icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科72巻10号

2000年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

喉頭結核の4例

著者: 佐藤慎太郎 ,   宮崎純二 ,   溝上宏之 ,   林田精一郎 ,   木寺一希 ,   津田邦良 ,   井之口昭

ページ範囲:P.638 - P.639

 近年,結核感染が再び増加しており1),当科でも1995年以降に4例の喉頭結核症例を経験した。近年の喉頭結核は腫瘤形成型が多く,肺結核を合併しない症例もあり2,3),早期診断が重要である。自験例ではいずれも喫煙歴はなく,胸部X線写真で異常陰影を認め,初診時から喉頭結核が疑われていた。また症例1,4では,結核や肋膜炎の既往歴があった。症例4を除き三者併用療法を行い肺病変,喉頭病変のいずれも2000年3月現在治癒状態である。
 症例1は87歳,男性。嗄声を主訴に1995年6月に入院した。左声帯に腫瘤性病変を認めたため生検を行い,喉頭結核の診断を得た(図1)。

Current Article

遺伝子異常による難聴

著者: 喜多村健 ,   野口佳裕 ,   黒石川泰 ,   古宇田寛子 ,   玉川雄也 ,   高橋克昌 ,   石川浩太郎

ページ範囲:P.641 - P.653

 はじめに
 感音難聴は頻度の高い疾患であるが,その病態はいまだ十分には解明されているとは言えない。約1,000の出生当たり,1人は言語習得前に高度難聴あるいは聾となり,しかもその半数は遺伝性とされている。これらの遺伝性難聴の原因遺伝子が,近年の分子遺伝学の発展で次々と同定されている。Waardenburg症候群やUsher症候群などがその代表例である。そして,特筆に値するのが,感音難聴の中で最も高頻度であり,難聴以外には他の臨床症状を示さない非症候群性感音難聴の原因遺伝子の解明である。この非症候群性感音難聴の原因遺伝子の解明は,難聴症例の大多数を占める原因不明の感音難聴の病態を知り,治療を試みるうえで貴重な情報を提供するものである。非症候群性難聴は,ヒト・ゲノム機構(The humangenome organization)で遺伝形式によって報告順に難聴遺伝子座が命名されている。優性遺伝はDFNA,劣性遺伝はDFNB,X連鎖遺伝はDFNである。インターネットで新しいデータが逐次報告されている(World Wide Web http://dnalab-www.uia.ac.be/dnalab/hhh/)。1999年12月の時点では,優性遺伝では31遺伝子座(重複を除くと30遺伝子座),劣性遺伝では28遺伝子座,X連鎖では6遺伝子座が報告されている。そして,ミトコンドリア遺伝子を含めると非症候群性感音難聴の原因遺伝子として,現在は17個判明している。この17個の遺伝子の中で,われわれは5個の遺伝子変異を独自に同定した。
 マウスは,多くのヒト疾患の動物モデルならびに遺伝子同定に用いられている実験動物である。難聴遺伝子の解明にも,内耳奇形マウスが難聴遺伝子の同定の大きな役割を果たしている。われわれの研究では,内耳奇形マウスを用いて2個の難聴遺伝子を同定した。

原著

急性副鼻腔炎より波及した前額部膿瘍の1例

著者: 横山有希子 ,   渡邊健一 ,   中嶋博史 ,   大久保公裕 ,   八木聰明

ページ範囲:P.655 - P.658

 はじめに
 急性副鼻腔炎は日常診察で遭遇する疾患の1つであり,多くは保存的治療で軽快する。しかし,ときに眼窩内や頭蓋内に合併症を引き起こし,重篤な病態に至る場合もある。
 今回われわれは,急性副鼻腔炎に伴って前額部膿瘍をきたした1症例を経験したので報告する。

