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目でみる耳鼻咽喉科
舌神経由来のcellular schwannomaの1例
著者: 上埜理恵12 古田康1 目須田康1 大谷文雄1 福田諭1 犬山征夫1
所属機関: 1北海道大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2現:市立札幌病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.84 - P.85
文献購入ページに移動症例は42歳,男性。平成9年8月頃より左顎下部腫脹に気づき近医を受診した。受診時,舌左側の軽度の味覚障害としびれを自覚していた。画像所見から口腔底腫瘍が疑われ,9月30日に当科を紹介され受診した。初診時,口腔底左側の粘膜下に弾性硬,可動性良好な腫瘤を触知した。CTでは顎下腺と接する境界明瞭な腫瘤を認めた。MRIでは内部が房状で,T1でやや高信号を示し,ガドリニウムで増強される腫瘤であった(図1)。吸引細胞診では多形腺腫疑いであった。以上より術前診断として唾液腺由来の上皮性腫瘍,または神経由来の腫瘍を疑い,全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行した。術中所見では腫瘍は被膜を有しており,下顎骨の裏面で舌神経と思われる太い索状物と連続していた(図2)。索状物は腫瘍の表面で薄く拡がって腫瘍を取り囲んでいたため神経鞘腫と判断し,これを切断した。口腔底からも舌神経の末梢部と思われる細い索状物が舌尖方向に向かって入り込んでいた(図3)。これも切断したのち,舌下腺の一部と顎下腺をつけて腫瘍を摘出した。摘出標本では5.5×5cm大の被膜を有する腫瘍で,内部は淡黄色で充実性の腫瘍であった(図4)。組織学的には,紡錘形細胞が束状配列あるいはstoriform patternを示しながら充実性に増殖する,細胞密度の高い腫瘍であった(図5)。軽度の核異型や核分裂像も認められたため(図6),悪性軟部組織腫瘍または悪性末梢神経鞘腫との鑑別を要すると考えられた。しかし,明らかな壊死巣は認めず,分裂像も極く少数であった。免疫組織化学的にはS-100蛋白が腫瘍細胞にび漫性に陽性を呈していた。以上の所見より,最終的にcellularschwannomaと診断した。術直後には舌左半分の味覚低下としびれの訴えがあったが,運動麻痺などは認めなかった。術後約14か月を経過した時点では,極くわずかなしびれ感を訴えるのみで,明らかな再発の兆候はない。
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