形成されている。
 さて,この「うだつ」が,日常会話でよく使われる「うだつ」の語源であると知り,急に興味をもった。「うだつ」は図1,図2のように建物の屋根の両側に設けられた瓦葺きの小屋根付きの袖壁であり,初めは美濃は火災が多かったので防火の意味もあったらしいが,徳川時代からは身分の象徴となり,美濃の商家も取引で成功し,経済が豊かになった家が「うだつ」を作ったという。すなわち,「うだつ」が上がったわけである。「うだつ」を上げるため,懸命に努力し美濃紙を作ったであろう,また取引したであろう美濃商人のことを想像すると,人間は本質的には江戸時代も現代も同じであると思い微笑ましくなった。この「うだつ」は,現在は美濃市,関市を中心にした地方に現存しているだけであるが,かつては全国的であったらしい。このことは「うだつ」という言葉が全国的に使われていることでも分かる。ちなみに「うだつ」の語源が美濃市の「うだつ」であることを知っているかどうか,数人のMr.に尋ねてみたが,いつれもNo.であった。これで一般人もほとんど何も知らないで使っているということが想像できる。

連載 耳鼻咽喉科“コツ”シリーズ 2.検査のコツ

⑧生検(扁桃,唾液腺,甲状腺)

著者: 宮嶋義巳 ,   中島格

ページ範囲:P.555 - P.559

 はじめに
 悪性腫瘍の診断には問診,視診,触診,画像診断などが用いられるが,確定診断は病理組織診断によることが多い。また,悪性腫瘍の中でも組織型により治療方針が異なるため,治療を開始するにあたって確定診断がなされていることは非常に重要である。しかし,悪性腫瘍では生検操作により進行を助長したり,転移を起こす危険性がある1,2)。腫瘍組織の一部を機械的操作によって採取する場合,腫瘍細胞がリンパ管ないし血管内に流入したり,癌周囲膜の破壊により局所での腫瘍の増大を誘発することになる。生検から治療開始までの時間を短くし予後をよくするには,癌の治療のできる医療施設で治療計画の一環として生検を行うことが望ましい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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