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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻8号

2001年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

両外耳道アミロイドーシス症例

著者: 新谷朋子 ,   百島尚樹 ,   氷見徹夫

ページ範囲:P.494 - P.495

 アミロイドーシスは繊維性蛋白であるアミロイドが全身の種々の臓器,組織の細胞外に沈着し,機能障害を引き起こす症候群である。全身性と限局性に大別され,耳鼻咽喉科領域では限局性がほとんどである。喉頭,気管のアミロイドーシスの報告は散見されるが,外耳道アミロイドーシスの報告は世界でも稀である1〜3)

原著

めまいを初発症状とした椎骨動脈解離性動脈瘤の1症例

著者: 新井基洋 ,   樋口彰宏 ,   伊藤能成 ,   持松泰彦 ,   川崎隆 ,   伊藤邦泰 ,   林洋

ページ範囲:P.496 - P.501

 はじめに
 椎骨動脈解離性動脈瘤は後頭蓋窩くも膜下出血の原因の28%を占めるといわれ1),最近脳神経外科領域で注目されている疾患である。また,前駆症状としてめまい,後頸部痛を呈することが多いとされ1,2),脳神経外科医のみならず神経耳科医もその存在は知っておくべきである。
 今回われわれは,めまいを主訴で横浜赤十字病院を受診した椎骨動脈解離性動脈瘤症例を経験したので,その概要に若干の文献的考察を加えて報告する。

鼻中隔に生じたhemangiopericytoma

著者: 曾根三千彦 ,   中島務 ,   山本潤

ページ範囲:P.502 - P.505

 はじめに
 鼻・副鼻腔原発の血管周皮腫(hemangioperi-cytoma:以下,HPCと略)は稀な腫瘍であり,その悪性度については様々で,その良性型としての“HPC様腫瘤”なる概念も提唱されているが1,2),見解は一致していない。
 今回,鼻腔に発生し当初血管線維腫と考えられたHPC症例を経験したので,症例を呈示し,その診断および悪性度について考察した。

鼻脳型ムコール真菌症の1例

著者: 鈴木政彦 ,   宮下久夫 ,   中村弦 ,   小林麻里 ,   内田育宏 ,   寺尾保信 ,   真栄田宗慶

ページ範囲:P.507 - P.510

 はじめに
 ムコール真菌は健常な人でも鼻腔から検出されることがあるが,病原性は弱い。しかし,悪性腫瘍や白血病,ステロイド治療,糖尿病に伴って発症することがあり,死亡率が高い疾患である。
 今回われわれは,糖尿病に合併し治療抵抗性の脳神経症状を伴った鼻脳型ムコール真菌症を1例経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

ピアス型イヤリングが原因と思われた耳介腫瘤の2症例

著者: 國方竜太郎 ,   沖田渉 ,   牛尾宗貴

ページ範囲:P.513 - P.516

 はじめに
 近年,わが国においてもピアス装着は若年者を中心に増加しており,女性に限らず男性にも多く装着されるようになっている。また,ピアスの装着部位もデザインも多様化し,これに伴い様々なトラブルも報告されている1)
 今回われわれは,ピアス型イヤリングが原因と思われる比較的大きな耳介腫瘤の2症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

両側耳下腺に発生した先天性唾液嚢胞の1例

著者: 山崎一春 ,   佐藤文俊 ,   村井和夫 ,   石川健 ,   鈴木健策

ページ範囲:P.517 - P.520

 はじめに
 唾液瘻は一般に炎症や手術後に生じるもので,耳下腺顎下腺などの唾液腺にみられる。瘻孔が皮面にあれば外瘻,口腔内にあれば内瘻という。腺外の主管が障害されたことによる瘻を管瘻といい,腺内の管系が障害されたことによる瘻を腺瘻という。管外に出た唾液が瘻孔を形成せず皮下に貯留すれば唾液嚢胞となる。
 今回われわれは,若年者で,経過から先天性に発症したものと考えられる両側唾液嚢胞を経験し,手術でこれを治癒させることができた。先天性に唾液嚢胞もしくは唾液瘻が形成されることは稀であり,文献的考察を加えて報告する。

Dynamic MRIによる咽喉頭血管腫の評価

著者: 山本一宏

ページ範囲:P.522 - P.526

 はじめに
 口腔咽喉頭領域の血管腫は視診などで診断は比較的容易であるが,病変の拡がりや腫瘍の質的診断にはMRIが有用といわれている1)
 今回,血管腫の拡がりや血流状態をMRI(dynamic study併用)で評価を行った2症例を,治療経過とともに文献的検討を加えて報告する。

高齢で発症した非典型的Cogan症候群の1例の聴力変動とVEMP

著者: 石橋康子 ,   菅澤恵子 ,   室伏利久

ページ範囲:P.529 - P.532

 はじめに
 Cogan症候群は,1949年に眼科医Coganによって非梅毒性実質性角膜炎と内耳障害をきたす疾患として報告された1)。その後,100例以上の症例が報告されている2)。発症年齢は2〜60歳と幅広いが3),平均30歳前後と比較的若年層に多い2)。また,症状が局所にとどまるものから,全身症状の強いものまで含まれており,原因は不明だが血管炎による症状であるといわれている4)。治療としては,眼症状に対しては副腎皮質ホルモンの局所投与がなされており,これにより改善が期待される。内耳障害に対しては副腎皮質ホルモンや利尿剤などが投与されることが多いが5),感音難聴の予後は一般的には不良といわれている2)
 1980年にHaynesら2)によって,Cogan症候群の分類が提唱された。これによると,Cogan症候群の中で,眼症状が実質性角膜炎のみのものを典型的Cogan症候群,他の眼症状をもつ場合を非典型的Cogan症候群としている。
 今回われわれは,非典型的Cogan症候群と思われる症例で,高齢で発症した1例を経験したので報告する。