内視鏡下鼻内手術後の抗生剤投与が原因と考えられるMRSA toxic shock syndromeの1例

著者: 高野篤 ,   高崎賢治 ,   田代哲也 ,   野田哲哉 ,   浜田久之 ,   江崎宏典

ページ範囲:P.659 - P.662

 はじめに
 Toxic shock syndrome (TSS)は黄色ブドウ球菌の産生する外毒素toxic shock syndrometoxin-1(TSST-1)によって発症し,発熱,発疹,血圧低下などを主症状として多彩な全身症状をきたす症候群であり,1978年にToddら1)によって初めて報告された。鼻・副鼻腔手術に伴う合併症としては10万症例中16.5症例の発症頻度2)と少ないが,ショック状態に陥るため合併症の1つとして考慮していなければならない。一方,近年抗菌薬の乱用により,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症が問題となっている3)。消化器領域におけるMRSA腸炎もその1つで,この腸炎によりショック状態に陥った報告もある4)
 今回われわれは,内視鏡下鼻内手術(ESS)施行後にMRSA腸炎を合併し,TSSを発症した1症例を経験したので報告する。

上顎洞血瘤腫の3症例

著者: 福元晃 ,   池園哲郎 ,   中溝宗永 ,   粉川隆行 ,   中嶋博史 ,   横島一彦 ,   八木聰明 ,   大秋美治

ページ範囲:P.665 - P.669

 はじめに
 副鼻腔血瘤腫とは臨床上の疾患概念であり,易出血性の鼻・副鼻腔良性腫瘍の総称といえるものである。田所1)が1917年に大日本耳鼻咽喉科会会報で発表した論文が最初の報告である。血瘤腫の臨床所見,画像所見は悪性腫瘍を強く疑わせる場合があり,過去には上顎全摘2),放射線治療や化学療法3,4)が行われた例がある。一側性副鼻腔疾患の鑑別診断の1つとして,血瘤腫は常に念頭におくべきである。
 今回われわれは,上顎洞血瘤腫と考えられた3症例を経験したので,画像診断を中心に報告する。

小唾液腺由来の多形腺腫内癌の1症例

著者: 鈴木秀明 ,   佐々木伸尚 ,   池田勝久 ,   山田敦 ,   髙坂知節

ページ範囲:P.670 - P.674

 はじめに
 多形腺腫は耳下腺,顎下腺などの大唾液腺に好発し,口腔粘膜に散在する小唾液腺にも発生する。本腫瘍は通常,被膜に包まれて膨張性に増殖し良性腫瘍とみなされるが,ときに上皮性細胞成分が悪性化することがある。悪性化したものは多形腺腫内癌と呼ばれ,浸潤性増殖や転移などの性質を示す。
 今回われわれは,小唾液腺由来の多形腺腫内に腺癌と扁平上皮癌が同時期に発生した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

顎下腺に発生した膨大細胞腫の1例

著者: 川端五十鈴 ,   椿恵樹 ,   並木聡子 ,   重田恵一

ページ範囲:P.675 - P.678

 はじめに
 唾液腺に発症する腫瘍の発生頻度はそれほど高いものではない。また,部位別にみると耳下腺内での腫瘍が多く,顎下腺のそれは少ないとされている1,2)。顎下腺腫瘍の病理組織分類をWHOの分類に準じて観察すると,耳下腺腫瘍と同じく良性・悪性の多くの腫瘍がみられる。しかし,上皮性腫瘍の中で腺腫に属するとされている好酸性腺腫,いわゆる膨大細胞腫(oncocytoma)の症例は顎下腺腫瘍で極く稀であり,いくつかの症例が報告されているのみである3〜7)
 われわれは最近,顎下腺より発生した膨大細胞腫の症例を経験したので,その臨床像を呈示するとともに,文献を加えて報告する。

頭頸部癌術後患者におけるβ-Dグルカン値の検討

著者: 古屋正由 ,   吉田知之 ,   佐藤春城 ,   堀口利之 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.686 - P.689

