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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科73巻9号

2001年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

進行性顔面半側萎縮症(Parry-Romberg症候群)の1症例

著者: 小林吉史 ,   今田正信 ,   林達哉 ,   柳内充 ,   野中聡 ,   原渕保明

ページ範囲:P.572 - P.573

 症例:16歳,女性。
 1998年2月に下顎の形の左右差を自覚し近医耳鼻咽喉科を受診した(図1)。特に症状がなかったため様子をみていた。しかし,徐々に左右差が明らかになってきたため,1999年4月,精査・治療目的で当科を紹介された。

Current Article

中耳における感染防御機構

著者: 氷見徹夫 ,   播摩谷敦 ,   光澤博昭 ,   山崎徳和 ,   小西正訓

ページ範囲:P.576 - P.587

 はじめに
 中耳炎の発症に細菌感染が関与していることは疑いないことであるが,滲出性中耳炎や反復性中耳炎の病態形成にどのような外的因子,生体側の因子が関与しているのか,完全に解明されているわけではない。さらに,抗生剤の登場により中耳炎を含む感染症の制御が可能となるであろうとの考えも,多剤耐性菌の出現により,さらに大きな臨床上の問題点を抱えることになった。いうまでもなく中耳や上気道での感染制御は,耳鼻咽喉科臨床で解明すべき重要な課題であることは現時点でも変わることがなく,新しい治療戦略の確立が望まれる。このためには全身的な生体防御機構のみならず,中耳局所における感染防御機構を理解することが必要であろう。
 中耳という解剖学的に特異な構造をもつ臓器での炎症成立には,鼻咽腔での細菌の増殖,耳管を経由しての細菌の進入など様々な過程が必要である。しかし,実際の中耳炎発症には,中耳局所粘膜と細菌の相互作用による初期免疫反応が重要である。この感染初期に中耳ではどのような生体防御機構が働くかを知ることは,中耳炎発症という最も基本的な病態解明につながる。

原著

顔面神経麻痺を契機に発見された肝細胞癌側頭骨転移の1例

著者: 齋藤寛 ,   盛川宏 ,   藤沢勉 ,   中島逸男 ,   浅賀英人 ,   吉田博一 ,   谷垣内由之 ,   平林秀樹 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.589 - P.592

 はじめに
 われわれ耳鼻咽喉科医の日常診療において,末梢性顔面神経麻痺は比較的多く遭遇する疾患であり,その多くはBell麻痺,Hunt症候群である。しかし,少数例ではあるものの腫瘍性病変による顔面神経麻痺症例も報告されており,その割合は全末梢性顔面神経麻痺の5〜10%と報告されている1〜3)
 腫瘍性病変による顔面神経麻痺は,腫瘍の浸潤部位により発症形態が異なるため,診断に苦慮することも少なくない。
 今回われわれは,当初はBell麻痺と考え加療したが治療に無反応で,血液検査および画像診断から肝細胞癌の側頭骨転移性病変による末梢性顔面神経麻痺と診断し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

鼻中隔に発生した筋上皮腫の1例

著者: 藤田健介 ,   篠原孝之 ,   河北誠二 ,   兵頭政光 ,   杉田敦郎

ページ範囲:P.595 - P.599

 はじめに
 筋上皮腫は外分泌腺の介在部に存在し筋上皮細胞に由来する稀な腫瘍である1)。そのため,本症の多くは大唾液腺に発生するとされているが,全唾液腺腫瘍に占める割合は約1%に過ぎない2)。さらに,本腫瘍が鼻・副鼻腔領域に原発することは極めて稀であり,これまでに国内外を含めて9例の報告をみるのみである3〜11)
 今回われわれは,鼻中隔より発生した筋上皮腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

副咽頭間隙に生じた海綿状血管腫の1例

著者: 上田大 ,   島田剛敏 ,   中井茂 ,   宇野敏行 ,   久育男

ページ範囲:P.602 - P.605

 はじめに
 血管腫は耳鼻咽喉科領域では口腔鼻・副鼻腔,咽・喉頭,唾液腺,頸部にしばしば認められるが1),副咽頭間隙に発生するものは稀である。
 今回われわれは,副咽頭間隙に発生した海綿状血管腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

下咽頭側切開で摘出した喉頭血管腫症例

著者: 河田了 ,   兵佐和子 ,   田中斉 ,   萩森伸一 ,   竹中洋 ,   辻求 ,   吉田政雄

ページ範囲:P.607 - P.610

 はじめに
 喉頭血管腫はしばしばみられる疾患であるが,その治療法については定説がなく,大きさ,局在に応じて適宜選択されている。喉頭以外の耳鼻咽喉科領域の血管腫では,大きさが小さければ経過を観察していくのも1つの方法である。半数以上に自然消退がみられるという報告もある1)。しかし喉頭の場合,気道であることや出血の危険性から摘出術が第1選択となると考えられる。摘出術に際して,気道の確保や出血したときの対応が最も大切である。手術術式としては,喉頭直達鏡下にレーザーを用いて摘出可能な症例もあるが,腫瘍がある程度大きいものや,部位によっては頸部外切開で喉頭腔に達して十分な術野を確保して摘出するのが安全,確実である。
 今回,喉頭披裂部後外側から発生した血管腫に対して,下咽頭側切開術を用いて摘出した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

耳掻きによるアブミ骨底板骨折の1例

著者: 山田弘之 ,   藤田健一郎 ,   石田良治

ページ範囲:P.617 - P.620

 はじめに
 外耳道からの中耳外傷は日常臨床においてしばしば経験する疾患であり,中でも耳掻きによるものは,鼓膜穿孔による耳出血,ときには耳小骨離断による難聴を訴えて耳鼻咽喉科を受診する。しかし,そのほとんどは中耳までにとどまるものであり,外リンパ瘻など内耳に及ぶことは比較的少ない。
 今回われわれは耳掻き外傷がアブミ骨底板骨折を引き起こした症例を経験し,アブミ骨手術を施行した。この症例はめまいを伴わず,さらにdry vestibleであった特異な臨床症状を有していたので報告し,文献的考察を加えた。

