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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻13号

2001年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

下咽頭に生じた悪性リンパ腫の1例

著者: 大上研二 ,   大貫純一 ,   宮本隆行 ,   小田桐恭子 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.886 - P.887

 下咽頭に発症する悪性リンパ腫は稀で,全悪性リンパ腫の0.2%程度とされる1)。過去にわずかに報告例があるのみである2〜5)
 今回われわれは,下咽頭に生じた悪性リンパ腫の1症例を経験したので報告する。

Current Article

重心動揺解析法の研究

著者: 山本昌彦

ページ範囲:P.889 - P.894

 はじめに
 ヒト体平衡機能の研究は決して新しいものではなく,かなり昔から行われていた。体平衡の記録をどのように行うかについて,様々な工夫と苦労が窺われる。台秤の一方を固定した板の上にヒトを立たせ,揺れによって動く秤の針の動きを記録することによって1次元的ではあるが体の揺れを記録している1)。わが国では,頭上に固定した毛筆や針を垂直に立て,その上に黒煙記録紙を置き体動揺を記録した2)。このように,体動揺記録は,西洋では重心動揺から,日本では頭部動揺から始まっている。戦後まもなく福田3)を中心とする檜や時田らが精力的に姿勢制御の研究を進めていった。福田の姿勢研究は,詳細な平衡のメカニズムを実験や理論によって世界をリードしてきた。それは重心動揺解析においても非常に大きな影響を与えた。記録の時代から体動揺の解析へと進むには,高精度で電気的に重心動揺を記録する動揺計がBaron4)によって作られ,コンピュータの出現によって一気に解析の時代に入った。Kapteynら5〜7)はその性能の安定化や臨床応用に尽くすとともに,動揺計や解析法の基準化の中心的役割を果たした。1970年に入りヨーロッパでは動揺周期の解析が盛んに進められていたが,わが国では距離や面積とともに多くの解析指標がもたらされた。体動揺が姿勢反射を反映しているとの基本的な考えのもとに解析が進められてきた。姿勢制御は入力系と出力系の間に強力なcoordinate sys-temが存在する。反射機構による制御であり,このような制御系を体動揺からどこまで知ることができるのであろうか。
 本稿では,これらの模索の中で私が進めてきた重心動揺解析指標を整理しながら行ってきた主な解析法と将来について示したい。

原著

頸部Castleman病の1例

著者: 後藤さよ子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.897 - P.900

 はじめに
 Castleman病は反応性のリンパ節腫大を主徴とするリンパ増殖性疾患である。縦隔に好発し,耳鼻咽喉科領域には比較的稀な疾患であり,リンパ節腫大が限局している限局型と,全身性に多発性リンパ節腫大を伴う全身型に分けられる1)。成因については炎症説,腫瘍説,過誤腫説など諸説があり意見の統一をみていない2)
 今回われわれは,頸部に発生したCastleman病の1例を経験したので報告する。

両側頸動脈小体腫瘍に内頸動脈偽動脈瘤および放射線皮膚潰瘍を合併した1症例

著者: 高野篤 ,   高崎賢治 ,   野田哲哉 ,   小林俊光

ページ範囲:P.903 - P.907

 はじめに
 頸動脈小体腫瘍は,これまでに本邦で130例余りの報告1)があるが,両側性のものは5%程度であるといわれている2)
 今回われわれは,両側頸動脈小体腫瘍に対して,39年前に手術および放射線照射を受け,その後左頸部に慢性放射線皮膚潰瘍を生じ,また左頸部内頸動脈に偽動脈瘤を合併し,これより大量出血を繰り返し不幸な転帰をとった症例を経験した。この症例を呈示するとともに文献的考察を加えて報告する。

前頸部に瘻孔を有した側頸部皮様嚢胞の1例

著者: 藤井守 ,   夜陣紘治

ページ範囲:P.909 - P.911

 はじめに
 皮様嚢胞が周辺への瘻孔形成を伴うことは稀といわれている1)。また,皮様嚢胞は頭頸部領域では正中線上,特に口腔底に出現することが多く,側頸部に出現することは少ない2〜4)。今回われわれは,前頸部皮膚瘻孔を有する側頸部皮様嚢胞の1例を経験したので報告する。

呼吸困難,嚥下障害を呈した慢性甲状腺炎

著者: 山田弘之 ,   徳力俊治 ,   石田良治

ページ範囲:P.915 - P.918

 はじめに
 甲状腺の結節性病変に対する超音波検査,穿刺吸引細胞診が一般化したことで,質的診断がより確実になり,良性疾患に対して手術が選択される機会は減少している。良性腫瘍はその腫瘍径が4〜5cmを超えない限り,一般に手術適応とはならず,またバセドウ病も薬剤によるコントロールを慎重に行うことで,手術に至る症例を減少させることが可能である。同じ甲状腺の自己免疫疾患である慢性甲状腺炎は,原則として手術を回避すべき疾患と考えられる。しかし,慢性甲状腺炎の中でも,腫大が徐々に進行し,ときにはその腫大が気管を圧迫して呼吸困難を呈したり,咽頭,食道を圧迫して嚥下障害を引き起こすような場合には手術を選択せざるを得ない。
 最近われわれは,気道,食道への圧迫症状を呈して手術を選択した2例を経験した。この2例を紹介し,その手術術式と手術時期について検討を行ったので報告する。

