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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科72巻11号

2000年10月発行

雑誌目次

トピックス 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域のレーザー治療—その適応と成績

1.鼻・副鼻腔疾患のレーザー治療の適応と成績

著者: 鈴木直弘 ,   小川武則

ページ範囲:P.717 - P.720

 はじめに
 近年,市中病院でも外科,婦人科,泌尿器科など多科でレーザー機器を申請するようになり,手術室にCO2,KTP,Nd-YAG,Ho:YAGレーザーが1台は設置されるようになってきた。鼻・副鼻腔疾患に対しても,従来出血に悩まされてきた手術もレーザーを使用することによりほとんど出血がなく手術が可能になり,多くの疾患に応用されるようになった。
 本稿では,アレルギー性鼻炎を中心に鼻・副鼻腔疾患のレーザー治療の適応と治療成績について報告する。

2.口腔・咽頭疾患のレーザー治療の適応と成績

著者: 中山明仁

ページ範囲:P.723 - P.728

 はじめに
 Light amplification by stimulated emission of radiationの頭文字から命名されたレーザー(LASER)は,その語源が示すように細い光束に高エネルギーを集約させる技術を医療に応用したものである。現在までに,切開と凝固を同時に行える共通した特性をもつ,波長の違う様々なレーザー線源が開発され実用化されている1)。1980年代と最も早くに使われ始めたCO2レーザーは,その安定した特性から現在でも広く使われている2)
 本稿では,当科で行った最近のCO2レーザー治療症例をふりかえり,口腔・咽頭領域におけるレーザー手術の有用性と注意点について検討した。

3.喉頭・下咽頭疾患のレーザー治療の適応と成績

著者: 森一功 ,   千々和圭一 ,   梅野博仁

ページ範囲:P.731 - P.739

 はじめに
 1972年にレーザーを用いた喉頭微細手術が最初に行われて1)以後,レーザーの臨床応用は急速に広まってきた。特に炭酸ガスレーザーは,現在では初期の喉頭癌の治療法としては放射線に勝るとも劣らない治療成績をあげている2)。他方,YAGレーザーは上顎癌の手術で凝固止血に多用され,KTPレーザーは喉頭の血管腫治療の第1選択となってきている。いわば,頭頸部領域でのレーザーの使用は近年の流行ではあるが,各疾患ごとの適応や治療成績については,包括的にこれらをまとめた報告は見当たらない。
 そこで,本稿では,喉頭・下咽頭の代表的な腫瘍性疾患におけるレーザー治療をまとめてみる。すなわち,その適応と治療成績とについて,久留米大学医学部耳鼻咽喉科での治療成績と過去の報告とを振り返って詳しく述べる。

4.気管疾患のレーザー治療の適応と成績

著者: 北原哲 ,   田部哲也

ページ範囲:P.741 - P.745

 はじめに
 本邦において耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域疾患の治療にレーザーが臨床応用されて20余年が経過する。この間,鼻・副鼻腔,口腔,咽頭,喉頭疾患のレーザー治療は広く普及してきた1)。一方,気管疾患のレーザー治療は,適応となる症例に遭遇すること自体が少ないこと,気管レーザー治療用機器の開発が十分とは言えないこと,レーザー治療の有効性が未だ確立されていないことから,耳鼻咽喉科医にとって一般的とは言えない。
 レーザー治療が適応となる気管疾患には,声門下・気管狭窄と気管乳頭腫がある。

5.低出力レーザーの適応と評価

著者: 今中政支 ,   竹中洋

ページ範囲:P.747 - P.750

 はじめに
 耳鼻咽喉科医が日常よく使用するレーザーといえばNd:YAGレーザー,KTPレーザー,CO2レーザーの3種類であり,頭頸部外科を専門とする場合は,KTPレーザー一辺倒という先生方も多いと思われる。前項までにその有用性について詳述されてきたので重複は避けるが,これらは数W以上の出力をもっ高出力レーザーである。一方,本稿で述べる低出力レーザーの出力はせいぜい数mWであり,手にかざしても痛くも何ともないばかりか,温かささえも感じることはない。低出力レーザーの生体への作用はレーザー光線のもつ光自身のエネルギーによるものであり,光反応による生体活性効果に基づくものである。
 1960年,Maimanが発振に成功したルビーレーザーに続き,1961年にJavanが発振に成功したHe-Neレーザーは低出力レーザーであり,今日の半導体レーザーとともにその代表である。わが国のレーザー治療の歴史は皮膚疾患のルビーレーザーを発端に高出力CO2レーザーの開発が先行しており,He-Neレーザーは1986年に小山田ら1)が慢性関節リウマチの治療に用いて以降急速に普及した。1988年には第1回の研究会が開催され,麻酔科,整形外科,皮膚科の各領域から多数の演題が報告されている。

目でみる耳鼻咽喉科

咽喉頭アミロイドーシスの1症例

著者: 原浩貴 ,   今手祐二 ,   増満洋一 ,   山下裕司 ,   河野裕夫

ページ範囲:P.714 - P.715

 アミロイドーシスは,エオジンで均質に染まるアミロイド物質の細胞外沈着を本体とする疾患である。耳鼻咽喉科領域では,上気道に限局して発生するものが多いが,その原因や治療に関しては未だ不明の点が多い1)
 今回われわれは咽喉頭アミロイドーシス症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

