原著
鼻性NK/T細胞リンパ腫の臨床的検討
著者:
坂東伸幸
,
小林吉史
,
荻野武
,
高原幹
,
野中聡
,
原渕保明
,
三代川斉之
ページ範囲:P.880 - P.886
はじめに
進行性鼻壊疽は鼻腔または咽頭領域に発生し,顔面正中部に沿って進行する破壊性,壊死性病変を主体とする予後不良な疾患の臨床的な呼称であった。しかし,その病因,病態が不明であったことから,悪性肉芽腫症,致死性正中肉芽腫症,悪性組織球症など多種多様な名称が使用されていた。1982年にIshiiら1)が腫瘍細胞の表面形質がT細胞型リンパ腫の特徴を有する6例を報告して以来,同様の報告が相次ぎ2,3),鼻性T細胞リンパ腫という名称が使われていた。最近になって腫瘍細胞がT細胞とNK細胞の両者の表面形質を有することが報告され4),鼻性NK/T細胞リンパ腫と呼ばれている5)。また病因的には,筆者ら6)が1990年に本疾患5例にEBウイルスDNAとEBウイルス発癌抗原が同定されたことを報告して以来,同様の報告が相次ぎ7,8),本疾患とEBウイルスとの関連性が注目されるようになった。
元来,進行性鼻壊疽は臨床的に診断されており,病埋組織学的には診断が困難で,悪性リンパ腫と確定診断が得られなかった症例も少なくなかったと思われる。
今回筆者らは当科開設以来,臨床的に進行性鼻壊疽と診断された12例について,免疫組織学的手法を用いて病理組織像の再評価を行い,鼻性NK/T細胞リンパ腫との異同を検討した。さらにEBウイルスとの関連性を検討したので報告する。