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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻3号

2001年03月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

レーザーによる結核性後鼻孔閉鎖の治療

著者: 小川益 ,   生井明浩 ,   池田稔 ,   山内由紀 ,   木田亮紀

ページ範囲:P.178 - P.179

 結核は,第2次世界大戦後の食生活の改善,適切な対策により世界的に減少傾向であった。しかし本邦では,平成9年には38年ぶりに結核新登録患者が増加した。過去8年間に日大板橋病院耳鼻咽喉科で診断した結核症は14例である。年齢は22〜70歳(男性5例,女性9例)であった。部位別では,頸部リンパ節結核7例,耳下腺結核2例,中耳結核1例,鼻・副鼻腔結核1例,上咽頭結核2例,喉頭結核1例であった。このうちレーザー治療を必要とし有用であった症例を呈示する。
 症例は57歳女性。上咽頭結核と診断後,抗結核剤(EB,INH,RFP)の内服治療を施行した。治療中に軟口蓋が咽頭後壁と癒着し,後鼻孔閉塞をきたした(図1〜3)。抗結核剤の治療完了後,レーザーにより閉塞部位の開大術を行った(図4〜7)。治療前には滲出性中耳炎も認められたが,術後治癒した。咽頭の閉鎖部位に対して鉗子操作による治療では,術中の出血が多い。また,それに対して電気凝固などを併用した場合は,術後の瘢痕再狭窄などをきたす可能性が大きい。また,耳管咽頭口周辺への影響が心配される。これに比して,今回使用したNd:YAGレーザー治療は手術時の出血が少なく,十分な術野の明瞭な確保ができた。さらに術後の過剰な肉芽形成,瘢痕再狭窄をきたさず有用であった。また術後,滲出性中耳炎をきたすような耳管機能障害は認められなかった。1年後の内視鏡所見でも再発を認めなかった。

Current Article

喉頭肉芽腫の治療

著者: 井之口昭 ,   中島俊之

ページ範囲:P.181 - P.185

 はじめに
 喉頭肉芽腫は主に声帯突起部に一側性あるいは両側性に発生してくる隆起性炎症性腫瘤である。その発生頻度はそれほど高いものではないが,しばしば再発し,治療に難渋すること,あるいは自然寛解する例もあることから臨床家の注目を集めている疾患でもある。また,最近5〜6年で治療方針の立て方についても大きな変化がみられるようになってきた。そこで本稿では喉頭肉芽腫の治療を中心に概説する。なお,喉頭肉芽腫の分類としては原因別にhyperfunctional,hyperacidic,intubationalと分けるもの,特異性,非特異性に分ける分類法もあるが,今回は接触性と挿管性の2つに大別して話を進めたい。

原著

声帯麻痺側の甲状腺腫瘍の存在のため診断が遅れた食道癌傍気管リンパ節転移症例

著者: 寺田哲也 ,   山本有実子 ,   北原民雄 ,   林伊吹 ,   竹中洋 ,   辻求

ページ範囲:P.187 - P.191

 はじめに
 声帯運動障害に伴う嗄声の原因疾患として,耳鼻咽喉科領域では喉頭癌,下咽頭癌,甲状腺癌などの腫瘍性疾患を挙げることができる。しかし,反回神経はその走行が長いため,様々な原因によって麻痺を生じることは周知の事実であり,その背景には頭頸部領域以外にも種々の原因疾患が存在することを忘れてはならない。
 今回われわれは,嗄声を主訴に受診し甲状腺癌の気管傍リンパ節転移による反回神経麻痺を疑わせた胸部上部食道癌症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

