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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻10号

2001年09月発行

雑誌目次

トピックス 嚥下障害

1.嚥下機能検査とその評価

著者: 横山正人

ページ範囲:P.655 - P.660

 I.X線透視
 X線透視検査は,嚥下にかかわる構造物の形態や動態,あるいは造影剤の残存・誤嚥の有無などの異常を視覚的に捉えることができるため,最も普及した嚥下機能検査法である。造影剤が口腔から胃へ運搬されるまでの嚥下運動の全時間帯についての情報が得られ,ビデオ記録を併用することにより,スローモーションや静止画像で詳細に分析することができる。嚥下障害の検査では必ず行われるといっても過言ではないが,食道入口部の収縮・弛緩を把握できないことによる診断上の限界や造影剤の誤嚥による合併症の可能性などの欠点もある。

2.嚥下障害の判定と治療方針の決定

著者: 津田豪太

ページ範囲:P.661 - P.664

 はじめに
 嚥下障害という病態は患者自身が自らその障害を訴える場合もあるが,多くの場合は周囲の観察などから嚥下障害が疑われ諸検査で実証される。しかも,その検査の中には,患者自身が検査を理解して協力しないとできないものや患者に苦痛を感じさせるものもあるため,慎重に必要最低限度の検査を組み合わせて,障害の程度を評価しなければいけない。

3.嚥下障害の外科的治療

著者: 棚橋汀路

ページ範囲:P.667 - P.672

 はじめに
 咽頭期嚥下は口腔期と食道期の間にあり,両嚥下運動と機能的に強い関係をもつ。口腔期嚥下運動が発動され,口腔に保持されていた内容が咽頭に送られると,その刺激が入力となり反射的に咽頭期嚥下運動が始まり食道期に続く。病態では,咽頭期嚥下運動の発動の遅れや構成されるべき運動の不全により,搬送機能の低下,誤嚥防止機構の破綻により咽頭に過量の残留を生じ誤嚥を起こす。
 重症の障害では手術治療が必要となり,1948年Naffzigerらの報告以来,沢山の術式やその成果の報告がある。これらの術式は障害様式とその程度により選択されるものであり,障害された咽頭期嚥下運動の病態生理の十分な計測評価と合わせて,嚥下以外の諸機能,上半身の姿勢制御能力,上肢の機能,異常運動,知的条件と症例ごとの生活環境をも含めて検討する。術後,獲得される嚥下機能はQOLを高める最良のものであるように配慮する。

4.嚥下障害のリハビリテーション

著者: 三枝英人

ページ範囲:P.674 - P.680

 はじめに
 嚥下のリハビリテーション(以下,リハと略)というとたいていの場合,嚥下訓練のことを連想される方も多いと思う。しかし,本来リハとは機能訓練のことばかりでなく,様々な角度からその障害に対してアプローチするものである。したがって,本稿でもその観点から嚥下障害のリハについて考えたい。その前に,リハ医学の理念について十分な理解をすることが重要であるので,これについて若干の紙面を割くことにする。

目でみる耳鼻咽喉科

甲状軟骨上角過長症の1例

著者: 芳賀雅士 ,   石井甲介 ,   滝沢克巳 ,   小林泰之 ,   市村恵一

ページ範囲:P.652 - P.653

 甲状軟骨の形成異常の報告は,上角の欠如が剖検例を中心に多数みられるが,上角過長症は,現在までに国内で2例の報告があるのみである。この2例はいずれも咽喉頭異常感を主訴としている1,2)
 今回われわれは,全く自覚症状がなく,上部消化管内視鏡検査時に偶然発見された本疾患を経験したので報告する。

原著

上顎洞癌の臨床的検討

著者: 寺山善博 ,   米本正明 ,   長舩宏隆 ,   小田恂

ページ範囲:P.683 - P.687

 はじめに
 上顎洞癌は早期の自覚症状の発現に乏しく,頭頸部癌の中でも決して予後良好なものとはいえない。また,顔面形態の変化と機能障害が治療上問題となり,根治性を高めるとともにQOLの低下を最小限にとどめる必要がある。佐藤1)により提唱された三者併用療法の報告以来,多施設で具体的方法に相違はあるものの三者併用療法の導入により上顎洞癌の治療成績は徐々に改善されてきた。
 今回われわれは,一次治療を施行した上顎洞癌症例の治療成績について検討したので報告する。

喉頭saccular cystの1例

著者: 杉本一郎 ,   渡部浩 ,   田代亨 ,   平川治男

ページ範囲:P.695 - P.697

 はじめに
 喉頭saccular cystは喉頭室の前方にある喉頭小嚢由来の嚢胞で,乳幼児の呼吸困難をきたす疾患として海外では多く報告されている1〜3)が,本邦での報告は稀である4)
 今回われわれは,嗄声を主訴とした成人の喉頭saccular cystの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

側頭骨錐体部に発生した血管腫の1例

著者: 渡辺剛士 ,   林田哲郎 ,   小田雅也

ページ範囲:P.699 - P.702

 はじめに
 血管腫は血管成分由来の良性腫瘍である。そのうち側頭骨に発生するものは比較的稀であり,報告も少ない。
 今回われわれは,顔面神経麻痺で発症し,その11年後に側頭骨錐体部に血管腫が発見された症例を経験したので報告する。

