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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻7号

2001年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

舌・口腔底に発生した神経鞘腫の1症例

著者: 清水俊行 ,   朝比奈紀彦 ,   渋谷恵夏 ,   小林一女 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.418 - P.419

 神経鞘腫はSchwann細胞由来の良性腫瘍で,発生部位は頭頸部,後縦隔,後腹膜などに多いといわれている。中でも頭頸部は神経鞘腫好発部位で,全体の約30%を占める。顎口腔領域に限ってみると,その頻度は約4%ほどである1)。そのうち舌の占める割合は約40%で最も頻度が高い2,3)
 今回われわれは,由来神経が同定された神経鞘腫の1例を経験したので報告する。

Current Article

空間識形成における耳石器の役割—ニューロラブでの結果と今後の展望

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.421 - P.427

 はじめに
 われわれ人類は,二足歩行をすることにより,それまでは単に足の一部に過ぎなかった前肢を,歩行以外の目的に使用することが可能となった。その結果,前肢は“手”に進化し,われわれはこの手を用いることにより,道具の使用が可能となった。一方,それまでは4本の足で支えていた体を,後肢2本で支えなくてはならなくなった。また,巨大化した脳を有する頭部が身体の中で一番高い部位に位置することとなり,やじろべえを逆さにして立てるような,物理的には非常に不安定な構築となった。われわれ人間の形態,各部分の重量配分を正確に模した人形を,支えなしに立たせておくことは至難の技である。一方われわれは,ほとんど意識することなしに2本足で立ち続けることが可能である。そればかりか,歩行中や走っている最中,さらには地面が極度に傾いている状態でも,自分の体および頭部の位置を正確に制御することが可能である。われわれ人間がこのようにいかなる状況下においても,2本足で立ち続けることができるのは,手の自由化と引き換えに請け負ってしまった物理的に不安定な構造を,能動的に制御する機構を有しているからである。これにはいくつかの制御機構が関与している。それらの中で主体をなすのが平衡感覚で,その受容器が前庭系である。つまり二足歩行をするわれわれ人類にとって,平衡感覚は必要不可欠な感覚なのである。

原著

突発性難聴新鮮症例における耳閉塞感のvisual analogue scale(VAS)による評価

著者: 渡邊健一 ,   神尾友信 ,   馬場俊吉 ,   八木聰明

ページ範囲:P.429 - P.432

 はじめに
 耳閉塞感は様々な耳疾患に伴う症状の1つであるが,患者の訴えは多彩であり,必ずしも聴力検査結果を反映しているとは限らず,客観的に評価することは難しい。これに対しZealleyら1)は,うつ病患者の“気分”を測定する方法としてvisual analogue scale(VAS)が有用であったと報告している。
 今回われわれは,突発性難聴新鮮例に対しVASによる耳閉塞感の評価を行ったので報告する。

鼓室硬化症の手術成績

著者: 植田広海 ,   内田育恵 ,   中田誠一

ページ範囲:P.435 - P.438

 はじめに
 鼓室硬化症は,1956年Zöllner1)が初めて紹介した疾患である。彼は,耳硬化症が内耳骨包内の骨変化による疾患であるのに対し,鼓室硬化症は中耳腔内の粘膜下に起こる硬化性変化による疾患であると述べて両者の疾患を明確に区別した。しかし,その後の検討でも鼓室硬化症の成因については十分に解明されているとはいえない2)。日常臨床上,鼓膜の石灰化はよく認められるが通常聴力に影響なく,治療上問題となるのは耳小骨周囲に硬化病変が及んで伝音難聴をきたしている場合である。治療法としては,手術が主体となっており,本邦での手術成績3〜9は年代につれてかなりの向上がみられているが,まだ改善の余地を残している。
 われわれの施設において,以前は聴力改善が不良なこと,術後骨導悪化がみられる場合のあることなどより,積極的に手術を施行していなかった。しかし,近年徐々に手術症例数が増加し比較的良好な成績を上げつつある。
 そこで,今回われわれの経験した症例を検討し,特に聴力成績に影響を与える因子について若干の知見を得たので報告する。

