原著
ワルダイエル輪リンパ腫型ATL10例の臨床的観察
著者:
古謝静男
,
糸数哲郎
,
松村純
,
新濱明彦
,
真栄田裕行
,
玉城三七夫
,
我那覇章
,
長谷川昌宏
,
野田寛
ページ範囲:P.253 - P.256
はじめに
九州・沖縄地域は成人T細胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus type I:HTLV-I)の流行地域であり,そのため同地域では成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)が多く発症する。ATLはその病態により1)急性型,2)慢性型,3)リンパ腫型,4)くすぶり型の4型に分類されている1)。
頭頸部領域は悪性リンパ腫の好発部位であり,頸部リンパ節やワルダイエル輪,鼻腔などにB細胞性やT細胞性の悪性リンパ腫が多発する。最近ワルダイエル輪に発生するT細胞性悪性リンパ腫の中に,HTLV−Iにより発生するリンパ腫型ATLが報告され出した2)。リンパ腫型ATLは治療抵抗性で予後が不良であり,ワルダイエル輪悪性リンパ腫の中でもB細胞性や非ATL性T細胞性悪性リンパ腫と臨床的に区別して取り扱う必要がある。
今回われわれは,当科で経験したワルダイエル輪リンパ腫型ATLの臨床的検討を行ったので,その結果に若干の考察を加えて報告する。