icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科72巻1号

2000年01月発行

雑誌目次

トピックス 耳鼻咽喉科と奇形

1.耳の奇形

著者: 川城信子

ページ範囲:P.9 - P.13

 はじめに
 耳の奇形を便宜上,外耳、中耳,内耳に分けて記載するが,単一に分類することは困難で,外耳奇形があると中耳奇形を合併していることが多く互いに関連している。第1・第2鰓弓の異常で発生する。また,頭蓋顔面四肢に異常を伴い,症候群の一部症状のことがあるので全身にも注意する。

2.鼻・口蓋の奇形

著者: 峯田周幸 ,   深水秀一

ページ範囲:P.15 - P.20

 Ⅰ.鼻の奇形
 1.外鼻の構造
 鼻背,鼻底,鼻根,鼻尖および鼻翼からなり(図1)1),骨(鼻骨,上顎骨前頭突起,前頭骨鼻部),軟骨(大鼻翼軟骨,外側鼻軟骨,鼻中隔軟骨),筋肉(鼻筋,鼻根筋,鼻中隔下制筋,上唇鼻翼挙筋),皮膚より構成されている。

3.頸部・下咽頭・喉頭の奇形

著者: 亀谷隆一 ,   牧山清 ,   木田亮紀

ページ範囲:P.21 - P.26

 はじめに
 先天性奇形とは,出生時に何らかの不完全な形態形成を生じている病態を示す言葉である。臨床的には出生直後から症状を伴い診断される疾患や,不完全な形態が何らかの誘因により成人になって症状が出現し診断される疾患もある。われわれ一般耳鼻咽喉科医が日常診療で遭遇する先天性疾患は,むしろ後者に多い。
 本稿では頸部・下咽頭・喉頭に発生する代表的な先天性奇形を解説する。各疾患を理解するうえで,胎生学の知識が必要となるが,ここでは簡潔に解説し,詳細は成書を参照していただきたい。

目でみる耳鼻咽喉科

下垂体より鼻・副鼻腔まで進展したプロラクチノーマの1症例

著者: 臼井信治 ,   石塚洋一 ,   小山悟 ,   白居芳幸 ,   長島春子 ,   中山比登志

ページ範囲:P.6 - P.7

 プロラクチノーマは,下垂体前葉より発生する良性腫瘍で,原発性脳腫瘍の約6%を占める。鼻・鼻腔へ進展するケースは極めて稀である。今回われわれは,鼻閉を主訴に受診し,下垂体より鼻・副鼻腔まで進展した巨大なプロラクチノーマの1症例を経験したので報告する。
 症例は44歳,男性。左の鼻閉,鼻出血を主訴として受診した。平成10年2月頃より左鼻閉,鼻出血が出現し症状が増悪したため,5月25日に当院を受診し,左鼻腔に悪性腫瘍を疑わせる所見を認めたため,6月1日に入院した。

原著

難治性鼻出血の1例

著者: 弓削忠 ,   宮島千枝 ,   三富夏彦 ,   原誠 ,   米満勤 ,   皿井靖長

ページ範囲:P.29 - P.32

 はじめに
 鼻出血は,しばしばわれわれが遭遇する疾患である。多くの場合,鼻処置,ガーゼパッキングなどにより制御することができるが,ときとして止血が困難で入院を必要とする症例もある。今回われわれは,選択的動脈塞栓術でも止血し得ず,結果として外科的アプローチを必要とした1例を経験したので報告する。

鼻性頭蓋内合併症の3症例

著者: 大輪達仁 ,   宇良政治 ,   渡口明

ページ範囲:P.33 - P.37

 はじめに
 鼻性頭蓋内合併症は近年においても報告を散見するが,不良な経過をたどることもあり決して注意を怠ってはならない疾患である1)。今回われわれは,鼻性頭蓋内合併症の3例を経験したので,文献的考察を含め報告する。

下咽頭に発生した類基底細胞癌の1例

著者: 栗原憲二 ,   水関清 ,   上甲英生 ,   本吉和美 ,   森敏裕

ページ範囲:P.39 - P.42

 はじめに
 類基底細胞癌(basaloid squamous cell car-cinoma)は,最近確立された疾患概念で,扁平上皮癌の亜型で予後不良とされている。本腫瘍は稀であるが,その好発部位は下咽頭,喉頭,舌根などの頭頸部である1〜6)。今回われわれは,下咽頭梨状窩に発生した1例を経験したので報告する。

左反回神経麻痺で発症した胸部疾患の3症例

著者: 三澤清 ,   浅井美洋 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.54 - P.58

 はじめに
 反回神経麻痺の原因は,神経の走行が頭部より胸部までの広い範囲にわたるため様々である。患者が嗄声などを主訴に耳鼻咽喉科を受診した際には,それがしばしば頭頸部領域以外の疾患の1症状である場合があり1),まず反回神経麻痺の原因を十分に精査する必要がある。
 今回われわれは,嗄声を主訴とし最初に耳鼻咽喉科を受診した胸部疾患の3症例を経験したので,症例を呈示するとともに各疾患の反回神経麻痺に占める頻度,診断での問題点などを考察した。

