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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科72巻4号

2000年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

ヒト内耳の3D画像

著者: 友田幸一 ,   鈴鹿有子 ,   利波久雄

ページ範囲:P.244 - P.245

 内耳(迷路)は側頭骨内に存在する小器官であり,通常外部から観察することが困難で,また立体的に複雑な構造を有している。その構造を理解するためには,側頭骨の解剖実習あるいはCTなどの画像から自分の頭で立体的にイメージするしか方法がなかった。近年の画像処理技術の進歩により,2次元から3次元表示が可能となり,さらに任意の方向から観察することができるようになった。本稿では,ヒトの内耳の立体構造を3次元的に画像化することができたので教育の意味も含めて紹介する。
 画像撮影は,spiral CT (X-Vision,TOSHIBA)により,512×512matrix,120 KV,200 mA,1mm sliceの条件で撮影し,0.3mmで再構成した。画像データはWork station (X-Tension,TOSHIBA)を用いて,閾値を500(350〜750)/1,000に設定し3次元画像再構築を行った。また任意の断面を作成し,内耳の内部構造をも観察した。

Current Article

頭頸部血管奇形

著者: 新田光邦

ページ範囲:P.247 - P.250

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域の血管性病変は多岐にわたる。このうち血管奇形は,形態,程度,拡がりが複雑で移行型を示すものも多く,その定義,分類は難しい。分類も様々で未だに統一された見解をみないが,一般的には,明らかな動静脈間の短絡がみられるものを動静脈瘻,そうでないものを血管腫としていることが多い。また,走行異常に関する報告は少なく,主に悪性腫瘍症例の頸部郭清術時に遭遇し報告されている。
 Malanら1,2)の分類は,発生学および血行動態の面から血管奇形を分類したもので理解しやすく,治療法の選択の面からも有用で広く用いられている。

原著

ワルダイエル輪リンパ腫型ATL10例の臨床的観察

著者: 古謝静男 ,   糸数哲郎 ,   松村純 ,   新濱明彦 ,   真栄田裕行 ,   玉城三七夫 ,   我那覇章 ,   長谷川昌宏 ,   野田寛

ページ範囲:P.253 - P.256

 はじめに
 九州・沖縄地域は成人T細胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus type I:HTLV-I)の流行地域であり,そのため同地域では成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)が多く発症する。ATLはその病態により1)急性型,2)慢性型,3)リンパ腫型,4)くすぶり型の4型に分類されている1)
 頭頸部領域は悪性リンパ腫の好発部位であり,頸部リンパ節やワルダイエル輪,鼻腔などにB細胞性やT細胞性の悪性リンパ腫が多発する。最近ワルダイエル輪に発生するT細胞性悪性リンパ腫の中に,HTLV−Iにより発生するリンパ腫型ATLが報告され出した2)。リンパ腫型ATLは治療抵抗性で予後が不良であり,ワルダイエル輪悪性リンパ腫の中でもB細胞性や非ATL性T細胞性悪性リンパ腫と臨床的に区別して取り扱う必要がある。
 今回われわれは,当科で経験したワルダイエル輪リンパ腫型ATLの臨床的検討を行ったので,その結果に若干の考察を加えて報告する。

頸部腫瘤として発症した未分化大細胞型リンパ腫(Ki-1リンパ腫)の2例

著者: 大野芳裕 ,   藤井正人 ,   今西順久 ,   菅家稔 ,   冨田俊樹 ,   神崎仁 ,   亀山香織

ページ範囲:P.257 - P.261

 はじめに
 未分化大細胞型リンパ腫は,ホジキン病のReed-Sternberg細胞に特異的とされていたKi-1抗原陽性の大細胞型リンパ腫として報告された点で,Ki-1リンパ腫という名称が用いられていた時期もある。
 1994年に発表された悪性リンパ腫のREAL分類では,CD 30(Ki-1抗原)陽性で,大型で未分化な形態を取るT細胞型リンパ腫として規定され,anaplastic large cell lymphoma (ALCL)の名称が採用されている1)
 われわれは最近,頸部腫瘤として発症したALCLの2例を経験したので報告する。

