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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科74巻10号

2002年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

上気道形質細胞症(plasmacytosis)の1症例

著者: 青木光広 ,   竹内秀行 ,   伊藤八次

ページ範囲:P.664 - P.665

 上気道の形質細胞症(plasmacytosis)は,粘膜の形質細胞浸潤に伴う敷石状増生(cobblestone appearance)が喉頭,咽頭,舌などにみられる稀な良性疾患である1,2)。嚥下時の違和感,呼吸困難,発声障害などの症状を伴う。

Current Article

ウイルス性内耳炎

著者: 福田諭

ページ範囲:P.668 - P.676

 はじめに
 ムンプスウイルス,麻疹ウイルスなどの全身ウイルス感染の際に,内耳炎が惹起され感音難聴が生じることは臨床的によく知られている事実である。一方,難聴という立場からみても感音難聴の原因の1つとしてのウイルス感染は重要なものであり,難聴の原因となるウイルス,その臨床像や病理所見,予防などについて知っておくことは臨床的にも重要である1〜7)
 本稿ではこのテーマの研究史,現在の動向について病理などを含め各ウイルスごとにふれ,その後,内耳ウイルス感染の課題と今後の対策について述べていきたい。

原著

小児良性発作性めまい症の2症例

著者: 大島章 ,   佐々木修 ,   伊沢真奈美 ,   梅垣油里 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.679 - P.682

 はじめに
 良性発作性めまい症(benign paroxymal vertigo:BPV)は,小児期に発症する発作性反復性非てんかん性のめまい疾患で,1964年Basser1)により初めて報告された。発症年齢は2〜4歳で,発作時に患児は「回る,倒れる」と訴え,立っていることができなくなるが,意識は保たれる。発作は数秒から数分続き,1〜3か月に1回程度起きるが自然寛解する場合が多く,ときに片頭痛に移行する症例があるとされている2)。本疾患は欧米では小児におけるめまい疾患として比較的よく知られているが,本邦ではほとんど知られていない。
 今回われわれは,BPVと思われる2症例を経験したので,その神経耳科学的所見を中心に報告する。

副耳下腺原発と考えられたMALTリンパ腫の1例

著者: 石田良治 ,   山田弘之 ,   西井真一郎 ,   徳力俊治 ,   坂部茂俊

ページ範囲:P.685 - P.688

 はじめに
 副耳下腺とは,耳下腺前方の離れた位置に存在する唾液腺である。副耳下腺は成人の約20%に存在するといわれているが1),副耳下腺腫瘍の存在は少ないとされている。また,報告例でも良性,悪牲ともに上皮性腫瘍の報告のみで,本邦でのリンパ腫などの非上皮性腫瘍の報告例は,われわれの検索し得た限りではなかった。
 今回われわれは,副耳下腺より発生したと考えられたMALT (mucosa associated lymphoid tissue)リンパ腫の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

血液透析患者に発症した原発性喉頭結核の1症例

著者: 佐藤重規 ,   高橋邦明 ,   山木万里郎 ,   戸川真一

ページ範囲:P.689 - P.692

 はじめに
 近年,再興感染症として結核が世界的に注目されている。本邦においても新規登録患者数結核罹患率ともに上昇傾向にある1〜3)。喉頭結核は肺結核に続発するものがほとんどであり,結核患者の増加に伴い再度報告が散見されるようになってきた3〜10)。近年の傾向としては,症状が軽微で肉芽腫型のものが増加し,喉頭癌との鑑別が重要となってきている3〜7,10)
 今回,血液透析中に喉頭結核を発症し,喉頭癌との鑑別の点で診断に苦慮した1症例を経験したので報告する。

唾液腺アミロイドーシスの1例

著者: 渡辺健太 ,   横山正人 ,   荒井直樹 ,   水野文恵

ページ範囲:P.693 - P.696

 はじめに
 アミロイドーシスはアミロイド蛋白が全身の諸臓器に沈着し,機能障害を引き起こす疾患群である。近年,アミロイド蛋白とその前駆体が明らかになってきたが1),未だにその病態には不明な点が多い。全身性アミロイドーシスの一環として唾液腺にアミロイドの沈着を認めることが報告されているが2〜5),唾液腺に限局することは少ない6〜9)
 今回われわれは,唾液腺に集中して沈着したアミロイドーシスの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

上顎洞平滑筋肉腫の1例

著者: 高橋宏尚 ,   兵頭政光 ,   松本秀 ,   暁清文

ページ範囲:P.701 - P.705

 はじめに
 鼻・副鼻腔に発生する悪性腫瘍は大部分が上皮性腫瘍で,非上皮性腫瘍は比較的少ない。中でも平滑筋肉腫は極めて少なく,われわれが検索し得た限り,本邦においてはこれまでに16例の報告1〜16)をみるに過ぎない。
 今回われわれは,上顎洞原発の平滑筋肉腫症例を経験したが,本例は手術療法,化学療法,放射線療法に抵抗し,予後は不良であった。本例の治療経過を若干の文献的考察を加えて報告する。