抜歯後発症した破傷風の1症例

著者: 五十嵐良和 ,   中川肇 ,   渡辺行雄

ページ範囲:P.537 - P.539

 はじめに
 破傷風は,不潔な傷から体内に侵入した破傷風菌Clostridium telaniが外毒素tetanospasminを放出し,横紋筋の痙攣を生じる致死率の高い疾患である1)。外傷の既往と全身の痙攣症状が認められれば診断は容易であるが,外傷を伴わない場合や部分的な症状のみ生じる場合もあり,この際に診断をつけることは難しい2,3)。一方,近年の症例数激減4)に伴い,破傷風に関する経験や情報を得る機会は極端に減っている。
 今回,外傷がなく抜歯後に発症し,診断に苦慮した破傷風症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

アミラーゼ値がマーカーとなった耳下腺腺房細胞癌の2症例

著者: 望月義也 ,   熊川孝三 ,   武田英彦 ,   武藤奈緒子 ,   高橋直一 ,   西田聡 ,   菊田周 ,   山根雅昭 ,   滋賀秀壮 ,   松下央

ページ範囲:P.542 - P.546

 はじめに
 腺房細胞癌(acinic cell carcinoma)は唾液腺原発の腫瘍である。本邦における発生頻度は,奥田ら1)の集計によると耳下腺腫瘍全体で約1.5%,悪性の耳下腺腫瘍全体としてもわずかに7%で,粘表皮癌,腺癌,多形腺腫の悪性例,扁平上皮癌,腺様嚢胞癌に次いで6番目であった。発生頻度が少ないため,その性質や臨床的特徴はあまり知られていない。
 この腫瘍は当初良性腫瘍として取り扱われ,日本頭頸部腫瘍取扱い規約2)においても大多数の症例が適切な治療により治癒可能であることから,癌腫(carcinoma)としてではなく腫瘍(tumor)として取り扱うとしている。しかし,この組織型は再発,遠隔転移を生じることから,Hoffmanら3)は臨床的には悪性の潜在能をもつ癌腫として取り扱うべきであると述べた。したがって,この腫瘍の特徴を理解したうえで診断を行い,経過観察していく必要がある。

退院直後に急性腎不全を発症した鼻・副鼻腔手術の1症例

著者: 木村美和子 ,   菊地茂 ,   菅澤正

ページ範囲:P.549 - P.552

 はじめに
 基礎疾患がなく全身状態良好な患者の場合,比較的侵襲が低い鼻・副鼻腔手術の術後に重篤な合併症が伴うことは少ない1)
 今回われわれは,鼻・副鼻腔手術後に急性腎不全を発症し,早期に診断と治療を行うことで救命し得た症例を経験したので報告する。

顔面神経を切除した耳下腺癌における皮神経付き遊離前腕皮弁の使用経験

著者: 海沼和幸 ,   菊川正人 ,   伊藤岳朗 ,   北沢健 ,   岩沢幹直

ページ範囲:P.553 - P.556

 はじめに
 耳下腺癌の治療は進行度,組織型に応じた腫瘍の切除が重要である。同時に欠損部位の再建も重要である。特に耳下腺癌では,顔面神経を合併切除しなければならないことが多く,可能な限り神経再建を図る必要がある。
 今回われわれは,顔面神経再建に外側前腕皮神経付き遊離前腕皮弁を用いて,進行耳下腺癌の顔面神経および欠損整復を行った1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

極める

著者: 設楽哲也

ページ範囲:P.534 - P.535

 極めるという言葉は職人が技を極めるというふうに用いられる。学問の場合には究めると言ったほうがよいのかもしれない。医療全般においても究めるも極めるも使ってよさそうに思えるが,私はどちらの意味にも使いたい。極めるという場合には職人的な技術を対象とし,究めるというと知識を対象にするように思え,技術と知識が対立するものとして捉えがちであるために,職人芸は知識に乏しく,知識がある場合には技術に乏しいとする見方が出てくる。私としては,知識と技術の両立が望ましいと言いたいのである。
 かつては小手術の名手達が居られた。今でも居られるかもしれないが,小手術の頻度が減り,話題性に乏しいので表面には出てこない。大学病院では大手術にあこがれて,小手術への関心が高いとは言えない。今はなおさらのことではあるが,私の医師の駆け出し時代である昭和三十年代でもそうであった。

連載 手術・手技シリーズ

⑦口内法による唾石手術

著者: 谷垣内由之

ページ範囲:P.559 - P.563

 はじめに
 唾石のほとんどは顎下腺に生じる。耳下腺にも発生するが,顎下腺例の1/10以下であり,また舌下腺例はさらに少ない。唾石は,開口部から,あるいは細菌感染により生じた膿瘍の自壊で,自然に排出されない限り通常は外科的に摘出する必要がある。外科的治療法としては,
 1)口腔内から総排出管を切開し唾石を摘出する方法。
 2)皮膚切開により唾液腺とともに摘出する方法。
 3)耳下腺総排出管内のものでは,頬部皮膚切開により唾石のみを摘出する方法。の3つが挙げられる。
 口腔内からの唾石手術の適応例は,耳下腺においてはステノン氏管開口部近くに存在する例。顎下腺においては,腺内および腺・総排出管移行部以外のもの,すなわちワルトン氏管内に存在するものが適応となる(このような例のほとんどは,ワルトン氏管が舌神経と交差する部位より前方にある)。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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