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原著
鼓室硬化症の手術成績
著者: 植田広海12 内田育恵1 中田誠一1
所属機関: 1名古屋大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2現:名古屋第一赤十字病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.435 - P.438
文献購入ページに移動鼓室硬化症は,1956年Zöllner1)が初めて紹介した疾患である。彼は,耳硬化症が内耳骨包内の骨変化による疾患であるのに対し,鼓室硬化症は中耳腔内の粘膜下に起こる硬化性変化による疾患であると述べて両者の疾患を明確に区別した。しかし,その後の検討でも鼓室硬化症の成因については十分に解明されているとはいえない2)。日常臨床上,鼓膜の石灰化はよく認められるが通常聴力に影響なく,治療上問題となるのは耳小骨周囲に硬化病変が及んで伝音難聴をきたしている場合である。治療法としては,手術が主体となっており,本邦での手術成績3〜9は年代につれてかなりの向上がみられているが,まだ改善の余地を残している。
われわれの施設において,以前は聴力改善が不良なこと,術後骨導悪化がみられる場合のあることなどより,積極的に手術を施行していなかった。しかし,近年徐々に手術症例数が増加し比較的良好な成績を上げつつある。
そこで,今回われわれの経験した症例を検討し,特に聴力成績に影響を与える因子について若干の知見を得たので報告する。
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