非典型的経過を示したRamsay Hunt症候群の1症例

著者: 馬場信太郎 ,   渡辺剛士 ,   佐々木徹 ,   竹内直信 ,   室伏利久

ページ範囲:P.709 - P.712

 はじめに
 Ramsay Hunt症候群(RHS)は水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化により生じ,耳介の帯状疱疹,末梢性顔面神経麻痺,第8脳神経症状(めまい,難聴耳鳴)を主症状とする症候群である。しかし,これらの3徴候のうち第8脳神経症状を欠く不全型や,帯状疱疹も欠き血清抗体価を調べなければベル麻痺と鑑別できない,いわゆるzoster sine herpeteといった非典型例など,その症状,経過には様々なバリエーションが存在する。
 今回われわれは,高度の第8脳神経症状(めまい,難聴,耳鳴)が先行し,遅れて比較的軽度の顔面神経麻痺を呈し,また,帯状疱疹を呈しないなど非典型的な経過をとった1症例を経験したので報告する。

外耳道血管腫の1症例

著者: 奥田剛 ,   菅原一真 ,   下郡博明 ,   三浦正子 ,   清水徳雄 ,   山下裕司

ページ範囲:P.714 - P.717

 はじめに
 外耳道腫瘍は,頭頸部腫瘍の中でも比較的稀であるとされ,外来患者の0.05%1)とされている。また,外耳道腫脹,耳痛,耳出血,耳漏などの外耳炎と共通する症状を呈するため,診断に時間を要することが多い。
 今回われわれは,慢性外耳道炎の経過中に発症し,初診医受診から治療まで約6年の歳月を要した外耳道血管腫の1症例を経験したので報告する。

前頸部膿瘍を契機に発見された喉頭癌の1例

著者: 藤井守 ,   平松憲

ページ範囲:P.719 - P.722

 はじめに
 頭頸部悪性腫瘍が頸部膿瘍の形で発症することは稀1〜8)といわれている。
 今回われわれは,前頸部膿瘍を契機に発見された声門上型喉頭癌の1例を経験したので報告する。

鏡下咡語

めまいリハビリテーション一考—予防的平衡ハビテーション(仮称)

著者: 関谷透

ページ範囲:P.698 - P.699

 いわゆるめまい平衡リハビリテーションの対象は,老若男女を問わないものであるが,現今,私の診療対象は高齢者でめまい,ふらつきがあり,他の多くの愁訴とともに慢性化した人で,他医より紹介のほか,口コミで受診してくる方々である。
 最近の事例で慢性的頭重,めまい感,そしてふらつきを訴える高齢患者(90歳,女性)との対話の一部と身体的状況を示すと,(本人言)老人クラブの健康講話で“散歩がよい”と言われたので,家人に「朝,散歩したい」と言ったら「あんた,まだ生きるつもりかね」と言われたとのこと。

手術・手技

超音波切開凝固装置を用いた口蓋扁桃摘出術

著者: 濱田昌史 ,   福島慶 ,   鷲頭洋三 ,   竹田泰三

ページ範囲:P.724 - P.727

 はじめに
 口蓋扁桃摘出術(以下,扁摘術と略)の適応が確立して以来,睡眠時無呼吸症以外の小児の手術例は減少し,逆に反復性扁桃炎や病巣感染症を理由とした成人の扁摘例が増加している1,2)。成人例では扁桃炎の既往を背景に高度癒着例や扁桃周囲膿瘍既往例も多く,術中出血量の増加や術後疼痛の増強が問題となり,また術後出血例の増加が危惧される。
 一方,扁摘術は耳鼻咽喉科診療の中でも最も頻繁に施行される手術であり,古くから様々な手技工夫が試みられてきた。近年開発された超音波切開凝固装置(ハーモニックスカルペルTM:以下HSと略)は切開と凝固を同時に可能とし,小血管の止血性に優れる3,4)。この利点を生かし,この装置を扁摘術に応用した試みが複数の施設から報告されたが5〜7),その追試成績は必ずしも満足のいくものではなかった。
 今回われわれは,この装置を利用してさらなる手技工夫を行い,良好な結果を得たので報告する。

連載 シリーズ/ここまでわかる画像

⑨内耳のCT,MRI

著者: 大塚明弘 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.729 - P.734

 はじめに
 最近の画像撮影機器の発達は,原因不明の感音難聴の病態解明に大きく寄与している。当科の難聴専門外来では,難聴患者のほぼ全例に側頭骨CTを施行している。そのうち,内耳奇形を認める症例や人工内耳埋め込み術を予定する患者には,さらに内耳MRIを行っている。内耳は側頭骨に囲まれた器官であるため,内耳奇形の診断には側頭骨CTが適しており内耳の画像診断を行ううえでの基本になっているが,軟部組織の評価にはMRIが必要となる。CTと比較したMRIの長所としては,1)電離放射線による被曝がない。特に,内耳のCTでは眼球(水晶体)への被曝が問題となる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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