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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻2号

2001年02月発行

雑誌目次

トピックス 今話題の花粉症

1.季節性アレルギー性鼻炎の増加とその原因

著者: 大久保公裕

ページ範囲:P.94 - P.98

 はじめに
 花粉症はGell&Coombsのアレルギー分類のI型の代表的な疾患である。日本において最も多いのはスギ花粉症であるが,花粉症の種類や発症状況は各地方の植物の種類や花粉の数によって異なる。しかし,その患者動向は花粉飛散とおおよそ一致する(図1)。2000年現在,日本全体の花粉症患者の実数については,疫学的な検討が全国規模で行われていないため,まだ検討の余地が残っている。しかしその患者数は,いろいろな検討から国民の10%を超える状況にあると考えられている1)。さらに,この数は過去の患者数から増加の傾向をたどっており(図2),今後さらに増加することが予想され,その対策が重要となる。
 本稿では,花粉症の増加の原因をスギ花粉から,それを受ける生体側から考え,その対策についても考察する。

2.イネ科花粉症

著者: 増山敬祐 ,   鮫島靖浩

ページ範囲:P.100 - P.105

 はじめに
 イネ科植物は日本全国でみられ,春から初夏と秋の二峰性に花粉が飛散する。その数300種といわれる中で,花粉症の原因となる花粉は春から初夏にかけて飛散するものが多く,秋の花粉は花粉症の原因としてはあまり重要視されていない。春に飛散する花粉には,カモガヤ,オオアワガエリ(チモシー),スズメノテッポウ,ホソムギなどがあるが,花粉間には相互に高い共通抗原性が認められることが知られている。チモシー花粉症はヨーロッパにおける代表的な牧草花粉症であるが,日本においてはカモガヤ花粉症がその代表である。日本におけるカモガヤ花粉症の報告は,1964年の杉田ら1)によって初めてなされた。

3.オオバヤシャブシ花粉症

著者: 小笠原寛

ページ範囲:P.107 - P.111

 はじめに
 ブナ目カバノキ科ハンノキ属の樹木は根粒をもつため痩せ地に適し,根が深く成長が早いことから砂防用として江戸末期から用いられている。最も多用されている樹木は伊豆半島を原産地とするオオバヤシャブシ(図1)で,ほかにヒメヤシャブシとヤマハンノキがある。オオバヤシャブシ花粉に対するIgE抗体の吸収試験では,これらハンノキ属花粉ではほぼ100%,シラカンバでは84%,ブナ科のコナラとクヌギでは61%のIgE抗体吸収がみられた。これら花粉飛散時期に症状発現することからもハンノキ属花粉症カバノキ科花粉症さらにブナ目花粉症として捉える必要がある。ハンノキ属樹木は全国各地だけでなく,ヒマラヤの崩壊地においても盛んに植栽されており,世界で注意すべき花粉症となっている。
 阪神地区の北にある六甲山や中山山系などでは,この地区に自生していなかったオオバヤシャブシが大量に植栽された。これは荒れる六甲山系の治山の目的だけでなく,1960年代頃から宅地造成や道路建設時に安価な緑として盛んに用いられた。この結果,空中花粉数が増加したと推定される1980年代後半から花粉症の発生をみるようになった1)

4.キク科花粉症

著者: 石井豊太

ページ範囲:P.113 - P.115

 はじめに
 キク科の代表的な花粉はブタクサ属とヨモギ属で,そのほかアキノキリンソウ,キク,コスモス,タンポポなどが共通抗原性を有するキク科の花粉抗原である。地域特性という点からはどちらの草もほぼ全国的にみられ,特に秋に起こる花粉症として取り上げた場合重要な花粉である。はじめにこれらの草の形態,植生,花粉の特徴などについて記述し,相模原地区の花粉飛散状況と全国調査との比較,当院でのアレルギー性鼻炎症例のこれらの花粉症の占有率と全国比較について述べ,キク科花粉症の特徴について考察する。

