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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科71巻9号

1999年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

前頭蓋・前頭骨に浸潤した嗅神経芽細胞腫の治療経験

著者: 吉岡巌 ,   浅野勝士 ,   染川幸裕

ページ範囲:P.568 - P.569

 嗅神経芽細胞腫は,嗅粘膜上皮に由来すると考えられる比較的少ない悪性腫瘍である。本邦では,既に80例以上報告されており,近年その症例数は増加してきている。治療法についてはいまだ確立されていないが,外科治療を主体に行っている報告が多い。
 今回われわれは,右鼻腔から前頭蓋底,前頭骨に進展した神経芽細胞腫に対して頭蓋内外からのcombined methodを用いて腫瘍摘出を行い,また腫瘍切除後の広範な骨欠損の再建に関しては,頭蓋骨の外板,内板を用いることで良好な結果を得ることができたので報告する。

原著

副咽頭間隙に生じた血管周皮腫の1例

著者: 花田武浩 ,   西元謙吾 ,   小濱紀子

ページ範囲:P.571 - P.574

 はじめに
 副咽頭間隙に発生する腫瘍の組織型は多彩であり,唾液腺由来,神経組織由来,軟部組織由来,リンパ組織由来などの種々の腫瘍が報告されている。また,そのうち多型腺腫と神経鞘腫症例が半数以上を占めるとされる1,2)。今回われわれは,副咽頭間隙に発生した血管周皮腫(hemangioperi-cytoma)の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

治療中に急性増悪したワルダイエル輪のリンパ腫型ATLの1例

著者: 古謝静男 ,   稲嶺智広 ,   糸数哲郎 ,   松村純 ,   新濱明彦 ,   平良直也 ,   真栄田聡子 ,   大城一郁 ,   野田寛

ページ範囲:P.575 - P.579

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域ではワルダイエル輪の悪性リンパ腫は比較的多く経験する。B細胞性リンパ腫が多いが,T細胞性リンパ腫も少なくない1)。ワルダイエル輪に発生するT細胞性悪性リンパ腫の中には成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)により発症する成人T細胞白血病(ATL)のリンパ腫型(リンパ腫型ATL)があり,これらの症例は予後が不良である2)。通常リンパ腫型ATLは白血化することなくリンパ腫として経過するとされている3)。今回われわれは,治療中に急性増悪し白血化したワルダイエル輪のリンパ腫型ATLの1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

浅側頭動脈を用いた動注化学療法—カテーテル留置に伴う問題点について

著者: 東川雅彦 ,   与那嶺裕 ,   塙力哉 ,   今中政支 ,   萩森伸一 ,   牧本一男 ,   竹中洋

ページ範囲:P.583 - P.587

 はじめに
 悪性腫瘍に対する動注化学療法は,少量の投与で病巣に高濃度の抗癌剤を曝露できること,同じ投与量に対して副作用出現の頻度,程度が軽いことなどの利点を有する投与法としてKloppら1)により実用化された。その後本邦における頭頸部領域では,佐藤ら2)によって上顎癌に対する集学的治療の一手段として確立された。一方,上顎癌以外の頭頸部悪性腫瘍に対する化学療法剤の投与ルートとしての有効性の報告も相次いだ3〜6)。動注化学療法はあくまで局所化学療法であり7),その適応については常に慎重であるべきだが,実施が容易であることから現在でも用いられる機会が多い。投与スケジュールも様々に工夫され,連日,少量の抗癌剤動注と放射線照射との併用により局所の高い制御率が得られた報告もある8)
 しかし一方で,浅側頭動脈に留置したカテーテルの閉塞や脱落は珍しいことではなく,カテーテル挿入部での感染,先端での血栓の生成なども常に問題となる3,4)。病巣以外の動脈の支配領域にも高濃度の抗癌剤が流入するため脱毛が生じたり9),挿入側の顔面神経麻痺が生じることもある10)。さらには,動注療法施行中はカテーテル留置による管理のわずらわしさが,患者にとっても治療する側にとってもしばしば経験されるところである。

耳管から鼓室に至った鼓室内異物による慢性中耳炎の1乳児例

著者: 笹村佳美 ,   工藤典代 ,   杉田佳信

ページ範囲:P.589 - P.592

 はじめに
 耳管,中耳の疾患は多種にわたり日常頻繁にみられるが,この部の異物の報告は少ない。特に外耳道経由ではない鼓室内,耳管異物は,1945年以降,われわれが検索し得た限りにおいては水野ら1),鳥山ら2)の2例にすぎない。今回われわれは,口腔内から耳管経由と考えられた鼓室内,耳管異物症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

鼓膜形成術後に発生した外耳道基底細胞上皮腫例

著者: 菅原一真 ,   下郡博明 ,   増満洋一 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.593 - P.596

 はじめに
 外耳道腫瘍は,頭頸部腫瘍の中では比較的頻度が少ないといわれている1,2)。また,耳痛,耳漏などの外耳炎と同じ症状で発症するため,診断に時間を要する。今回われわれは,慢性難治性外耳炎,鼓膜炎に対する鼓膜形成術後に発生し,術前には腫瘍を疑い得なかった外耳道基底細胞上皮腫の1症例を経験したので報告する。

