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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科72巻1号

2000年01月発行

鏡下咡語

医学ドイツ語における男女差別とセクハラ

著者: 村上泰12

所属機関: 1京都地域医療学際研究所 2京都府立医科大学

ページ範囲:P.46 - P.49

文献概要

 近頃,人間社会を生きるのが段々難しくなってきたように思う。言論の自由とかいって,言葉の暴力に近いはた迷惑な発言を平気でマス・メディアに載せるとんでもない輩が多い反面,極めて正統派と思える方々の大変に格調高いユーモラスな会話の端々を捉えて,差別だのセクハラだのとやたらに喰いつく面白くない奴もいて騒々しい限りである。言葉尻にしつこく触りたがるほうがよほどセクハラではないか,と駄洒落のひとつも言いたくなる。ともあれ,子供の喧嘩みたいにレベルの低い中傷はいい加減に止めることにして,知的な大人の会話を肩肘張らずに楽しむほうが,お互いの精神衛生上もよほど得策ではないかと思うことがしばしばである。
 医学用語の源はラテン語であるが,日本では古くからドイツ語が使われてきたので,最近のように多くの国際医学会での公用語が英語に統一されている現在でも,カルテの記載など日常臨床でドイツ語を使う機会は非常に多い。ドイツ語の名詞は男性名詞,中性名詞,女性名詞に分かれていて,それを誤ると文法的におかしくなってしまうことは,医学生時代にちょっとドイツ語をかじったことのあるわれわれ医師は誰でも知っている。私は留学したのもアメリカで,七面倒くさいドイツ文法などとうの昔に忘れてしまっているので,ここでドイツ語の講義をするつもりは毛頭ないのであるが,あまりに間違いだらけのカルテでも具合が悪いので,少なくとも解剖用語の性別くらいは知っておくべきであろうと考えて調べ始めたところ,ドイツ語の名詞には奇妙な男女差別があることに気付いたのである。医学辞典で探っていくと身体中のありとあらゆる領域で,なんともユーモラスな男女差別がそれとなく為されていて大変に愉快である。融通のきかない堅物というイメージが強いドイツ人の,愛すべき側面を垣間見るようで面白い。そこで,耳鼻咽喉科用語を中心にそのいくつかを紹介してみようと思う。まず最初に断っておくが,人権とか差別とか難しい議論をするつもりはさらさらない。遊び心を刺激して,診療に疲れた頭を休める妙薬になってくれれば幸いと思ってのことである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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