声帯血管平滑筋腫例

著者: 北尻真一郎 ,   平海晴一 ,   廣瀬知子

ページ範囲:P.623 - P.625

 はじめに
 血管平滑筋腫は主に四肢に発空する良性腫瘍であるが,喉頭に発生することは稀で,本邦での報告はこれまで5例で1〜5),そのうち声帯に発生した報告は1例のみである5)
 われわれは,声帯に発生した血管平滑筋腫例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

人工内耳により良好な聴覚補償を得たType Ⅲ Usher症候群の1例

著者: 宇良政治 ,   中村由紀夫 ,   真栄田裕行 ,   大輪達仁 ,   農東暁 ,   野田寛

ページ範囲:P.627 - P.631

 はじめに
 Usher症候群(USH)1〜4)は感音性難聴と網膜色素変性を合併する遺伝疾患として知られ,視力障害も進行して盲に至るため,聴覚補償が極めて重要となる4)
 今回われわれは,同胞,いとこ,はとこに発症したUSHの1家系を経験し,進行性両側高度難聴に至った重症例に人工内耳埋め込み術を施行し,良好な経過を得たので報告する。

鏡下咡語

禅と脳

著者: 本庄巖

ページ範囲:P.612 - P.613

 人工内耳装用者の言葉の聞き取りが意外に良いので,大脳のレベルで一体どうなっているのだろうかと,脳機能画像の助けをかりて調べているうちに,言語と脳との関係に十年ばかり深入りし,最後には意識といったヒトの心の本体にも一応の医学的な決着をつけたつもりでいた。
 ところがちょうどその頃,あるきっかけで医学とは縁遠い東洋の禅と接触するようになった。前置きが少し長くなることをお許しいただきたいが,私の郷里の高校の恩師に数十年ぶりにお会いしたところ,人間禅という在家の禅の全国組織の中で,最高位の老師になっておられた。大学病院でその方の難聴の診療をしたのが縁で,一度道場に来てみないかといわれ,私の方にもいささか求道の心があったので,恐る恐る道場を訪ねてみた。何度か見学しているうちに,老師から禅を通して会話をしてみたいというお言葉を頂き入門を決意した。家族の者は変な宗教団体ではないかと心配してくれたが,会員はいずれも社会的地位の高い方ばかりで,和気藹々とした会の雰囲気に魅せられたせいもある。入門に際しての会では,「暗闇に後ろ向きに入ってゆく不安を感じる」と申し上げたが,それまで私なりに積み上げてきた自然科学の論理的な思考がここでは全く無力なことは予感していた。

手術・手技

Midfacial degloving approachの変法について

著者: 古田康 ,   折舘伸彦 ,   八木克憲 ,   黒田努 ,   祢津宏昭 ,   福田諭 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.633 - P.636

 はじめに
 鼻・副鼻腔乳頭腫症例に対する外科的アプローチとしては,Caldwell-Luc法やDenker法が用いられていたが,再発が高率にみられることによりlateral rhinotomy (外鼻切開)法またはmidfacial degloving法による切除術が推奨されるようになった1)。また,内視鏡下手術の進歩により,一部の症例に対しては内視鏡下手術の適応もある2)
 Midfacial degloving法は,1974年にCassonら3)が報告した方法で,歯肉口腔前庭粘膜切開と鼻中隔コルメラを貫通する切開,外側鼻軟骨と大鼻翼軟骨の間での剥離により,顔面皮膚を両側で挙上する術式である。つまり顔面に皮膚切開を行わなくても,顔面皮膚を広く剥離・挙上できる点が長所として挙げられている。

連載 手術・手技シリーズ

⑧嚢胞性疾患の硬化療法

著者: 深瀬滋

ページ範囲:P.638 - P.643

 はじめに
 OK−432(ピシバニール®)はA群溶連菌Su株をペニシリンで不活化した製剤で,癌の免疫療法剤として開発されたものである。局所に強い炎症を引き起こし,種々のサイトカインを誘導することにより免疫増強作用を現すとされている。本剤を癌性胸膜炎・腹膜炎などの際に胸腔や腹腔内に注入すると,腔内の癒着を促し胸水や腹水の貯留に対して非常に有効であることは広く認められている。一方,小児に主に認められる嚢胞状リンパ管腫は嚢胞壁が極めて薄いため全摘出が難しく,結果として術後再発をきたしやすい疾患である。嚢胞状リンパ管腫に対しては,ブレオマイシンを用いた硬化療法が歴史的に試みられてきたが,安全性・確実性は満足できるものではなかった。1987年,荻田らはOK−432を嚢胞内に注入する治療法を発表した1〜4)。本療法は効果が確実でしかも安全であるため,現在本疾患の第1選択の治療法となり5),1995年にはリンパ管腫治療剤として保険適用にもなっている。われわれは,1991年に本療法をガマ腫に応用して以来,40例を越える頭頸部の嚢胞性疾患に対し本治療を行ってきたが,ガマ腫,耳血腫,舌嚢胞,正中頸嚢胞などでは極めて有用で,手術に代わり得る治療法と考えている6〜9)。われわれの行っている「OK−432嚢胞内注入療法」の実際につき,治療後の経過観察のポイントおよび作用機序の考察を含めて述べる。また,甲状腺嚢胞や側頸嚢胞などに対してエタノール注入療法も報告されているが10),それに関しても簡単に紹介する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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