頭頸部悪性腫瘍の治療後に発症した骨髄異形成症候群の1例

著者: 井口芳明 ,   小川克二 ,   山本一博 ,   落合敦 ,   伊藤昭彦 ,   安達仁

ページ範囲:P.264 - P.267

 はじめに
 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syn-drome:以下,MDSと略)は造血幹細胞の障害の結果,無効造血をきたし,貧血,穎粒球減少症,血小板減少症が様々な程度に起こる疾患である1,2)。前白血病としての特徴をもつ疾患で,緩徐に発症し初期には無症状か,あっても軽度の貧血症状が大部分であるが,進行すれば白血病化が知られ1),その発症機序や取り扱いについてはまだ未解決の部分がある。本症候群は中高齢者に多く,貧血から始まる症例が多く,高齢者の貧血をみた際の鑑別疾患の1つである2)。特発性および続発性のものが認められ,続発性は治療誘発性ともいわれ,放射線曝露,化学療法薬などが原因とされている1)。今回われわれは,悪性リンパ腫の加療後2年を経て喉頭炎をきたし,その入院中に治療誘発性MDSと思われた症例を経験したので報告する。

多発性喉頭蓋嚢胞の1例

著者: 安達仁 ,   小川克二 ,   井口芳明 ,   山本一博 ,   落合敦

ページ範囲:P.269 - P.272

 はじめに
 喉頭蓋嚢胞は主に喉頭蓋舌面に生じ,日常臨床でも特に稀な疾患ではない。通常単発性であり,病理組織学的には類上皮嚢胞,貯留嚢胞が大多数を占める。症状として,喉頭異常感,嚥下時違和感が多いが,特に症状の訴えはなく偶然発見される場合も多い。今回われわれは,喉頭蓋舌面に多発し,病理組織学的には鰓性嚢胞であった症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

前頭蓋底浸潤腫瘍に対する頭蓋底手術例の検討

著者: 石田春彦 ,   天津睦郎 ,   長嶋達也 ,   田原真也

ページ範囲:P.277 - P.281

 はじめに
 鼻・副鼻腔は前方では前頭蓋底に,後方では中頭蓋底に接しているため,同部に発生した腫瘍が頭蓋底組織を破壊して,頭蓋内へ進展することがある。このような症例は,以前は手術適応とはならず姑息的治療を行っていた。頭蓋底に浸潤した副鼻腔腫瘍に対する手術は,Smithら1)の報告が最初である。その後抗生物質や再建手技の進歩などにより,最近では頭蓋内外の腫瘍を一塊として摘出する頭蓋底手術が定着し,多くの施設で行われるようになった。このことは患者の生命予後に大きく寄与するものと思われる。
 われわれは1987年に篩骨洞髄膜腫症例に対して,頭蓋内外からアプローチを行い頭蓋内腫瘍と篩骨洞腫瘍を一期的に摘出したのを最初として,これまでに8例に前頭蓋底の合併切除を行ったので,その結果を報告する。

鼻翼不全剥奪創に対する経静脈動脈還流法の経験

著者: 相原正記 ,   大島秀男 ,   石田寛友 ,   熊谷憲夫

ページ範囲:P.283 - P.285

 はじめに
 最近,マイクロサージャリーの技術や器具の向上により,熟練した外科医の場合,0.5mm以下の血管も吻合でき,指先の小さな組織片の再接着も可能となった1)。形成外科領域では耳介,口唇,鼻の再接着に成功し,さらに顔面組織の小さな断片の再接着に挑戦している報告もみられる2)。今回われわれは,小児の鼻翼の不全剥奪創例に対し吻合可能な動脈がみつからなかったため,不全剥奪創部の静脈と欠損周辺の眼角動脈を吻合することによって生着した症例を経験したので報告する。

内視鏡下髄液鼻漏閉鎖手術時の一工夫—フルオレセイン色素の局所使用

著者: 西平茂樹 ,   中田吉彦 ,   坂本賢生

ページ範囲:P.291 - P.294

 はじめに
 経鼻的な髄液鼻漏閉鎖手術では,手術中に髄液漏出が認められず,明らかな骨欠損部や硬膜損傷部も見いだされない場合,広範囲の天蓋粘膜剥離を余儀なくされることが多い。仮に髄液漏出が認められた場合でも,漏出部が非常に小さな瘻孔で髄液の流出も少量の場合には,その流れの向きを判読するのに難渋する。今回,内視鏡下経鼻髄液鼻漏閉鎖手術時にフルオレセイン色素を術創局所に塗布したところ,漏出する髄液が色素を洗い流して線状となり,流れをたどることでピンホール状の瘻孔が容易に確定された症例を経験した。症例を詳述し同色素の局所使用に関して報告する。