当科において遊離空腸再建を行った下咽頭癌症例の検討

著者: 羽馬宏一 ,   蓑田涼生 ,   鮫島靖浩 ,   湯本英二

ページ範囲:P.703 - P.706

 はじめに
 1957年にSeidenbergら1)により,頸部食道癌の再発のため下咽頭,喉頭,頸部食道摘出が行われた症例に対し初めて遊離空腸移植術が用いられた。その後顕微鏡下に行う血管吻合手技の導入や普及に伴い,現在本術式は下咽頭頸部食道癌切除術後の再建術式となっている2)
 当科においても,約2年前より下咽頭癌症例に対して遊離空腸による再建を行っており,今回はこれらの術後合併症および嚥下機能と摂食状況を中心に検討した。

当科における口唇癌の臨床的検討

著者: 駒澤大佐 ,   横山純吉 ,   橋本省 ,   小岩哲夫 ,   西川仁

ページ範囲:P.708 - P.711

 はじめに
 口唇癌は,米国の統計では口腔悪性腫瘍のうち25〜30%を占めるのに対し,日本では1.56〜3.0%1〜3)とされ,欧米に比べ少ない。以前,東北大学附属病院では口唇癌の進行症例の治療には放射線療法が主に選択されていたが,1993年以降は拡大手術のうえ再建手術が施行されるようになった。しかし,口唇癌切除後の再建術は,切除範囲に応じた工夫が必要でありバラエティーに富む4)。また,最近入院期間の短縮や病床稼働率の改善が求められているが,今回治療法による在院日数の変化および予後や予後因子を併わせて検討したので報告する。

鼻翼に生じた皮脂腺癌例

著者: 堀泰高 ,   小坂道也 ,   萩池洋子 ,   田中均

ページ範囲:P.713 - P.716

 はじめに
 皮脂腺癌は主に眼瞼の皮脂腺から発生し,中でもマイボーム腺からのものが多い。眼瞼の悪性腫瘍の1〜5.5%を占め,予後不良の腫瘍として知られている1)。唾液腺にも脂腺細胞が存在し耳下腺からの皮脂腺癌も30例報告されている2,3)。しかし,鼻翼から発生する皮脂腺癌は極めて少ないとされており4,5),今回われわれはその鼻翼皮脂腺癌の1例を経験したので報告する。

鏡下咡語

身近な危ない草花

著者: 中野雄一

ページ範囲:P.692 - P.693

 残念ながら医療現場では,今もあってはならない事故が起き,そのたびに防止策が問われています。それにもまして事故に至らないニアミスやヒヤリ・ハットはもっと多く発生しています。このようなぞっとする場面はなにも医療界ばかりでなく,自然界でもみられます。それも身近な植物の世界で。
 初夏の頃,所用である病院を訪ね,その玄関先に下り立ったとき,目の前の花壇一杯にきれいな赤紫色の美しい花が咲いていました。よくみるとそれはジギタリス(Digitalis purpurea)でした。以前,この葉をコンフリーと間違えて食べ,心臓がおかしくなったという話を聞いておりましたので,早速院長に会い,そのことを伝えました。いうまでもなくこの葉を乾燥させたものが強心・利尿剤となります。ところでDigitalisディギタリスはdigitalデジタル(指)に由来することばで,花穂の分かれた形が手袋の指に似ていることからつけられたとか。英名はfoxgloveキツネの手袋といいます。花の美しさに化かされたり,惑わされないようにしたいものです。

連載 手術・手技シリーズ

⑨扁桃周囲膿瘍の穿刺・切開

著者: 長舩宏隆

ページ範囲:P.717 - P.723

 はじめに
 扁桃周囲膿瘍は耳鼻咽喉科医が取り扱う口腔咽喉頭領域における炎症性疾患のうちでも,頸部の深部間隙まで炎症が波及するために,その症状の激しさでは最も重篤な疾患の1つであるといえる。耳鼻咽喉科医にとっては比較的遭遇しやすい疾患であり,特有の症状と局所所見より診断は容易であるが,しかし他科の医師にとっては必ずしもそうではなく,抗菌剤の高単位投与を施行しても症状の改善がほとんど認められず紹介され来院することがよくある。自潰するか穿刺や切開排膿すれば急速に症状は改善するが,その反面,診断と治療のタイミングを失うと縦隔洞膿瘍などの重篤な合併症を引き起こすこともある。特に糖尿病や肝機能障害などの基礎疾患などがあるとその危険性は増大するようである。
 穿刺や切開,排膿は外来で容易に施行でき排膿さえすれば通常は入院の必要もなく,抗菌薬などの投与をしながら通院加療が可能である。しかし,外来で容易に施行できるがゆえに,ときに重篤な合併症を引き起こす危険性があり,やはり解剖学的位置関係などを理解し,慎重に施行すべきである。
 以下に穿刺と切開・ドレナージの手技や注意点などについて述べる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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