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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻11号

2001年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

舌根部に発生した異所性甲状腺の1症例

著者: 佐野真幸 ,   弓削忠 ,   持木将人 ,   丹生健一

ページ範囲:P.732 - P.733

 舌根部異所性甲状腺は,胎生期に甲状腺原基が舌盲孔部から前頸部まで下降する際,舌盲孔部に甲状腺組織が残存してしまうことにより生じる比較的稀な疾患である。
 今回われわれは舌根部異所性甲状腺の1例を経験したので報告する。

Current Article

蝸牛障害とフリーラジカル

著者: 原晃

ページ範囲:P.735 - P.740

 はじめに
 内耳性難聴の病態へのフリーラジカルの関与については,近年様々な手法により研究が進んできている。しかし,動物実験においても,極めて小9さなあるいは微量な検体・対象であるため,その動態が十分に解明されているとはいい難い。また,ラジカル種の多くが極めて短時間のうちに変遷していくため,フリーラジカル自体を定量的に検討した報告は少なく,その多くがフリーラジカルの合成酵素や消去酵素を検討した,いわば間接的証明に過ぎない。
 本稿では,われわれが進めているフリーラジカルの内耳蝸牛内における動態の定量的な生化学的アプローチ,ならびに電気生理学的検討のこれまでの成果を総括的に述べてみたい。

原著

顔面腫瘍を疑ったらい病の1例

著者: 深谷純教 ,   花沢秀 ,   呉燦崇

ページ範囲:P.743 - P.746

 はじめに
 近年,らい病は日本国内での新発生の患者は激減し,皮膚科医を初め臨床医の目に触れにくい疾患となっている。そのため,少数となった新患の診断や治療,外国からの移住者の発病など,新たな問題が発生している1)
 今回われわれは顔面の腫瘍を疑い,診断に苦慮した症例を経験したので報告する。

拍動性耳鳴を主訴とした硬膜動静脈瘻症例

著者: 藤井守

ページ範囲:P.748 - P.750

 はじめに
 耳鳴は日常臨床でしばしば遭遇する訴えである。患者が高齢者で,しかも聴力の左右差が大きくない場合は加齢による感音難聴のためとされることが多い。しかし,耳鳴が拍動性であった場合,頭蓋内疾患などの器質的疾患の可能性もあり得る1,2)。今回,右拍動性耳鳴を契機に発見された横-S状静脈洞部の硬膜動静脈瘻(dural arterio-venous fistula:以下,DAVF)例を経験したので報告する。

頬骨突起部から骨膜下膿瘍をきたした成人急性乳様突起炎の1例

著者: 清水義貴 ,   佐伯忠彦 ,   寺下健洋 ,   柴原豊弘

ページ範囲:P.753 - P.756

 はじめに
 近年,抗生物質の普及により急性乳様突起炎は激減しているが,稀に重篤な合併症を起こす危険性がある。
 今回われわれは,急性乳様突起炎が頬骨突起部へ波及し,同部位から骨膜下膿瘍をきたした成人の1例を経験したので報告する。

高度視力障害を呈した急性副鼻腔炎の1症例

著者: 村川哲也 ,   甲能直幸 ,   中之坊学 ,   前川仁 ,   北原哲

ページ範囲:P.759 - P.762

 はじめに
 鼻・副鼻腔炎に併発する眼合併症は様々あるが,中でも眼窩内感染症の原因のほとんどは眼窩周囲組織からの炎症の波及であり,特に鼻・副鼻腔疾患に続発する例が多いといわれている1)。抗生物質が普及する以前には眼窩蜂窩織炎の17%が死亡し,生存例でも20%が失明していた1)。近年,診断法の進歩や抗生物質の発達により,早期診断と適切かつ効果的な治療が行われるようになり,生命および視機能の予後が飛躍的に向上したものの,一方では脳膿瘍や眼窩骨髄炎などの重篤な合併症をきたした症例が現在でも散見される2〜4)。したがって,臨床的あるいは眼窩周辺の画像上の特徴を捉えておくことは,治療方針の決定や合併症の予防をするうえで重要と思われる。
 今回われわれは,高度視力障害を呈し治療に苦慮した急性副鼻腔炎の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

ポリープ様声帯に合併した声帯嚢胞の1症例

著者: 落合敦 ,   平山方俊 ,   井口芳明 ,   山本一博 ,   肥田修 ,   木原圭一 ,   小川克二

ページ範囲:P.764 - P.766

 はじめに
 喉頭の嚢胞は,声帯縁,喉頭蓋舌面などによくみられる。声帯縁に生ずるものはポリープ,結節などと混同されやすいが,粘膜上皮下に黄色の限局性膨隆を認めることで鑑別される1)
 今回われわれは,ポリープ様声帯に合併して声門を振子様に移動した声帯嚢胞の1症例を経験したので報告する。