低悪性度の鼻腔血管内皮腫の1症例

著者: 落合敦 ,   藤野明人 ,   小野雄一 ,   中英男

ページ範囲:P.921 - P.923

 はじめに
 鼻腔に生じた腫瘍の報告は数多くみられ,その病理組織像は多彩である。しかし,低悪性度の血管内皮腫の報告はわれわれが検索し得た範囲では,本邦では2例を数えるにすぎない1,2)
 今回われわれは,低悪性度の鼻腔血管内皮腫の1症例を経験したので報告する。

中耳に迷入したニクバエ異物の1例

著者: 北尻真一郎 ,   平海晴一 ,   廣瀬知子 ,   斉藤あつ子 ,   八木剛

ページ範囲:P.929 - P.931

 はじめに
 有生外耳道異物に遭遇することは日常診療において珍しくないが1),中耳にまで迷入した報告は少ない。しかし,中耳異物は炎症を遷延化させる2〜4)にとに加えて,有生異物は病原体を媒介したり寄生する可能性があり5〜10),注意が必要である。
 今回われわれは,中耳真珠腫内にニクバエが迷入した有生中耳異物の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

急性内耳障害症状で発症した前下小脳動脈症候群の1症例

著者: 大木雅文 ,   高砂江佐央 ,   田中利善 ,   木村美和子 ,   室伏利久

ページ範囲:P.933 - P.936

 はじめに
 急性感音難聴とめまいを主訴に来院する患者は多く,その多くは突発性難聴やメニエール病といった末梢性障害であるが,稀に小脳・脳幹梗塞といった中枢障害が混在することがある。
 今回われわれは,急性感音難聴とめまいを主訴に来院し,初診時に他の脳神経症状を認めず,突発性難聴に酷似した前下小脳動脈症候群の1例を経験したので報告する。

帯状疱疹ウイルスによる一側性聴覚前庭機能障害を呈した1例

著者: 伊沢真奈美 ,   佐々木修 ,   坂口正範 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.938 - P.941

 はじめに
 帯状疱疹ウイルス(以下,VZVと略)による脳神経障害ではHunt症候群がよく知られており,これは耳帯状疱疹とともに末梢性顔面神経麻痺をきたし,ときに聴覚前庭障害を伴う。しかし,顔面麻痺を伴わず帯状疱疹と第VIII脳神経障害をきたした症例の報告は極めて稀である1)
 今回われわれは,第VIII脳神経障害症状を主とする耳帯状疱疹の1例を経験したので報告する。

鏡下咡語

問題解決型セクレタリーワーク

著者: 加我君孝

ページ範囲:P.926 - P.927

 今年の博多の耳鼻咽喉科学会理事会でのことである。お隣に座られた東邦大学小田恂教授に,私の秘書が用意してくれた5日間のスケジュール表をお見せした。「このように,私が何をすることになっているか一覧表にしてあるのです。各曜日にはその日の会合の案内や招待状,抄録などがホッチキスでとめてあります。学会のプログラム抄録集に沢山の付せんが貼ってあります。私共の教室関係の発表のところに付けてあるのです。スケジュールも付せんも私が指示したことではありません。彼女が自発的にやってくれるのです。おかげで,私の仕事や活動はスケジュールに沿って間違いがほとんどなくなり,心理的にも安心です。彼女のよく工夫された仕事をぶりを私は“問題解決型セクレタリーワーク”と呼ぶことにしています」と述べたところ,ぜひ本誌の「鏡下囁語」にと寄稿を依頼された。私も,新たに秘書を持った先生にぜひとも私の秘書のマナーとセクレタリーワークを見学に来てはどうかとしばしば言ってきたので,この随筆をその代わりにしたいと思う。
 昨年の暮れに秘書の採用のために面接と小テストを行った。私にとっては4人目の秘書の採用で,よい方を得たいという強い願いから,面接は私以外に医局長,女性医局員の3人で行った。私は一般的な質問をし,医局長はパソコンの経験,女性医局員は「秘書にとって重要な資質をどのように考えていますか」という質問をした。私共がベストとした現在の秘書Sさんは,最後の質問に「秘密と機転です」と答えた。

連載 手術・手技シリーズ

⑫食道異物摘出術

著者: 岡本英之 ,   安田大栄 ,   細井裕司

ページ範囲:P.943 - P.947

 はじめに
 食道異物は,日常診療において比較的遭遇することの多い疾患である。異物の種類はPTP(press-through-pack),魚骨,硬貨,義歯,電池など多彩であり,小児から高齢者まで幅広くみられることから,異物の種類と年齢に合わせた摘出の手技を知っておく必要がある。また,ときに食道穿孔による食道周囲炎,縦隔炎や大血管穿孔による大出血など重篤な合併症を生じることがあり,その対策も重要である。
 本稿では,食道異物の摘出方法および合併症に対する対策を中心に,最近の報告も含めて述べる。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第73巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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