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原著
アブミ骨筋腱の欠損した耳硬化症の1症例
著者: 奥田匠1 春田厚1 松田圭二1 小宗静男1
所属機関: 1宮崎医科大学耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.387 - P.390
文献購入ページに移動耳硬化症は単独で発症する以外に,全身の系統的疾患の部分症状として発症したり,あるいは,耳小骨の形成異常によるアブミ骨底板固着として発症することが知られている。全身的疾患の部分症状として発症するものには,青色強膜,多発骨折,伝音難聴を主徴とするvan der Hoeve症候群,頭蓋骨の骨変性,浅側頭動脈の蛇行,難聴が特徴的なPaget病,側頭骨に単独に発症し乳様突起や鼓室壁,外耳道の骨増殖をきたすfibrousdysplasia,前額隆起,視神経萎縮,再発性顔面神経麻痺,混合性難聴が特徴的なosteopetrosisなどがある1)。
また,耳介や外耳道の異常を伴わない耳小骨奇形にアブミ骨底板固着を伴う症例の多くは孤発例であるが,家族的発症例も少なくない。例えば,単脚(コルメラ状)アブミ骨に伴うもの,あるいはアブミ骨上部構造の欠損に伴う場合などがある。一方,アブミ骨筋腱に認められる異常としては,その骨化や正常なアブミ骨筋腱の直上に錐体隆起からアブミ骨頭に至る棒状骨が存在するためにアブミ骨上部構造固着をきたすものなどがある2)。
今回われわれは,全身的な身体所見に異常を認めず,また外耳道は正常で家族歴がなく,検索し得た範囲では本邦で報告例のない左アブミ骨筋腱欠損のみられた非症候群性耳硬化症と考えられる症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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