Arnold-Chiari I型奇形による嚥下障害の1例—嚥下障害に対するリハビリテーションの効果判定についての1考察

著者: 小泉康雄 ,   三枝英人 ,   大西正樹 ,   新美成二 ,   八木聰明

ページ範囲:P.193 - P.197

 はじめに
 近年,QOLへの関心が高まる中,嚥下障害に対するリハビリテーションの重要性が注目されている1〜6)。しかし,嚥下のリハビリテーションの効果判定については,その多くが経験的に行われている傾向にある。より有効なリハビリテーションを実施するためには,客観的な効果判定の指針が確立されていることが望ましい。
 今回われわれは,Arnold-Chiari I型奇形による嚥下障害の1例を経験した。この症例の嚥下障害に対してリハビリテーションを施行し,良好な結果を得た。また,この症例のリハビリテーション前後の嚥下動態の解析結果から,嚥下のリハビリテーションの効果判定の指針について若干の知見を得たので,併せて報告する。

上咽頭に発生した多形腺腫の1例

著者: 宮城島正和 ,   桜井一生 ,   竹内健二 ,   堀部晴司 ,   堀部智子 ,   内藤健晴

ページ範囲:P.199 - P.201

 はじめに
 多形腺腫は唾液腺に発生する良性腫瘍の中では最も発生頻度が高く,特に耳下腺,顎下腺など大唾液腺に好発する。大唾液腺以外にも,口蓋,口腔底,鼻・副鼻腔,頬粘膜などの小唾液腺に発生するが,上咽頭に発生することは少なく,Spiroら1)の報告によると,小唾液腺に発生した多形腺腫57例中,上咽頭に原発した症例は1例(1.8%)のみであった。
 今回われわれは,上咽頭に発生した多形腺腫の1例を経験したので報告する。

喉頭神経鞘腫の1例

著者: 門倉義幸 ,   窪田哲昭 ,   松井和夫 ,   高崎宗太 ,   竹村栄毅 ,   飯田正樹 ,   永瀬大 ,   小林斎 ,   柳裕一郎

ページ範囲:P.203 - P.206

 はじめに
 神経鞘腫は,Schwann鞘に由来する代表的良性腫瘍であり,全身至るところに生じ得る。しかし,その喉頭発生例は,われわれが検索し得た範囲では,現在まで本邦で63例ほどに過ぎない。
 今回われわれは,左披裂部より発生した喉頭神経鞘腫を経験したので,文献的考察を加え報告する。

選択的塞栓術ならびに外頸動脈遮断により摘出した上顎洞血瘤腫の1例

著者: 糸数哲郎 ,   玉城三七夫 ,   赤嶺環 ,   諸見里秀和 ,   新垣京子 ,   津嘉山務

ページ範囲:P.209 - P.212

 はじめに
 上顎洞血瘤腫は臨床的な診断名で,上顎洞内で出血と器質化を繰り返し腫瘤状になった状態である。その臨床症状や画像所見などから,悪性腫瘍との鑑別が問題となることがある。また,上顎洞血瘤腫は,摘出術の際に出血をきたすことがあるため,その診断,治療には注意を要する。
 今回われわれは,上顎洞血瘤腫に対し術前に血管造影ならびに選択的塞栓術を施行,また術中外頸動脈を一時的に遮断して腫瘤を摘出した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

当院における難治性鼻出血症例の検討—顎動脈結紮術における造影ヘリカルCTの有用性に関する検討

著者: 半田徹 ,   夜陣紘治 ,   平川勝洋 ,   福島典之 ,   工田昌矢 ,   平田思 ,   井口哲彦 ,   天野吉晴

ページ範囲:P.213 - P.216

 はじめに
 鼻出血は耳鼻咽喉科の日常臨床において頻回に遭遇する疾患である。入院を要するような症例には基礎疾患に高血圧症が多いが1),初期治療の降圧療法で再出血が予防でき,顎動脈結紮術や塞栓術を必要とする症例は少数である。当院ではベロックタンポン処置でも制御できない難治性鼻出血症例に対して顎動脈結紮術を施行している。
 今回われわれは,入院を要した鼻出血症例において顎動脈結紮術が適応となりそうな症例に対して造影ヘリカルCTを用いて顎動脈の描出を試みた。顎動脈結紮術を行ううえでの画像情報として有用であったので,その方法に関して検討を行い若干の文献的考察を加えて報告する。