頸部神経鞘腫に対する神経機能温存術式の検討

著者: 市村恵一 ,   中原はるか ,   石尾健一郎 ,   清水賢 ,   菊地茂

ページ範囲:P.59 - P.64

 はじめに
 機能の保存は,腫瘍の完全切除を必須とする悪性腫瘍手術においても重要視されるようになってきた。そうした現状からみて,頸部良性腫瘍の手術においては腫瘍の完全摘出に加え最少の合併症,機能温存という要求を満たす必要がある。しかし,神経原性腫瘍で全摘出を行えば,術後の該当神経の脱落症状は必発である。神経の吻合や移植を行えば筋緊張は保たれるものの,神経機能が完全に回復することは決して多いものではない。腫瘍再発は避けねばならないが,QOLの面からみると神経原性腫瘍においても神経機能は是非温存したいものである。
 神経原性腫瘍のうち,神経鞘腫については神経束が腫瘍辺縁に押しやられる形をとるために,理論的には神経機能温存が可能である。また,注意深い剥離をすれば神経は腫瘍から容易に分離できるという報告もみられる1)。しかし,現実には機能温存は必ずしも容易ではなく,そのためのコツも成書に記載されてはいない。
 本研究では教室での頸部神経鞘腫手術例の検討と検索した文献の検討から,神経と腫瘍の位置関係を整理し,それに対応した神経機能温存の具体的方法を示すことを目標とした。

構語障害を主訴に当科を受診した重症筋無力症症例

著者: 石永一 ,   加藤昭彦 ,   山田弘之

ページ範囲:P.65 - P.68

 はじめに
 重症筋無力症(以下,MGと略)は末梢神経と横紋筋の接合部が特異的に障害される疾患であるが,耳鼻咽喉科医が直接診断および治療に関わることは少ない。ただし重症筋無力症の中には,嚥下障害,構語障害を初発症状として発症するものもあり1),日常診療で咽喉頭の疾患を扱うわれわれ耳鼻咽喉科医にとっても,当然頭に入れておくべき疾患の1つと考えられる。今回われわれは,構語障害を主訴に当科を受診し,最終的に重症筋無力症と診断された1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

医学ドイツ語における男女差別とセクハラ

著者: 村上泰

ページ範囲:P.46 - P.49

 近頃,人間社会を生きるのが段々難しくなってきたように思う。言論の自由とかいって,言葉の暴力に近いはた迷惑な発言を平気でマス・メディアに載せるとんでもない輩が多い反面,極めて正統派と思える方々の大変に格調高いユーモラスな会話の端々を捉えて,差別だのセクハラだのとやたらに喰いつく面白くない奴もいて騒々しい限りである。言葉尻にしつこく触りたがるほうがよほどセクハラではないか,と駄洒落のひとつも言いたくなる。ともあれ,子供の喧嘩みたいにレベルの低い中傷はいい加減に止めることにして,知的な大人の会話を肩肘張らずに楽しむほうが,お互いの精神衛生上もよほど得策ではないかと思うことがしばしばである。
 医学用語の源はラテン語であるが,日本では古くからドイツ語が使われてきたので,最近のように多くの国際医学会での公用語が英語に統一されている現在でも,カルテの記載など日常臨床でドイツ語を使う機会は非常に多い。ドイツ語の名詞は男性名詞,中性名詞,女性名詞に分かれていて,それを誤ると文法的におかしくなってしまうことは,医学生時代にちょっとドイツ語をかじったことのあるわれわれ医師は誰でも知っている。私は留学したのもアメリカで,七面倒くさいドイツ文法などとうの昔に忘れてしまっているので,ここでドイツ語の講義をするつもりは毛頭ないのであるが,あまりに間違いだらけのカルテでも具合が悪いので,少なくとも解剖用語の性別くらいは知っておくべきであろうと考えて調べ始めたところ,ドイツ語の名詞には奇妙な男女差別があることに気付いたのである。医学辞典で探っていくと身体中のありとあらゆる領域で,なんともユーモラスな男女差別がそれとなく為されていて大変に愉快である。融通のきかない堅物というイメージが強いドイツ人の,愛すべき側面を垣間見るようで面白い。そこで,耳鼻咽喉科用語を中心にそのいくつかを紹介してみようと思う。まず最初に断っておくが,人権とか差別とか難しい議論をするつもりはさらさらない。遊び心を刺激して,診療に疲れた頭を休める妙薬になってくれれば幸いと思ってのことである。

連載 小児の耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑤頸部腫瘤の診断と治療

著者: 久育男

ページ範囲:P.69 - P.74

 はじめに
 小児の頸部腫瘤の大多数は炎症性あるいは反応性のリンパ節腫脹であるが,先天異常に基づくものはもちろん,ときに悪性疾患による場合もあり,決しておろそかにできない。
 本稿では,主として頻度の高い良性の疾患における診断と治療について述べる。悪性腫瘍については別項をご参照いただきたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?