5.Oral allergy syndrome (口腔アレルギー症候群)

著者: 荻野敏

ページ範囲:P.117 - P.120

 はじめに
 特定の食物摂取後に,咽喉頭にかゆみ,イガイガ感などの異常感や,口唇,口腔内の腫脹,かゆみなど即時型反応と思われる症状を呈する症例がある。多くは果実(果肉)によって起こり,ある種の花粉症との関連が注目されている。このような疾患をoral allergy syndrome (口腔アレルギー症候群:OASと略)といい,北欧ではシラカンバ花粉症にOASの合併頻度が高いことが知られている1)
 最近,わが国においても北海道のシラカンバ花粉症2〜4),他の地域でもハンノキ5)やスギ花粉症6,7)とOASとの関連を検討した多くの報告がみられている。特殊な疾患と考えられがちであるが,実際の日常診療においても詳細な問診を行えば,かなりの頻度で経験する可能性がある。正確な診断が最も重要であることから,今回OASの概要について報告する。

6.職業性花粉アレルギー

著者: 宇佐神篤 ,   柘植昭宏 ,   岩崎幸司

ページ範囲:P.122 - P.128

 はじめに
 職業に関係した物質が原因となり,その職業に従事することと密接な関連をもって発病,発症するアレルギー疾患を職業性アレルギー,その物質を職業性抗原と称する。
 奥田1,2)は職業性抗原の条件として,①その抗原により職業に集団的に発生し,②その曝露と発症,感作に因果関係があり,③ある感作期間を経て発症し,④アレルギー素因のある人に発症しやすく,⑤接触する皮膚,目,気管にもしばしば発症し,⑥その抗原に対するアレルギー検査(皮膚テスト,誘発テスト,RAST)が陽性である,の6項目を挙げた。

目でみる耳鼻咽喉科

中耳骨腫の1症例

著者: 藤森正登 ,   小山幸子 ,   山崎陽子 ,   石川正治 ,   市川銀一郎

ページ範囲:P.90 - P.91

 頭頸部領域では副鼻腔や外耳道に骨腫を経験することはあるが,中耳腔に生じる例は少ない。
 今回われわれは,中耳骨腫の1症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

食道癌と私

著者: 髙橋宏明

ページ範囲:P.130 - P.131

 死ぬのが怖く,不気味で,不愉快なのは当たり前である。その理由の第1は「世の中」というものは,自分が目で見たり,耳で聞いたりする認識を前提として存在するものなのに,自分が死んで居なくなっても世の中はあるという状態が,本来理解しにくいこと。第2は,死ぬ前には疼痛を主とする種々の苦痛を経過せねばならないのが一般的であること。そして第3は,死ぬのは確実なのに,それが何時であるかが分からない不気味さであると思われる。
 今年もそうだが,昨年,すなわち平成11年の夏は殊のほか暑かった。

原著

滑車神経麻痺をきたした上顎洞炎の1例

著者: 山本一宏

ページ範囲:P.133 - P.137

 はじめに
 後部副鼻腔疾患により複視,視力障害などの眼窩内合併症をきたした症例報告は少なくない1〜4)
 今回,後部副鼻腔に病変を認めず,滑車神経麻痺をきたしたと思われる上顎洞炎例を治療する機会を得たので,経過を報告するとともに文献的検討も行った。