声帯に限局した喉頭真菌症の1例

著者: 吉田友英 ,   山本昌彦 ,   三宅孝功 ,   折原廣巳 ,   小田恂 ,   亀田典章 ,   蛭田啓之

ページ範囲:P.597 - P.600

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域の真菌症は,外耳道,鼻,副鼻腔,口腔咽頭に多く発生することが知られている1)。しかし,喉頭真菌症は口腔咽頭真菌症に合併して発生するものを含めても多いものではない。
 今回われわれは,口腔咽頭に格別な病変が認められず,声帯だけに限局した喉頭真菌症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

当院における石灰化上皮腫の検討

著者: 山里将司 ,   真栄田裕行 ,   宇良政治 ,   又吉重光

ページ範囲:P.603 - P.606

 はじめに
 石灰化上皮腫は,1880年,Malherbeら1)により初めて報告された毛母系の良性腫瘍で,主に皮膚科領域での報告が多かったが,最近では耳鼻咽喉科領域での報告が散見されるようになってきている2〜6)。今回われわれは,1993〜1998年の過去5年間に当院を受診し治療を受けた石灰化上皮腫症例について臨床的検討を加えた。またその中で,耳鼻咽喉科を受診した症例について報告する。

鼻石の2症例

著者: 丸山晋 ,   村上匡孝 ,   四ノ宮隆 ,   丁剛 ,   秋山優子

ページ範囲:P.611 - P.615

 はじめに
 鼻・副鼻腔結石は古くから報告されており,本邦では1896年に西1)が初めて報告して以来,報告例は百数十例を数えるが,なお頻度の低い疾患である。今回われわれは,無症状に経過していた鼻腔結石の2症例を経験したので,文献を検索した結果に若干の考察を加え報告する。

突発性難聴の治療についての検討—特に星状神経節ブロックとステロイドおよびプロスタグランディンの併用について

著者: 伊與田貴之 ,   吉原重光 ,   相馬啓子 ,   吉田昭男 ,   増田純一

ページ範囲:P.619 - P.623

 はじめに
 突発性難聴は急激に発症する感音難聴で,血管の攣縮,ウイルス感染,炎症,アレルギー反応などによる内耳循環障害が原因と考えられている1,2)。急性期には,ステロイド,循環改善剤,ビタミンB12などの経口投与または点滴静注を中心とした治療を行うことが多い。また,点滴治療以外の治療方法として星状神経節ブロック(以下,SGBと略)や高気圧酸素療法なども行われている。今回われわれは,突発性難聴の治療,特にSGBの有用性について検討を加えたので報告する。

耳鼻咽喉科アレルギー性疾患患者の花粉ならびに果実特異的IgE抗体保有について

著者: 新山玲子 ,   山際幹和

ページ範囲:P.625 - P.629

 はじめに
 北海道では,シラカンバ(属)は花粉症を引き起こす代表的な樹木として注目され,シラカンバ(属)花粉症患者の約20%がリンゴ果肉による口腔や咽喉頭部のアレルギー症状を発症することも無視できない問題となっている1)。本来シラカンバ(属)が植生しない地域でも,同じカバノキ科に属するハンノキ(属)の樹木は存在する。しかし,このような地域で,どれだけのカバノキ科植物花粉やそれと関連をもつと考えられる果肉に対する特異的IgE抗体陽性者がいるのかは十分調査されていない。
 今回われわれは,本州中部に位置する松阪中央総合病院耳鼻咽喉科で鼻や咽喉頭のアレルギーが疑われた患者を対象として,カバノキ科植物花粉,特にハンノキ(属)花粉と果肉の関連性に注目して各種花粉,室内塵,食餌,果実に特異的なIgE抗体価を測定した。その結果,カバノキ科植物花粉抗体陽性率が予想以上に高値であり,その中に果肉摂取後に口腔や咽喉頭部のアレルギー症状を経験している例が存在するという興味ある成績を得たので報告する。

鏡下咡語

父敏三のこと

著者: 大藤周彦

ページ範囲:P.608 - P.609

 「もう,この辺で,終わりにしましょう」と,病床の中で寝返りをうちながら私に言うのです。平成11年1月末に入院して約1か月が経つ頃のことでした。老人性痴呆による見当識障害が進行しているとはいえ,ときどき人をハッとさせる発言があり,この日も,点滴その他の治療にかなり参っているのかなと思い当たりました。自宅療養がうまくいっている頃は,わがままを言ったり悪口をたたいたり,介護者のわれわれは父を憎々しく思ったりもしました。
 入院して,少しずつ精気が薄れていくに従い,消極的な発言が多くなりました。

連載 耳鼻咽喉科“コツ”シリーズ 2.検査のコツ

⑨超音波エコーガイド穿刺吸引細胞診検査のコツ

著者: 永原國彦 ,   森谷季吉

ページ範囲:P.633 - P.638

 はじめに
 穿刺吸引細胞診検査(以下,FNAと略)は,1950年代に北欧で見直されてから急速に普及し,その簡便性,迅速性,安全性,そして近年では特に経済面への配慮からも,頭頸部領域の病変診断における必須の検査となっている。例えば甲状腺上皮小体に対する米国の診断治療ガイドライン1)においても,超音波エコーガイドFNA (以下,US-FNAと略)は腫瘍性疾患診断の第1選択とされている。クリニカル・パスに基づいたDRG/PPSの導入が,既に試験的に開始された本邦においては,特にその重要性は高まっているといえよう。以下にその基本ならびにコツというべき諸点について述べる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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