原発性鼻腔結核症例

著者: 田中研 ,   執行寛 ,   吉田真子 ,   北南和彦 ,   原渕保明

ページ範囲:P.439 - P.442

 はじめに
 かつて国民病といわれた結核は,抗結核剤の進歩と公衆衛生の向上によって感染症の主役としての地位を失った。しかし,HIVを初めとする免疫不全状態者への感染や抗結核剤耐性菌の登場によって再び脚光を浴びるようになってきている1,2)。耳鼻咽喉科領域でも結核性リンパ節炎や喉頭結核を経験することは決して稀ではない3,4)。しかし,鼻腔結核はそれらに比べ少なく,報告も散見されるに過ぎない。
 今回われわれは,肺に活動性病変を認めない原発性鼻腔結核症例を経験したので報告する。

口蓋扁桃に転移をきたした肺腺扁平上皮癌症例

著者: 藤井守 ,   井口郁雄 ,   綾田展明 ,   小野田友男

ページ範囲:P.444 - P.447

 はじめに
 口蓋扁桃に発生する悪性腫瘍は原発性がほとんどであり,転移性腫瘍は極めて少ないといわれている1〜2)
 今回われわれは,肺腺扁平上皮癌を原発巣とする転移性扁桃癌の1例を経験したので報告する。

嚥下困難を主訴とした延髄梗塞の1例

著者: 結縁晃治 ,   赤木博文 ,   西﨑和則 ,   甲平一郎

ページ範囲:P.449 - P.451

 はじめに
 嚥下困難は,咽喉頭や食道の炎症,腫瘍などの器質的な疾患で起きることも多いが,支配神経障害による咽喉頭筋群の機能的な障害によって起きることも少なくない1,2)
 機能的な障害は,多発性の末梢神経炎や脳幹部の障害が主な原因となる。後者は他の広汎かつ重篤な中枢神経症状を伴うことが多いが,随伴症状が軽微であれば見過ごされて末梢神経障害と誤診する可能性もある。
 今回,嚥下困難を主訴とし,他の神経症状が軽微なため患者自身が自覚しておらず,しかも前医での画像診断で異常なしとされたため,最初多発性脳神経炎を疑った延髄梗塞の1例を経験したので報告する。

咽頭後間隙魚骨異物の1例

著者: 鈴木政美 ,   岡本誠 ,   畑中章生

ページ範囲:P.457 - P.461

 はじめに
 魚骨異物は,耳鼻咽喉科領域では一般的な疾患であり,魚骨の多くは口蓋扁桃,舌根扁桃,喉頭蓋谷に存在する1)
 今回われわれは,咽頭後間隙魚骨異物の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

両側副咽頭間隙に転移をきたした甲状腺乳頭癌の1例

著者: 渡辺徹 ,   赤木博文 ,   西岡信二 ,   江谷勉 ,   小川晃弘 ,   西﨑和則

ページ範囲:P.465 - P.467

 はじめに
 甲状腺乳頭癌の転移様式はリンパ行性転移が主体であり,喉頭前,気管傍,気管前,深頸部リンパ節への転移が多くみられる。しかし,副咽頭間隙に転移をきたした症例の報告は散見されるのみである1〜7)
 今回われわれは,甲状腺乳頭癌が両側の副咽頭間隙に転移をきたした症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

小児口腔外傷の2例

著者: 畑中幸子 ,   石丸正 ,   渋谷和郎 ,   伊藤真人 ,   古川仭

ページ範囲:P.469 - P.471

 はじめに
 口腔領域は様々な原因による外傷が多発する領域である。それゆえ,救急外来で口腔外傷に遭遇することも多い。従来,口腔粘膜は創傷治癒しやすいこともあり軽視される傾向にあった。しかし,口腔は頭蓋骨や喉頭,気管などの重要な臓器に近接していることもあり,ときに重篤な病態を引き起こす。
 今回われわれは,刺傷による小児口腔外傷の2例を経験したので,口腔外傷遭遇時の注意点などの考察を加え報告する。