「遅発性内リンパ水腫」を巡って思うこと

著者: 亀井民雄

ページ範囲:P.754 - P.756

 遅発性内リンパ水腫(delayed endolymphatic hydrops:以下,DEH)は,既に広く世界的に認知された疾患概念とみてよいであろう。私は個人的には,DEHの概念はもっと拡張されるべきだと考え,そして特発性メニエール病の多くが,実際はDEHではないかと推測しているが(耳鼻臨床93巻),ここではこのことには触れない。ここで記したいと思うのは,DEHの概念の形成の個人史ともいうべきことどもである。各々の研究論文には,多かれ少なかれ文中には表れない喜怒哀楽の歴史があり,それが研究者の人生の内面を彩っていると思うのである。
 いうまでもなく,DEHはSchuknechtによって命名され,概念形成が行われた臨床的疾患単位である。1976年,このことに関する彼の最初の論文がArch Oto Rhino Laryngに発表されたとき,私は深い感動を覚えた。それは,私が長年考えあぐねた遅発性めまいの発現機転について,それまでに知られたメニエール病や内リンパ水腫の組織知見との関連において,見事な説明を提供するものであったからである。

原著

根治的頸部郭清術後に生じた鎖骨疲労骨折の1例

著者: 廣島屋孝 ,   髙橋廣臣 ,   八尾和雄 ,   中山明仁 ,   馬越智浩 ,   永井浩己 ,   岡本牧人 ,   松林隆 ,   西口郁 ,   北野雅史

ページ範囲:P.758 - P.760

 はじめに
 根治的頸部郭清術後の合併症として皮膚壊死,感染,血腫,リンパ漏,乳糜漏,神経麻痺,胸鎖関節亜脱臼などが知られているが1),鎖骨骨折までに至る例は少ない。
 今回われわれは,根治的頸部郭清術後に生じた鎖骨疲労骨折の1例を経験したので報告する。

Heerfordt症候群の1症例

著者: 中村由紀夫 ,   宇良政治 ,   又吉重光

ページ範囲:P.762 - P.765

 はじめに
 サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患で,多彩な臨床症状を呈する。その中でもHeerfordt症候群は顔面神経麻痺,ブドウ膜炎,耳下腺腫脹を主症状とするサルコイドーシスの一亜型として知られている。
 われわれは今回,末梢性顔面神経麻痺を主訴に受診し,サルコイドーシスの診断を得た症例を経験したが,これをHeerfordt症候群と考えたので報告する。

耳下腺腺房細胞癌の1症例—その診断と治療方針

著者: 池田進 ,   河田了 ,   北原民雄 ,   荒木倫利 ,   牧本一男 ,   竹中洋 ,   前田環 ,   辻求

ページ範囲:P.767 - P.770

 はじめに
 耳下腺腺房細胞癌は,耳下腺悪性腫瘍の十数%を占めるものの1,2),耳下腺腫瘍症例が多い施設でも5年に1例経験する程度の稀な腫瘍であるため,その治療に困難を感じることが少なくない。しかも,耳下腺ではその中に顔面神経が貫通しているため,その処理が最も問題となる。また,腺房細胞癌は一般に悪性度が低く,症状の進行が緩慢であるため,良性腫瘍として手術が施行されることがある。
 今回われわれは,耳下腺腺房細胞癌症例を経験したので,症例を報告するとともに,その診断と手術方針について考察した。

髄膜炎を合併した特発性髄液鼻漏の1症例

著者: 一氏佳代子 ,   飯田政弘 ,   高橋正紘 ,   小田真理 ,   富永二郎

ページ範囲:P.773 - P.776

 はじめに
 髄液鼻漏は外傷性と非外傷性に分類される。その多くは外傷性であり頭部外傷の2%に認められる。非外傷性髄液鼻漏は少なく,特発性は稀であり1),本邦ではわれわれの検索し得た範囲では1975〜1998年までに計12例の報告があるのみである。
 今回われわれは,外傷や頭部手術の既往がなく髄膜炎を合併した症例を経験した。本例は蝶形骨洞に骨欠損を認め,同部を内視鏡下に充填したところ術後髄液漏の再発を認めず,良好な成績を得たので,文献的考察を加え報告する。

手術手技

頭頸部外科領域での19G翼状針ドレーンの使用経験

著者: 弓削勇 ,   大平達郎 ,   五島史行 ,   加納滋 ,   行木英生

ページ範囲:P.779 - P.782

 はじめに
 頭頸部外科領域において,術後ドレーンを留置することは術後管理を適切に行ううえで重要な役目を果たしている。持続吸引ドレナージは,日本では1960年代より一部報告がされ始めたが,今日,様々な形態の持続吸引ドレナージが市販され使用されている。
 今回われわれは,国立栃木病院耳鼻咽喉科において,1983年より施行している小手術野に対する術後ドレナージ方法について,その使用法と施行結果について報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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