アレルギー性鼻炎患者におけるQOL(第4報)—スギ花粉飛散量とQOL

著者: 荻野敏 ,   入船盛弘 ,   坂口喜清 ,   竹田真理子 ,   馬場謙治 ,   福録恵子 ,   三宅陽子 ,   原田隆雄

ページ範囲:P.773 - P.777

 はじめに
 近年,疾患の治療対処を考える際にQOL(quality of life)の改善,維持を含め議論されることが増えてきている。アレルギー疾患の管理においても,同様にQOLの評価が重要視されつつある1)。花粉症を含めたアレルギー性鼻炎においても3症状だけではなく,頭痛,頭重感の合併,集中力の低下,嗅覚の低下など日常生活における身体的,精神的機能への影響は決して少なくない2)
 しかしわが国においては,その研究は十分とはいえず,アレルギー性鼻炎を対象とした検討は現在までのところわれわれのスギ花粉症の報告3〜5)以外認められない。

咽頭外傷により蜂窩織炎に至った1例

著者: 藤川恵美 ,   唐木將行 ,   小林隆一 ,   森望

ページ範囲:P.779 - P.782

 はじめに
 口腔・咽頭の異物による外傷は日常診療において比較的高頻度にみられ,傷害の程度は軽症のことがほとんどである。しかし,異物の進入経路や深度によっては,頭蓋内損傷や大出血,咽後膿瘍や縦隔炎など重篤な合併症を引き起こすことがあり,初診時の外傷部位の十分な把握や適切で迅速な治療が重要である。
 今回われわれは,アジサイの枝で咽頭を負傷し蜂窩織炎に至った小児の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

OK−432局注療法を行った成人頸部嚢胞状リンパ管腫の1例

著者: 鈴木政美 ,   岡本誠 ,   土田吉史 ,   長哲

ページ範囲:P.786 - P.789

 はじめに
 リンパ管腫の多くは生後2年以内に発見され,成人の報告例は少ない1,2)。また,これまでリンパ管腫に対し様々な治療が行われてきたが,近年,小児のリンパ管腫を中心にOK−432(ピシバニール®)局注療法が広く普及してきた3)
 今回われわれは,65歳男性の頸部嚢胞状リンパ管腫に対しOK−432局注療法を行い,良好な結果を得たので若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

漢字雑感

著者: 太田文彦

ページ範囲:P.768 - P.769

 漢字は表意文字であり,その偏と旁は意味を示す意符と音を示す音符から成り,意味とともに発音も分かるようになっている。漢字のルーツは4,5千年前といわれ,日本に漢字が伝わったのは,『古事記』に「また百済国に,若し賢人あらば貢れと仰せたまふ。かれ命を受けて貢れる人,名は和邇吉師,即ち論語十巻,千字文一巻,井せて十一巻を,この人に付けて貢りき」とあるのが,最初の記録である。『日本書記』にも,応神天皇の十六年の項に「春二月,王仁来けり。則ち太子菟道稚郎子師とし,諸の典籍を王仁に習ひ,通達らずといふこと莫し。故れ所謂王仁は是れ書首等の始祖なり」とある。
 欽明天皇の御代,仏教が伝来してから漢字は広く用いられるようになった。われわれの祖先の大変な努力で漢字は日本で独特の発達を遂げて,音と訓という二重の使い方ができ上がった。それだけに漢字の使い方は複雑で難しいとされ,さらに書体に楷書,草書,行書,隷書などがあって,益々複雑となった。平安時代には漢字から平仮名,片仮名が生まれ,さらに仮名まじり文というユニークな文体を造り上げた。これが日本人の表現力を豊かにし,読む速さを増したことも確かである。

連載 手術・手技シリーズ

⑩鼻中隔矯正術

著者: 春名眞一

ページ範囲:P.794 - P.798

 I.適応
 以下のことが挙げられる。
 1)鼻閉,嗅覚障害,いびき,鼻出血,頭痛などが鼻中隔彎曲によって起こると考えられるとき(素質性,外傷性ともに含まれる)。
 2)慢性副鼻腔炎の治療目的で,鼻腔形態の正常化をはかる1)
 3)高度な鼻中隔彎曲のため副鼻腔手術時に中鼻道開放が困難な場合に,手術ルートの確保のため。
 鼻・副鼻腔の発育は約15歳まであるといわれ2),発育が完成されるまで手術はできるだけ避けるべきである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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