文献詳細
原著
頭頸部同時重複癌2症例での遊離空腸による口腔再建
著者: 横島一彦1 中溝宗永1 中嶋博史1 青柳美生1 矢嶋裕徳1 粉川隆行1 滝沢竜太1
所属機関: 1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.109 - P.112
文献概要
舌癌に対し原発巣と頸部リンパ節の一塊切除を施行した後の口腔再建には,その欠損の大きさや皮弁の厚さに応じて,腹直筋皮弁や前腕皮弁が適宜選択されており1〜4),遊離空腸による再建の報告は少ない5〜8)。再建後の嚥下,咀嚼,構音機能を考えると,残存する舌の可動性を妨げない,薄くてしなやかな再建材料が理想的である。その点で,比較的小範囲の口腔欠損であれば,遊離空腸での再建は有利に思える。しかし一方では,遊離空腸採取によって手術侵襲が大きくなることや術後の腹部合併症が危惧されることから,遊離空腸が選択される機会が少なかったものと思われる。
今回,頭頸部同時重複癌の2症例で遊離空腸による口腔再建を行った。これらの症例は口腔内の切除が比較的小範囲であり,他の要因もあったため口腔再建の材料として遊離空腸を選択した。これらの症例の経験から,その有用性と問題点について検討し,口腔癌単独の場合の遊離空腸による再建の可能性についても考察した。
掲載誌情報