抜歯後に発生した頸部ガス壊疽の2例

著者: 益田明美 ,   西岡信二 ,   江谷勉 ,   鶴迫裕一 ,   赤木博文 ,   西崎和則 ,   増田游

ページ範囲:P.297 - P.301

 はじめに
 ガス壊疽はガス産生性壊疽性感染症の総称であり,頭頸部での発生は比較的稀といわれていたが,近年,本邦における頭頸部領域でのガス壊疽症例の報告は稀ではなくなってきている1〜4)。急速に炎症が進行するため,生命の予後を左右する重篤な感染症で,早期診断のうえで速やかな治療が非常に重要である。今回われわれは,糖尿病を基礎疾患にもち抜歯後に発症した頸部ガス壊疽の2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

臨床とは何?

著者: 石川哮

ページ範囲:P.288 - P.289

 大学の臨床教授
 大学の教授選考では,候補者の発表論文のimpactfactorを合計して評価することが重要な項目になっている。専門の異なる講座の教授が選挙するのだから客観的評価項目としては確かに価値がある。しかし,このところ臨床畑の教授選では,「研究より臨床」を重視するという傾向が盛んである。高いimpact factorをもつjournalは基礎医学,生物学研究内容が採用されやすく,生々しい臨床報告はなかなかacceptしてくれない。大学病院という現場で,病める人と直接接する医療を担当するのだから診断・治療に秀でた腕をもっていなければならないし,外科系は特に切ったり張ったりの腕が要求される。だから,研究などそれほどの業績はなくても「臨床教室の教授」として低く評価するのは間違いだ,というのが理由である。日本耳鼻咽喉科学会はそのような表明を学会誌に掲載した。耳鼻咽喉科という広い守備範囲で,メスを離れた内科的専門領域があるにもかかわらず,外科的手技だけを重視した片手落ちの声明内容ではあるが,これも臨床技術重視の耳鼻咽喉科学教授選考に手を貸したことになった。
 この話の流れには納得する人も多いであろう。診療技術をartとして認識し,それが臨床医の基本であることは当然のことなのだが,しかし,何でも行き過ぎがあるように,技術を重視するあまり,研究業績を軽視するようになっては一大事である。研究には「臨床研究」というのがある。動物実験だけで物をいうのではなく,「人」の生物現象の探究から「人の病」に直結した研究,新しい診断・治療へと切り込んだ研究や開発研究が「臨床研究」である。生物学や基礎医学研究で獲得した高いimpact factorでなくても,臨床を見据えた研究で得たimpact factorは重視しなくてはいけない。その人の科学的思考による問題解決チャレンジの歴史が記録されているのであり,その人の臨床研究報告を通じた科学者としての大切な評価材料だからである。その人の哲学さえうかがえるものもある。

連載 小児の耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑧難聴と(リ)ハビリテーション

著者: 田中美郷

ページ範囲:P.303 - P.309

 はじめに
 難聴が人生の早期からあると,聴覚的認知機能や言語の発達が阻害されるが,この障害は難聴による二次的なものであるから予防可能である。一方,幼小児期は人格形成の重要な時期でもある。それゆえに成人の場合とは異なって,難聴幼小児に対しては人間形成を重視した(リ)ハビリテーションサービスが求められる。かかる観点に立つと,難聴児の(リ)ハビリテーションは治療教育,すなわち「医学,心理学,教育学,その他の関連諸分野の理論・方法を総合的に活用して,個々の人の発達の促進と,情緒,認知,行動の諸側面にわたる問題の改善,克服とにより,その生活の向上充実を保証するための臨床活動の全てを指す」1)の観点から臨むことが望まれる。このような方法論は従来の耳鼻咽喉科学にはなかったが,世のニーズに応えるための新しい実践の学として発展してきたことに着目する必要がある。本稿ではこのような認識に基づいて論を進めたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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