体幹の帯状庖疹に合併した顔面神経麻痺例

著者: 杉浦むつみ ,   大前由紀雄 ,   池田稔 ,   中里秀史 ,   赤野間百香

ページ範囲:P.140 - P.143

 はじめに
 Ramsay Hunt症候群(以下,Hunt症候群と略)は,外耳道,耳介のへルペス疹に加え,同側の顔面神経麻痺とさらに内耳神経症状を認める症候群で,その原因は水痘帯状疱疹ウイルス(以下,VZVと略)の膝神経節における再活性化とされている1)。帯状疱疹におけるVZVの再活性化は,同一のあるいは隣接する神経根または神経節で起こり,その支配領域に臨床症状を呈することが多い。しかし,皮膚科領域からの報告では,異なる神経節においてウイルスの再活性化が同時に起こることが知られている。特に両側性に,かつ隣接しない神経節において帯状疱疹が出現するものは,複発性帯状疱疹として取り扱われている2)
 今回われわれは,耳介の帯状疱疹を伴わずに,反対側の体幹に帯状疱疹を同時に認めた顔面神経麻痺の症例を経験したので,その経過と病態に対する若干の考察を加えて報告する。

頸部打撲による鈍的喉頭外傷の1症例

著者: 深美悟 ,   佐々木邦 ,   中島逸男 ,   平林秀樹 ,   谷垣内由之 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.145 - P.147

 はじめに
 鈍的喉頭外傷は,鋭的外傷に比して外見上軽症にみえるため,的確な早期診断と治療を誤ると致命的になりかねない。
 今回われわれは,ダッシュボードでの前頸部打撲による喉頭血腫に対し緊急気管切開を行い,救命し得た鈍的喉頭外傷の1症例を経験したので報告する。

瞬目反射からみた顔面神経麻痺の回復—R1,R2とも単一の波形となった症例

著者: 豊岡志保 ,   栢森良二 ,   三上真弘

ページ範囲:P.150 - P.154

 はじめに
 瞬目反射は,その遠心路は顔面神経全長を含むため,顔面神経麻痺の評価に用いられる1)。従来,末梢性顔面神経麻痺では乏シナプス回路である早期成分R1の回復の早い症例の病態は脱髄であり,過誤支配が起きないと言われてきた1〜3)
 今回,3週間以内に麻痺側のR1が回復したにもかかわらず,のちに過誤支配を生じた3症例を経験した。その瞬目反射の波形の特徴はR1,R2ともに単一波形を繰り返すものであった。以下に症例報告とその波形出現のメカニズムを推測したので述べる。

めまい患者における椎骨脳底動脈系のMRA所見と動脈硬化

著者: 新井基洋 ,   樋口彰宏 ,   伊藤能成 ,   林洋 ,   持松泰彦 ,   伊藤邦泰

ページ範囲:P.157 - P.162

 はじめに
 われわれはめまい患者の椎骨脳底動脈系(以下,VA-BA系)の虚血を検討するために,MRAのタイプをI〜IVの4つに分類して報告した1)。その要旨は,椎骨脳底動脈循環不全症(以下,VBI)を認める症例のMRA像はタイプIII,IVに多く,さらに脳梗塞へ移行するMRA像はタイプIVに多いことである1)
 これら4つのタイプのうち,III,IVでは,I,IIに比べてMRA上の血管所見および脳血管撮影所見から動脈硬化が強く疑われるものであった1)

連載 手術・手技シリーズ

②外傷性鼓膜穿孔閉鎖術

著者: 東野哲也

ページ範囲:P.164 - P.168

 はじめに
 外傷性鼓膜穿孔の90%は自然閉鎖し,しかもその多くは受傷後1か月以内に閉鎖することがユニバーサルな認識である1)。本邦における臨床例の検討2)でも同様な結果が報告されているので,大部分の新鮮例には「感染予防」を第一義とした経過観察(watch and wait)が行われるのが現状であろう。しかし,ルーチンに鼓膜の顕微鏡観察が行われるようになった今日,自然閉鎖しない約10%をいかに低侵襲な方法で早期の閉鎖に導くかが,耳科医の技術に託された課題といえる。
 耳小骨損傷,外リンパ瘻,顔面神経麻痺,側頭骨骨折などを合併する例では,それらに対するアプローチが優先されるので,本稿では単純穿孔例に絞って閉鎖法の現状について解説する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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