 はじめに
 近年,深在性真菌症は増加傾向にあり,免疫力の低下を伴う悪性腫瘍患者の治療にあたり重要な問題として注目を集めている1,2)。本来ヒトに対する真菌の病原性は低いとされているが,感染症を発症させ重篤な症状を呈し生命に危険をもたらす場合もある。その背景には全身的もしくは局所的な易感染因子があるが,中心静脈栄養法の普及や拡大手術の増加,抗生物質や抗癌剤の頻用による医療の質の変化も要因の1つと考えられる1)。早期診断,早期治療が深在性真菌症の予後を大きく左右するといわれている1,3)。確定診断は細菌学的検査や病理学的検査により真菌を検出することであるが,一般に臨床検査材料からの真菌の検出率は低いとされており,また結果判明まで時間を要し診断が遅れることも稀でない1〜6)。最近では血清学的検査法が注目され様々な方法が検討されている1〜7)
 今回われわれは,β-Dグルカン定量法を用い,抗生物質に抵抗性の発熱を有する頭頸部癌術後患者を対象に,深在性真菌症の早期診断,治療について検討した。

輪状甲状靱帯切開を要した緊急気管切開術の1施行例

著者: 甲斐智朗 ,   小川明 ,   森田一郎

ページ範囲:P.691 - P.693

 はじめに
 輪状甲状靱帯切開は,異物,炎症,外傷などによる急性の上気道閉塞に対して,気管内挿管困難や,気管切開の時間的余裕がない場合の救急処置として行われる1)。その手技については教科書的にも記載があり普遍的なものであるが,実際にこれを要する症例を経験することは比較的稀と考えられる。今回われわれは,輪状甲状靱帯切開を要した緊急気管切開術の施行例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

乳歯気管支異物の1症例

著者: 成尾一彦 ,   岡本雅典 ,   小泉敏三 ,   福田多介彦 ,   上村裕和 ,   家根旦有 ,   藤田信哉 ,   細井裕司

ページ範囲:P.695 - P.697

 はじめに
 気管・気管支異物症は窒息など直接生命にかかわることもあり,耳鼻咽喉科医としてその取り扱いには熟知しておく必要がある。近年内視鏡医が軟性ファイバースコープを用いて摘出する例も増加しているが,摘出困難な小児のピーナッツ異物などではわれわれ耳鼻咽喉科医が硬性気管支鏡下に摘出するのが一般的で,気管・気管支異物症については耳鼻咽喉科医がその責務を担っている。
 今回,発症状況が特異で,かつ,比較的稀な乳歯気管支異物を血液ガス連続モニタリングシステムで動脈血の酸素ならびに二酸化炭素をモニターしながら硬性気管支鏡下に摘出したので報告する。

鏡下咡語

消化管異物—その苦い思い出と40年の反省

著者: 増田游

ページ範囲:P.682 - P.683

 退官を迎えて,長年の教職を終ってみると,日々時が経つにつれて,ぼんやり過去を振り返ってみることも多くなった。
 先日,夜半突然の右季肋部痛に夢を破られた。それから4時間ぐらい,仰臥位のまま床の中で呻吟していたが,次第に痛みは遠のき,朝の陽光を迎えた時には,全く痛みは治まっていた。薬の内服などの何の手だてを加えることなく。

連載 小児の耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑫副鼻腔炎の取り扱い

著者: 中澤勉 ,   岡本美孝

ページ範囲:P.701 - P.706

 はじめに
 小児副鼻腔炎の発生頻度は1950〜1965年代には30〜60%と高率1)であり,その多くは細菌感染による化膿型が中心であった。その後の経済的繁栄により栄養状態も良好となり,衛生環境の改善,50年代より使われ始めた抗生物質,さらに60年代後半には各種消炎酵素剤の開発などにより,罹患率の低下(10〜20%)2)や軽症化3,4)が報告されている。その反面で鼻アレルギーの増加がわが国でも認められ,アレルギーが副鼻腔炎の病因・病態に関わるアレルギー性副鼻腔炎が増加しているといわれている。また,成人のそれとは異なり鼻・副鼻腔は発育段階にあり自然治癒傾向をもち,寛解と増悪を繰り返す不安定な病態を呈している。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?