Monopodal stapesであった先天性伝音難聴の1症例

著者: 尾関英徳 ,   伊藤健 ,   石本晋一 ,   蝦原康宏 ,   深谷卓

ページ範囲:P.223 - P.227

 はじめに
 先天性アブミ骨奇形には,その完全な欠損から,形態は正常であるが底板の固着があるものまで種々のものが知られている1〜5)
 その中でmonopodal stapesは,アブミ骨脚が1本の脚に融合したままの状態の奇形である。比較的稀な耳小骨奇形であるとされており,本邦では本症のみを独立して取り上げ検討した報告は少ない6)

双胎の1例にみられた内耳奇形—聴覚・平衡覚機能の比較

著者: 牛尾宗貴 ,   加我君孝 ,   黄麗輝 ,   内藤雪

ページ範囲:P.228 - P.232

 はじめに
 内耳は胎生期に外胚葉性の耳胞より形成されるが1,2),その発育過程において種々の障害を受けることにより奇形を呈すると考えられている。先天性難聴を伴う内耳奇形の中では特にMondini奇形の頻度が高いが3,4),今回われわれが経験した症例の左内耳奇形は従来の型には分類不能であった。本症例は双胎の1児であり,右水平半規管が低形成で左水平半規管は無形成であるにもかかわらず,一方向減衰回転検査で平均よりやや少ない眼振数と眼振持続時間を示すにとどまった。内耳奇形のない双胎の他方と比較しつつ,聴覚および平衡覚機能を評価,検討したので報告する。

下顎転移を起こした胃癌の1症例

著者: 鈴木弥牛 ,   中川暁子 ,   戸鳥均 ,   和田全弦 ,   星本和種 ,   山口博紀 ,   奥村稔 ,   鴨志田敏郎 ,   高橋敦

ページ範囲:P.235 - P.238

 はじめに
 口腔腫瘍に占める他臓器からの転移性腫瘍の割合は約1〜4%であるとされている1,2)。中でも胃癌の口腔内転移は現在まで本邦で約30症例の報告しかない3)
 今回,胃癌の口腔内転移を腫瘍切除術によって効果的に制御し得た症例を経験したので,当院での転移性腫瘍の統計とともに報告する。

鏡下咡語

久保猪之吉先生のこと,あれこれ

著者: 立木孝

ページ範囲:P.218 - P.220

 久保猪之吉先生は明治7年福島県二本松で生まれ,同33年東大卒,同40年から昭和10年まで九大教授,同14年に逝去された。
 その間,明治36年から同40年までドイツに留学,フライブルグのキリアン教授に師事された。九大在任中の28年間に多くの門下生を育成され,それらは全国に散ってそれぞれ久保門下の一家を成し,また多くの弟子を育てた。キリアン—久保の流れを汲む,孫弟子,曾孫弟子にあたる耳鼻科医は少なくないと思う。

連載 手術・手技シリーズ

③鼓膜形成術

著者: 馬場俊吉

ページ範囲:P.241 - P.244

 はじめに
 永久鼓膜穿孔は鼓膜を観血的に閉鎖することにより治癒する。現在,鼓膜穿孔を閉鎖する目的として,鼓室形成術と鼓膜形成術が行われている。一般的に鼓室形成術1型と鼓膜形成術が同義語のごとく述べられていることが多い。しかし,鼓膜形成術が穿孔閉鎖を主眼にした術式であるのに対し,鼓室形成術I型は穿孔閉鎖と耳小骨連鎖の確認,上鼓室,乳突洞,乳突蜂巣の肉芽の確認と除去および鼓室腔と乳突蜂巣の交通確認を目的としており両者は全く異なった手術方法である。両者の共通事項として,穿孔閉鎖により鼓膜と卵円窓の面積比が上がり聴力が改善することである。このため,両者とも術前にI型のパッチテストで聴力が改善し,耳小骨連鎖に異常のないことを確かめておく必要がある。また,鼓膜形成術では,術前CTで鼓室,乳突洞,乳突蜂巣に炎症のないことを確認しておくとよい。
 本稿では両者の適応と手術方法について述べる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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