鏡下咡語

脳を育てる

著者: 古川仭

ページ範囲:P.454 - P.455

 21世紀は脳の時代,感覚器の時代とも言われています。耳鼻咽喉科学は,一口で言うと感覚医学と頭頸部外科学に集約できますが,私の教室では感覚器の中でも特に嗅覚の研究が歴代教授によって継続されてきた経緯から,現在でも積極的に押し進められています。私が所属する「日本味と匂学会」も既に創立30周年を経過しましたが,この会の創始者の一人であった故高木貞敬群馬大学名誉教授から,生前,出版後問もない著書「脳を育てる」(岩波書店)を送っていただきました。先生は神経生理学の大家で,特に嗅覚面においては著書も多く,わが国が世界に誇る基準嗅覚検査「T&T」の生みの親でもあります。この書では,人の脳の働きは神経細胞同士のネットワークの多さ,強さで決まり,その神経細胞は1日平均10万個ずつ減って,脳の働きは衰える一方,刺激によって新しいネットワークがつくられることなどが紹介してあります。興味あるところは脳の働きを高めるために何をなすべきかの提案であります。老後のボケを恐れる人は,是非一読されてはどうでしょうか。忙しくて読めない人のために項目だけを紹介しますが,項目だけではボケ防止にはならないことを申し添えます。まず脳の働きをよくする方法は,①問題に直面して逃げない,②よい書物を読む,③情報を選択して取り入れる,④未知の分野に目を向ける,⑤いい友人をもつ,⑥特技や趣味をもつ,⑦自分の意見を正確に相手に伝える,⑧多くの人と話しあう,⑨歴史を学ぶ,などであります。ついでに脳の働きを悪くするものとして,①テレビの悪影響,②責任の回避,転嫁,③不平ばかり言う,他人の批判ばかりする,④悲観,あきらめ,絶望,⑤この年ではもう遅いと思うことなどが掲げてあります。

手術・手技

経蝶形骨洞手術における工夫—洞内観察によるSella-Clivus Recessの確認および術中指標としての利用法を中心に

著者: 新島京

ページ範囲:P.475 - P.480

 はじめに
 1907年,Schlofferによって始められた下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞手術は,1910年,Cushingによって下垂体腺腫に対する標準的な手術法として確立された。この術式は,彼からDottに,そしてDottからGuiotへと伝えられた。Guiotのもとでこのアプローチを修得したHardy1)は1962年,術中X線透視を用いた顕微鏡下の経蝶形骨洞手術法を確立した。
 いわゆるHardy法2)と呼ばれるこの術式は,低侵襲で重篤な合併症も少なく,ここ40年の間に普及の一途をたどってきた。また,MRIをはじめとする画像診断機器の進歩に伴って,腺腫の正確な情報を術前に得ることができるようになったので周到な手術計画が可能となり,手術器械の改良と相まって手術手技3,4)そのものもよりいっそう洗練されつつある。

連載 手術・手技シリーズ

⑥鼻茸切除術

著者: 伊藤尚

ページ範囲:P.481 - P.485

 はじめに
 鼻茸は固有鼻腔にみられる炎症性腫瘤で,多くの場合,副鼻腔病変を伴うことが多い。原則的に鼻茸を伴った慢性副鼻腔炎に対しては,単独で鼻茸切除術を行うのは適切ではなく,内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)の中の1段階として鼻茸切除術が行われている。症例によっては,鼻中隔矯正術や下鼻甲介粘膜切除術などの鼻腔形態の改善を目的とした手術が必要な場合もある。患者の都合により入院できないことや,合併症や高齢のため低侵襲の手術しかできない場合もある。さらに,副鼻腔に病変がなく中鼻道から鼻茸を認める場合には,鼻閉の改善を目的として鼻茸切除術のみが必要となってくる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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